(ヤフーニュース/報知新聞)
ひょうひょうとして味のある語り口で、人生に対しても、どこか肩の力を抜きながら少し斜に構えて向きあっているようなところがあった。でも、実は、とてもまじめで一生懸命の人だったのだろうと思う。
『あくび指南』『うどん屋』などから、『子別れ』『死神』『芝浜』などまで、幅広いネタに独特の味わいがあった。
なんだか、あんまりやる気がないのかな、というような淡々とした感じで、まくらと言っていいのかどうか、と思うような独特の導入部から、いつのまにか小三治ワールドに引き込まれていく。
私は、小三治さんの『粗忽長屋』なども、なかなか好きなネタだった。間抜けな会話と、おかし味と悲しみと言うかちょっとエレジーのような所を感じさせるのが好きだった。
とにかく、何にせよ淡々とされていて、彼を追いかけたドキュメンタリー番組では、高座に上がる直前まで、やる気があるのかわからない様子が描かれていたが、それもまた師匠のキャラクターだな、と思う。
近年は、あちこち体調がすぐれず、無理をしながら全国での公演をこなしておられた様子が痛々しくもあった。
多趣味の人で、音楽もお好きなら、バイクにもお乗りになっていて、かつてバイクに乗っていた私としては、バイクを愛されたことも好感を持っていた理由のひとつだった。
談志師匠とは、またちょっと味わいの違う『芝浜』の語り口も好きだった。
米朝、志ん朝、枝雀、談志、歌丸、そして小三治師匠と、私の好きな噺家が、また一人あちらの国へ旅立たれた。心からご冥福をお祈りしたい。
#柳家小三治師匠
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