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2024年05月16日

アンドレ・ジイドの「田園交響楽」で執筆脳を考える1

1 はじめに

 パリ大学法学部教授の父とノルマンディー地方出身の信仰一途の母との間にうまれたアンドレ・ジイド(1869−1951)は、10歳で父を亡くしたことからプロテスタントの母の下で清教徒教育を受け道徳的で宗教的な作家になっていく。
 1887年アルザス学院の修辞学級に入学する。そこで散文作品を計画し青春の思いを表現しようとした。詩法も小説の作法も心得ていないジイドは、鏡に向かうように内心の日記を綴ろうとした。後に象徴派の詩人マラルメの文学サロン火曜会の門下生になる。しかし、象徴主義に接近するも同時に脱出も模索していた。旅立ちである。
 1893年10月旧友ポール・ロランスとともにアルジェリアに向かった。世紀末で草臥れたパリとは異なる生命の息吹がジイドの興奮させた。ジイドは、アフリカで全ての道徳が暫定的ということを学んだ。異教徒の世界に飛び込めば、既存の秩序は、自己の防衛手段にすぎない。また、母の死後は従姉のマドレーヌと結婚する。
 「田園交響楽」を執筆していたころは、世の中が末期症状にあり、道徳による拘束が重要ではなく、それを突破することの方が文学の福音となった。プロテスタントからカトリックへの改心を迫られる。しかし、何かが引き留める。カトリックの掟に馴染めない。
 牧師とその息子との対立のドラマに妻との不仲がモチーフである。不仲の理由は、ジイドとマルク・アレグレの同性愛である。
 「贋金つかい」は、ジイドの精巧極まるメカニズムがもたらした小説であり、現代小説、とりわけヌーヴォーロマンにまで影響を及ぼしている。あらゆる価値とモラルを相殺するための複雑なメカニズムである。
 晩年のジイドは、世界中にファシズムが吹き荒れる中で左翼に接近した。無力なブルジョワ社会への反駁である。その後、現代の良心と呼ばれるサルトルも共産主義に接近する。しかし、ソビエトのプロレタリアは、ジイドの理想とはかけ離れたいた。第二次世界大戦では、北アフリカに移動し、1945年の解放とともにパリに戻った。1947年、オックスフォード大学から名誉博士号が送られ、ジイドの人生のまとめとなる。

花村嘉英(2024)「アンドレ・ジイドの『田園交響楽』で執筆脳を考える」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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