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2019年01月28日

常染色体優性遺伝(常染色体顕性遺伝)

 ヒトは母と父それぞれ片方ずつからに存在する相同染色体を引き継いでいるため二倍体である.相同染色体の同じ遺伝子座に位置する対立遺伝子が同じであればホモ接合体と呼ばれ,異なればヘテロ接合体と呼ばれる.これらは身体の設計図である遺伝子型(genotype; ジェノタイプ)を表している.実際に遺伝子が働いて身体の機能を果たしている状態を表現型(phenotype; フェノタイプ)と表している.一般的に遺伝子型が表現型を規定していると考えると分かりやすいが,遺伝子型になんらかの変異があったとしても表現型に明らかな異常がない場合もある.また,その逆も真である場合がある.

 母父由来の対立遺伝子がどの程度の割合で遺伝子発現しているかということは正確に把握することは未だ難しいと考えられるが,常染色体優性遺伝の場合はヘテロ接合体であれば表現型として現れてくる.常染色体優性遺伝のホモ接合体もあり得るが頻度は確率的にずっと低くなる.

 常染色体優性遺伝として知られているものに家族性高コレステロール血症多発性のう胞腎がある.家族性高コレステロール血症の頻度は日本人で200-500人に1人程度と比較的多く見られる疾患である.悪玉コレステロールと呼ばれてきたLDLコレステロール値が高くなるため,現代においては動脈硬化による疾患にかかりやすくなる.他にもマルファン症候群や神経線維腫症1型もこれらの遺伝形式を呈する.

 疾患関連性とは言えるないかもしれないが,身近な現象としてはヒトの耳垢も常染色体優性遺伝の形式をとっている.2002年に新川詔夫らのグループによりある対立遺伝子(ABCC11)の染色体上位置が報告され,その後に塩基配列の違い(SNP; スニップ)により耳垢の性状が異なることが報告された.耳垢には大きく分けて湿型と乾型が存在しており,対立遺伝子が湿型と乾型のヘテロ接合体の場合は表現型は湿型に,対立遺伝子が乾型と乾型のホモ接合体の場合は表現型は乾型になるという常染色体優性遺伝の形質を示している.















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2019年01月27日

ヒトゲノム基準配列

 ある生物の固有の遺伝情報全体をゲノム呼ぶが,2019年現在ではゲノムといえば核酸配列を指している.
2003年にヒトゲノム計画が完了した.計画を推進したのが国際ヒトゲノムシーケンス決定コンソーシアムであり,アメリカ合衆国,中華人民共和国,日本,ドイツ,イギリス,フランスにある研究機関が中心となって組織されていた.同時期に米国セレラ社によるヒトゲノム配列決定も行われていた.

 現在もヒトゲノム基準配列コンソーシアム(Genome Reference Consortium) によってヒトゲノムの改定が行われている.これまで数年毎の大改訂(major release)とその間の小改訂(minor release)を繰り返している.ヒトゲノム配列はその都度公開されている.例えば,2013年の大改訂でGRCh38が公開された.2017年12月に小改訂でGRCh38.p12が公開された.2018年12月現在ではGRCh39の策定が検討されている.

 ヒトゲノムはFASTAという書式で文字列として一般に公開されており,原則的に誰でも利用可能である.いくつかの研究機関は研究開発目的でのこの配列情報利用を推奨している.ヒトゲノム塩基配列は染色体ごとに分けて記載されている.GRCh38公開時点ではヒトゲノムDNAは核酸塩基が一対一で相補的塩基対を形成していると考えられているため,ヒトゲノムFASTAファイルには片側だけの塩基配列が記載されている.記載されている方のDNA鎖をプラス鎖(plus strand; + strand)と呼ぶ.記載されていないマイナス鎖は,プラス鎖に対する逆相補的配列(reverse complement)であり,コンピュータープログラムやソフトウェアによって求めることができる.










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2019年01月26日

メンデルの法則

1865年にグレゴール・メンデルが 発表したメンデルの3法則は以下の通り

    分離の法則

    優性の法則

    独立の法則


 メンデルは実験ではエンドウマメの交配により次世代にある法則を持って各種の特徴である形質が伝わっていく様が明らかとなった.エンドウマメの実の色が緑や黄色といった個性的な形質を持つがこれらを対立形質(Allelomorphic character)と呼ぶ.対立形質の例としては様々なものが考えられる.例えば,マメの皮が平滑かシワかといったものや,身長が高いか低いかというのもそれに当たる.最も,二つないし三つなどに明確に対立形質が区別されている保証はない.

