「最近ねー、キンキンいなくなっちゃった。。。ね、先生、キンキンどっか行っちゃったのかな」ベルモは園児をヒヨコ組に誘導すると、職員室に出席簿の忘れ物をした事を思い出して、ちょっと待っててね、と、クラスから出て職員室へ。。と駆け出すと
ヒヨコ組の園児のリーダーのぴいなにこそっと作務衣を引っ張られた。
こそっと、というのはぴいなの言っているキンキンという話題。。。キンキンというのは、パッキンキンキンのハリネズミの幽霊の五朗太さんの話しであって。。ぴいなはベルモ同様幽霊が見えるので。。ベルモはぴいなに、あのお兄ちゃんは幼稚園のみんなには見えてないから、先生とぴいちゃんだけの内緒話ね、じゃないと、あのお兄ちゃんは天国に行けなくなるから。ね、」と、ベルモはぴいなに言い聞かせて。
ぴいなは幼稚園に入る前から事前相談で、檀家さんの母親のブルドッグのマゼンダさんが泣きながらこの子。。。も、もしかしてもしかしてちょっと発達に障害があるんじゃないでしょうかやっと、やっとできた女の子なのに、女の子なのにと、木蓮寺に泣きながら駆け込んできたんだった。マルチーズとブルドッグのハーフのぴいなは、マゼンダさんが4人の男の子を産んだ後やっとできた諦めていた初の女の子で。お兄ちゃんたちよりブルドッグ寄りだったからよけいにマゼンタさんにとって可愛いし女の子が欲しくて欲しくて、あまりに男の子しか生まれないので心療内科に通院したらしい。そこまでしてやっとできた可愛くて仕方がないぴいなが。。。もしかして、精神疾患かもしれないと、ぴいなが赤ちゃんの時に手がつけられないほどに号泣して木蓮寺に駆け込んできました。何にもないところで一人で話しかけていたり手を振ったり。。。
あの頃は、まだ2歳でお坊さんになりたての、幼稚園の仕事もはじめたばかりの新米ベルモは、境内を掃除していましたが、慌ててマゼンタさんをなだめている木蓮和尚夫妻の話し声を聞いて、掃除を中断して、
一目、マゼンタさんの抱き抱えている赤ちゃんを見ると「うわぁカッわいい。それに、この子、霊感がなかなかあるでしょ。私みたいに、幽霊見えてるもん。お母さんは、ないのかな、でも、お母さんが霊感がなくっても、この子は幽霊が見えたりしてるんです。なかなかちょっと不思議すぎたり違和感を感じて理解できない次元の事かもしれませんが、世の中にはそういう事もあるんだって思ってください。」と、言うことで。。。母親のマゼンタさんは、納得したようなしてないような、わかったようなわからないような、だったんだけど。。。とにかくぴいなが精神疾患ではない事に救われて安心したようで。ぴいなは入園前から、マゼンタさんに連れられて霊感のあるベルモに相談しがてらちょくちょく木蓮寺を訪れていたので、まだまだ小さいけど、なんとなく幽霊の事はあまり他の人には言ってはいけない事なんだという事や、幽霊は生きている人ではなく視えない人がたくさんいるというのをなんとなーくだけど、そういうもんなんだと、自分が独特の能力があるんだと、ぴいなは小さいのではっきりではないけどちょっと普通ではない能力があるという事をベルモから教えられぼんやりと認識しているようでした。
そんなこんなで赤ちゃんの頃からベルモになついてよく知っているぴいなはいつのまにか、どんどん優しくて面倒見がいいベルモに憧れて念願の木蓮寺に入園したのはいいけれどもそれで、ぴいながいつしか、尊敬して心酔するベルモ大先生みたいにお坊さんになりたいと言い出して母親のマゼンタさんは別にお坊さんに偏見は全くないものの望みに望んだ待望のやっと産まれた女の子お姫様のように思ってるし、やっと念願の女の子が授かったからには、アイドルや女優やはたまた玉の輿に乗る花嫁さんかそんな、華のあるキラキラした将来の夢を持って欲しいのにと、泣いて木蓮寺に駆け込んできますそりゃまぁ。赤ちゃんの頃からぴいなにピンクやふわふわの服を着せていたマゼンタさんが、ぴいながお坊さんになりたいなんて言ったら卒倒するわなぁなんて、ベルモも思うんだけど。
プルメリア島の北側にある木蓮寺に付属する木蓮寺幼稚園。島内から、それから幼稚園の水上バスでたくさんの園児たちが通ってくる。木蓮寺のお寺の娘のベルモも、この木蓮寺幼稚園の先生の1人として木蓮寺の僧侶と二足の草鞋でがんばっているのだけど。。。もともとは、ストレートにお坊さんになりたかったんだけど
