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日曜東京〜第154回天皇賞秋(GT)

おそらく東京競馬場の上空は厚い雨雲に覆われており、その下には冷たい雨が降り注いでいるはず。気温もぐっと下がって、天気予報では明日も明後日も曇り。水はけのよい東京競馬場なら、明日は知らないが、明後日は良馬場で開催されることになるだろう。ただし、雨の影響がまったく残らないのか、それとも残るのかは大きな違いである。

というのも、ただでさえ内枠が圧倒的有利な府中の芝2000mコース、雨あがりは決まって内だけが伸びる馬場へと変化し、その内枠には、現在世界ランキングで1位か2位のディープインパクト産駒エイシンヒカリが入ったからである。脚質的に終始インを回ってこられる利点はあるが、最内枠に入ることができたのは、このコースだけに幸運という以外にないだろう。モーリス(父スクリーンヒーロー)よりも、もしかしたらこちらが1番人気になるのかもしれない。

そのモーリスは、良馬場ならパンパンの良馬場、雨が降るなら徹底的に降ってもらいたいクチ。府中2000m戦の時計勝負はあまり望まないだろうから、本来なら道悪を期待したいところかもしれないが、しかし何といってもモーリスだから、時計勝負になったとしてもこの距離ならまったく問題ないだろう。今のところ、馬場の面では少しエイシンヒカリにアドバンテージが生じそうな、そんな雰囲気か。

ただ、人気2頭とはいっても、両者とも死角がないわけではない。まずは回りの問題。実質マイルの世界王者モーリスは、走りそのものは父スクリーンヒーローではなく、祖父グラスワンダーのほうによく似ている。「右回りでは最強名馬クラス、左回りではふつうのGTレベル」などといわれたグラスワンダーに、もしかしたら妙なところまでモーリスは似てしまったかもしれない危惧はある。

前々走の安田記念はそもそも走れる状態にあったかどうかが怪しい仕上がりだったから度外視してよいかもしれないが、昨年勝った安田記念は、モーリスにしては思うような走りができていなかった印象。それでも「ふつうのGTレベル」の能力だからこそ勝った安田記念だった。

そもそも「ふつうのGTレベル」ということば自体がおかしな話で、とてつもないポテンシャルがあるからこそ、かなり屈折した表現になってしまうのだろう・・・連軸という意味で、やっぱりモーリスをはずすわけにはいかない。

対するエイシンヒカリも、どうも左回りの印象は良くない。もちろん下のレベルの馬たちを相手に逸走気味の競馬でも楽勝したが、あの悪癖がここで顔を出すとしたら致命傷。勝った昨年の毎日王冠でも外に逃げようとしていた。昨年惨敗した天皇賞以来、確か左回りは使われていないはずである。

スピードが武器なだけに、折り合いに苦労する右回りのヨーロッパよりは左回りのアメリカの競馬のほうが本来なら向いている気もするのだが、連れて行ったのはヨーロッパ・・・左回りの悪癖がまだ抜けていないからと推測するのは深読みしすぎだろうか?

というわけで、突つこうとすればいくらでもホコリがたまりそうな重箱の隅を視野の一隅にとらえつつ、これら2頭を負かす組を探りたい。中心は狙って、シュタルケ騎手に乗り替わってきたサトノノブレス(父ディープインパクト)にした。

昨年のこのレースは、誰もが行くと思われたエイシンヒカリのハナを叩いた田辺騎手のクラレント(父ダンスインザダーク)が超スローに近い逃げの形になったが、今年はエイシンヒカリのひとつ外隣で内田騎手、武豊騎手も今年は引かないはず。とすると、その田辺のロゴタイプ(父ローエングリン)がこれを制して行く可能性があり、今年は去年のようなスローにはならない。

時計勝負になったときに浮上しそうなのが、今季絶好調のサトノノブレスという読み。夏前の鳴尾記念は坂のある阪神外回りコースで1分57秒6の好時計で快勝。58kgの今回も、あの時計だけ走れば十分走破圏の憶測は成り立つ。先行集団を直後で見る位置がとれるそうな枠も絶好、サトノノブレスにとって悲願だったGTタイトルの最大のチャンスと見る。

とすると、同じように時計勝負になると色気が出てくるのがステファノス(父ディープインパクト)という気がする。こちらも自在性ある脚質は良いが、今回は少しためるような競馬に徹したほうがよいと思う。ダービーを勝ってひと皮剥けた印象もある川田騎手・・・嵌れば逆転候補だろう。

