東山ブルーと言われる独特の碧で描かれた海の波は、絵具で書いたはずのものであるにもかかわらず、沖合からやってきて、浜に寄せていた。
先週の勝興寺の工芸展に続いて、今日は、富山県美術館で開催中の東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展 に出かけた。
東山魁夷が、唐招提寺に納めた襖絵が、実際に設置された襖のような設えで展示されている。特に、海を描いた「濤声」は、やはり圧巻であった。
地方美術館でこうした展覧会を見ることの大きなメリットは、ゆっくりと見られることである。千住博氏の襖絵の展覧会をこの美術館で見た時もそうだった。画の前で30分くらいも過ごしてしまった。その間、一人で見ていられる時間がずいぶんあった。
平日の昼下がりということもあるが、「濤声」の前に数分立っていると、襖絵の前に誰もいない瞬間が何度も訪れた。じっくりと、その空間支配力を味わうことができる。
出口のところに設置されたビデオを見た後で、また画の前に戻った。
東京の美術館で展示された時には、来場者が多くて、画の全容を楽しむことができなかったという声をよく聞いた。
しかし、今日の私は、違う。何度も、ただ一人で画と向き合う時間を楽しんだ。
「揚州の薫風」の前では、梢をゆらす風を感じることができた。
目が見えなくなった鑑真和上が、見ることの出来なかった日本の海や山の景色と、鑑真の故郷の景色を納める事で、その魂の安寧を祈る。それが東山の襖絵に対する思いであったという。
父のデイサービスの日の短い休み時間。ゆっくり時間を取ってやってきたつもりだったが、結局2時間あまりも画の前で過ごし、最後は、大慌てで帰路についた。
しかし、素晴らしい2時間であった。
県内在住の皆様、ぜひ足をお運びになることをおすすめします。
#東山魁夷 唐招提寺襖絵 #東山魁夷 障壁画展
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