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2024年09月12日

日本語から見た東アジアと欧米諸語の比較9

3.2 動詞枠付け言語と主題優勢言語

 移動の動詞に関する手段や様式を動詞だけで表す言語と、動詞と接辞または動詞と不変化詞で表す言語とがある。前者は動詞枠付け言語と呼ばれ、後者は衛星枠付け言語と呼ばれる。
 例えば、日本語は「出る」「上る」が単独で動詞として使用されるため、動詞枠付け言語となり、ドイツ語は“ausgehen”“aufgehen”のようにausやaufといった分離の接辞を伴う分離動詞が使われるため、衛星枠付け言語になる。中国語もまた、「出去」「上出」となり、衛星枠付け言語に入る。
 文における主題が統語的に決まっていて、特に主語を示す必要がない言語を主題優勢言語といい、日本語、中国語、韓国語のような東アジア諸語がこれにあたる。日本語は係助詞「は」が主題であることを示し、中国語は語順によりそれが示される。

(8)船来了。(船は来た。)(は格)(金田一 1997)
(9)来船了。(船が来た。)(が格)

 中国語では特に存在や出現を表す場合に、動詞+主語という語順になる。つまり、日本語や韓国語と同様に、中国語にも「は」(テーマ:主題)と「が」(レーマ:述題)の区別がある。

(10)立春(春が来た)。
(11)下雨(雨が降る)。

 韓国語では初めて話題になる名詞の場合に助詞の이/가を付け、すでに話題になっている名詞には助詞の은/는を付けて主語を表す。日本語では「これは何ですか。」が韓国語では「これがなんですか。」になり、答えはともに「これは〜です。」になる。

(12)이것이뭔엇입니까?(これは何ですか。)
(13)그것은콩극스입니다.(それはコングクスです。)

 なお、主題を表す助詞と述題を表す助詞を区別する言語は世界的に少ないようで、他にはビルマ語があげられる。

花村嘉英(2018)「日本語から見た東アジアと欧米諸語の比較−言語類型論における普遍性を中心に」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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