押さえは、当然戸崎騎手のルージュバック(父マンハッタンカフェ)が筆頭。もちろん優勝候補でもあるが、しかし府中の芝1800mがあまりにも強すぎるため、いわゆる「専用機」の危険性もちょっと感じたりする。まあ戸崎騎手にはいつもやられているので、今回はケンカしないという手もあるが。

そして昨年の覇者ラブリーデイ(父キングカメハメハ)の大外枠は、さすがにそろそろ運にも見放されてしまった印象もあるが、しかし池江厩舎だけに、ここは仕上げてくる。あとはアンビシャス(父ディープインパクト)の決め手、怖いデムーロのリアルスティール(父ディープインパクト)まではどうしても押さえる必要がありあそう。

意外性あるロゴタイプ、時計がかかる馬場なら一気の逆転もありうるサトノクラウン(父マルジュ)と絶好調の福永騎手まで押さえたい。

エイシンヒカリは、10馬身ぶっちぎったとされるイスパーン賞で見事にG1級レースの2勝目を挙げたが、あれははっきり言って調教のようなレース、「エルコンドルパサーが勝てなかった(正しくは『勝たなかった』)レース」という妙な付加価値も手伝って、ちょっと過剰人気になっている気がする。もちろん怖いんだけどね。

ということで、先週の菊花賞で悲願を達成した里見オーナーの勢いにも、ちょっとだけあやかりたいと考えている今週の天皇賞、楽しみである。

◎ サトノノブレス
〇 ステファノス
▲ モーリス
△ ルージュバック、ラブリーデイ、アンビシャス、リアルスティール、ロゴタイプ
重注 サトノクラウン

日曜京都〜第77回菊花賞(GT)

菊花賞である。
注目は、皐月賞馬ディーマジェスティとダービー2着馬サトノダイヤモンドのディープインパクト産駒2騎。例によって人気2頭、京都外回りの芝3000mのコースで、まずはこれらのどちらが上位なのか、その検証から。

サトノダイヤモンドのデビュー戦を見たとき、私はいよいよ超大物のディープインパクト牡馬が登場したと感じた。実際、ダービーも、内容だけみればほぼ勝ちに等しい2着。もしこちらが凱旋門賞に行っていたら、勝ち負けはともかく、そしてマカヒキをけなすつもりはないが、サトノダイヤモンドなら正直もう少しやれていたと思う。私は、順調なら「日本の悲願」を達成するのは、サトノダイヤモンドだと今でも思っている。

対するディーマジェスティは、サトノダイヤモンドほどの安心感というか、安定感はやや欠ける印象がある。皐月賞をあまりにも速い時計で走ってしまったその反動で、ダービーはおそらく本調子からはだいぶ遠かった気がする。しかしそれでも「勝つか?」と思われる脚をつかったくらいだから、その後の反動もまた心配になるほどだった。

ところが前回のセントライト記念、二ノ宮厩舎だから菊花賞前のソフトな仕上げでも、はっきり言って他とはまったく力が違う内容での快勝。サトノダイヤモンドも苦戦という評価が大半だが、いや、あれは全然苦戦ではなく、着差が少ないだけのこと。どちらも好内容のステップを踏んで本番に挑む。

で、個人的なこの両者の比較の結論を言うなら、私はディーマジェスティのほうだと思う。理由は、シンプルに「距離」にある。もちろんサトノダイヤモンドは京都外回りの菊花賞コースをこなせないはずはない。折り合いに心配はなく、操縦性も高い。だから崩れないという意味では、おそらくサトノダイヤモンドの安定感が上回る。しかし人気2頭である。崩れないのはむしろ当たり前のことで、どちらが上にくるかを当てないと、私のような穴屋は話にならないレースなのである。

ディープインパクト産駒はなんというか、ちょっと真面目すぎるところがあって、限界を超えても走り続ける競走馬の優れた本能に勝ちすぎている印象がある。ディーマジェスティもおそらくその典型だろう。しかしディープ牡馬の場合、そういう厳しい競馬の反動が大きく、故障や原因不明の不調などにつながってしまうことが多い。

ディーマジェスティも、他のディープ牡馬のようにそうなってしまうかもしれないと、本音をいうと懸念していた。しかしディーマジェスティは違った。その理由は、母方の血がタフであること。何度も負けてから強くなった三冠馬ナリタブライアンや、怪物グラスワンダー、そしてモーリスを送ったタフなロベルト、さらにグロースターク、リボーの血はもちろんだが、さらにさかのぼるとサドラーズウェルズ、ボールドルーラーなど、タフな血の上塗りが繰り返されながら、もっとも栄えた牝系のひとつに流れ込むような特徴がある。

