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2018年07月31日

退院へ 1


 手術後一週間
 
 その日は 朝一番の入浴時間を割り振られていた


 「もう 入られましたかぁ?」

 看護師さんが 浴室の外から大声で叫ぶ

 すわ 何事???


 「あ、入っちゃってたら 出てからでいいですよ」



 何が何だかわからないので そそくさと
 シャワーを済ませて部屋に戻った




 「O先生からの伝言です。
  今日の回診時 改めて全身状態を見て
  退院日を決めるとのことです」


 もう 退院できるの? という気持ちと

 いやいや 抜糸も終わってない上に
 まだ痛みもあるし無理でしょ という気持ち



  
 O先生が 看護師さんと にこやかにやって来た

 「最近 廊下を歩くスピードも早くなって来たし
  スーフルの音も よく響いているね
  傷も綺麗に回復して来ているので
  これから抜糸しますね」


 有無も言わせず  速攻で抜糸

 「半分だけ 抜糸しましたよ
  残りは明日ね(笑)」


 
 なぜ半分??? 残す意味あるのかな?



 まだまだ痛みが残っているので
 傷口が開くほどは動かしていないけど・・・



 「抜糸が全部終わったら 退院できそうだね
  明後日の日曜日に 退院予定としましょう!」



 唐突に 退院日が決められた


 
 



 







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2018年07月30日

同室の患者さん 2

 
 私の目の前のベッドには 他病棟から来た
 手術後だという 60台半ばほどの女性がいた



 腹部の手術だったらしいが 腹腔鏡だったのか
 とても早い回復だそう(ご自分で言っていた)



 その方が退院するという まさにその朝

 突然 私のベッド脇に来た! 本当に突然!



 「小耳に挟んだんだけど ガンでいらっしゃるみたいね」


 いやぁ〜  ” いらっしゃる”と言われても
 どう 返していいものか・・・

  
 そしておもむろに カタログのようなものを差し出した


 「こちら とてもいい品ばかりなの♪
  あなたのようなかたに 是非お勧めしたくて」

 
 おぉ〜〜〜
 
 突然の呼びかけ いきなりの営業ですか!!!


 その後しばらく サプリメントやら化粧品やらの話



 お元気になって何よりだと思っていたが

 自分が退院すると決まった途端

 同室の患者さん 知り合った多病室の患者さん
 皆さんに 営業かけていた




 バイタリティー溢れて 元気を分けてあげるわ、のノリ

 
 悪気はないであろう と思われるが
 正直 対応に困ってしまった


 私自身は 順調に回復に向かっていたが
 そんな状況でも 本当に困ったので

 同年代だというだけで ベッド脇に張り付かれていた
 患者さん達は大変だったと思う



 患者同士のおしゃべりにしか見えないかもしれないし

 看護師さん達は忙しいので 注意されている事もなかった



 とにかく病院には 色々な患者さん達がいる








        
 


 


 



