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2017年09月03日
4-2-2. 米国経済実態指標(2017年9月版)
財政収支・国際収支の赤字が続いていても、主要先進国において米国経済は最も好調です。そういう実態を踏まえると、我々アマチュアにも現状の景気の良し悪しを最もわかりやすく表しているのがGDPです。
FX会社HPで重要度・注目度が高く位置付けられていても、反応が小さな指標が多い点が特徴です。
平均的に最も大きく反応する指標は小売売上高で、生産関係の指標はほとんど反応しません。
6月29日に発表された1-3月期GDP確定値は、改定値を上回って1.4%となりました。雇用状況が好調ゆえに、速報値の0.7%・改定値の1.2%よりもいずれ盛り返す、というFOMC見解は正しかったのでしょう。
そして、7月28日に発表された4-6月期GDP速報値は、期待通り+2.6%まで上昇しました。それにも関わらず、一部市場予想を下回ったため、発表直後の反応は陰線です。+2.6%という数字は、1-3月期の+1.4%だけでなく、10-12月期の+2.1%も上回っていたのに、です。
8月30日に発表されたGDP改定値の+3.0%という数字は、直近だと2016年7-9月期分の+3.2%に次ぐ水準です(改定値比較)。米GDPは夏頃(4-6月期か7-9月期)に毎年ピークを迎えます。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
速報値は、初期に比較的安定して大きく反応するものの、その後は伸び悩む傾向があります。
改定値の市場予想は低めになりがちで、発表結果は高めになりがちです。結果、直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の陽線率がいずれも70%前後と、かなり偏っています。
また、直後1分足の戻り比率は13%しかないものの、直後11分足のそれは42%もあります。その結果、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったことが69%にも達しています。よって、追撃は発表から1分過ぎまでで、その後は値を戻しがちです。
GDPに直接大きな影響を与えるPCEへの反応より、PCE結果を示唆する小売売上高への反応の方が大きくなる傾向があります。そして、GDPに占める比率が小さな生産関連指標や、個人消費に占める比率が高いと思われる住宅関連指標は、反応が小さい傾向があります。
米国GDPの約70%は個人消費(PCE)が占めています。その個人消費に直結する先行指標は小売売上高と考えられます。
8月15日に発表された7月分小売売上高は、前月比・コア前月比(除輸送機器)ともに前回・予想を上回り、反応は陽線でした。発表直後陽線は5か月ぶりでした。
指標のグラフ推移は、前月比・コア前月比ともに直近ピークの2017年4月を上回り、前月比は2016年12月以来、コア前月比は2017年1月以来の良い数字です。それらの時期はトランプ相場終盤の最も米国指標全般に良かった時期です。
8月30日に発表された4-6月期四半期PCE改定値は+3.3%で、この値は2016年4-6月期分の+4.4%に次ぐ水準でした(改定値比較)。7月28日に発表された4-6月期PCE速報値は+2.8%だったので、かなり大きな上方改定です。
8月31日に発表された7月分PCEは+0.3%(前回+0.1%)、同月分個人所得は+0.4%(前回0%)でした。前月に引き続き、個人所得0%は2016年11月以来です。
(分析事例) 四半期PCE速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE改定値(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
(分析事例) PCE・個人所得(2017年8月31日発表結果検証済)
(分析事例) 小売売上高(2017年8月15日発表結果検証済)
四半期PCEはGDPと同時発表されます。
多くのFX会社が重要度・注目度を高く評価しているにも関わらず、毎月のPCE・個人所得は、反応が小さい指標です。但し、反応方向は、直前10-1分足の方向と一致する傾向があり、発表から暫くしてもその方向に反応が伸びやすい、という特徴があります。
PCEは、CB消費者信頼感指数や小売売上高が先行指標だという話があります。がしかし、同月集計の両指標の実態差異はともに50%前後で、相関があるとは言えません。
初期反応は小さく、指標結果に素直に反応しがちです。発表から1分を過ぎても暫く反応を伸ばしがちですが、時間が経つと反応を伸ばし続けるか否か怪しくなります。追撃は早期参加し、短期利確を繰り返しながら複数回に分けて行った方が良いでしょう。
小売売上高は、CPI結果との実態差異の方向一致率が高い指標です(同時発表されることも多い)。指標発表後の反応は大きく一方向に伸びやすいため、追撃に適した指標だと言えます。
個人資産というのは、金融資産と住宅とがほとんどです。住宅は(ふつう)個人消費で最大の金額です。なので、住宅指標の良し悪しは、経済実態(個人消費)に直接的(住宅購入)にも間接的(家具等の耐久財購入)にも影響が大きい、と考えられています。
現在、米国住宅市場は在庫不足で、低価格帯住宅の販売が好調です。
8月23日に発表された7月分新築住宅販売件数は、年換算販売件数が57.1万件で、前月比が△9.4%でした。
8月24日に発表された7月分中古住宅販売件数は、年換算販売件数が544万件で、前月比が△1.3%でした。中古住宅在庫は26か月連続で前年水準を下回りました。その結果、販売価格が前年同月比で+6.2%となっています。
(分析事例) 新築住宅販売件数(2017年8月23日23:00発表結果検証済)
(分析事例) 中古住宅販売件数(2017年8月24日23:00発表結果検証済)
ともに、FX会社HPなどでは注目度や重要度が高く評価されている指標です。これら指標結果を予想するための指標も多く発表されているものの、これら指標自体の反応は小さく、よっぽど長期ポジションを持つFX参加者を除けば大して重要ではありません。
新築住宅販売件数は中古住宅販売件数より1〜2か月先行するという話があります。その理由の論理飛躍は、異なる客層の行動原理が異なることを無視した誤解が広く流布されたため、と考えられます。実際には両指標のどちらが先行指標であるにせよ、両指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は増減方向すら一致率が高くありません。
ただ、新築住宅販売件数はユニークで、取引上の魅力があります。
指標発表前に予兆的な動きが見受けられることと、発表から1分経過後の追撃に逆張りが適している点で、他の指標で見られない特徴を有しているからです。大したpipsは稼げないものの、勝ちやすい指標かも知れません。これは魅力です。
そして、中古住宅販売件数は、指標発表前に発表直後の反応方向を示唆する偏りが、いくつか過去事例から見出せます。指標発表後も一方向に反応を伸ばしやすいという傾向が見受けられます。これも、取引しやすい指標なのです。
鉱工業(含製造業・エネルギー産業)は、米国GDPの約12%しか占めていません。だから、製造業の好不調が米国経済に与える直接効果は小さい、と捉えています。雇用指標・景気指標・国際収支に影響すると考えているので記録を取って見ていますが、反応が小さくそのときどきのトレンドに呑まれがちなため、指標分析に基づく取引には適していません。
8月17日に発表された7月分鉱工業生産・製造業生産は前回より低下しました。低下幅は、これら指標の過去推移に比べて正常範囲内です。よって、今回の発表があっても鉱工業生産と製造業生産のグラフ推移からは、変化の兆しが窺えません。ただ、設備稼働率は、2016年11月分以降の上昇基調が77%手前で4か月連続停滞しています。
グラフ推移から鉱工業・製造業の好不調を見やすい設備稼働率を見る限り、ここ最近の製造関連景気指標の低下は説明が付かない現象でした。
8月25日に発表された7月分耐久財受注前月比は、前回を大きく下回り△6.8%(前回+6.5%)ました。コア受注は+0.5%(前回+0.2%)でした。
(分析事例) 鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率(2017年8月17日発表結果検証済)