共同通信杯のときに思ったが、ディーマジェスティの良さは、父ディープインパクトに似ていないところ。もちろんディープインパクトは優れている。しかし「ディープに似ているから優れている」とは言えない。むしろ逆の可能性のほうが大きい。似ているだけではダメなのである。ディープに似ていないからこそ、新たな可能性が生じる。

ディーマジェスティは、同じ三冠馬でも、お父さんのように、そしてその産駒の多くのように「飛ぶ」と評されるような美しい走りではない。同じ三冠馬でも、むしろナリタブライアンやオルフェーヴルのように、うなりを上げて沈み込むような走りに変化するところに凄みを感じる。

サトノダイヤモンドは近年屈指の好素材だが、ディーマジェスティは厳しい菊花賞でこそ、そのポテンシャルを最大に発揮すると思う。これが両者の比較である。これが当たらないと、私の馬券はお話にならないのだ。頼んだよ、ディーマジェスティとエビショー。

さて、本命は、ダービーのときにも期待したレインボーライン(父ステイゴールド)である。はっきり言ってそこまで強調するようなポイントもないのだが、この馬は、ディーマジェスティのような厳しい競馬は経験していないものの、2歳時からずっと使い詰めで使い続けてこられながらも、徐々に体重を増やしながら、成績も安定していきているという点で、最も菊花賞に向くタイプである。あとはステイゴールド産駒特有の意外性には、2歳時から大きな魅力を感じていたし、ちょっとした馬券もプレゼントしてもらったし。

母方の7代父プリメロは、メジャーとは言えないものの、メジロマックイーンに代表されるタフな血の根幹を成し、8代父トウルヌソルは菊花賞勝ち馬を多く出すハイペリオン系の祖だったりする。こういう血を振り返ることができるのも、菊花賞にレインボーラインのような馬が出走してくれるから。というか、今どきこんな血を持った馬がいるのかと、内心2歳時から菊花賞はこの馬でと決めていたようなものである。

伏兵という意味では、またまたディープ産駒になるが、こちらもタフなドイツ血統のウムブルフがいかにもの感じ。おそらく穴に人気するだろう。神戸新聞杯組では、ミッキーロケット(父キングカメハメハ)の上昇は確かに怖いが、私は4着カフジプリンス(父ハーツクライ)、3着レッドエルディスト(父ゼンノロブロイ)のほうが菊花賞向きに思える。

あとは、秋になったら・・・の思いが強かったドリームジャーニー産駒のミライヘノツバサ、そして穴中の穴では、昨年超ハイペースの秋華賞を強気に先行しながら3着に踏ん張りきったマキシマムドパリの全弟サトノエトワール(父キングカメハメハ)と池添騎手にも少しだけ期待して、特殊な距離だけにちょっと評価を上げてみたい。

◎ レインボーライン
〇 サトノエトワール
▲ ディーマジェスティ
△ サトノダイヤモンド、ウムブルフ、カフジプリンス、レッドエルディスト、ミライヘノツバサ

土曜東京〜第19回富士S(GV)

日曜日の菊花賞はもちろん注目だが、馬券的妙味というか、難しいという意味では、今年は富士Sのほうだと思う。何しろ先週の秋華賞につづき、私にとっては「1000万馬券レース」なので、富士Sは何としてでも参加したいレースである(みなさんにはどーでもえーことですな)。

ふたとおりのアプローチがある。近年は菊花賞にも当てはまることだが、この富士S、波乱になるときは、結果が出たあとでもなぜこの組み合わせになるのかわからないというくらい、とてつもない波乱が起こるケース。そしてもうひとパターンが、「ごるぁJRA!富士Sをなんでこんな人気馬で決めよるんや。やり直し!」と言いたくなるファンも多いのではないか(私はまったく思わないが)と推測されるくらい、平穏な競馬に終わるパターン。

富士Sが波乱になりやすい要因はいろいろ考えられるが、そのパターンに当てはまるかどうかをまず検討する必要がある。ひとつに、マイルCSへの叩き台としてはあまり本気度が高くないことが波乱の要因に挙げられる。つまり、マイルCSクラスの馬がここには例年出てこないことが、「どの馬にもチャンスがある」というメンバーレベルのレースにしている印象が強い。

ところが、さすがにこの馬にはチャンスはないだろう・・・という馬が突っ込んでくるからこの富士Sは単なる波乱ではなく、気絶寸前の大波乱になるのだ。だから、もし今年がそういう組み合わせだったら、当然また大波乱の可能性をはらんでいる・・・と思ってメンバーを見渡すと、今年の富士Sは、芝のGVというよりダートのGVかというくらい、なかなかのメンバーがそろってしまった。

