コールセンターおじさんのブログ

　確か1996年のことだったと思います。
当時私は北海道のある、田舎町に住んでいました。

田舎町に住んでいると人は少ないし、遊ぶ施設もほとんどありません。
すると決して少なくない人たちは何かの団体に所属するんです。仕事が終わってから、団体で活動することに時間を費やすのです。

もっぱら親睦が目的の団体もあります。しかし目的を持って真剣に論議し、結果、地元経済の発展、イコール自分に返ってくるという、効果の測りづらい活動もありました。いわゆる“町おこし”です。

団体というのは、多くは職業に直結していました。若者なら青年会議所、農協青年部、漁協青年部、商工会青年部、町役場青年婦人部などなど。
その若者たちの団体から、新たに別の団体が発足するということも、あったんです。

　その団体ができたのは1995年。
1995年といえば、インターネットが一般家庭に普及し始めた年だったと思っています。
まだインターネットとは何者か、世間によく理解されていなかった頃、その団体ではいち早く、インターネットを町おこしに活用することを考えていたんです。

Webサーバーを置いて情報発信をしていた組織や、ホームページを運営していた自治体などを視察し、自分たちも活用できないかと模索していました。

それにはまず、PCが必要です。
すでに個人や事業所で持っていた会員もいましたが、その団体でも用意しようとなったんです。
買ったのはMacintoshのパワーブック5300。
40万円くらいでしたか。

でも1995年って、まだPCを使える人は少なかったですよね。
1995年12月、Windows95が出てからようやくPCが一般家庭に普及し始めたと思います。

良いことか悪いことか、私は8ビットPC→MS-DOS→Windows3.1→Windows95まで使っていたので、PCには明るく、パワーブックは私が預かって管理することになったんです。

MacintoshのGUIや再セットアップに慣れるまで少し苦労しましたが、どうにか使うことはできるようになりました。

ただ、そのMacintoshは私の所有といっても良いくらいでした。
するとどうしても、それを面白くなく思う誰かが出てくるんですね。

　ある日、私が車から荷物を下ろすとき、はずみでMacintoshも一緒に落としてしまったんです。
貨物車でした。貨物車の荷台からだと50cmくらいの高さでしょうか。

そのためMacintoshは確かフロッピーが出てこなくなったと思います。それは自費で修理しました。
しかし一部にキズがつき、本体の上部と下部との合わせ目に少しすき間が開いてしまったと思います。
私はその団体の先輩Bに報告しました。

そしたら、呼ばれたんです。
先輩Aの職場で尋問です(笑)。

「いま、そのパワーブックは37万円くらいの中古相場があるけど、落としたんでは37万円では売れないな。」
先輩AとBから私は30分くらい、ネチネチと責められました。
そしてパワーブックを私が買い取ってくれたら、、という話になっていきました。

それってひどいと思いました。
私が買い取って、団体では最新式のPCを別に用意できる。

確かに私の占有状態でしたが、それでも団体としてはインターネットの体験会のようなこともやっていました。
なのに体験会ではMacintoshに触るのが恐ろしいのか、それとも操作できないと恥をかくのがイヤなのか。誰も何もしなかったんです。

さらに私だって責任を感じていたから、自分の所有するWindows95のデスクトップPCを団体の事務所に設置しておきました。ところが誰も使うことはありませんでした。

　私はパワーブックを買ってくれるところを探しました。
まず、パワーブックが人気商品だったこと。そして私は営業であちこち回っていたこと。
そのことから買ってくれるところが見つかったんです。確か40万円。
もちろん、落としたなどの経緯は説明した上でです。

そしてその40万円を先輩Aに渡したとき、先輩Aは無言でした。
きっと言葉もなかったのでしょう。

ざまみろ！

　それ以来、私はその団体にかかわることがなくなりました。
同時にその団体も、インターネットを利用した事業の計画は消滅していったようでした。

まだ当時は出てきたばかりのインターネット。でも自分たちでは何もできない。だから私を頼っておいて、だけど私が団体のPCを独占するのは面白くない。そんなことだったんでしょうか。