(分析事例) 耐久財受注(2017年8月25日発表結果検証済)
指標発表直後1分足跳幅が数pipsしかない指標では、指標結果に素直に反応しがち(事後差異と直後1分足の方向一致率が70%以上)で、且つ、指標結果の予想ができなければ取引する意味がありません。
僅か数pipsしか跳ねない指標では、比較的稼ぎやすい反応方向を確認してからの追撃をうまく出来ても、もっと小さなpipsしか得られません。何より、指標発表直後にすら大きく跳ねない指標は、もし反応を伸ばしがちだという分析結論を得ても、それが単にそのときどきのトレンドに偏りがあったことと区別ができないからです。
耐久財受注は、先に発表される鉱工業生産(同時に製造業生産・設備稼働率が発表)の実態差異(発表結果ー前回結果)との方向一致率が77%となり、両指標の良し悪しに相関があります。
最近は毎月400億ドル台の貿易赤字が続いています。毎月400億ドルという大きさは、年間で日本の国家予算近い規模の赤字ということです。米国の経済規模というのは本当にすごいのですね。
8月4日に発表された6月分貿易収支は、前月比△5.9%の465億ドルの赤字でした。
前月発表(5月分)では、内訳の輸出が2年ぶりの高水準でした。石油輸出が好調なだけでなく、輸出全体が約2年半ぶりの好調さです。今回発表では収支全体が2016年10月以来の赤字縮小でした。がしかし、直近の収支はここ2・3年で赤字が大きな時期に属します。赤字縮小に向かっている兆しは、まだグラフ推移から見出せません。
対中貿易赤字は+3.1%増加し、輸出が減って(△4.7%)、輸入が増えていました(+1.2%)。
米貿易赤字の47%は対中赤字です(2016年)。
7月16日に期日を迎えた米中100日計画は、早い時期にいくつかの合意がありました。中国市場への米国産牛肉輸出再開、米金融機関が中国市場で格付け業務・債券売買に参入、米LNG(液化天然ガス)輸出、といった内容です。その後、新たな合意についての報道がありません。これらの合意成果は、まだ指標結果に反映されていません。
8月18日、USTR(米通商代表部)は、通商法301条に基づく中国の知的財産権侵害調査を開始しました。8月24日、中国商務省は、国益を守るために必要なあらゆる手段を講じる、と表明しました。
(分析事例) 貿易収支(2017年4月4日発表結果検証済)
本指標の特徴は、貿易赤字が多少増えようが減ろうが、発表直後の反応方向にあまり関係ありません。発表時刻の関係で、他の大きな指標と同時発表されることも多く、その結果、見掛け上の反応平均値は大きくなっています。単独で発表される場合には、あまり反応しない指標です。
本指標結果や内訳を論拠に、米政権からの2国間貿易収支に関する牽制発言があり得ます。本指標の意義は、毎月の貿易赤字の多寡よりも、そうした発言でUSDJPYが動くことへの警鐘を与えてくれることです。
FX会社HPで重要度・注目度が高く位置付けられていても、反応が小さな指標が多い点が特徴です。
平均的に最も大きく反応する指標は小売売上高で、生産関係の指標はほとんど反応しません。
【4-2-2.(1).経済成長】
6月29日に発表された1-3月期GDP確定値は、改定値を上回って1.4%となりました。雇用状況が好調ゆえに、速報値の0.7%・改定値の1.2%よりもいずれ盛り返す、というFOMC見解は正しかったのでしょう。
そして、7月28日に発表された4-6月期GDP速報値は、期待通り+2.6%まで上昇しました。それにも関わらず、一部市場予想を下回ったため、発表直後の反応は陰線です。+2.6%という数字は、1-3月期の+1.4%だけでなく、10-12月期の+2.1%も上回っていたのに、です。
8月30日に発表されたGDP改定値の+3.0%という数字は、直近だと2016年7-9月期分の+3.2%に次ぐ水準です(改定値比較)。米GDPは夏頃(4-6月期か7-9月期)に毎年ピークを迎えます。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
速報値は、初期に比較的安定して大きく反応するものの、その後は伸び悩む傾向があります。
改定値の市場予想は低めになりがちで、発表結果は高めになりがちです。結果、直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の陽線率がいずれも70%前後と、かなり偏っています。
また、直後1分足の戻り比率は13%しかないものの、直後11分足のそれは42%もあります。その結果、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったことが69%にも達しています。よって、追撃は発表から1分過ぎまでで、その後は値を戻しがちです。
【4-2-2.(2) 実態指標】
GDPに直接大きな影響を与えるPCEへの反応より、PCE結果を示唆する小売売上高への反応の方が大きくなる傾向があります。そして、GDPに占める比率が小さな生産関連指標や、個人消費に占める比率が高いと思われる住宅関連指標は、反応が小さい傾向があります。
(2-1) 消費関連
米国GDPの約70%は個人消費(PCE)が占めています。その個人消費に直結する先行指標は小売売上高と考えられます。
8月15日に発表された7月分小売売上高は、前月比・コア前月比(除輸送機器)ともに前回・予想を上回り、反応は陽線でした。発表直後陽線は5か月ぶりでした。
指標のグラフ推移は、前月比・コア前月比ともに直近ピークの2017年4月を上回り、前月比は2016年12月以来、コア前月比は2017年1月以来の良い数字です。それらの時期はトランプ相場終盤の最も米国指標全般に良かった時期です。
8月30日に発表された4-6月期四半期PCE改定値は+3.3%で、この値は2016年4-6月期分の+4.4%に次ぐ水準でした(改定値比較)。7月28日に発表された4-6月期PCE速報値は+2.8%だったので、かなり大きな上方改定です。
8月31日に発表された7月分PCEは+0.3%(前回+0.1%)、同月分個人所得は+0.4%(前回0%)でした。前月に引き続き、個人所得0%は2016年11月以来です。
(分析事例) 四半期PCE速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE改定値(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
(分析事例) PCE・個人所得(2017年8月31日発表結果検証済)
(分析事例) 小売売上高(2017年8月15日発表結果検証済)
四半期PCEはGDPと同時発表されます。
多くのFX会社が重要度・注目度を高く評価しているにも関わらず、毎月のPCE・個人所得は、反応が小さい指標です。但し、反応方向は、直前10-1分足の方向と一致する傾向があり、発表から暫くしてもその方向に反応が伸びやすい、という特徴があります。
PCEは、CB消費者信頼感指数や小売売上高が先行指標だという話があります。がしかし、同月集計の両指標の実態差異はともに50%前後で、相関があるとは言えません。
初期反応は小さく、指標結果に素直に反応しがちです。発表から1分を過ぎても暫く反応を伸ばしがちですが、時間が経つと反応を伸ばし続けるか否か怪しくなります。追撃は早期参加し、短期利確を繰り返しながら複数回に分けて行った方が良いでしょう。
小売売上高は、CPI結果との実態差異の方向一致率が高い指標です(同時発表されることも多い)。指標発表後の反応は大きく一方向に伸びやすいため、追撃に適した指標だと言えます。
(2-2) 住宅関連
個人資産というのは、金融資産と住宅とがほとんどです。住宅は(ふつう)個人消費で最大の金額です。なので、住宅指標の良し悪しは、経済実態(個人消費)に直接的(住宅購入)にも間接的(家具等の耐久財購入)にも影響が大きい、と考えられています。
現在、米国住宅市場は在庫不足で、低価格帯住宅の販売が好調です。
8月23日に発表された7月分新築住宅販売件数は、年換算販売件数が57.1万件で、前月比が△9.4%でした。
8月24日に発表された7月分中古住宅販売件数は、年換算販売件数が544万件で、前月比が△1.3%でした。中古住宅在庫は26か月連続で前年水準を下回りました。その結果、販売価格が前年同月比で+6.2%となっています。
(分析事例) 新築住宅販売件数(2017年8月23日23:00発表結果検証済)
