なっています。しかし改めて読み直してみると、この構成はとても合理的に思えます。なぜなら最初に微積分の概念を会得してもらうことで、たとえば三角関数のような新しい関数を導入するときに、その導関数や級数展開などをまとめて説明できるからです(高校の数学教科書ではこのあたりがバラバラになってしまっています)。
第8章で本書が最重要テーマとして扱っている オイラーの公式 が登場します:
eix = cosx + i sinx
副題に掲げる「人類の至宝」という表現は決して大げさなものではありません。数学者は純粋数学におけるその美しさそのものこそが価値であると断言するかもしれません。しかし、自然科学一般における実用上の利点もまた計り知れないものがあります。特に関数論を多用する物理学の理論構成にはこのオイラーの公式が極めて有効にはたらきます。そしてその物理学を基礎として成り立つ各種工学にも恩恵が及びます。オイラーの公式はまさに現代文明の礎となっているのです。
本書全体を一貫する様式美はまさに圧巻。初学者むけの数学書としては他に比類ないほどの良書です。参考書とは一味違った「本物の数学」を体感できますので、興味のある人はぜひ一度手に取って開いてみてください。ちなみに巻末の付録にはテンソルやラプラス変換まで載っていますから、実質的には学部2年ぐらいまでの内容を含むかもしれません。文庫版もありますので一応載せておきます。
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