クマリ 【気になるキーワード】 ネパール 生き神様
「クマリ」(Kumari)。ネパールでヒンドゥー教徒やチベット仏教徒らから「生き神」として崇められる少女のことですが、その数人いるクマリの1人、Sajani Shakya(10)の神格が剥奪されると言う前代未聞の出来事がありました。理由は、イギリスで製作されたネパールの伝統や政情を紹介するドキュメンタリー番組のプロモーション活動で、クマリの伝統を管理する地元自治体に何の相談もなく訪米したためです。地元自治体は非常に怒り、この少女に代わる新たなクマリを探す意向を示しているとのことです。ただし、通常「引退した」クマリに支給される年金は、この神様を失格になった少女にも支給されそうで…、良かったです。
しかし、いくら「許可なく」「勝手に」訪米したとは言え、仮にもクマリは「生き神様」…。なぜ、神様がいちいち只人の許可を得ねばならないのか、また、ニュースで報じられた表現によるところの「神様を“クビ”になる」のか…、疑問に思った人は多いでしょうし、私も考えれば考えるほど、矛盾を感じました。その、考えれば考えるほど矛盾を感じた理由は、以下に。
なぜ「生き神様」であるクマリが、神でもない「人」の判断によって神格を失うのか…?
「クマリ」は伝統に則って、ネワール族の金・銀細工師の特別な階級(カースト)から選ばれますが、その際、目の色や歯の形、声の質などどいった身体的特徴が、伝えられる「女神」の風貌に沿っているかどうか、実に32項目もの基準に照らし合わされ、選出されます。そして候補に選ばれると…、選ばれた少女たちは、真っ暗な部屋に通されます。そこにはグロテスクな水牛の頭があったり、恐ろしげな面をつけた男たちが踊っていたりするのですが、これもテストのうち。本物の女神であるなら、こんなものを恐れるはずがない。まして、ドゥルガー(闘いの女神)であるなら…、というわけです。そして、この試練の間、ずっと冷静さを保ち、落ち着いていられた少女に課せられる最終テストが、前のクマリが身に付けていた衣服や装飾品を選び出すこと。
はい。転生するとされる「ダライ・ラマ」の選出方法と、同じですね。知るはずのない、先のクマリが身に付けていた衣服や装飾品を選ばせる、って。つまり、クマリの選出には身体的特徴とあわせ、厳に神的なものが重視されるわけです。「今宮戎神社の福娘オーディション」とは、訳が違うのです。そして…
「クマリ」の引退は、女神の化身にあってはならない「血の穢れ」によって決まります。つまり、初潮を迎えた時か、事故で血液の大半を失った時…です。初潮を迎えたクマリは普通の人の身分に戻されますが、引退後は「公務員の最低給料の約2倍」という年金が支給されるようになります。そして、新しいクマリ探しが始まるのです…。
…と、選出の過程から引退に至るまで、クマリに関することは全て「神的なもの」あるいは「伝統」によっています。
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