(分析事例) 中古住宅販売件数(2017年8月24日23:00発表結果検証済)
ともに、FX会社HPなどでは注目度や重要度が高く評価されている指標です。これら指標結果を予想するための指標も多く発表されているものの、これら指標自体の反応は小さく、よっぽど長期ポジションを持つFX参加者を除けば大して重要ではありません。
新築住宅販売件数は中古住宅販売件数より1〜2か月先行するという話があります。その理由の論理飛躍は、異なる客層の行動原理が異なることを無視した誤解が広く流布されたため、と考えられます。実際には両指標のどちらが先行指標であるにせよ、両指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は増減方向すら一致率が高くありません。
ただ、新築住宅販売件数はユニークで、取引上の魅力があります。
指標発表前に予兆的な動きが見受けられることと、発表から1分経過後の追撃に逆張りが適している点で、他の指標で見られない特徴を有しているからです。大したpipsは稼げないものの、勝ちやすい指標かも知れません。これは魅力です。
そして、中古住宅販売件数は、指標発表前に発表直後の反応方向を示唆する偏りが、いくつか過去事例から見出せます。指標発表後も一方向に反応を伸ばしやすいという傾向が見受けられます。これも、取引しやすい指標なのです。
(2-3) 生産関連
鉱工業(含製造業・エネルギー産業)は、米国GDPの約12%しか占めていません。だから、製造業の好不調が米国経済に与える直接効果は小さい、と捉えています。雇用指標・景気指標・国際収支に影響すると考えているので記録を取って見ていますが、反応が小さくそのときどきのトレンドに呑まれがちなため、指標分析に基づく取引には適していません。
8月17日に発表された7月分鉱工業生産・製造業生産は前回より低下しました。低下幅は、これら指標の過去推移に比べて正常範囲内です。よって、今回の発表があっても鉱工業生産と製造業生産のグラフ推移からは、変化の兆しが窺えません。ただ、設備稼働率は、2016年11月分以降の上昇基調が77%手前で4か月連続停滞しています。
グラフ推移から鉱工業・製造業の好不調を見やすい設備稼働率を見る限り、ここ最近の製造関連景気指標の低下は説明が付かない現象でした。
8月25日に発表された7月分耐久財受注前月比は、前回を大きく下回り△6.8%(前回+6.5%)ました。コア受注は+0.5%(前回+0.2%)でした。
(分析事例) 鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率(2017年8月17日発表結果検証済)
(分析事例) 耐久財受注(2017年8月25日発表結果検証済)
指標発表直後1分足跳幅が数pipsしかない指標では、指標結果に素直に反応しがち(事後差異と直後1分足の方向一致率が70%以上)で、且つ、指標結果の予想ができなければ取引する意味がありません。
僅か数pipsしか跳ねない指標では、比較的稼ぎやすい反応方向を確認してからの追撃をうまく出来ても、もっと小さなpipsしか得られません。何より、指標発表直後にすら大きく跳ねない指標は、もし反応を伸ばしがちだという分析結論を得ても、それが単にそのときどきのトレンドに偏りがあったことと区別ができないからです。
耐久財受注は、先に発表される鉱工業生産(同時に製造業生産・設備稼働率が発表)の実態差異(発表結果ー前回結果)との方向一致率が77%となり、両指標の良し悪しに相関があります。
【4-2-2.(3) 貿易指標】
最近は毎月400億ドル台の貿易赤字が続いています。毎月400億ドルという大きさは、年間で日本の国家予算近い規模の赤字ということです。米国の経済規模というのは本当にすごいのですね。
8月4日に発表された6月分貿易収支は、前月比△5.9%の465億ドルの赤字でした。
前月発表(5月分)では、内訳の輸出が2年ぶりの高水準でした。石油輸出が好調なだけでなく、輸出全体が約2年半ぶりの好調さです。今回発表では収支全体が2016年10月以来の赤字縮小でした。がしかし、直近の収支はここ2・3年で赤字が大きな時期に属します。赤字縮小に向かっている兆しは、まだグラフ推移から見出せません。
対中貿易赤字は+3.1%増加し、輸出が減って(△4.7%)、輸入が増えていました(+1.2%)。
米貿易赤字の47%は対中赤字です(2016年)。
7月16日に期日を迎えた米中100日計画は、早い時期にいくつかの合意がありました。中国市場への米国産牛肉輸出再開、米金融機関が中国市場で格付け業務・債券売買に参入、米LNG(液化天然ガス)輸出、といった内容です。その後、新たな合意についての報道がありません。これらの合意成果は、まだ指標結果に反映されていません。
8月18日、USTR(米通商代表部)は、通商法301条に基づく中国の知的財産権侵害調査を開始しました。8月24日、中国商務省は、国益を守るために必要なあらゆる手段を講じる、と表明しました。
(分析事例) 貿易収支(2017年4月4日発表結果検証済)
本指標の特徴は、貿易赤字が多少増えようが減ろうが、発表直後の反応方向にあまり関係ありません。発表時刻の関係で、他の大きな指標と同時発表されることも多く、その結果、見掛け上の反応平均値は大きくなっています。単独で発表される場合には、あまり反応しない指標です。
本指標結果や内訳を論拠に、米政権からの2国間貿易収支に関する牽制発言があり得ます。本指標の意義は、毎月の貿易赤字の多寡よりも、そうした発言でUSDJPYが動くことへの警鐘を与えてくれることです。
以上
4-3. 欧州経済指標(2017年9月版)
欧州の経済指標発表前後の取引はEURJPYで行っています。
欧州経済指標発表前後のEURJPYは、トレンドの影響が強く指標結果の影響が弱い、という傾向を感じています。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートに折込済という場合が多いのでしょう。だから、指標発表結果への反応方向は素直なものの、反応程度が小さく反応期間が短い、という感触を持っています。
以下、9月版は8月版を順次改訂していきます。
8月は大きな動きがありませんでした。
直近の大きな動きをなぞっておきます。
2016年6月の英EU離脱国民投票は、離脱賛成が52%を占めて、英国のEU離脱が決定しました。2017年4-5月に行われた仏大統領選では、第一回投票の上位2名が、マクロン候補(得票率24%)とルペン候補(得票率21.3%)となりました。極右候補のルペン氏が2位となったことで、開票翌日月曜のEURJPYは400pipsもの窓を開けて上昇しました。第二回投票で66%を得票したマクロン候補は大統領に選出され、6月の仏下院選で与党連立が350議席(総数577)を占めました。
ひとまず政治課題に目鼻がついたこの頃から、ECB緩和政策の継続是非について話題に挙がることが増えました。6月28日、「ECB総裁が政策微調整の可能性を示唆」との報道があり、ECBが9月にも緩和策縮小を発表する可能性があるという憶測が報道されました。その結果、独金利とEURは高騰し、DAX(独株価)はどかんと下がりました。
翌29日にはECB関係筋の話として、この憶測は打ち消されています。
ECB幹部が緩和縮小への着手を積極的に宣伝すると、独選挙に影響を与えかねないことがわかりました。そして、いちいちECBの緩和政策に難癖をつけていた独財務相も、コロッと態度を変えることもわかりました。
ならば、もうECBが独政権与党の足を引っ張るとは思えません。独総選挙は9月24日です。
8月10日に報道された世論調査結果によると、独首相支持率は59%(7月調査では69%)でした。独首相はこの選挙で勝利すれば4期目を狙うことになります。
9月発表で見るべき経済指標は、第2週(9月4日〜8日)のECB金融政策発表ぐらいしかありません。下旬(24日)の独総選挙が終わるまで、それどころじゃありません。
欧州経済指標発表前後のEURJPYは、トレンドの影響が強く指標結果の影響が弱い、という傾向を感じています。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートに折込済という場合が多いのでしょう。だから、指標発表結果への反応方向は素直なものの、反応程度が小さく反応期間が短い、という感触を持っています。
以下、9月版は8月版を順次改訂していきます。
8月は大きな動きがありませんでした。
直近の大きな動きをなぞっておきます。