この木蓮寺の木蓮和尚夫妻の養女になり
女の子として育ててもらった宇宙人で。僧侶というお仕事は立派だけどー親は今どきの女の子としてのびのび幸せに育てて、お嫁に出したかったので、僧侶になるのは大反対されたおまけに、馬鹿正直に、木蓮和尚夫妻に結婚はしたくないから一生結婚はしないと言って、うちは家庭円満子孫繁栄を願うお寺で別に結婚を禁じてるわけじゃないなんて、女の子としての幸せを考えろなんて特に、ぴいなの母親のマゼンタさんのように、夢見る少女願望がある母親の紫子夫人に大泣きされたっけ。。。で、まぁ、木蓮寺のやっている木蓮寺幼稚園の先生になる事も落としどころの条件として受け入れてなんとか、両親が理解してくれたんだけど。
うちの木蓮寺の
紫子夫人。、。
母親って言っても実際には、70歳だから、まぁ。。。おばあちゃんなんだけど。
ぴいなに吾朗太さんの事を聞かれてドキッとするなんせもう、時間がない。明日の正午までに、本堂のご本尊様に。。純ちゃんのお父さんはどちらかか、
俊さんが吾朗太さんか。。。いや、ご本尊様に報告する以前に、それどころか、本物の父親であると思われる方にアポを取らないといけないのだ。アポを取るどころか、純ちゃんに嫌がらせをすれば純ちゃんが助かるというのだ。
なんとも奇妙な話しだけど、何もしないままでは、このまま純ちゃんは。。。
だから、早め早めに決断し行動しないといけないのだ明日は、ベルモには珍しく有給休暇を取り
世の中には、なんとも奇妙に人の為に動き人の運を左右したり、運を掴みに行くというそんな奇妙な事も起こったり知らず知らずに人の運命や人生を転換させたりする事がある。選択の自由、選択の違いで天国と地獄、明暗を分ける事があり。。。なんて、チラッとベルモは考えながら。。。
「きっと、そのうち、キンキンもお出かけ旅行から帰ってくるんじゃないかな。多分、お土産持ってさ。。」ベルモはぴいなにそうごまかした。
吾朗太さんはぴいなに見つかって絡まれるのがめんどくさいって言えないし毎晩、こっそり観光客や幼稚園の生徒が帰ってきたら木蓮寺で寝泊まりしてぴいなを避けてるなんて可哀想だし言えない。。吾朗太さんもちょっとだけぐらいぴいちゃんに顔を出して相手にしてあげてもいいのに。
なんて、思うんだけど。吾朗太さんも吾朗太さんで、未来前途洋々とした若い希望に満ちたこれからの幸せと期待を背負ったイキイキした子どもを見るのはツラいだろう。魂は死なないしまたいつの日か生まれ変わるけれど
それでも、吾朗太という肉体を持って生まれてきた貴重な現世というのはもう幾ら吾朗太さんが自分を愛して自分を大切にできる生きる意欲まんまんな生命力輝く幸せな人生だったとしても、魂は生まれ変わっても、今世は一度きりであり、今世の自分は一人きりであり。
吾朗太さんにはもうそれは二度と取り戻せないのだから。
「あっ、」ぴいなが空を見上げて指を指す。「ぴ、ぴいちゃんも、見えるんだ」ベルモがぴいなが指を指す空を見上げると、
相変わらずおおらかで
のほほんとのんきな顔をしてご本尊様がフワフワとお帰りになって。。本堂へ入っていく。
もちろん、ご本尊様の御本体は、本堂にいつも静かな佇まいで何事も動じる事なく鎮座しているのだけれど。。分身というか、意識を飛ばして外を漫遊。心はフワフワと好き勝手に出かけたり遊び回る事があり、そんな御本体様の分身がフワフワ飛んで帰ってくるのを見た。それは、だいたいの人々には見えないが、ハッピーなオーラをそこはかとなく周りに思う存分楽しんで振り撒きながら。。
お出かけ、なんかあったのか、というか、なんかあるだろう、早めにご本尊様には純ちゃんの父親はどちらか、俊さんなのか、吾朗太さんなのかを究極の選択の極み。自分の出した答えを報告しなければならない。
フワフワ飛んで帰ってきた
ご本尊様が、見上げているベルモに向かってニヤッと微笑んだ気がしました。
2022年12月07日
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