やはり右回りが不安視された前走を快勝したロードクエスト(父マツリダゴッホ)、そして2歳タイトル以来久々にGTの勲章がほしいダノンプラチナ(父ディープインパクト)、堅実なフルーキー(父リドーツチョイス)とデムーロ、皐月賞馬で府中得意のイスラボニータ(父フジキセキ)とルメール、渋いヤングマンパワー(父スニッツェル)と戸崎という具合に、さすがにこれだけのメンバーがそろうと穴馬ばかりで決まることもなさそう。

逆にこれらのうちどれが飛ぶか、まずはそちらを考えなければならないが、順位付けすら難しいのが本音。ビュンビュン飛ばしていくタイプがおらず、そうかといって後ろにばかり有力馬がかたまるわけではないこういうレースは、波乱の可能性は極めて低い気がする。

だいたい私はいつも展開頼みで大波乱のシチュエーションを構想、いや、妄想しているのだが、富士Sともあろうレースが、その妄想すらできないくらい、今年は展開には頼れない組み合わせである。そういうときは、カタイ馬券を買う・・・のではなく、実はとんでもなく強かった!という可能性がある馬を買って、結局大波乱を期待する。

中心は、無謀とも思われるとは思うが、昨年の菊花賞以来ちょうど1年ぶりのレースとなるミュゼエイリアンにした。いや、もちろん1年ぶりでいきなりこのメンバーを相手に、脚部不安による長欠明けで重賞未勝利馬が、しかもいきなりの大幅距離短縮で勝てるはずもない。ふつうは。

しかしエルコンドルパサーの肌に、モーリスやゴールドアクターなど大スターを輩出し続けるスクリーンヒーロー(その父グラスワンダー)という血統は、古馬になってからの成長力に疑問を挟む余地がないくらいの晩成血統なのだ。しかも、モーリスにしろゴールドアクターにしろ、長い休みを挟んで急激に強くなったという、スクリーンヒーロー産駒に特有の急成長が見られた。ミュゼエイリアンにもその可能性がないわけでは、もちろんない。

実は、昨年のクラシックはすべてこのミュゼエイリアンを本命にしたという、できれば思いだしたくない過去も同時に思いだしている。春は馬体重よりもだいぶ線が細い印象だったのが、菊花賞では、まだまだ良化の余地を残しながらもだいぶしっかりしてきていた。そしてその内容も、思ったよりも厳しいペースになって早々と脱落かに思われる手応えながら、最後の最後までがんばっていた姿にはかなり好感を持った。将来性という意味で。

元々このレースは、個人的には夢を買うレース、ダメ元で今年もまたミュゼエイリアンに託したい。

相手は、こちらも一発の魅力は十分あるマイネルアウラート(父ステイゴールド)、当然フルーキー、得意の府中で巻き返しそうなダノンプラチナ、インに潜り込めそうなイスラボニータ、力つけたヤングマンパワー、好位でソツなく回ってこられそうなブラックムーン(父アドマイヤムーン)、人気のロードクエストあたりまで、それぞれ軽く押さえておきたい。

◎ ミュゼエイリアン
〇 マイネルアウラート
▲ フルーキー
△ ダノンプラチナ、イスラボニータ、ヤングマンパワー、ブラックムーン、ロードクエスト

日曜京都〜第21回秋華賞(GT)

第1回秋華賞の勝ち馬ファビラスラフインは、春のNHKマイルCで暴走気味のペースに巻き込まれ馬群にんだ。しかしいきなりぶっつけ本番でこの秋華賞に臨んできて、完全にステイヤーの体型へと進化を遂げ、あのエアグルーヴ以下を完全に封じ込める快勝だった。

エアグルーヴはレース中の骨折が原因の凡走と説明されたが、確かに凡走の理由はそうかもしれないものの、あの日のファビラスラフインに勝てたかとなると正直怪しい。当時の馬場にしては時計が速すぎたし、ファビラスラフインは続くJCでなんとあのシングスピールとデットーリの鉄壁コンビにハナだけ届かなかった2着の星があった。

勝ったファビラスラフイン、2着エリモシック(女王杯で絶対女王ダンスパートナーを撃破)、3着ロゼカラー(ローズバドらの母)、そしてエアグルーヴはもちろんだが、京都内回りの芝2000mというトリッキーなコースゆえ、レースのイメージはレース名ほど華やかではないものの、このレースは第1回に限らず、たいへんな名牝を送り続けている。と同時に、毎年判で押したように波乱、もしくは大波乱、あるいは「考えられないレベルの波乱」が断続的に起こる理由は、やはりその特有のコース形態にある。