2016年6月の英EU離脱国民投票は、離脱賛成が52%を占めて、英国のEU離脱が決定しました。2017年4-5月に行われた仏大統領選では、第一回投票の上位2名が、マクロン候補(得票率24%)とルペン候補(得票率21.3%)となりました。極右候補のルペン氏が2位となったことで、開票翌日月曜のEURJPYは400pipsもの窓を開けて上昇しました。第二回投票で66%を得票したマクロン候補は大統領に選出され、6月の仏下院選で与党連立が350議席(総数577)を占めました。
ひとまず政治課題に目鼻がついたこの頃から、ECB緩和政策の継続是非について話題に挙がることが増えました。6月28日、「ECB総裁が政策微調整の可能性を示唆」との報道があり、ECBが9月にも緩和策縮小を発表する可能性があるという憶測が報道されました。その結果、独金利とEURは高騰し、DAX(独株価)はどかんと下がりました。
翌29日にはECB関係筋の話として、この憶測は打ち消されています。
ECB幹部が緩和縮小への着手を積極的に宣伝すると、独選挙に影響を与えかねないことがわかりました。そして、いちいちECBの緩和政策に難癖をつけていた独財務相も、コロッと態度を変えることもわかりました。
ならば、もうECBが独政権与党の足を引っ張るとは思えません。独総選挙は9月24日です。
8月10日に報道された世論調査結果によると、独首相支持率は59%(7月調査では69%)でした。独首相はこの選挙で勝利すれば4期目を狙うことになります。
9月発表で見るべき経済指標は、第2週(9月4日〜8日)のECB金融政策発表ぐらいしかありません。下旬(24日)の独総選挙が終わるまで、それどころじゃありません。
ーーー$€¥ーーー
- 4-3-1. 欧州政策決定指標
9月7日のECB理事会結論は「市場予想通り現状維持」でした。
発表後、ECB総裁が記者会見を行い、動きはそちらで生じました(EUR高騰)。記者会見の要点は「次回理事会で、資産買い入れを縮小(緩和縮小)することに合意した」というものです。その際、「EUR高は既にインフレ率に影響を与えており、緩和縮小方法の検討にあたってEUR相場が中心課題となる」旨、申し添えています。
その後、縮小方法について解説記事がいくつか出ています。
ロイターは「資産買い入れ規模を2018年から400億EURか200億EURに縮小する2通りに、延長期間を6か月か9か月にすることの2通り、で組み合わせで4通りの選択肢がある」旨、ECB関係者の発言として取り上げていました。この選択肢を中心に、次回10月26日の理事会で決定を行う可能性が高い、という話です。ただ、今回理事会での中心議題は「買入総額」についてで、それは償還債券資金の再投資に関わります。そして「買入終了以前に利上げを行わないこと」を合意しました。ーーー$€¥ーーー - 4-3-2. 欧州経済実態指標
以上
4-3-1. 欧州政策決定指標(2017年9月版)
ECB総裁発言が絡むときは要注意です。発言の影響が大きく、内容的に明言できないことも多いため、市場が誤解して大きく反応することも多々あります。すると翌日、本人ないしはECB関係筋の話として打ち消されるのです。それでまた一気に逆方向に反応してしまいます。
だったら、最初から狙っている方向はEUR高/EUR安とはっきり言えば良いのに、と思います(言えません。G20の合意に基づき、各国政府・中銀は為替誘導を目的とした発言を行わないことになっています)。
9月7日のECB理事会結論は「市場予想通り現状維持」でした。
発表後、ECB総裁が記者会見を行い、動きはそちらで生じました(EUR高騰)。記者会見の要点は「次回理事会で、資産買い入れを縮小(緩和縮小)することに合意した」というものです。その際、「EUR高は既にインフレ率に影響を与えており、緩和縮小方法の検討にあたってEUR相場が中心課題となる」旨、申し添えています。
その後、縮小方法について解説記事がいくつか出ています。
ロイターは「資産買い入れ規模を2018年から400億EURか200億EURに縮小する2通りに、延長期間を6か月か9か月にすることの2通り、で組み合わせで4通りの選択肢がある」旨、ECB関係者の発言として取り上げていました。この選択肢を中心に、次回10月26日の理事会で決定を行う可能性が高い、という話です。ただ、今回理事会での中心議題は「買入総額」についてで、それは償還債券資金の再投資に関わります。そして「買入終了以前に利上げを行わないこと」を合意しました。
次回は10月26日です。
(分析事例) ECB金融政策(2017年9月7日発表結果検証済)
ECB金融政策発表時には、発表前から大きく動くことが多く、その動きが発表後の反応方向と関係ありません。そして、発表後初期反応の影響はせいぜい数分間と見なした方が良く、発表から11分経過後に1分後の値幅を伸ばしていたことは3分の1程度です。
過去の直前1分足の陰線率や直後1分足の陽線率はちょっと異常な偏りがあります。これら確率を見て逆張りは論外です。それぞれのローソク足で逆張りは論外なので、選択肢は「順張り決め打ち」か「取引しない」の2通りです。
発表後に追撃ポジションを取り、それが直後1分足値幅より小さいポイントなら、発表から1分を過ぎてからもっと利幅を伸ばせる確率が非常に高くなります。がしかし、このポジションは長持ちすべきではありません。発表から11分後に1分後の値幅を伸ばしていたことが3分の1程度しかないからです。
逆に、発表後1分を過ぎてから逆張りの機会を狙う、というやり方もあります。但し、これは逆張りになるので、直上直下のレジスタンスやサポート到達を待って取引しないと、勝率を下げてしまいます。
欧州の政策決定過程は非常にわかりにくい仕組です。
欧州理事会(EU首脳会議)は、各国首脳と欧州委員会委員長とEU大統領によって構成されています。閣僚理事会は各加盟国から1名ずつ代表が選出され、各国が持ち回りで議長国を務めます。欧州委員会は各加盟国から1名ずつ選出された委員によって構成されています。欧州議会の議席配分は人口によって割り振られています。
で、どこが予算案を作ってどうやって配分するのかがわかりにくいのです。
ともあれ、そうしたEU施策を実務に落とし込むのは「EUの巨大な官僚機構」と言われる組織です。この官僚機構への不満が加盟国では広がっています。一転、この官僚機構の既得権を脅かすことはEU解体です。離脱する英国に対し、猛烈に厳しい条件なんて、その上の政治家が何とかするでしょう。欧州にはしっかりした政治家も歴史的に多いのです。だから、英国にとって最も恐れるべきことは、この官僚機構の猛烈な事務遅延ではないでしょうか。第二の英国が現れて最も困るのは、この官僚機構なのです。
独国景気指標は、ZEW・PMI速報値・Ifo・PMI改定値の順に発表されます。PMI改定値はほぼ反応しないため取引しません。別々の指標であっても、全体的に上昇基調・下降基調というのは、グラフを見ればほぼ向きと期間が一致します。
問題は、単月毎だと、ZEW・PMI速報値・Ifoの実態差異(発表結果ー前回結果)の符号(プラス・マイナス)の一致率が低いことです。単月毎の予想では、先に発表された指標結果が後で発表される指標結果の改善・悪化すらアテにならない、ということです。よって、毎回の指標結果予想の論拠は、単月データに基づくものでなく、トレンドの有無に基づくものでなければいけません。
9月19日に発表された独国ZEW景況感調査は、現況指数が87.9、期待指数が17.0でした。
現況指数の直近ピークは2017年6月分の88.0です。今回結果はそれに僅かに届きませんでした。期待指数の直近ピークは2017年5月分の20.6です。それ以降、下降が続いていたので、上昇は4か月ぶりでした。
全般的には今回の結果がかなり良かった、ということになります。
反応は、直後1分足跳幅が12pips(過去平均8pips)、直後11分足値幅が16pips(過去平均8pips)、でした。現況指数・期待指数ともに前回・予想を上回れば、平均以上の素直に反応することが確かめられました。
次回は10月17日に発表予定です。
(分析事例) 独国ZEW景況感調査(2017年9月19日発表結果検証済)
ZEWは期待指数と現況指数とが発表され、指標発表後の反応方向に影響するのは現況指数です。よく「期待指数が重要」との解説を見かけますが、重要かもしれなくても期待指数の良し悪しは反応方向との一致率が低くなっています。
