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2023年07月31日

ダイエットには炭水化物を減らすのではなく「食物繊維ごと食べる」ことが重要だと専門家

ダイエットには炭水化物を減らすのではなく「食物繊維ごと食べる」ことが重要だと専門家


これまで考案されてきたダイエット法の中には低炭水化物ダイエットやケトジェニック・ダイエットなど、炭水化物の摂取を制限するものも多く考案されています。こうした炭水化物を避ける食事法の流行に対し、食べ物が代謝や腸内細菌に与える影響を20年以上にわたって研究してきたワシントン大学医学部のクリストファー・ダマン氏が、「良質な炭水化物」を選ぶことの重要性を呼びかけました。

Fiber is your body's natural guide to weight management – rather than cutting carbs out of your diet, eat them in their original fiber packaging instead


https://theconversation.com/fiber-is-your-bodys-natural-guide-to-weight-management-rather-than-cutting-carbs-out-of-your-diet-eat-them-in-their-original-fiber-packaging-instead-205159

加工されていない果物や野菜、全粒粉穀物の食品、豆類、ナッツ類など自然な食材を食べると、ほとんどの場合エネルギーと食物繊維を同時に摂取することになります。こうして体内に取り込まれた食物繊維には、腸内での糖分の吸収を遅らせる効果があるほか、腸の働きや腸内細菌のバランスを整えることで、血糖値や空腹感の調節にも役立ちます。

食物繊維の働きについて、ダマン氏は「その様子はあたかも、食べ物が適切な消化の方法が書かれた取扱説明書とともに食物繊維でパッケージングされているかのようです」と話しました。


しかし、多くの現代人は食べ物から食物繊維を取り除いて食べてしまっています。具体的には、白米や精製した小麦粉、砂糖入りの朝食シリアル、スナック菓子、ジュースなどです。

このような低食物繊維・高精製炭水化物の食事よる悪影響を避けるため、低炭水化物ダイエットやケトジェニック・ダイエット、旧石器時代の食生活を目指すパレオダイエット、アメリカの心臓病専門医のロバート・アトキンスが提唱したアトキンスダイエットなどが考案されており、それらの一部は有効性が科学的に裏付けられています。

例えば、2021年の研究では、炭水化物を制限すると飢餓状態や長時間の運動中に脂肪からエネルギーを取り出す生物学的プロセスであるケトーシスが誘発されることが示されました。また、低炭水化物ダイエットにより体重が減少し、血圧や炎症の問題も改善されるという研究結果もあります。

その一方で、ケトジェニック・ダイエットが腸の健康に悪影響を及ぼすという報告もあるほか、極端に炭水化物を避けるケトジェニック・ダイエットの継続は困難であるため、心臓病やがんへの長期的な効果は確認できなかったと結論づけた研究もあります。


さらに、食事と寿命の関係を調べた2021年の研究では、全粒粉のパンやパスタなどといった形で少なからず炭水化物を摂取する地中海食を食べている人は健康で長生きする傾向があることも示されました。

このように一見すると矛盾した研究結果が報告される理由は、「炭水化物の質」 にあるとダマン氏は考えています。食物繊維も炭水化物の一種ですが、胃や腸で消化されない食物繊維とは異なり、単糖類や高度に精製された炭水化物は消化吸収されやすいエネルギーです。そのため、糖質の制限により代謝異常や健康を改善できる可能性はありますが、前述の通り糖質を制限する食事は継続が困難で栄養の専門家による指導が欠かせません。



このことからダマン氏は、「より持続可能で効果的な健康増進法は、加工されておらずゆっくり吸収される炭水化物、つまり食物繊維を含む自然な炭水化物の割合を増やすことだと思います」と述べました。


ダマン氏は、自然な炭水化物として全粒粉穀物、豆類、ナッツ類、種子類、果物、野菜を挙げています。こうした食材では、総炭水化物と食物繊維の比率が10対1を超えることはほとんどなく、多くの場合は5対1となっています。

未加工の食材だけを食べて生活するのは困難ですが、ダマン氏によると炭水化物と食物繊維の比率が少なくとも10対1、できれば5対1に保たれていれば、加工食品でもOKとのこと。また、甘いものを食べる際は食事と一緒に食物繊維のサプリメントを摂取するのも効果的です。繊維をブレンドしたプレバイオティクスのサプリメントを用いた2022年の研究では、食物繊維入りのサプリメントを摂取すると食事後の血糖値スパイク、つまり血中のグルコース濃度が上昇しすぎて有害となる問題が約30%減少したことが報告されました。