そして、歴代に刻まれるような名牝を毎年のように送りだす出世レースの秋華賞が小回りで行われると、ペースは自然と速くなり、レースレベルも自然と高くなる。逆にそういうレースを好タイムで乗り切ることができる底力が求められるレースなのである。小回りだから素軽いスピードでどうにかなるというものではない。後に名牝として名を残し、その子供たちにも伝えるべき資質が問われるのが、この秋華賞の最大の特徴である。

今年はビッシュ(父ディープインパクト)が後方からの競馬になる。内枠に入った桜花賞馬ジュエラー(父ヴィクトワールピサ)の位置取りがポイント。GTのデムーロだから下手な騎乗はしないだろう。好位のインを死守しながらソツないレースをイメージしているだろう。

ふつうこの感じだと、そこまでペースは速くならないことが想定されるが、秋華賞はそうはかない。ジュエラーをマークしたりビッシュを待っていたりするようでは、伏兵としてのチャンスが台無しだからである。先にいったほうが有利なコースで、有力馬が先に行かないならば、自分が行けばいい。伏兵は先に行く組。これは、厳しいペースの秋華賞で毎年のように私たちが目にすることになる経験則である。

前走大敗したエンジェルフェイス(父キングカメハメハ)は、中山のトライアル紫苑Sで大敗を喫した。しかし身体はだいぶ太く、終始外を回ってかかっていた。事態は激しく好転する。鞍上はこのレースを知り尽くしている浜中騎手・・・間違いなく先に行くこのエンジェルフェイスをつかまえられる可能性がある伏兵を狙う。

中心は人気薄確実のウインファビラス(父ステイゴールド)にした。前走紫苑Sでは、絶好の位置取りから勝負所でカットされて下がり、脚を余すような内容の8着。もともと賞金に余裕があったから、つくり自体もかなり緩い印象を受けた。

カロから伝わる黒っぽい芦毛に「ファビラス」を配しているところまでは、第1回勝ち馬のファビラスラフインと同じ。ステイヤーらしいすっきりしたシルエットもファビラスラフインにオーバーラップするところがある。当時は松永騎手。今度は松岡騎手が、20年ぶりに大逆転劇を演出してくれるのではないか・・・という大波乱に期待する。

当然ビッシュは有力。シンハライトが出ていたら互いにけん制しあって共倒れ・・・という期待も内心あったのだが、シンハライトのリタイアは、ビッシュ=戸崎騎手にとっては、ジュエラーという明確な目標がいる分、競馬がしやすくなっただろう。ただし、目標としての役割をジュエラー=デムーロが満足に担い切ったときは・・・という注文がつく気がする。

秋華賞だから許される、まったく人気も実績もない組にも注意を向けたい。もう1頭の芦毛・キンショーユキヒメ(父メイショウサムソン)は、前走稍重の1000万条件で、内に入れても終始かかりぎみ、一瞬の脚がないから勝負所では岩田騎手がスペースを見つけることができず、完全に脚を余しての3着。勝ったミエノサクシード(父ステイゴールド)とは対照的な競馬だった。

今回は大外を引いた分折り合いは心配だが、ペースが速くなればこの馬にとってむしろ大きなチャンスとなる。キンショーユキヒメも積極的に買いたい。

あとは、ルメールのパーシーズベスト(父ディープインパクト)は、ふつうで考えたら京都内回りのハイペースで好結果を望めるタイプではない。しかしそういうときのルメールは、名手の手腕を余すところなく発揮する。馬というよりは騎手で押さえたい。

あとは好調が伝えられるレッドアヴァンセ(父ディープインパクト)は、おそらく前走の内容を受けて、武豊騎手は最後方待機で大外強襲を狙ってくるだろう。嵌る可能性はある。できれば少し渋ったほうがいいかもしれない。外から先行して折り合うことができれば、カイザーバル(父エンパイアメーカー)も好勝負可能だろう。道悪になったらクロコスミア(父ステイゴールド)も押さえる。

今年は非常に楽しみな秋華賞、大波乱に期待して手広く買いたい。

◎ ウインファビラス
○ エンジェルフェイス
▲ ビッシュ
△ キンショーユキヒメ、レッドアヴァンセ、ジュエラー、カイザーバル、パーシーズベスト
重注 クロコスミア

日曜東京〜第67回毎日王冠(GU)/月曜京都〜第51回京都大賞典(GU)

競馬の暦の上では、いちおう前開催から「秋競馬」のくくりになり、最終週の中山スプリンターズSから秋のGTシリーズがスタートということにはなるが、しかしフランスでは凱旋門賞が終わり、日本ではここから東京・京都のロングラン開催がスタートし、いよいよ本格的な「秋競馬」がスタートするイメージである。