今回9月分発表結果を折込むと、直前1分足の陰線率が90%・直後1分足の陽線率は73%となり、異常な偏りがあります。そして、直前1分足と直後1分足の方向一致率が13%(不一致率87%)で、矛盾はありません。但し、直前1分足・直後1分足ともに反応は小さいので、大して利幅が稼げる訳ではありません。
追撃は、反応方向確認後に早期開始し、1分を過ぎたら利確の機会を窺い、ポジションの長持ちは避けるべきです。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は72%で、その71%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが86%です。この数字が、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃の論拠です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは、直後1分足と直後11分足の方向が一致しても62%しかなく、反転することも含めると45%と、50%を切っています。これが、早期追撃開始で得たポジションの長持ちは避けるべき、とする論拠です。
PMIは、速報値で取引を行い、改定値では取引しません。改定値は反応が小さくなりがちだからです。
改定値では、製造業とサービス業が別の日に発表されます。製造業は、事後差異(発表結果ー市場予想)が0となることが多く、反応方向が指標結果からは読み取れません。サービス業は、事後差異にプラスかマイナスの符号が付くことは多いものの、やはり反応は小さくなりがちです。
速報値は速報であるだけなく、製造業・サービス業が同時に発表されるため、対象範囲の広さに応じて影響(反応)が大きくなりがちです。尤も、それでも反応(直後1分足跳幅平均)は独国・欧州ともに6pipsと、大したことはありません。
9月22日に発表された独国9月分PMI速報値は、総合・製造業・サービス業のいずれも前回・予想を上回りました。グラフ推移は急上昇と言っても良く、いずれも直近のピークを上回っています。
次回発表は10月24日です。
(分析事例) 独国PMI速報値(2017年7月24日発表結果検証済)
本指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は、先行発表されるZEWとの実態差異の方向一致率は62%です。それほど高い数字ではないものの、無視するにも中途半端に高い数字です。
むしろアテになるのは、事前差異(市場予想ー前回結果)と直後1分足の方向一致率が25%(不一致率75%)となっている点です。
直後1分足は、事後差異(発表結果ー市場予想)との方向一致率が84%で、かなり素直に反応します。直後1分足と直後11分足の方向一致率66%で、あまり高くありません。
8月24日に発表された独国Ifo景況感指数は115.9(前回116.0)で、景況感は107.9(前回107.3)、現況分析は124.6(前回125.4)と、まちまちの結果になりました。
(分析事例) 独国Ifo景況指数(2017年8月25日発表結果検証済)
Ifoの指標結果分析にはあまり意味がありません。
まず、ZEW景況感調査との先行性・遅行性を論じた解説が散見されます。がしかし、本指標との実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率は、一方の指標を前後2か月までずらしても50%以下です。少なくとも単月毎のZEWの結果良し悪しは、本指標結果予想には確率的に無意味です。
また、本指標の過去の傾向は、指標結果の良し悪しと反応方向の相関が低く、指標予想を当ててもどちらに反応するかがわかりません。特に、強いトレンドを生じているときには、本指標の反応は小さく影響期間が短いため、指標結果なんてほぼ役に立たないのです。
欧州景気指標はPMI速報値のみ取引し、ZEW景況感調査やPMI改定値(最終値に相当)では取引しません。
9月22日に発表された欧州9月分PMI速報値は、製造業が58.2(前回改定値57.4)、サービス業が55.6(前回改定値54.7)、でした。製造業は直近のピークの前月分を上抜け、サービス業も2017年2月以降も2013年以降でかなり高水準なままで上下しています。
次回発表は10月24日が予定されています。
(分析事例) 欧州PMI速報値(2017年6月23日発表結果検証済)
最近の製造業は、市場予想後追い型で推移しています。どちらかと言えば、指標結果が良ければ陰線、悪ければ陽線で反応しがちです。実態差異のマイナス率が77%に達していますが、実態差異と直後11分足の方向一致率は33%しかありません。
これが本指標の特徴です。
直後1分足は、直前1分足との方向一致率が15%(不一致率85%)です。追撃は指標発表後すぐに開始して、発表から1分を過ぎると利確の機会を探るべきです。直後1分足と直後11分足の終値を比べたとき、反応を伸ばしたことが32%、値幅を削ったことは36%、反転したことは32%、と追撃ポジションの長持ちには向いていません。
ECBは、実質的にインフレ目標(前年比2%付近で以下)を設定しています。現在、その近辺まで回復したという見方と、まだ目標付近で安定していないという見方があり、ECB政策に絡むだけに本指標は重要視されています。
ECBとIMFの2017年インフレ率は各1.5%・1.6%、2018年は各1.4%・1.5%と見込まれています。ECBは慎重です。
6月28日に市場を混乱させたECB総裁発言の「秋に政策微調整可否のための状況確認」は、この前年比が秋までに目標近辺に到達するという意味ではない、と思われます。数字がなかなか2%を超えないことを表向きの理由に挙げて、秋の独総選挙が終わるまで新たな情勢判断を不用意に出来ない、と受け取る方がしっくりきます。
8月31日に発表された8月分HICP前年比速報値は、前回結果をやや上回りました。コアHICP前年比は上昇基調を継続しており、HICP前年比は少し前まで下降基調転換を懸念されていたものの、こちらも上昇に転じたかも知れません。
次回発表は9月29日です。
(分析事例) HICP(消費者物価指数)速報値(2017年7月31日発表結果検証済)
欧州物価指標(HICP)は取引に向かない指標です。
速報値は反応が小さため、反応方向が指標結果に対しあまり素直ではありません(トレンドに飲み込まれがちです)。だから、指標分析の意味がありません。そして、改定値は速報値とほぼ結果が一致します。結果が一致するのにEURが動くのは、指標の影響ではありません。
8月31日に発表された独国8月分雇用統計の結果は、失業率が5.7%(6・7月分同値)、失業者数前月差は△0.5万人(7月分△0.9万人)でした。失業率は2014年以降ほぼ単調に低下し、最近は低下が加速していたものの、この3か月は停滞しています。失業者数前月差は、2015年1月分以降プラスだったことが4回しかありません。
次回発表は9月30日です。
8月31日に発表された欧州7月分失業率は+9.1%でした。各国平均で9.1%という数字に驚きますが、これでも2013年9月の12.2%をピークにほぼ毎月単調に低下しています。
次回発表は10月2日です。
だったら、最初から狙っている方向はEUR高/EUR安とはっきり言えば良いのに、と思います(言えません。G20の合意に基づき、各国政府・中銀は為替誘導を目的とした発言を行わないことになっています)。
【4-3-1.(1) 政策決定指標】
9月7日のECB理事会結論は「市場予想通り現状維持」でした。
発表後、ECB総裁が記者会見を行い、動きはそちらで生じました(EUR高騰)。記者会見の要点は「次回理事会で、資産買い入れを縮小(緩和縮小)することに合意した」というものです。その際、「EUR高は既にインフレ率に影響を与えており、緩和縮小方法の検討にあたってEUR相場が中心課題となる」旨、申し添えています。
その後、縮小方法について解説記事がいくつか出ています。
ロイターは「資産買い入れ規模を2018年から400億EURか200億EURに縮小する2通りに、延長期間を6か月か9か月にすることの2通り、で組み合わせで4通りの選択肢がある」旨、ECB関係者の発言として取り上げていました。この選択肢を中心に、次回10月26日の理事会で決定を行う可能性が高い、という話です。ただ、今回理事会での中心議題は「買入総額」についてで、それは償還債券資金の再投資に関わります。そして「買入終了以前に利上げを行わないこと」を合意しました。
次回は10月26日です。