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2018年07月27日

同室の患者さん 1


 個室から戻った大部屋

 手術前とはメンバーが変わっていた



 入れ替わりがはげしいな
 
 手術になった人 退院した人

 理由は様々だ




 ある日

 隣のベッドに40歳そこそこだろうと思われる
 清楚な美人さんが入院してきた


 乳ガンを 3年前に 手術で切除したという

 術後の定期検診で 肺に転移が見つかったのだと



 
 廊下の休憩スペースで たくさん話をした


 早期の段階で 乳ガンを克服したと思っていたので
 いざ 転移を言われて ピンと来なかったと


 特に 自覚症状もなく 仕事も普通に続けていたし
 咳き込むとか 息苦しいとかもなかったのに・・・と
 首を傾げていた


 私と同じだ  自覚症状がほとんど無かった



 明るく 可愛らしい笑顔で話してくれたが
 お子さんが まだ小学5年生の娘さんだという


 それを聞いただけで 何だか 私の方が胸苦しくなった


 私の子供達は 皆 高校生以上になっていたし
 もし仮に 万が一の事があったとしても 
 乗り越えてくれるだろうと思っていたので
 



 彼女はとても明るかった

 「腫瘍は 胸腔鏡手術で対応できるくらい 小さいものだそうです」

 「よかった!!! それなら 大丈夫! 
  私は大きな開胸手術だったけど 綺麗に取ってもらって
  こんなに元気になったし! 痛いけど(笑)」


 
 2度目の手術

 それも 乳ガンからの肺転移 本当はどれほど不安だったろう・・・

 夕方になると面会に来る ご主人と娘さん

 彼女は 娘さんと冗談を言い合って楽しそうだった




 自分の手術後1ヶ月検診の時

 無事 彼女と再会できた!!!  

 よかったぁ〜〜〜! 心底 ホッとした



 彼女は 本当に綺麗で 背筋がビシッと伸びて 
 キャリアウーマンそのものの 凛とした立ち姿だった


 まだ少し残る痛みを庇って 
 猫背気味だった私は恥ずかしかった
 


 彼女を見習わなくては! と思わず背筋を伸ばした

 
 


 


       


 


 
 



 
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2018年07月26日

手術後の入院生活 9



 傷口は痛い つれる 

 先生が言った通り とても大きい

 
 右胸の下から 脇下を通って 背中まで

 抜糸するまで 糸が模様のようになっていて
 これじゃまるで「遠山の金さん」じゃん!などと思っていた


 ただ 傷を人様に見せる訳ではないし
 まして 下半身はほとんど痛みがない
 

 階下の売店や レントゲン撮影
 スーフルの練習に行くのにも
 日に日に スタスタ歩けるようになっていった


 
 胸にリブバンドを巻く事も 
 徐々に 自力で出来るようになってきた
 
 
 肋骨が2本折れていると言っても
 傷のように痛みはないし 不自由な事も無い 

 
 急な動作や 咳き込む時にだけ注意すれば 
 本当に折れているのかなど 自覚できない程だった

 


 抜糸後 初めてのシャワーを許された時は
 最高だった!!!


 湯船に浸かれなくても 温かいお湯を浴びるだけで
 文字通り 溶けそうに気持ちが良かった!!!


 
 
 動ける事が増えてくると
 入院生活も 前向きになってくる

 
 
 
 何と言っても 主婦にとっての
 上げ膳据え膳は最高だ(笑)


 たとえ 病院食であれ
 作っていただく食事はおいしかった
 

 食器や盛り付けに期待は出来ないが
 薄味でも 十分に美味しい味付けだったり
 食材の使い方の工夫など
 退院後に役立ちそうなこともたくさんあった


 


 不安が完全になくなった訳ではなかったが
 一応 転移が無いとの結果だったので
 
 職場復帰の予定やら これからの計画など
 自分なりに楽しいことばかりを考えるようにしていた

 
 
 子供達にも心配かけることが無くなった
 というのが 自分の中で一番嬉しかった


 
  




 
 








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2018年07月25日

手術後の不安


 手術後は 
 
 日に日に薄れていく痛みと同時に
 

 これで もう本当に大丈夫なんだろうか?と
 喉に何か引っかかったような
 漠然とした不安を抱えていた


 
 
 先生から 
 
 切除した組織の病理検査から 
 肺腺がんに相違なく 
 今の所 他組織への転移は見受けられない

 と告げられた時には 心底ホッとした


 
 
 手術直後 夫に聞いておいた事がある
 
 「取り出した右肺上葉って どんなだった?」

 「うーん うまく言えないけど 原型はわからなかった」

 「そのまま 取ってくれたんだから 袋状じゃないの?」

 「いや、そんなじゃなかったよ がん組織がよく見えるようにって
  少し切り開いてくれてたから」

 「え? わかったの? どんなだった?」

 「本当に そこだけ白くて ゴルフボール位の大きな球形だったよ」

 
 
  PET検査でも 綺麗に丸く光ってたもんなぁ

 

 5.7センチくらいある、と言われてたけど
 
 本当にそんなに育ててしまったんだな・・・



 放っておいたという現実が 
 今更ながら 後悔と 恐れとを運んできた



 そんなに大きな腫瘍になるような
 ある意味 ガン細胞にとっては快適な住処だったのか?