凱旋門賞は、さすがに3歳マカヒキ(16頭中14着)には背負わせたものが大きすぎた印象もあるが、何しろものすごい時計での決着、勝ち馬があまりにも強すぎ、出走馬のレベルがあまりにも高すぎてしまった。今の日本馬のレベルだと、現役ではモーリス級の馬が出ていないと勝負にならなかった。

ともあれ、果敢な挑戦には拍手を送るべきだし、ルメールや陣営にはとりあえずお疲れさまと言いたいところではある。ただ、馬券のほうは、あまりにも良馬場すぎたために多少印を変更したものの、重く見ていたシルバーウェーブがまったく伸びず13着に終わり、どう転んでも私の馬券はお話にもならないものだった。まあこれはだいたいいつも通りだが・・・

さて、話を日本の競馬に戻そう。凱旋門賞の翌週ということで、正直ちょっと力が抜けていたりもするのだが、月曜に組まれている京都大賞典のほうは、枠順がまだ発表されていないということで、ここでは府中芝1800mの毎日王冠の予想だけにとどめておくことにする。

今年は12頭がエントリーしており、さすがは毎日王冠、6歳ロゴタイプ(父ローエングリン)、8歳ダノンシャーク(父ディープインパクト)のマイルGT馬2騎を筆頭に、4歳牝馬でこれが人気になるか?と思われるルージュバック(父マンハッタンカフェ)、大阪杯勝ちのアンビシャス(父ディープインパクト)、AJCC勝ちのディサイファ(父ディープインパクト)など、まあいつものとおりといえばいえるメンバーではあるか。

少頭数だった安田記念は、考えられないほどのスローの逃げに持ち込んだロゴタイプと田辺騎手のコンビがまんまの逃げ切り、見事にモーリスを2着に退ける大金星を挙げた。ここはマイネルミラノ(父ステイゴールド)がいるから、もしマイネルミラノと丹内騎手が行くなら同じマイペースでも、そこまでスローに落とすことはない。ロゴタイプが行ったらかなりのスローが見込まれる。

まずはこのあたりが難しいところではあるが、いずれにしても、府中の中距離でスローの流れはとにかくディープインパクト産駒が大活躍する舞台と決まっている。今回もおそらくその公算は高く、特に開幕週、今は府中で比較的追い込みが決まるのはむしろ開幕週の傾向である。

もちろんマイネルミラノが行っても、ディープ産駒にはおあつらえ向きの流れになるが、可能性としてアヤシイのが、ロゴタイプが行こうとするところをワンテンポ遅らせてマイネルミラノが競りかけてきたというパターン。もしくは、このところ成績が上がってこないヒストリカル(父ディープインパクト)が最内枠に入り、横山典弘の大逃げというパターンも考えられる。

ロゴタイプは2歳戦を含めればGT3勝馬、クラシックホースである。もし逃げる構えならば、スローで逃げさせていい立場ではない。前回安田記念は、不調が長引いていたこともそうだが、何といってもみながみなすべてモーリスをマークしていた。そのモーリスが伸びあぐねたのだから、ロゴタイプにとってはマイペースの流れになるべくしてなったといえる。

しかし今回は、そうはいかない。ロゴが行けばマイネルが競りかける・・・その可能性に期待して、大外枠を引いたロサギガンティア(父フジキセキ)の一瞬のキレに注目したい。ロサギガンティアという馬は、ご存知のとおり、フジキセキ産駒によく見られる「燃える」タイプである。そのエネルギーがあの強烈な末脚にうまくつながると、1Fだけならオルフェーヴル級の末脚を繰りだす源にもなっている。

しかし、こちらもよく知られるとおり、ロサギガンティアはその燃えすぎる気性がアダとなって、成績が不安定になっているところがある。もちろん今回はどちらに出るのかわからないが、ただ今回は、多少気性をコントロールできる可能性が高いと考えられるファクターがある。

というのも、今週末は土日とも多少なりとも天気が崩れるからである。どういうことかというと、やはり天気が崩れたり馬場が悪くなったりすると、走ることに慎重になることが多く、精神的にもクールダウンされることが多いのである。

実際ロサギガンティアが経験した稍重の成績は[3010]、すべて馬券圏内の好成績。かのオルフェーヴルが、道悪のときほど落ち着いた精神状態で競馬していたことは有名な話。稍重まで悪くならなくても、多少の雨がロサギガンティアにとって大きなプラスに働くと踏んで、今回は末脚爆発の番と読む。