分離の法則

 メンデルの法則の中で最も原則的なものである.メンデルが交配させたエンドウマメの第2世代の子孫で比較的現れにくい形質を合わせ持つ個体が認められた.これは親世代が持つ2つの対立形質はごちゃ混ぜにならずキレイに別々の配偶子に分配されて子孫に伝わるということを表している.これは後世で現れる対立遺伝子を用いても説明される内容である.

優性の法則

 優劣の法則とも呼ばれてきた.2対もしくはそれ以上の対立形質(対立遺伝子)がある場合に,表面に現れやすい形質があることが気づかれた.例えば,エンドウマメであれば,色における対立形質である緑と黄のうち緑になりやすいことが観察された.このため緑を優性(顕性),黄を劣性(潜性)とした場合に,優性の形質の方が劣性よりも表面に現れやすいという法則が気がつかれた.

独立の法則

 2対もしくはそれ以上の対立形質(対立遺伝子)がある場合に,それらは互いに依存せずに別々に伝わるという法則である.例えば,エンドウマメであれば,色における対立形質である緑と黄色,皮の性状における対立形質である平滑とシワは,互いに独立して子孫に伝わるということを表している.色が緑で皮の性状が平滑という形質がセットになって(依存して)伝わるということはないということである.




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2019年01月25日

生殖細胞と減数分裂

 生殖細胞に認められる減数分裂(meiosis)は二倍体(2n)の細胞から半数体(n)の細胞を生み出す過程と考えられる.すなわち,卵原細胞(卵祖細胞)またはB型精原細胞(精祖細胞)が減数分裂を経て配偶子(卵または精子)を得る過程である.この過程は第1減数分裂と第2減数分裂という2つの連続した分裂から起こる.第1減数分裂に先立ってDNA量はDNA複製により倍増されて4nとなる.第1減数分裂を経て2つの各々の細胞のDNA量は2nとなる.続いて第2減数分裂ではDNA複製が起こらずに,細胞分裂による染色体の分配が起こる.その結果,4つの各々の細胞(配偶子)のDNA量はnとなる.第2減数分裂の前にDNA複製が起こらない点が体細胞分裂と異なる.

 減数分裂が体細胞分裂(mitosis)ともう一つ異なる点は,第1減数分裂の過程で交叉(cross over)という現象が認められることである.交叉の過程で母父由来の相同染色体どうしの間で相同なクロマチドの交換が起こる.交叉に先立って正確にクロマチドを交換するために相同染色体どうしが同じ遺伝子座座位を隣合わせるという対合(synapsis; pairing)という現象が認められる.この整然とした対合の過程ではコヒーシンというタンパク質が重要な働きを担っている.



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2019年01月24日

染色体の構造

 染色体は2つのクロマチドセントロメアで結合した構造をしている.クロマチドの端はテロメアと呼ばれる.セントロメアは染色体によって位置が異なっている.セントロメアから伸びる上下のクロマチドを染色体の腕に見立てて,短い方を短腕(p),長い方を長腕(q)と呼ぶ.染色体はギムザ染色することでGバンドが現れるが,このバンドごとに番号付がされており,セントロメアから数えてテロメアに向かって番号が上がっていくようになっている.

 2003年にヒトゲノム計画が完了してヒトの遺伝情報の全容が明らかとなってきたものの,セントロメアやテロメア領域のゲノム情報についてはいまだに解明されていない部分がある.その理由の一つとして,これらの領域には冗長な繰り返し配列(tandem repeat)が認められ正確な塩基配列の同定が困難であるためと考えられている.

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2019年01月23日

体細胞分裂

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2019年01月22日

細胞周期

 光学顕微鏡で体細胞を観察すると様々な細胞が見えてくるが,端的に分類すると分裂しているかしていないかで分けられる.細胞のライフステージをこのように間期(interphase)と分裂期(M期)とに分けてとらえると周期的に細胞の状態が遷延していくことが見て取れる.細胞周期の間に細胞に含まれるDNAの量はダイナミックに変化していく.ヒトの場合は細胞周期の長さが分化した細胞ごとに異なっている.例えば,消化管は比較的に細胞周期の時間が短く,活発に細胞分裂しているが,神経は比較的に細胞周期の時間が長く,細胞分裂はあまり起こっていないと考えられてきた.ヒトの体細胞分裂によって2つの娘細胞(分裂後の2細胞)が出来ていく過程を見ていくこととする.

