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2019年03月02日

放射線生物学

 放射線による健康被害ということが問題視されているが,生物学的にみると放射線(光子や素粒子)のエネルギーが生物の持つ組織に移ることで影響が発生するといった現象が現れる.エネルギーが身体に吸収されると様々な化学結合が阻害され組織に傷害が及ぶ可能性が考えられる.放射線の種類によって組織傷害程度も様々である.また,細胞分裂の活発な組織は一般的に放射線傷害を受けやすいと言われている.例外的に成熟したリンパ球も放射線感受性が高い.放射線には次のようなものがある.

    アルファ粒子


    ベータ粒子


    ガンマ線


    エックス線


電離放射線にはアルファ粒子,ベータ粒子,ガンマ線,エックス線,陽子,中性子などが含まれる.
質因子(quality factor)はアルファ粒子が20,陽子,中性子が10,ベータ粒子,ガンマ線,エックス線が01である.

 真核生物の細胞は細胞質などからできており,そのうち多細胞生物は核に含まれるDNAを複製して体細胞分裂を起こして身体を巨大化したり機能的にしたりしている.放射線はDNA損傷を引き起こし生物に影響を与える.特に,体細胞分裂の際に染色体(chromosome)は特に放射線感受性(放射線の影響の受けやすさ)が高い.

 放射線によるDNA損傷には直接作用間接作用がある.直接作用は放射線の粒子が直接DNA鎖に衝突してDNA鎖を切断するというものでアルファ粒子,高速の電子,光子と電子の相互作用によるものが一般的である.間接作用は放射線が水分子に作用してフリーラジカルを発生させて,そのフリーラジカルによりDNA鎖が損傷するというものである.

 放射線の強さを表す単位に線エネルギー付与(LET; linear energy transfer)という単位がある.低線エネルギー付与では一般的に間接作用により一本鎖DNA切断が起こる.高線エネルギー付与では一般的に直接作用により二本鎖DNA切断(複数鎖DNA切断)が起こる.





 



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posted by Alice at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | DNA修復
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