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2024年09月12日

日本語から見た東アジアと欧米諸語の比較10

3.3 日本語の名詞の格

 日本語の名詞句や動詞句は、従属部表示されるとした。つまり、動詞句の場合は、動詞と格の関係が名詞と格助詞によって示されることになる。主語であれば主格、目的語であれば対格や与格がそれに当たる。(金田一 1997)
 主格の「が」は、「誕生日が来る」「犬が吠える」「雷が鳴る」というように、動詞ではなく格助詞「が」のおかげで名詞が主格と見なされる。上述のように、これは、日本語が属性表示言語である一例といえる。こうした言い方は、韓国語やビルマ語に見られるという。
 「が」と同様に主格を表すものとして、係助詞の「は」が知られている。「は」は、一般的にその時その時の話題や主題を表すところに特徴がある。これは読みやすい文章を書く際の目安となる主題(テーマ)と述題(レーマ)の関係を作る効果がある。
 初めて名詞が出てきたときは「が」を使って新情報の内容を提示し、二度目は既知の内容が話題になるという意味で「は」を使う。新情報と旧情報とかテーマとレーマの公式は、「−が−、−は−」という文形を作り、まず新情報を提示して場面を設定してから、題目をあげて話をすると理解されやすい。こうした「が」は時々強く発音される。このような「が」は、総記の「が」と呼ばれる。主題(テーマ)と述題(レーマ)の関係を押さえながら読み書きをすると、要約文を作る際にも役に立つ。
 「を」は対格を表す助詞で、膠着語の朝鮮語にも見られる。中国語は孤立語であり、対格が動詞の後に来るという語順からそれを認識する。但し、現在は、前置詞の「把」が日本語の「を」に相当している。

(14)写字(字を書く)
(15)把字写完了(字を書いてしまう)

 韓国語は을/를が目的格の助詞になり、日本語の「を」に相当する。手段や目的を表す場合、日本語では「に」を使用するが、韓国語では을/를を使用する。

(16)무엇을합니까?(何をしますか。)
(17)쇼핑을갑니다.(ショッピングに行きます。)

 日本語の所有格「の」は、所有の意味の他に主格の「が」とか対格の「を」の代わりにも使われる。

(18)妻の料理(妻がする料理)
(19)マンションの購入(マンションを購入すること)

 日本語では所有格の「の」を使う場合でも、中国語では日本語の「の」に当たる「的」は使わないことがある。(例、我家人/我母亲)

花村嘉英(2018)「日本語から見た東アジアと欧米諸語の比較−言語類型論における普遍性を中心に」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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