ただし、食物繊維の摂取に注意が必要なケースもあります。例えば、フォドマップ(FODMAPS)と呼ばれている糖類は消化吸収がしにくいことから食物繊維として扱われることがありますが、フォドマップは腸で発酵しやすいため、摂取しすぎると腹部膨満感や下痢といった過敏性腸症候群の症状が出る可能性があります。ダマン氏によると、フォドマップが多い食品としてはガーリックパウダーやオニオンパウダーを含む加工食品、タマネギ科の野菜、乳糖を含む一部の乳製品、リンゴやナシ、モモなどの果物などがあるとのこと。

ダマン氏は末尾で、「私は甘いものばかりを食べることは推奨しませんが、3人の娘たちが私によく言うように、たまには甘いものを楽しむのも大切です。そして、たまに甘いものを楽しむときは、食物繊維のパッケージとともに炭水化物を食べることを考えたいものです」と述べました。

タグ:ダイエット

肉だけバクバク食べる」糖質制限をしても痩せない人が根本的に間違っていること

「ごはんは食べずに、肉だけバクバク食べる」糖質制限をしても痩せない人が根本的に間違っていること



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田中 明
糖尿病専門医/女子栄養大学名誉教授

田中 明 (たなか・あきら)

糖質制限ダイエットを始めたのに、体重が落ちない、痩せられないダイエッターは多い。その原因はどこにあるのか。糖尿病専門医であり女子栄養大学名誉教授の田中明さんは、「ごはんを減らすのはむしろ太る要因になる。そればかりか、極端な糖質制限が不調や将来の病気にもつながる」という――。
ステーキ写真=iStock.com/Rawpixel
※写真はイメージです
糖質が余ると中性脂肪となり肥満や脂肪肝に
手軽で始めやすいダイエットとして定番化した糖質制限。糖質は、主にごはんやパン、麺などの炭水化物に多く含まれる栄養素で、活動するためのエネルギー源になっています。

私たちが生きるために欠かせない栄養素といえる糖質ですが、摂りすぎて余ると中性脂肪となり体内に蓄積。脂肪細胞に蓄えられることで、体重が増えたりぜい肉に変わったりして肥満につながります。

また、脂肪細胞だけでなく、中性脂肪が肝臓に蓄積すると脂肪肝に。まるでフォアグラのように脂肪が溜まった肝臓になり、進行すると肝硬変や肝臓がんのリスクが高まります。お酒を飲まない女性でも、糖質の摂りすぎによって脂肪肝になることもあるのです。

そのため糖質を抑えた食生活を送ることは、ダイエットや体型維持につながるとされ、多くの人が糖質制限を取り入れていることでしょう。しかし中には、「糖質制限をしているのに痩せられない」という人がいます。ダイエットが成功しない原因は“過剰すぎる制限”にあるかもしれません。
極端な糖質制限ダイエットは逆効果に
糖質制限の効果が表れない人の特徴として、糖質を抑えすぎていることが挙げられます。実は「炭水化物=太る」は間違い。ごはんの食べすぎは当然太りますが、減らしすぎても太るのです。「炭水化物はひと口だけ」「ごはんは一切食べない」など、糖質を極限まで減らした食事をしていませんか。

このような人に共通するのが、間食の増加です。糖質を減らしすぎると、食事による満足感が低下します。小腹が減ったり、口寂しい感じがしたりして、3食以外のおやつについ手が伸びていることも。一回の食事から摂る糖質量は少なくても、間食が増えるとその分全体の摂取カロリーが上がり、痩せられない要因になります。

ケーキを食べる女性写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです
次に考えられるのが、糖質の高いイモ類や野菜類の摂取です。ジャガイモ、サツマイモ、サトイモといったイモ類、カボチャやトウモロコシ、レンコンといった野菜類は、食物繊維は豊富ですが糖質は高く、ダイエットには注意が必要。

ジャガイモを使ったポテトサラダや、カボチャの煮物など、健康にいいと思って食べたおかずが実は糖質過多だった、ということも。糖質制限をする際は、このような野菜類にも気をつけましょう。

意外と盲点なのが、果物です。ビタミンやミネラルが豊富な果物は毎日摂りたい食材ではありますが、糖質が多いため食べすぎると中性脂肪が上がりやすくなります。「ヘルシーだから」といって、果物を山盛り食べていると糖質制限の効果が半減するといえるでしょう。

また、糖質制限でリバウンドを繰り返しているという人も多いのではないでしょうか。極端な糖質制限は一時的には有効かもしれません。しかしがまんしすぎることでストレスとなり、結果的に過食に走ってしまうパターンも多いのです。