 間期はさらに時系列順にG1期, S期, G2期に分けられる.S期では分裂に先立って遺伝情報が含まれているDNAが複製される.この時にDNA量が2nから4nに倍増する.元のDNA量がnではなくて2nであるのは,ヒトは二倍体の生物であるからである.その後G2期に入って分裂準備に入る.細胞分裂に必要なタンパク質が合成される.

 分裂期はさらに時系列順に前期(prophase),前中期(prometaphase),中期(metaphase),後期(anaphase),終期(telophase)に分けられる.前期では核内で活発に転写などを受けていたクロマチンが転写を止めて凝集し始める.X字状の形態を呈するクロモゾームを形成する.クロモゾームのX字の交差している部分をセントロメアと呼ぶ.左右の糸状の凝集したクロマチンを特にクロマチド呼ぶ.クロモゾームは2つのクロマチドが各々中央の部分(セントロメア)でつながった構造である.セントロメアでつながったクロマチドはそれぞれ同じDNAを持っている.尚,ヒトの細胞は母父由来の相同染色体があるため同じ大きさのクロマチドがそれぞれ4つずつ観察されることとなる.

 細胞分裂によって2つの娘細胞が現れるが,各々に含まれるDNA量は2nである.

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2019年01月21日

染色体と遺伝子

 ヒトの体細胞は母由来の常染色体22本とX染色体1本,父由来の常染色体22本と性染色体いずれか1本の計46本を有している二倍体である.常染色体はヒトゲノムの情報をこれら染色体ごとに分散させて有している.染色体を染色して観察すると濃く染まる部分と薄く染まる部分が縞々に描出される.ギムザ染色で観察したこの縞をGバンドと呼ぶ.
 Gバンドが濃く染まる部分はクロマチンが(DNAとヒストンなどのタンパク質との複合体)密に畳まれている部分で,ヘテロクロマチン(heterochromatin)と呼ばれる.condensed chromatinなど同様の意味で用いられることがある.比較的にAとTが多く含まれる.
 逆に,Gバンドが薄く染まる部分はクロマチンが粗に畳まれている部分で,ユークロマチン(euchromatin)と呼ばれる.open chromatinなど同様の意味で用いられることがある.比較的にGとCが多く含まれる.細胞核内にあるクロマチンの90%以上がユークロマチンである.

 ユークロマチンには遺伝子と呼ばれるDNAの領域が多数存在する.遺伝子は転写という反応により別の核酸であるRNAという転写物として活性を発現する.ユークロマチンでは盛んに転写が起こっていると考えられている.逆にヘテロクロマチンでは転写はあまり起こらないと考えられている.ヘテロクロマチンは核内の特に核膜直下に存在していることが多く,核膜タンパク質であるラミナと複合体を形成していると考えられている.

 同じ種類の染色体(相同染色体)は大まかに言って,対(ペア)となっている染色体と同じような構造をしていると考えられている.そのため一方の染色体にある遺伝子がある領域(遺伝子座)は,もう片方にもみられる.同じ遺伝子座(locus)にある遺伝子のことを対立遺伝子(あれれではなくてアリル; allele)と呼ぶ.母親由来の対立遺伝子と父由来の対立遺伝子が同じ場合をホモ接合体と呼び,母親由来の対立遺伝子と父由来の対立遺伝子が異なる場合をヘテロ接合体と呼ぶ.
 例えば,ABO血液型の場合,AA型, BB型, OO型をホモ接合体と呼ぶ.AB型, AO型, BO型をヘテロ接合体と呼ぶ.稀にみられるシスAB型という血液型では片方の遺伝子座にAB両方の遺伝子があり,もう片方の遺伝子座には対立遺伝子がないということなのでヘテロ接合体ということになる.

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2019年01月20日

ヒトの染色体

 ヒトのDNAは直線状であるがヒストンとヌクレオソームを形成して小さく折りたたまれた状態で細胞のに存在する.光学顕微鏡によっても染色法(ギムザ染色)を用いることで核を観察することができる.細胞内のDNAはこういった染色法により塩基性に青紫色によく染まるため,DNAの発見より前の19世紀後半にウォルター・フレミングによりクロマチンと名付けられた.クロマチンはDNAとヒストンの他にRNAや非ヒストンタンパク質とも複合的に結合し合った状態で存在する.