(分析事例) ECB金融政策(2017年9月7日発表結果検証済)
ECB金融政策発表時には、発表前から大きく動くことが多く、その動きが発表後の反応方向と関係ありません。そして、発表後初期反応の影響はせいぜい数分間と見なした方が良く、発表から11分経過後に1分後の値幅を伸ばしていたことは3分の1程度です。
過去の直前1分足の陰線率や直後1分足の陽線率はちょっと異常な偏りがあります。これら確率を見て逆張りは論外です。それぞれのローソク足で逆張りは論外なので、選択肢は「順張り決め打ち」か「取引しない」の2通りです。
発表後に追撃ポジションを取り、それが直後1分足値幅より小さいポイントなら、発表から1分を過ぎてからもっと利幅を伸ばせる確率が非常に高くなります。がしかし、このポジションは長持ちすべきではありません。発表から11分後に1分後の値幅を伸ばしていたことが3分の1程度しかないからです。
逆に、発表後1分を過ぎてから逆張りの機会を狙う、というやり方もあります。但し、これは逆張りになるので、直上直下のレジスタンスやサポート到達を待って取引しないと、勝率を下げてしまいます。
【4-3-1.(2) 財政政策】
欧州の政策決定過程は非常にわかりにくい仕組です。
欧州理事会(EU首脳会議)は、各国首脳と欧州委員会委員長とEU大統領によって構成されています。閣僚理事会は各加盟国から1名ずつ代表が選出され、各国が持ち回りで議長国を務めます。欧州委員会は各加盟国から1名ずつ選出された委員によって構成されています。欧州議会の議席配分は人口によって割り振られています。
で、どこが予算案を作ってどうやって配分するのかがわかりにくいのです。
ともあれ、そうしたEU施策を実務に落とし込むのは「EUの巨大な官僚機構」と言われる組織です。この官僚機構への不満が加盟国では広がっています。一転、この官僚機構の既得権を脅かすことはEU解体です。離脱する英国に対し、猛烈に厳しい条件なんて、その上の政治家が何とかするでしょう。欧州にはしっかりした政治家も歴史的に多いのです。だから、英国にとって最も恐れるべきことは、この官僚機構の猛烈な事務遅延ではないでしょうか。第二の英国が現れて最も困るのは、この官僚機構なのです。
【4-3-1.(3) 景気指標】
独国景気指標は、ZEW・PMI速報値・Ifo・PMI改定値の順に発表されます。PMI改定値はほぼ反応しないため取引しません。別々の指標であっても、全体的に上昇基調・下降基調というのは、グラフを見ればほぼ向きと期間が一致します。
問題は、単月毎だと、ZEW・PMI速報値・Ifoの実態差異(発表結果ー前回結果)の符号(プラス・マイナス)の一致率が低いことです。単月毎の予想では、先に発表された指標結果が後で発表される指標結果の改善・悪化すらアテにならない、ということです。よって、毎回の指標結果予想の論拠は、単月データに基づくものでなく、トレンドの有無に基づくものでなければいけません。
(3-1) 独国ZEW景況感調査
9月19日に発表された独国ZEW景況感調査は、現況指数が87.9、期待指数が17.0でした。
現況指数の直近ピークは2017年6月分の88.0です。今回結果はそれに僅かに届きませんでした。期待指数の直近ピークは2017年5月分の20.6です。それ以降、下降が続いていたので、上昇は4か月ぶりでした。
全般的には今回の結果がかなり良かった、ということになります。
反応は、直後1分足跳幅が12pips(過去平均8pips)、直後11分足値幅が16pips(過去平均8pips)、でした。現況指数・期待指数ともに前回・予想を上回れば、平均以上の素直に反応することが確かめられました。
次回は10月17日に発表予定です。
(分析事例) 独国ZEW景況感調査(2017年9月19日発表結果検証済)
ZEWは期待指数と現況指数とが発表され、指標発表後の反応方向に影響するのは現況指数です。よく「期待指数が重要」との解説を見かけますが、重要かもしれなくても期待指数の良し悪しは反応方向との一致率が低くなっています。
今回9月分発表結果を折込むと、直前1分足の陰線率が90%・直後1分足の陽線率は73%となり、異常な偏りがあります。そして、直前1分足と直後1分足の方向一致率が13%(不一致率87%)で、矛盾はありません。但し、直前1分足・直後1分足ともに反応は小さいので、大して利幅が稼げる訳ではありません。
追撃は、反応方向確認後に早期開始し、1分を過ぎたら利確の機会を窺い、ポジションの長持ちは避けるべきです。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は72%で、その71%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが86%です。この数字が、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃の論拠です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは、直後1分足と直後11分足の方向が一致しても62%しかなく、反転することも含めると45%と、50%を切っています。これが、早期追撃開始で得たポジションの長持ちは避けるべき、とする論拠です。
(3-2) 独国PMI速報値
PMIは、速報値で取引を行い、改定値では取引しません。改定値は反応が小さくなりがちだからです。
改定値では、製造業とサービス業が別の日に発表されます。製造業は、事後差異(発表結果ー市場予想)が0となることが多く、反応方向が指標結果からは読み取れません。サービス業は、事後差異にプラスかマイナスの符号が付くことは多いものの、やはり反応は小さくなりがちです。
速報値は速報であるだけなく、製造業・サービス業が同時に発表されるため、対象範囲の広さに応じて影響(反応)が大きくなりがちです。尤も、それでも反応(直後1分足跳幅平均)は独国・欧州ともに6pipsと、大したことはありません。
9月22日に発表された独国9月分PMI速報値は、総合・製造業・サービス業のいずれも前回・予想を上回りました。グラフ推移は急上昇と言っても良く、いずれも直近のピークを上回っています。
次回発表は10月24日です。
(分析事例) 独国PMI速報値(2017年7月24日発表結果検証済)
本指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は、先行発表されるZEWとの実態差異の方向一致率は62%です。それほど高い数字ではないものの、無視するにも中途半端に高い数字です。
むしろアテになるのは、事前差異(市場予想ー前回結果)と直後1分足の方向一致率が25%(不一致率75%)となっている点です。
直後1分足は、事後差異(発表結果ー市場予想)との方向一致率が84%で、かなり素直に反応します。直後1分足と直後11分足の方向一致率66%で、あまり高くありません。
(3-3) 独国Ifo景況指数
8月24日に発表された独国Ifo景況感指数は115.9(前回116.0)で、景況感は107.9(前回107.3)、現況分析は124.6(前回125.4)と、まちまちの結果になりました。
(分析事例) 独国Ifo景況指数(2017年8月25日発表結果検証済)
Ifoの指標結果分析にはあまり意味がありません。
まず、ZEW景況感調査との先行性・遅行性を論じた解説が散見されます。がしかし、本指標との実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率は、一方の指標を前後2か月までずらしても50%以下です。少なくとも単月毎のZEWの結果良し悪しは、本指標結果予想には確率的に無意味です。
また、本指標の過去の傾向は、指標結果の良し悪しと反応方向の相関が低く、指標予想を当ててもどちらに反応するかがわかりません。特に、強いトレンドを生じているときには、本指標の反応は小さく影響期間が短いため、指標結果なんてほぼ役に立たないのです。
(3-4) 欧州PMI速報値
欧州景気指標はPMI速報値のみ取引し、ZEW景況感調査やPMI改定値(最終値に相当)では取引しません。
9月22日に発表された欧州9月分PMI速報値は、製造業が58.2(前回改定値57.4)、サービス業が55.6(前回改定値54.7)、でした。製造業は直近のピークの前月分を上抜け、サービス業も2017年2月以降も2013年以降でかなり高水準なままで上下しています。
次回発表は10月24日が予定されています。
