2021年02月12日
教養としてのアート 投資としてのアート
★日本人は世界一のアート好き
日本人は頻繁に美術館へ行き、アート鑑賞を楽しんでいます。メジャーな美術展では入場制限がかかることもあり、まるで人気アトラクションの順番待ちと同じように並んでまで観るほどアート鑑賞が大好きな国民です。アートは気持ちを豊かにしてくれるため、美術館へ行く人が多いのかもしれません。
しかし一般的にはまだ広く認知されていない面があります。それは、アートが「文化的な価値」だけでなく、金融資産や不動産と同じように「資産的な価値」をもつということです。もちろん美術の教科書に載っているような巨匠たちについては、その価値が認められていますが、現代アートについてはほとんど知られていません。
日本において、現代アートが資産になるという一般論が普及していないのはなぜでしょうか。 一方、海外では現代アートのもつ資産的意味合いが広く伝わっており、若い世代でも積極的にアートを購入しています。評価の定まっている作品以外にも、今後の成長が期待できる作家の作品を購入し、評価が上がるまで長期的に所有することも一般的に行われています。
★日本でアートマーケットが衰退した理由
インテリア・アートはその作品を購入した後にその価値が担保されていないということです。 アートを資産ではなくあくまでインテリアとして買っているので、再販する時にセカンダリー・マーケットが存在していません。したがって、購入と同時に資産的な価値が崩壊し、今後も価値が上がることが期待できないということになってしまうのです。
株式、債券、不動産、貴金属といった投資ポートフォリオの中の一部にアートを入れる投資家が増えています。それは、アートが景気の好不況に影響を受けるものの、株価と比べると安定して上昇する傾向にあり、投資対効果が高いからです。
★アートを買うにあたって
アートを購入するにあたっては感性重視でいくと失敗するということです。 アーティスト自身は感性で作品を制作しますが、売る時にはその作品の世界観を説明するロジックが必要となります。つまり、販売するギャラリーは右脳で作品を感じながら、左脳で作品のもつ素晴らしさを論理的に説明しないと価値づけをすることができないのです。
作家について調べずに直観で買ってはいけません。 これまでその作家がどんな作品をつくってきたかを調べてから買うべきであり、画廊で作品を観てひとめぼれで買うのもそれ自体に問題があるわけではないのですが、少なくとも展覧会に行く前に予習をしてその作家がどんな人物か、過去にどんな作品をつくってきたかくらいはチェックしておいたほうがよいでしょう。
それは作家が制作を途中でやめてしまう可能性があるからです。まだ成功する前に作家活動をやめてしまうと、そこで価値が白紙に戻ってしまいますので、上がる可能性がない作品を買うことは避けるべきなのです。
なんとなく好きというのは、自分自身の過去の体験につながっていることが多いのです。 もちろんそういう作品を買うのもよいのですが、将来的に価値が上がる作品となると別問題です。 価値が上がる作品は現在の社会を表現しているかどうかにかかっています。 つまり、高く評価されるアート作品は美術史の中にあり、その作品はその時代性を反映した作品なのです。 時代を代弁する作品でなければ決して評価に値することはありません。 時代を代弁するとは、その時代に生まれた作家がその時代でしか表現することができない作品です。
★成功するアーティスト
重要なのは作品だけで判断するのではなく、その作家の人となりを知る事です。その中で、将来的に成功するアーティストかどうかを見極めていくことです。成功するアーティストには3つの強みがある。
@アンテナを張っている
Aコミュニケーション力がある
B諦めない忍耐力がある
アートの作品を制作するのみで対外的なコミュニケーションを避けてても世間が認めてくれる時代は終わりました。現在のアートの世界では通用しなくなったのです。
コレクター同士の交流の場として、「ワンピース倶楽部」という年に1点以上アートを購入するアートコレクターの団体があります。
★10万円以内で買えるおすすめアーティスト
深澤雄太、小池正典、上床加奈、橋本仁、足立篤史、渡辺おさむ、坪山斉、佐々木敬介、杉田陽平、石川美奈子、徳永博子、ホリグチシンゴ、市川詩織、新藤杏子、姉咲たくみ、榎本マリコ
【感想】
海外ではアートが投資目的で多く購入されていること、日本人はバブル崩壊後、アートを資産としてではなくインテリアとして購入するようになってしまったからセカンダリーマーケットが存在しない→資産としてアートを捉えるという価値観が薄れていったことなどは初めて知って結構驚いた。日本人は美術館に足を運ぶのが多いし、この価値観の部分が変わっていけば海外と同じように投資目的でアートを購入する人が増え、もっと優秀なアーティストが育つ土壌もできる。日本のアート界の課題が非常に分かりやすく書かれている1冊。
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