 ヒトなどの多細胞生物は細胞を分裂させることで成長・発達していく.1842年にカール・ネーゲリによって細胞分裂が報告された.1878年にウォルター・フレミングはサンショウウオの細胞を染色して生きたまま観察して細胞分裂する様子を明らかにした.細胞分裂に先立って核内のクロマチンが更に凝集してX字状の構造体となることが観察される.1888年にウィルヘルム・フォン・ヴァルデヤーがこれを染色体(クロモゾーム)と名付けた.

 染色体は生物によって構成が異なり,ヒトの場合は常染色体(autosome)22種類と性染色体(sex chromosome)(女X,男Y)2種類がある.尚,ミトコンドリアDNAはヒストンと結合しておらず,サイズも小さいため染色法を用いた光学顕微鏡を用いた観察になじまないためミトコンドリア染色体としては一般に観察されていない.身体を構成する体細胞は母由来の常染色体22本とX染色体1本,父由来の常染色体22本と性染色体いずれか1本の計46本を有している.細胞内のすべての染色体を大きさを降順に並べたものを核型karyotype)という.染色体は体細胞である白血球由来であることが多い.ヒト女性の核型は46,XX,男性の核型は46,XYと記載される.

 ヒトなどの有性生殖を行う生物にはこのように母と父それぞれ片方ずつから染色体を引き継いでいるため,同じ種類の染色体を複数有している.ヒトは生存に必要な染色体は同じ種類の染色体(相同染色体)2セットであるため,二倍体2n; diploid)と呼ばれる.一般的に植物は動物と比べて複雑なゲノムを有しており三倍体の生物も珍しくない.ヒトの体細胞は二倍体であるが,生殖細胞は22本の常染色体と1本の性染色体の合計23本の染色体からなる半数体(n; haploid)(一倍体)である.


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タグ:DNA 染色体
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2019年01月19日

DNAの立体構造

 ヒトなどの細胞に核を持つ生物を真核生物と呼ぶ.大腸菌などのバクテリアは細胞に核を持たず原核生物と呼ばれる.細胞自体の大きさは真核生物の方が数十倍程度と大きい.真核生物のDNAは細胞内の更に核の中に存在するとされているが,原核生物のDNAは核がないため細胞内(細胞質)に存在する.
 ヒトのDNAは二本鎖DNAは直線状であるが,大腸菌の二本鎖DNAは環状である.細胞分裂をしていない通常時(間期)は,各々の細胞が1セットのDNAを内包している.しかし,ヒトなどの動物の真核生物の細胞内にはミトコンドリアという細胞小器官が複数存在する.各々のミトコンドリアがDNAを内包しているため,ヒトの細胞はヒト由来のDNAと複数のミトコンドリアDNAを持っていると考えられる.現在のところ場合にもよるが,ヒトゲノムといえばヒト由来DNAとミトコンドリア由来のDNAを合わせたものと考えることが一般的ではなかろうか.

 ヒトなどの真核生物のDNAはヒストンというタンパク質に巻きついて存在する.ヒストンは8つのタンパク質(H2A, H2B, H3, H4がそれぞれ2つずつ)からなる八量体を形成しており形は円筒状となっている.DNAはその円筒に約1周半程度巻きついている.DNAの長さにしておよそ140bpである.このような構造をヌクレオソームと呼ぶ.
 ヒストンには塩基性アミノ酸であるリジン(K)やアルギニン(R)が多く含まれており,プラスに電気的な偏りを生じている.一方で,DNAのリン酸ジエステル結合はマイナスに電気的な偏りを生じており互いに引き合っている.
 また八量体を形成しているコアヒストンは各ユニットのヒストンタンパク質のN末端側が外側にヌクレオソームの外側に向かって飛び出すような構造となっている.これをヒストンテールと呼び,様々な化学修飾を受けることでDNAの働きを調節していることがわかってきている.

 真核生物のDNAにはヌクレオソームが複数点在しており,ヌクレオソーム間は線状のDNAが繋いでいると考えられる.この部分のDNAをリンカーDNAと呼ぶ.リンカーDNAはヌクレオソーム間を架橋しいて,更にヒストンH1がくっついている.
 このようにヌクレオソームがDNA上に点在して数珠のような構造になっているのを,例えでbeads on a stringと呼んだりする.更に,この構造がらせん状に巻きsuper-coiled structureソレノイドと呼ばれたりする.このように,直線状のDNAは核内で密に畳まれている.近年の研究ではこのような構造をとっているDNAは化学反応が起こりにくかったり損傷を受けにくかったりするのではないかと考えられている.






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