2020年03月30日
天秤
一昨日のことです。いつものように喫煙室でタバコを吸っていると女性が一人、入ってきました。
随分と大きな女性だなと思い、見るとオッサンでした。
私よりも少し年上か。顔はメイクしているのですが、かなり厳しい。
黒の長Tシャツに赤いスカート、黒いタイツにグレーのハイヒール姿でした。
ちょっと目のやり場に困ってしまいましたが、チラッチラッと拝見しました。
ブースに戻って二人の同僚に聞いたら、二人会話していたため気付かなかったそうです。
でもその場にいて気付いた人たちは私と同じように目のやり場に困っていただろうと思います。
小休憩のたび、また喫煙室で見ます。たぶんその人も私と同じ間隔で小休憩になっているのでしょう。
ブースでは話題になっていました。
でも私のいるフロアーではなさそうです。
きっと下の階から上がってくるのだと思います。
次の日、またその人を見ました。
違う服装で、スカートにストッキング、前日と違うハイヒールでした。
言っては悪いですが、存在が浮いています。
話す人もなくひとり無言で喫煙しています。
あまり見てはいけないと思いながら、チラチラと拝見します。
かなりごついオッサン顔で、メイクしてもヤバいです。
上半身の体形だって、ガタイの良い感じです。
ブースに戻り女性の管理者に話すと、私なら近寄りがたいと言います。
もちろん本人だって自覚していることでしょう。
なら相当な覚悟がいるはず。
女装をする人は以前、一人だけ見たことがあります。
私は十年以上コールセンターに勤務してきました。
きっと何百人も見てきましたが、珍しいです。
そして何度も見ているうち、何かを感じ始めました。
その顔に、何か心当たりがあるような気がしてきたのです。
!
私の中にあった、ある記憶の顔と、その人の顔が重なり合いました。
いつだったかも覚えてないし、どこのビルで会ったのかも覚えていません。
でも、確かに記憶に残っている人の顔と写真を重ねるように一致したのでした。
コールセンターにはたくさんの人が勤務しています。
ブースはたくさんあり、違うブースの人でも喫煙室とか廊下で会います。
何か月か、または何年もいると、廊下ですれ違う人の顔だって、憶えてしまいますよね。
記憶にあった顔の人は男で、一度も話したことがありません。
同じブースになったこともありません。
コールセンターに似つかわしくない人だと感じていました。
コールセンターはホワイトカラーだと思います。
でもその人はブルーカラーっぽい人。
見た記憶では誰かと一緒にいるのを見たことがありません。
そう考えているうち、その人が心配になってきました。
まさか女装が趣味で、自らそんな浮いた存在になろうとするはずがありません。
LGBTなんでしょうか。性同一性障害。
昔、同じブースで可愛い顔をした若い男の子がビジュアル系のバンドなのか、女装した写真を見せてくれたことがありました。あれはあれで綺麗に見えなくもなかった。
しかし歳を重ねるとオッサンになります。
性同一性障害の人は、若いうちは性別の移行もしやすいが高齢に近づけば難しいと聞きます。
それでも周囲の好奇な目線を浴びることを覚悟してでも、そのスタイルを選んだ。
自分の本来ありたい姿と世間のギャップ、天秤にかけたと思います。
自殺も多い世界なのでしょう。
かなり重たい天秤です。
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