11:05〜12:08 第6回アニメの聖地サミットin埼玉 −第2部− 特別ゲスト アニメ監督:山本裕介
出演は司会:柿崎俊道、北海道大学教授:山村高淑、TVアニメ「ヤマノススメサードシーズン」監督:山本裕介の3名。
2014年7月放送のセカンドシーズンは実は2013年1月放送の第1期制作中から決まっていた。これは取材に時間がかかる上に、夏しか登山ロケ出来ないことによる社長の英断だった。
1期は正味3分アニメだったが心理ドラマを描けない不満があった。2期では正味10分となりこの不満は解消された。また10分であればアニメーター1人が1話を担当出来る。これが30分放送枠となると数名のアニメーター共同作業となってしまう。2期で終わりかと思っていたら2017年10月のOVA『ヤマノススメ おもいでプレゼント』制作から3期ヘとするすると話が決まった。
登山ロケを行うのが制作方針で、あおいが登った山は実際に登って取材した。話の展開で段々登山の難易度が上がりロケが大変になっている。今はスタッフに元登山部が加わり荷物を持ってもらい取材撮影に集中させてもらっている。
舞台設定を考えるより実際に行った方が手っ取り早い。このアニメには「視聴者が外出したくなる」という裏テーマがあるのに制作陣が室内に籠って作っていては話にならない。
原作者のしろさんとはコミュニケーションを密にして制作している。監督は人付き合いを楽しめないと出来ない仕事だ。こだわりを持って制作しているので上には「もしアニメをサクサク作ってもらいたいなら監督を代えて下さい」と言っている。
サードシーズンのテーマは秋で、同時にひなたの明るさの秘密を描きたいと思った。これはひなた役の阿澄佳奈さんも演じていて同じことを考えていたと言っていた。助けてもらってばかりいるあおいがひなたに借りを返し本当の友達になれるまでを描いた。
OVAは制作時期が冬だったので登山取材が出来ずスタッフと検討して街中の話となった。アニメの舞台となるモデル地は重要だ。都心から飯能までの距離は絶妙で、制作中に分からないことがあれば現地へ行って調べて帰ることが出来るのは便利だ。
アニメ化が決まりしろさんから舞台が飯能市と聞き1人でロケに行き、天覧山に登ったり、遊歩道を歩いたり、象のいる寺を見つたりして手応えを感じた。後日スタッフを連れて現地を案内した。
アニメ制作には頂上の絶景ポイントまでの道のりでちょっと良い背景が150枚は必要となる。これをロケハンせず想像で風景を描くと森の中なのか登山の道中なのか分からない絵になる。高度が上ると植生が変わることとか登山の疲労感とか実体験が作品の中で活かされている。
OVAでここなが飯能市内を散歩する話では小道を中心に再度現地ロケを行いった。この時魚眼レンズで撮影した小道のちょっと良い風景がそのまま作品中に使われている。今は映画館がないのにシネマ小路という名前が残っているので聖望学園の新井康之先生に資料を探してもらいその映画館の建物を作中に登場させた。
OVAの決定稿をプロデューサーに見てもらったところ「面白くない」と言われた。だったらもっと早い段階で言ってくれと思ったが「絶対面白くなります」と監督権限で制作を開始した。ラッシュ試写でプロデューサーは「面白い」と前言とは逆のことを言っていた。(笑) プロデューサーはこの作品では大切な人で今日もどこかの山に登って山小屋に番組宣伝ポスターを貼っていることだろう。
ここなの話では魚眼レンズパースを効果的に使ったが、魚眼は背景だけではなく登場人物も歪んでしまう。松尾アニメーターはキャラを歪ませず上手く描いてくれた。この作品では映像に合う音楽を作ってくれた作曲家の功績が大きい。
私が音響監督を兼任しているのは予算を抑えるためだ。アニメ製作スタッフへ伝える言葉とは別の表現をする必要があるので、声優さん達へ演技指導するのは難しい。監督の作品への関わり具合は人それぞれだ。
リアルな効果音が欲しいと言ったらスタッフは現地で生録してきた。富士山登山用に登山道から外れて登山者がいない合間を見て歩く音を収録してきてくれた。ロープウェイの走行音を聞きながら「鉄塔を越える時のショック音が無い」と言ったら「今のロープウェイは音がしません」と言われてしまった。それを理解した上で、やはりショック音が欲しいので追加してもらった。
この後、参加者からの「第5話 思い出を写そう!」と「池袋鬼子母神」エピソードに関する質疑応答があり12:08に講演会は終わった。
監督が何度も登山ロケハンの大変さと外に出て欲しいと言っていたことと、すぐに視聴者のメッセージが受取れてアニメを作っていて張り合いのある時代と語っていたのが印象的な公演だった。
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