(分析事例) 欧州PMI速報値(2017年6月23日発表結果検証済)
最近の製造業は、市場予想後追い型で推移しています。どちらかと言えば、指標結果が良ければ陰線、悪ければ陽線で反応しがちです。実態差異のマイナス率が77%に達していますが、実態差異と直後11分足の方向一致率は33%しかありません。
これが本指標の特徴です。
直後1分足は、直前1分足との方向一致率が15%(不一致率85%)です。追撃は指標発表後すぐに開始して、発表から1分を過ぎると利確の機会を探るべきです。直後1分足と直後11分足の終値を比べたとき、反応を伸ばしたことが32%、値幅を削ったことは36%、反転したことは32%、と追撃ポジションの長持ちには向いていません。
【4-3-1.(4) 物価指標】
ECBは、実質的にインフレ目標(前年比2%付近で以下)を設定しています。現在、その近辺まで回復したという見方と、まだ目標付近で安定していないという見方があり、ECB政策に絡むだけに本指標は重要視されています。
ECBとIMFの2017年インフレ率は各1.5%・1.6%、2018年は各1.4%・1.5%と見込まれています。ECBは慎重です。
6月28日に市場を混乱させたECB総裁発言の「秋に政策微調整可否のための状況確認」は、この前年比が秋までに目標近辺に到達するという意味ではない、と思われます。数字がなかなか2%を超えないことを表向きの理由に挙げて、秋の独総選挙が終わるまで新たな情勢判断を不用意に出来ない、と受け取る方がしっくりきます。
8月31日に発表された8月分HICP前年比速報値は、前回結果をやや上回りました。コアHICP前年比は上昇基調を継続しており、HICP前年比は少し前まで下降基調転換を懸念されていたものの、こちらも上昇に転じたかも知れません。
次回発表は9月29日です。
(分析事例) HICP(消費者物価指数)速報値(2017年7月31日発表結果検証済)
欧州物価指標(HICP)は取引に向かない指標です。
速報値は反応が小さため、反応方向が指標結果に対しあまり素直ではありません(トレンドに飲み込まれがちです)。だから、指標分析の意味がありません。そして、改定値は速報値とほぼ結果が一致します。結果が一致するのにEURが動くのは、指標の影響ではありません。
【4-3-1.(5) 雇用指標】
8月31日に発表された独国8月分雇用統計の結果は、失業率が5.7%(6・7月分同値)、失業者数前月差は△0.5万人(7月分△0.9万人)でした。失業率は2014年以降ほぼ単調に低下し、最近は低下が加速していたものの、この3か月は停滞しています。失業者数前月差は、2015年1月分以降プラスだったことが4回しかありません。
次回発表は9月30日です。
8月31日に発表された欧州7月分失業率は+9.1%でした。各国平均で9.1%という数字に驚きますが、これでも2013年9月の12.2%をピークにほぼ毎月単調に低下しています。
次回発表は10月2日です。
以上
2017年09月02日
4-3-2. 欧州経済実態指標(2017年9月版)
昨年2016年の欧州GDPは19.3兆USDです。そのうち独国が17.9%、英国が13.6%、仏国が12.8%、伊国が9.6%を占めています。
欧州GDPは、発表結果と反応方向とがあまり関係ありません。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートへの折込みが行われるからでしょう。
5月23日に独国1-3月期GDP改定値が発表されました。結果は、前期比が+0.6%で、前年比が+1.7%、でした。前年比は、2016年7-9月期から3期続けて同値継続となっています。
7月20日に独国財務省は月報を公表し、(a) 国内経済は好調、(b) 英国のEU離脱交渉やトランプ米大統領による貿易政策は不確定要素、(c) 展望は順調な成長と予想、との内容でした。4-6月期は、1-3月期の前期比+0.6%と同様の成長率となる見込み、です。
8月15日に発表された独国4-6月期GDP速報値は、前期比+0.6%・前年比+0.8%でした。独国財務省による前期比見通しは正しかった訳です。前年比は改定値で上方修正されなければ、4期ぶりに成長鈍化となります。8月25日に発表された改定値は、前期比・前年比ともに速報値同値でした。
(分析事例) 独国四半期GDP速報値(2017年8月15日発表結果検証済)
本指標への反応は、指標結果よりもそのときどきのトレンドの影響が大きいようです。その結果、直後11分足終値は直後1分足終値よりも反応を伸ばしがちです。追撃は早期参加し、じっくり利確のタイミングを計ることに適しています。
最も影響力が強い独国経済も、実はGDP比で言えばEU全体に対し20%を下回っています。
8月31日に発表された独国7月分小売売上高指数は、前期比△1.2%、前年比+2.7%でした。前年比の動きを見ると、毎月の上下動が激しいものの、2016年2月以降は全体的にやや下降ぎみでした。2017年2月以降は、それが上昇に転じたように見えていたものの、今回は上げはやや小さめでした。まだ上昇基調というには少し弱いように見えます。
次回発表は9月29日です。
製造業の受注と生産のLT(リードタイム)は、受注が3〜6か月程度先行すると見るのが一般的です(業種間のばらつきが大きい)。それを同時に表しているのが景気指標ですが、製造業PMI改定値(最終値に相当)には、先行きへの不安の兆候がまだ見受けられません。
8月4日に発表された独国6月分鉱工業受注前月比は+1.0%でした。内需は+5.1%で好調、外需は△2.0%でした。てっきりEUR高が原因かと思ったら、EU諸国からの需要が△2.4%となっています。この結果について、独経済省は「小幅な拡大が続く」との見方を示しています。
9月6日に発表された独国7月分製造業新規受注前月比は△0.7%でした。マイナス転換は3か月ぶりです。
次回は10月6日に発表されます。
8月7日に発表された独国6月分鉱工業生産前月比は△1.1%でした。
9月7日に発表された独国7月分鉱工業生産前月比は0%でした。2016年3月分以降、マイナスの次はプラス転換が6回続いていましたが、今回はプラスに至りませんでした。
次回は10月9日に発表されます。
8月8日に発表された独国6月分貿易収支は+223億EUR(5月分+220億EUR)でした。輸出好調には違いないものの、独国内景気が好調で輸入も増えている結果、増加ペースが落ち始めました。
9月8日に発表された独国7月分貿易収支は+195億EURでした。
次回は10月10日に発表予定です。
8月17日に発表された欧州6月分貿易収支は+266億EUR(5月分+214億EUR)でした。欧州貿易収支は毎月の上下動があるものの、全体として増加基調です。数字を見比べてみると、独国の輸出の強さが良くわかります。
9月15日に発表された欧州7月分貿易収支は+232億EURでした。
次回は10月16日に発表予定です。
欧州GDPは、発表結果と反応方向とがあまり関係ありません。おそらく、各国毎の発表が先行しているため、その時々にEURレートへの折込みが行われるからでしょう。
【4-3-2.(1) 経済成長】
5月23日に独国1-3月期GDP改定値が発表されました。結果は、前期比が+0.6%で、前年比が+1.7%、でした。前年比は、2016年7-9月期から3期続けて同値継続となっています。
7月20日に独国財務省は月報を公表し、(a) 国内経済は好調、(b) 英国のEU離脱交渉やトランプ米大統領による貿易政策は不確定要素、(c) 展望は順調な成長と予想、との内容でした。4-6月期は、1-3月期の前期比+0.6%と同様の成長率となる見込み、です。
8月15日に発表された独国4-6月期GDP速報値は、前期比+0.6%・前年比+0.8%でした。独国財務省による前期比見通しは正しかった訳です。前年比は改定値で上方修正されなければ、4期ぶりに成長鈍化となります。8月25日に発表された改定値は、前期比・前年比ともに速報値同値でした。
(分析事例) 独国四半期GDP速報値(2017年8月15日発表結果検証済)
本指標への反応は、指標結果よりもそのときどきのトレンドの影響が大きいようです。その結果、直後11分足終値は直後1分足終値よりも反応を伸ばしがちです。追撃は早期参加し、じっくり利確のタイミングを計ることに適しています。
【4-3-2.(2) 実態指標】
最も影響力が強い独国経済も、実はGDP比で言えばEU全体に対し20%を下回っています。
