我々の世代は、TVの時代劇で吉右衛門さん演ずる鬼平を見ている。そして、池波正太郎さんの原作のファンでもある。
歌舞伎役者で、TVや映画に出演するという人は、ちょうど我々60代くらいの世代の人間は、わりに数多く見ていると思う。TVと共に生まれた世代ならではである。
十八代目と十七代目の勘三郎さんも、各々TVドラマに出演されていた。
吉右衛門さんは、大柄で、当たり役の勧進帳の弁慶は、体格の良い吉右衛門さんに合っていたように思う。
しかし、本人は、体が大きいので歌舞伎役者としては困ることの方が多かったのだという。
私は、歌舞伎座で「俊寛」を見たが、先々代の勘三郎さんの俊寛も見ていて、吉右衛門さんの俊寛は、体が大きいので、また印象が違った。
体格の良いことが災いして、歌舞伎を辞めようと思ったこともあったとインタビューで語っておられたのは意外だった。しかし、父からは、「何にでもなっちゃいな!」と言われ、「だったら芝居が上手くなれば良い」と先輩に言われて思いとどまり、精進され人間国宝にまでなられたのである。
お会いする機会はなかったけれど、真面目なお人柄は、テレビや舞台を通しても伝わってきた。今年の春頃だったと思うけれど、吉右衛門さんが演出された独り舞台「須磨浦」をNHKのにっぽんの芸能で見てものすごく感動した。70代でなお、新たな分野にチャレンジされる姿勢に本当に感銘を受けた。
まだまだ、素晴らしいパフォーマンスを見せて頂けると思っていただけに、本当に本当に残念でならない。
勘三郎さんが亡くなった時にも、もったいない!と嘆いたが、今度も、もったいない!残念!と嘆いている。しかしどうにもならない。
心からご冥福を御祈りするばかりである。
#中村吉右衛門
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