アフィリエイト広告を利用しています

2019年12月17日

体温計と灰皿


 親を一目置くというか、理解したときを覚えています。

 母はまだ私が3歳の頃です。私が熱を出したのか、体温計で熱を測りました。
水銀の体温計は振って水銀を戻しますね。母がするのを見ていて私もしたいと言ったのです。
そしたら先端の水銀が溜まるところをテーブルの角にぶつけてしまい、体温計は割れてしまいました。

そのとき、私は
「怒られる!」
そう思いました。

しかし母は、怒るどころか一瞬、間をおいて割れた体温計を片付け、そしてテーブルに残った水銀で遊んでくれたのです。水銀って、指で触るところころ逃げていきますね。

私には意外でした。
人の失敗は許されるんだと学んだときです。

体温計を壊せば掃除が大変です。ガラスだから細かい破片を拾わなければならないし、また新しいのを買わなければならない。3歳の私がどこまでわかっていたのか憶えていませんが、悪いことをしたというのはわかります。そのとき母から教わったのは“優しさ”でした。

また、母は仕事をしていることが多かったので、私は割と鍵っ子の生活が長くありました。
学校に勤めることが多くあり、ときに修学旅行で外泊することもありました。
そのたび、おみやげを買ってきてくれたのが今、理解できます。

一度、プラモデルを買ってきたことがありました。
タミヤのクォード・ガン・トラクター。
母曰く、
「手に持って遊ぶのにちょうどいい大きさだろうから」
って。

ある日、作ったそのプラモデルを私は壊しました。わざと。
母にされたことに何か腹を立てたんです。
そのことを母に話しました。

母はきっと心に傷を負ったでしょう。
私も傷を負ってしまいました。

負った傷もありましたけど、感謝はずっと残っています。

 父は子供の頃、そんなに記憶にありません。
朝はもう仕事に行っていて、夜は帰ってくるのが遅い。
たまに早く帰ってきた父は、北海道弁で母と話していました。

「だから〇〇だべっていうのよ。」
と。

男の子は母親が好きなので、父親はどうしても苦手というか、興味がないというか。
朝早くから夜は遅くまで家族のために働いて、それはないだろうと思いますが。

でも私の家は父が叱り役でした。
だから父はできれば避けたい存在。

それがそのまま私も成長していき、結婚して父になります。
すると同じ父として自分の父を考えます。

娘ができて苫小牧に遊びに行ったことがあります。
ホテルから苫小牧港が見え、フェリーが出港していきました。

私が小学生のとき、父に連れられ北海道へ遊びに来たとき、船で着いた苫小牧港です。
なんとなく、父に追いついた気になりました。

それでも父と私は仲が良いとはいえませんでした。
仲が悪いというのでもないのですが、あまり立ち入れないという。

それが変わったのは意外にも小さなことでした。
たまに実家で父と話すとき、当時の私はヘビースモーカーでした。
私がタバコに火を点けると、父は必ず灰皿を私の近くに差し出してくれるのです。

「なんか優しいな。」

だんだん、そう感じるようになりました。
昔は厳しくされたので、まだ小さな時にはビンタを喰らい、後ろに吹っ飛んだこともありました。

そんな父って、こうだったか?
その頃から打ち解けた気がします。

些細なことが決定的に人を受け容れる始まりになるのかと思います。
そして、亡くなったから今、書けるようになったことでもあるのかと思います。












【このカテゴリーの最新記事】
posted by CSおじさん at 03:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 随想
この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント: 必須項目

認証コード: 必須項目

※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/9498351

この記事へのトラックバック
検索
■お知らせ■
サブチャンネル:
今日のうたつくりました。

215.gif
最新記事
<< 2024年09月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
カテゴリーアーカイブ
タグクラウド
プロフィール
CSおじさんさんの画像
CSおじさん
コールセンターに勤務することになって13年目になりました。 日頃考えていることを綴ってまいります。
Mail
ファン
写真ギャラリー
最新コメント
トラップ2件(後編) by ワイルド少年おやじ (11/19)
JFK by CCおじさん (03/16)
映画「恋人たちの時刻」 by CCおじさん (01/01)
映画「恋人たちの時刻」 by 京平 (12/31)
162日ぶりの仕事 by CSおじさん (11/04)