ルージュバックはおそらくこの秋にGT奪取の悲願をかける。秋何戦するかはわからないが、陣営はおそらく青写真を描いている。今回やや追い切りに物足りないところがあったという。得意コースだが、無理に勝つ必要がないといえばいえるので、怖いが今回は少し評価を下げてみてもおもしろいかもしれない。

ルージュバックに替わってこちらも人気になってしまうが、昨年天皇賞秋であと一歩まで迫ったステファノス(父ディープインパクト)、大阪杯の内容は素晴らしかったアンビシャスにもちょっと期待してみたい。あとは内枠のクラレントとディサイファは押さえる。

ロゴタイプはどうだろう?前回があまりにも恵まれた印象が強く、58kgで正攻法の競馬が果たして通用するのか、正直疑問である。どちらかといえばマイネルミラノのほうが残す可能性が高い気がする。ロゴタイプはすごく好きな馬なのでがんばってほしいが・・・

◎ ロサギガンティア
〇 ステファノス
▲ アンビシャス
△ ルージュバック、クラレント、ディサイファ、マイネルミラノ

第96回凱旋門賞/第50回スプリンターズS

今週からいよいよ秋のGTシリーズがスタート、当然例年どおりスプリンターズステークスが行われるわけだが、しかし個人的にはやはりフランス・ロンシャン・・・ではなく、今年はシャンティイで行われる凱旋門賞のほうにどうしても注目が集まる。

凱旋門賞は過去にエルコンドルパサー(2着)、ディープインパクト(3位→失格)、オルフェーヴル(2着2回)と、世代やその時代のエースというだけでなく、歴史に名を残す日本競馬史上最高レベルの馬たちが挑み、涙を呑んできたレースである。

いつしか「日本の悲願」といわれるようになり、今では毎年のように世代のチャンピオンたちが挑戦し続けているが、他の海外G1で日本馬が勝つのが当たり前の時代へと変遷を遂げながらも、どうしても「欧州最高峰」の凱旋門賞だけは先頭ゴールが許されていない。

今年は、失意という意味では最も大きかった日本の至宝・ディープインパクトの息子、今年のダービー馬マカヒキが挑む。まだ世代のチャンピオンとしての地位が確立できているわけではないマカヒキに、果たして世界最高峰とも言われる凱旋門賞を制するだけの力があるのか、まずはその点が日本の競馬ファンにとっては大きなポイントになるだろう。

かつてエルコンドルパサーは、「日本の馬に勝てるわけがない」と戦前一部メディアで酷評されながらも、レース後は勝ち馬である歴史的名馬モンジューとともに大喝采を浴び、後日「勝ち馬は2頭いた」と報じられたサムライ(外国産馬だが)だった。もちろん過去の日本の名馬の足跡もあったが、やはりエルコンドルパサーが凱旋門賞に通じる固く閉ざされた道をこじ開けてくれたのだ。

その後何頭か凱旋門賞に挑戦したが、中でもディープインパクトとオルフェーヴルは別格の参戦だった。しかし不運だったのは、ディープやオルフェは海外でもすでに注目の的となっていたこと。特に、前年自爆するような形で偉業を逃したオルフェーヴルの2回目の凱旋門賞は、その厳しいマークで完全につぶされたような内容だった。

マカヒキはそういう立場ではないということだけでも大きなプラスがある。シャンティイをよく知るルメールで挑戦できるメリットも大きい。しかも、トリッキーだとの声も聞かれるが、いやいやロンシャンにくらべればまったく競馬しやすいシャンティイでの開催というのも大きなプラスだ。

エルコンドルパサーもディープもオルフェも、日本では酷量に相当する斤量を背負わされたが、逆に日本よりも軽い斤量で挑戦できる3歳という立場のマカヒキは、過去の名馬よりもはるかに大きなメリットである。

凱旋門賞というレースは、世界中のホースマン誰もが本気で勝ちたいと願うレース。オルフェーヴルで2回凱旋門賞に乗ったクリストフ=スミヨンは、「凱旋門賞は戦争だ」と断言している。今年はポストポンド(父ドバウィ)という実績では頭ひとつ抜けた馬がいる。ポストポンドをめぐる「戦争」が、今年はシャンティイで序盤から繰り広げられることになる。

とすると、マカヒキがポストポンドから離れた位置で競馬できれば、決め手にまさるだけに、十分チャンスはあるはず。マカヒキが「日本の悲願」をついに達成する日が、ついに数日後に迫っている・・・などと、ちょっとだけ考えたりもした。しかし今は、その思いはない。

