そのおばあ様、いや、おば様は、私の父母の友人で、御年85歳だが、わが家から徒歩10分ほどの距離を自ら歩いて、このさつま揚げを毎年届けて下さる。頂いたのはちょっと肌寒い日だったので、車でお送りしますと申し上げたのだが、「自分で歩いて帰るのが運動になるから大丈夫!」と明るい笑顔で固辞された。とてもお元気だが、時々、私がこっちに住んでいることを忘れて「あんた、また帰ってきたんけ?いつ東京へ帰るん?」とおっしゃったりもする時もあるが、基本的には、歯切れの良い話し方など実にしっかりされている。たいしたものだ。
そのおば様の笑顔と元気なお声を思い出しながら、さつま揚げをつまみ、焼酎を飲む。
このさつま揚げは、そのまま生で食べるのが美味しい。スーパーで買うさつま揚げと、どうしてこんなにも違うのだろうかといつも驚かされる。
鹿児島のものだけに、やはり焼酎にいちばん合うように思う。
数年前までは、父に親身にしてくださる農家の方が、お米や野菜を持ってきてくださったり
漬物を持ってきてくださったり、餅を持ってきて下さったりしたものだが、今ではそうした人たちも年をとられたり、仏さまになられたりしてしまった。
頂いたり差し上げたりというやりとりをしながら、近況を話したりするのが田舎のご近所づきあいである。若い頃は、うっとうしいと感じたこともあったけれど、今では、人と人が程よい距離の中で社会関係を保っていく村社会からの自然で素敵な営みだなと感じる。
さつま揚げを楽しみながら、地域社会のあり方に思いをはせた夜だった。
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