 
 
 もしかしたら もうすでに 身体中に
 がん細胞が行き渡ってしまっているのかもしれない


 
 先生に 転移はないといっていただいたのに
 不安な気持ちの方が 大きくなりそうな自分だった



 








 

 







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2018年07月22日

手術後の入院生活 8


 大部屋に戻ると 術前と同じ部屋だった


 フロアの端から端まで移動した事になる
 
 今度は入口すぐではなく 窓際のベッドに移動できた


 2月とはいえ 晴れている日は 青空が綺麗に見えて
 心持ちが ぐっと春らしくなりうれしかった





 術前と同様に スーフルでの呼吸器訓練を始めたが
 驚くほど 呼吸が浅くなっていた


 歩行を始めてからは 毎朝1階の放射線検査部に
 階段を使って行き来していたが
 自分で思っているよりも 回復度合が低かったらしい


 速さこそゆっくり目ではあったが 息苦しくもなく
 すんなり歩けていると思ったので 
 綺麗なホラ貝の音が出ないのは
 ちょっぴり 情けなかった



 自由に歩行できる頃には 見舞いの友人たちも
 代わる代わる訪ねてきてくれた

 やはり 親しい人たちと 気を遣う事なく
 楽しい時間を過ごすことが 1番の治療だった気がする












 

 



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2018年07月21日

手術後の入院生活 7


 自力歩行ができるようになると
 
 加速度的に 痛みも取れていき

 眠りも深くなり 食欲も湧き

 自分が 肺腺ガンの患者だなんて
 信じられなくなっていった

 
 ICUが空いていないという理由で入った 術後の個室は
 廊下の端であるばかりでなく
 何と 救急外来の真上に位置する

 当然 救急車の出入り等 昼夜を問わず賑やかだ

 

 それでも 
 古いながらも充分な広さ 
 階段への距離の近さ 等々 気に入っていた


 すぐ隣は面談室なので 通常は静かだ


 ただ 時折 午後になると
 面談室から 涙をこらえた 或いは 泣いている
 家族連れらしき人たちが出てくることがある


 トイレに行こうかと部屋を出たタイミング等で
 急に 隣室のドアが開かれる・・・といった感じだ



 見かけたのは 2、3組ほどだったと記憶しているが
 すでに入院加療中の方ばかりだった

 
 点滴スタンドを引きながら マスクをして
 家族と共に 病室へ帰る後ろ姿が 忘れられない


   


 「〇〇さん そろそろ大部屋に戻っていただけませんか?」

 師長さんからの要請があった時
 狭い大部屋・・・と正直ガッカリもしたが

 少なくとも あの光景を見ることはなくなるだろうと
 その日のうちに 移動させてもらった






  

  
   

   


 
 




 

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2018年07月20日

手術後の入院生活 6 

 
 翌日には ドレーンが抜かれた

 「ズボッ!」
 
 まさにそんな音が出た


 体の一部に ポッカリと穴が空いているのでは?
 と 感じられるほど 
 大きなものが抜き取られた感覚だった

 「穴、縫いますね」

 いきなり 病室にて縫合!

 
 硬膜外麻酔時のチューブは 少々ズレていたので
 2日目に尿管と同時に外してもらっていた


 これで 晴れて自由の身に!


 けれども 痛みからはまだ自由になれていない


 
 そうだ!

 肋骨が折れたままだったよ!

 先生から指示された リブバンドやらを買わなくては!

 夫に付き添ってもらい 売店へ!

 
 何物にも繋がれず 自由に歩ける!!!!   

