2014年03月12日
諸星大二郎作品に魅せられて
諸星大二郎さんという漫画家がいる。もう30年以上も前のことだが、当時月刊誌の少年ジャンプに掲載していた作品に魅せられて虜になった。絵はともかく、あらすじと話の内容が難しく半分も理解できなかったが、何とか理解しようと何度も読み直した記憶がある。3年ほど前に、偶然当時少年ジャンプに連載していた「暗黒神話」の単行本を手にした。難しく感じていた内容は、30年の歳月が積み重ねた知識が通訳者となり、砂が水を吸い込むように読み込むことができた。
作品の奥の深さから、その1冊だけはなく覚えている全ての本を読みたくなり、それから3年をかけてリアル書店やネットショップなどから購入した作品は、30冊近くとなった。初期の「孔子暗黒伝」や「暗黒神話」「妖怪ハンター」から「諸怪志異」「西遊妖猿伝」「栞と紙魚子」「海神記」の各シリーズ。このほか「夢の木の下で」「無面目」「碁娘伝」「彼方より」「グリムのような物語」というシリーズ以外の諸星ワールドを構成する作品も読む機会が増えた。
それらを読み終えていく内に、諸星大二郎さんが考古学や民俗学、哲学、市井の神社・仏閣は有に及ばず中国史、中国文学、仏教、キリスト教、イスラム教、ゾロアスター教、道教という宗教にも深い造詣を持ち、一般古書に関する知識でも並ぶべき作者はいないことが分かった。
特に民俗学の部分では、知識の深さから多くの小説家にも影響を及ぼしていると聞く。作品の中で妖怪ハンター・ヒルコは、「黒い探求者」を原作に沢田研二が稗田礼次郎を演じて映画化され、同じ妖怪ハンターの「生命の木」は阿部寛が主役の「奇談」として上映された。また、少女雑誌に連載された「栞と紙魚子」はテレビドラマとなった「ビブリオ書店」の作者に影響を与えた。ちなみに妖怪ハンターの主役・稗田礼次郎とは、古事記の誦習者・稗田阿礼をもじってつけたもの。また、「栞と紙魚子」は米国の怪奇小説家・HPラブクラフトの描くクトゥル神話をパロディ化したもので、オカルトの分野でも深く入り込んでいる。
上手・下手では評価のできない独特なタッチの絵は、漫画の神様・手塚治虫氏をして「どのような絵でも真似はできるが、諸星の絵だけは真似ができない」と言わしめた。
ブログを始めて、一度は諸星大二郎作品を取り上げたいと考えていた。もし興味があるのなら入門書として妖怪ハンターシリーズの「地」「天」「水」から読むことをお勧めする。読み重ねるうちに、漫画という枠を越えた壮大で緻密な内容から、好奇心の高まりを実感できると思う。
写真は所有している諸星大二郎作品の一部。「妖怪ハンター」シリーズから読まれることをお勧めする
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