未来志向の両国関係に弾みを 政府は、日韓併合100年の「首相談話」を閣議決定した。
談話は「植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛」に対し「痛切な反省と心からのお詫(わ)びの気持ち」を表明した。戦後50年に当たる1995年に発表された村山首相談話の内容を踏襲したものだ。
三・一独立運動にも言及し、韓国の人々は「その意に反して行われた植民地支配」により「民族の誇りを深く傷付けられ」たと、踏み込んだ表現も盛り込まれた。
補償問題には一切触れられておらず、この問題を決着済みとする従来の政府の立場に変更はない。当然のことだ。
その上で、未来志向の日韓関係の構築を強調するなど、妥当な内容と言えよう。
菅首相から電話で談話の説明を受けた李明博大統領は、「より強い協力関係を築くことが出来る」と歓迎の意向を示したという。
1965年の日韓基本条約締結の際、日韓両政府は共に請求権を放棄し、日本が韓国に有償・無償5億ドルの経済支援を行う旨を定めた協定を結んだ。
仙谷官房長官は記者会見で、首相談話について「個人補償、請求権については決着済みという前提に立って作成した」と述べた。
だが、先月には補償に関して、「政治的な方針を作り、判断しなければならない」などと含みのある発言をしていた。
これに対し、両国間で解決済みの補償にかかわる談話を出すのは問題だとして、与野党内から強い反発や不満が出ていた。仙谷長官は、内外に誤解を招くような不用意な発言は慎むべきだった。
今回の首相談話により、韓国国内で元「従軍慰安婦」などに対する補償を要求する声が再燃する可能性もある。
しかし、新たな請求権は認めないとする日本政府の立場は堅持すべきだ。韓国側には冷静な対応を求めたい。
植民地時代に日本に渡り、日本政府が保管する朝鮮王朝ゆかりの「朝鮮王朝儀軌」などの図書を韓国に引き渡すことも決まった。
植民地時代に朝鮮から日本に渡った文化財は、確認されただけでも約6万点に上る。
日本側に引き渡す義務はないが、韓国側から要望のあった文化財を譲渡することで、和解を進める狙いがあると見られる。
首相談話を契機にして、経済、文化、人的交流などを含め、今後の日韓関係に弾みをつけることが肝要だ。
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