 痛いけど そして ゆっくりだけど



 
 リブバンドは 胸部サポーターのようなものだが
 残念ながら 胸の小さい自分に合うサイズは売り切れ


 早急に取り寄せてもらう事に

 
 リブバンドが来れば 早期に退院も出来る!と
 勝手に張り切っていたので ちょっと拍子抜け


 
 売店までの ちょっとしたお散歩で
 術後初めての 階下までの自力歩行を終えた





  

 


  




 

 


 
 
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2018年07月18日

手術後の入院生活 5


 一人でベッドから降りてみた

 
 立ち上がれば 少しふらつく程度で
 思ったよりも しっかり歩けた



 一度 トイレまでソロソロ歩いて行ったら
 何だか自信がついた!

 
 現金なもので ホッとしたのか
 急にお腹が空いてきた

 
 自分でも 呆れて笑ってしまった


 手術日朝から絶食だったので 
 丸2日半ぶりの食事を摂った!

 おかゆが美味しくて 完食してしまった!!!



 
 痛みは相変わらず続いてはいるものの
 
 姿勢を変えることも 
 ベッドから起き上がり歩くことも
 
 特に 意識を集中しなくても
 自然にできるようになってきた


 ロボットが 段々と人間の動きに似てきた
 ・・・といった感じだろうか?



 我ながら 復活早すぎない?と


 人間の体が素晴らしい作りなだけで
 私自身の力なんて ほんの少しのことだと思うが


 ひとたび 動けるようになると
 加速度的に 体が自由になる感覚がある


 少し違うかもしれないけれど
 
 赤ちゃんが日々成長するのと同じことを
 大人の自覚がある中で 実践している感覚だった
 
 

 体を動かす 
 
 それも基本的な日常動作ということに
 これほど 意識を集中したことは無かったからだろう


 たかだか数回 トイレに自力歩行したくらいだったが
 その夜は 痛みをあまり苦にせず 眠りにつけた




  


  

  








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2018年07月17日

手術後の入院生活 4

 
 術後2日目の朝も まぁ痛い
 
 レントゲンが終わり 外来診察が始まるぞ、という時間帯

 先生が顔を出してくれた

 「午前中に尿管抜くようにしたからね!」
 
 

 は? 今日? もう?

 
 痛みと格闘していて 体を自由に動かせないほどなのに・・・

 トイレにも自力歩行でどうぞ、ということだ



 子供達の出産時も 2人目、3人目と
 離床が早くなって行ったけれど

 今回はお産の痛みと全然違うのに(怒)


 それでも 自分の力で歩けるのはうれしい

  
 看護師さんが尿管を抜いてくれてから

 どうにか 自力で身体を起こす練習を始める



 あれ? 起き上がる時って どうするんだっけ?

 
 右半身はとにかく固まって痛い!!!

 仰向けで 体の前から左手をベッドの右手すりにかけて
 ゆっくり 身体を右下に傾けながら左足を曲げて踏ん張る!
 
 反動とまではいかないが そこから最低限の力を右手にかけて
 手すりにかけた左手を思いっきり体がわに引く!

 鉄棒の逆上がりの要領の動きを 
 寝ながら 左手だけでやるような感じだ

 右半身が痛くてたまらないので 
 両手をついて起き上がったり
 右手一本に体重をかける事など到底できない

 
 少しベッドを起こしてもらっている体勢でも
 ” 起き上がる” という ただそれだけのことが容易ではない


 試行錯誤して 最低限の痛みで起き上がれたのが
 この方法だった


 
 起き上がるだけで こんなに大変で痛いなんて・・・

 いつになったら 普通に動けるようになるんだろう??


 痛さに情けなくなりながらも 頑張ってベッドから降りてみた








  

 



 


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プロフィール
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ニャンまま
2011年12月に肺腺ガンの疑いと宣告される。 翌年2月に右肺上葉を切除。2014年に右腎臓摘出。 その間 何度か部位を変えて転移するも現在に至る。 2019年12月にパーキンソン病の確定診断を受ける。
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