炭水化物抜きの食生活が続くと筋力低下やむくみに
過剰な糖質制限がダイエットの逆効果になることを解説しました。そのほかにも体にとってさまざまな弊害が起こることがわかっています。

その一つが筋力の低下。食事で摂る糖質が減ると、タンパク質がその代わりをせざるを得ない状況に。本来タンパク質は、筋肉やあらゆる細胞をつくる材料として働きますが、糖質の働きであるエネルギー源として使われてしまうのです。この状況が長く続くことで、年齢問わず筋力の低下につながっていきます。

タンパク質がエネルギー源に使われることで、血中では低タンパク質血症も起こります。タンパク質濃度が薄くなると、それを補正しようとして血中から水を排出して濃縮。排出された水は体の組織に溜まり、むくみが発生しやすくなります。

血圧測定写真=iStock.com/LordHenriVoton
※写真はイメージです
また、糖質を抑える代わりに、大量に肉を食べている人もいますが、塩分摂取量が増えて高血圧になったり、タンパク質の代謝に関わる腎臓にも負担がかかります。肉の大量摂取は、同時に脂質量も増えるため、高コレステロールのリスクも高まります。

さらに、アルコールを飲む人は尿酸値にも影響するなど、過剰な糖質制限によって食事のバランスが極端に偏ることは、長い目で見ると健康に悪影響といえるのです。
糖質は3食摂ったほうが実は痩せる
筋力を落とさずに健康的に痩せるためには、糖質は3食摂ることが大切です。糖質制限という言葉と真逆のことをいうようですが、糖質はむしろ食べたほうが理想的な体重、体型に近づきやすいのです。タンパク質がしっかり筋肉の材料になり、代謝のいい体をキープできるからです。

食事は1日3食摂り、1食の中で炭水化物は50〜60%、タンパク質は15〜20%、脂質は20〜25%の割合にするのが、糖質制限の黄金バランスです。めざすのは、ごはん、汁物、肉もしくは魚、野菜を使った副菜がセットになった定食スタイル。

サバのみそ煮定食写真=iStock.com/Seiko
※写真はイメージです
ごはんは、1食につき茶わんにさらっと1杯盛った程度の「150g」が適量。白米でも問題ありませんが、ミネラルや食物繊維が豊富な麦ごはんや雑穀米に置き換えるのもおすすめです。

果物の1日の目安量は、リンゴなら2分の1個、バナナは1本、スイカは2切れ、ブドウは10粒程度です。これ以上食べると糖質が多くなるので注意を。

副菜や付け合わせには、糖質やカロリーが低い、野菜や海藻、キノコ、こんにゃくを料理にたくさん使うのが効果的です。糖質制限をしても痩せられない、もしくはリバウンドを繰り返しているという人ほど、食事による満足度が不足しています。これらは糖質を抑えながらダイエットできる優秀な食材といえます。

糖質で太らないためには食べる時間にも注意を
糖質はしっかり摂ったほうがいいと述べましたが、一つだけ注意したいのが、食べる時間帯です。「何をどの時間で食べるか」を研究した時間栄養学によると、22時〜深夜2時までは、糖質が吸収され中性脂肪が増えやすくなる時間帯といわれています。活動量が減る夜の時間帯は、糖質を摂らないようにしましょう。

どうしても仕事で食事が遅くなる場合は、炭水化物とそのほかのおかずや汁物を分けて食べる「分食」を。例えば17〜18時頃の早い時間帯に炭水化物を食べて、仕事が終わってからそれ以外を食べる工夫をすると、糖質の吸収を抑えることができ、ダイエットに効果的です。

糖質は、タンパク質や脂質とともに3大栄養素の一つで、体にとってなくてはならないものです。極端にカットすれば一時的には痩せますが、長続きはしません。痩せるか太るかを決めるのは、糖質の摂り方が重要。適正な量を正しいタイミングで摂り、健康的に痩せる体をつくりましょう。

構成=釼持陽子

田中 明(たなか・あきら)
糖尿病専門医/女子栄養大学名誉教授
1976年、東京医科歯科大学医学部医学科卒業。医学博士、糖尿病専門医、糖尿病研修指導医、認定臨床栄養指導医。東京都立府中病院内科医長、東京医科歯科大学第3内科講師、女子栄養大学大学院教授、女子栄養大学附属栄養クリニック所長を経て、2022年より女子栄養大学名誉教授。レイクタウン内科大宮駅前院名誉院長、吉祥寺二葉栄養調理専門職学校産業医・教授。『しっかり食べる!ゆっくりやせレシピ』(成美堂出版)など、監修書籍・著書多数。
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