ルメールの実質の勝利宣言はいただけない。2回目のオルフェーヴルのときと雰囲気が似てきている。オルフェーヴルは何かとやんちゃで何かしらやらかすのではないかという恐怖心が、人間の側に染みついていた。「オルフェーヴルに乗るなんて簡単だよ」と鼻で笑っていたスミヨンも、オルフェーヴルのほんとうの怖さを、1回目の凱旋門賞のほんのあと100mのところで思い知らされた。ところが、である。

あの冷徹な男が悔し涙を流したと伝えられるが、そのスミヨンが翌年乗ったフォワ賞での勝ちを体感し、ゴール前200mくらいから「うわぁぁぁぁぁ!すげぇぇぇぇ!!!!」というこころの叫びがスミヨンの身体を突き破って私たちにも痛いほど伝わってきたことが思いだされる。それは、「オルフェーヴルの完成形」を体感したスミヨンの「確信」が陣営にも伝わった瞬間でもあった。ほころびは、まさにそこにあったのだ。

本番では、日本では経験することがない厳しいチェックを受け、レース中内から外から激しく身体をこすられ、走りながら怒りがおさまらない様子のオルフェーヴルの姿が悲しかった・・・
どんな競馬でもできる、位置取りも枠も関係ない・・・当時のオルフェーヴル陣営の思いは、今のマカヒキの陣営にも通じるところがある気がする。

しかも、今年から日本でも凱旋門賞の馬券を購入することができる。だからこそ、私は今回ニガテなスプリンターズSではなく、凱旋門賞の予想という形でコレを書いているのだが。日本人が馬券を買えるということは、当然あのころのオルフェーヴル以上に、マカヒキの馬券は売れることになる・・・マカヒキの実力がどの程度なのか、正直まだ私にはわからないが、オルフェーヴルやディープインパクト以上に「支持の偏差」が生じるマカヒキの、馬券的な魅力は半減なのである。

ただし、ディープインパクトやオルフェーヴルが勝てなかったのだからマカヒキが勝てないという論調は明らかな誤りである。確かに、ディープやオルフェと10回走ってマカヒキが1度でも先着できることはないかもしれない。しかし、だから凱旋門賞でマカヒキが勝てないという理屈が成り立たないことだけはつけ加えておきたい。

で、馬券のほうは・・・
実はゴールドシップが勝った皐月賞、私の本命は、デビュー2連勝で臨んできたシルバーウエイブというジャングルポケット産駒だった。残念ながらその皐月賞が引退レースとなり、大きな可能性を秘めながらわずか3戦でターフを去った。もちろん血統的にゴールドシップの大ファンではあるが、私の中では、あの世代はシルバーウエイブだったのだ。

今年の凱旋門賞の出馬表を見て、正直ちょっと驚いた。シルバーウエイブが出走している!?

いや、そうではなかった。よく見ると、「シルバーウェーブ」というフランスの4歳男馬(父シルヴァーフロスト)だった。しかも、その鞍上は、オルフェーヴルを「自分のキャリアで最高の馬」と評した凱旋門賞2勝ジョッキーのクリストフ=スミヨンである。オルフェーヴルと同じく、フォワ賞を快勝して4歳で臨む凱旋門賞だ。

父シルヴァーフロストは、父方がケンマールを経由したハイエストオナーからのタフな流れ、母方はダンチヒの系統だけに強いノーザンダンサーのクロスがある。一方母方はリヴァーマンの系統で、牝系はあまり活発ではないものの、馬場が重くなるといかにも・・・のタイプか。

同じく凱旋門賞に出走したゴールドシップや、偉大な挑戦者だったオルフェーヴルのことを自然と思いださせてくれるシルバーウェーブとスミヨンのコンビに、私にとって初めての馬券チャレンジとなる凱旋門賞を託したい。

今年はやけにアイルランドからの出走が多い気もするが、やはり凱旋門賞は牝馬に注目ということで、人気が予想されるイギリス牝馬のレフトハンド(父ドバウィ)ではなく、父に凱旋門賞馬サガミクスを持つフランスの6歳牝馬シルジャンズサガにちょっと注目して馬券を楽しみたい。まあなんとなく「雨待ち」っぽい予想にはなってしまうが・・・

◎ シルバーウェーブ
〇 シルジャンズサガ
▲ レフトハンド
△ ポストポンド、ハイランドリール、マカヒキ、ニューベイ


スプリンターズSのほうも予想だけ。

日曜中山〜第50回スプリンターズS(GT)
◎ スノードラゴン
〇 レッドファルクス
▲ ダンスディレクター
△ ビッグアーサー、ソルヴェイグ、レッツゴードンキ、サクラゴスペル、サトノルパン
   
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