(2-1) 小売
8月31日に発表された独国7月分小売売上高指数は、前期比△1.2%、前年比+2.7%でした。前年比の動きを見ると、毎月の上下動が激しいものの、2016年2月以降は全体的にやや下降ぎみでした。2017年2月以降は、それが上昇に転じたように見えていたものの、今回は上げはやや小さめでした。まだ上昇基調というには少し弱いように見えます。
次回発表は9月29日です。
(2-2) 生産
製造業の受注と生産のLT(リードタイム)は、受注が3〜6か月程度先行すると見るのが一般的です(業種間のばらつきが大きい)。それを同時に表しているのが景気指標ですが、製造業PMI改定値(最終値に相当)には、先行きへの不安の兆候がまだ見受けられません。
8月4日に発表された独国6月分鉱工業受注前月比は+1.0%でした。内需は+5.1%で好調、外需は△2.0%でした。てっきりEUR高が原因かと思ったら、EU諸国からの需要が△2.4%となっています。この結果について、独経済省は「小幅な拡大が続く」との見方を示しています。
9月6日に発表された独国7月分製造業新規受注前月比は△0.7%でした。マイナス転換は3か月ぶりです。
次回は10月6日に発表されます。
8月7日に発表された独国6月分鉱工業生産前月比は△1.1%でした。
9月7日に発表された独国7月分鉱工業生産前月比は0%でした。2016年3月分以降、マイナスの次はプラス転換が6回続いていましたが、今回はプラスに至りませんでした。
次回は10月9日に発表されます。
【4-3-2.(3) 貿易指標】
8月8日に発表された独国6月分貿易収支は+223億EUR(5月分+220億EUR)でした。輸出好調には違いないものの、独国内景気が好調で輸入も増えている結果、増加ペースが落ち始めました。
9月8日に発表された独国7月分貿易収支は+195億EURでした。
次回は10月10日に発表予定です。
8月17日に発表された欧州6月分貿易収支は+266億EUR(5月分+214億EUR)でした。欧州貿易収支は毎月の上下動があるものの、全体として増加基調です。数字を見比べてみると、独国の輸出の強さが良くわかります。
9月15日に発表された欧州7月分貿易収支は+232億EURでした。
次回は10月16日に発表予定です。
以上
4-4. 英国経済指標(2017年9月版)
英国の経済指標発表前後の取引はGBPJPYで行っています。
2017年度のトレンド判断は以下3つの視点によって決まっているようです。
以下、9月版は8月版を順次改訂していきます。
6月総選挙の結果、与党は議席を減らし、単独過半数から過半数割れとなりました。前首相のEU離脱国民投票といい、英国はやらなくてもいい選挙を行って、ダメージを負うことが続いています。政権基盤が弱まったことで、対EU交渉での譲歩が難しくなりました。
経済指標は、4-6月期成長率が1.7%に鈍化しました。
多くの解説記事で個人消費低迷が原因に挙げられています。それは、小売売上高前年比が昨年10月をピークに低下傾向が続いていることで確認できます(6月は改善)。それでも、物価上昇率は賃金上昇率を上回り続けています。
物価上昇への対策のため、6月後半から利上げ気運が高まり、6・7月分指標発表(7・8月発表)が行われるにつれてその気運が静まったという状況です。
8月7日、調査会社ORBが8月2-3日に実施した世論調査で、EU離脱交渉への英政府の取組に否定的な見方が増加していること、を発表しました。EU離脱を巡る英政府の交渉を支持しないとの回答は61%でした。なお、この数字は、6月調査46%、7月調査56%、で徐々に増加しています。
更に、8月4日にIOD(経営者協会)は政府に対しEU離脱の合意内容を策定することを求め、8月9日に英最高裁長官は欧州司法裁判所の判決をどう扱うかを政権は明確にしなければならないと主張した、と報道されています。
8月17日に英政府は、EU離脱交渉を10月迄に十分な進展があると確信していると表明しました。
がしかし、8月31日まで行われた交渉で、EU側の要求する在英EU市民の権利・英国とアイルランドの国境問題・手切れ金に関する交渉で何ら進展がなかったようです。
内憂外患でいよいよどうにもならなくなってきました。英政権は、9月23日の独総選挙が終わるのを待ちわびているでしょう。EUの主要選挙が終わるまであと1か月の辛抱です。
9月の英国経済指標発表は、第3週(9月11日〜15日)がメインとなります。第1・2週は景気指標、第2・3週は実態指標・物価指標・金融政策、第5週にGDP確定値発表へと続きます。
政策決定指標
9月8日に発表された7月分鉱工業生産指数は前月比+0.2%でした。前回6月分の+0.5%からは鈍化したものの、グラフ推移は2017年2月分をボトムに上昇中です。
同時発表された7月分製造業生産指数は前月比+0.5%で、この数値は今年最大でした。グラフ推移は2017年1月分をボトムに上昇に転じたように見受けられます。がしかし、プラス転換はまだ今年に入って2回(前回は4月分+0.2%)しかありません。
9月8日に発表された7月分貿易収支は△115.76億GBPでした。
内訳は、財・サービスが28.72億GBPの赤字で前月とほぼ同じ、製品輸出がEU向けで増え、EU外とは横這いでした。
グラフ推移は、長期的な下降基調(赤字拡大)が継続されています。前月よりは赤字が減ったものの、EU向け製品輸出しか改善されていない点を見ると、GBP安の影響は見出せません。
2017年度のトレンド判断は以下3つの視点によって決まっているようです。
- 6月総選挙でメイ首相の立場がどれぐらい強まるか
→与党議席減で首相進退論が出たり、閣内不協和の報道がでています。がしかし、英首相は2022年の総選挙後の続投にも意欲を示しています。古今東西、結論履行に責任を負わない交渉相手は望まれません。だから、この発言の信憑性を論じても意味がありません。 - BOEが物価高にいつどの程度の対策を講じるか
→6月までに利上げ派のMPCメンバーが3名に増えたものの、成長率とインフレ率上昇が鈍化しています。その結果、現在は利上げ派メンバー1名が退任した分だけ、利上げ派が弱まった感があります。こうなると、BOEよりも先に、アベノミクスと同様に、公務員給与引き上げ等の政府政策が行われる可能性の方が高いかも知れません。もともと利上げは、株価を下げかねない、という問題を孕んでいるからです。 - ブリグジット交渉進展と内容
→9月独総選挙が終わるまで、劇的進展は期待できません。第2回交渉と言われる8月下旬のEUとの会合では、案の定、何ら進展がありませんでした。但し、ここにきて独国世論調査で、ブリグジットが欧英双方に不利益、との結果が出ています。だからと言って、まだ、英国へのペナルティのために見せしめ的な条件を緩和しても良い、という結果ではありません。
以下、9月版は8月版を順次改訂していきます。
6月総選挙の結果、与党は議席を減らし、単独過半数から過半数割れとなりました。前首相のEU離脱国民投票といい、英国はやらなくてもいい選挙を行って、ダメージを負うことが続いています。政権基盤が弱まったことで、対EU交渉での譲歩が難しくなりました。
経済指標は、4-6月期成長率が1.7%に鈍化しました。
多くの解説記事で個人消費低迷が原因に挙げられています。それは、小売売上高前年比が昨年10月をピークに低下傾向が続いていることで確認できます(6月は改善)。それでも、物価上昇率は賃金上昇率を上回り続けています。
物価上昇への対策のため、6月後半から利上げ気運が高まり、6・7月分指標発表(7・8月発表)が行われるにつれてその気運が静まったという状況です。
8月7日、調査会社ORBが8月2-3日に実施した世論調査で、EU離脱交渉への英政府の取組に否定的な見方が増加していること、を発表しました。EU離脱を巡る英政府の交渉を支持しないとの回答は61%でした。なお、この数字は、6月調査46%、7月調査56%、で徐々に増加しています。
更に、8月4日にIOD(経営者協会)は政府に対しEU離脱の合意内容を策定することを求め、8月9日に英最高裁長官は欧州司法裁判所の判決をどう扱うかを政権は明確にしなければならないと主張した、と報道されています。
8月17日に英政府は、EU離脱交渉を10月迄に十分な進展があると確信していると表明しました。
がしかし、8月31日まで行われた交渉で、EU側の要求する在英EU市民の権利・英国とアイルランドの国境問題・手切れ金に関する交渉で何ら進展がなかったようです。
内憂外患でいよいよどうにもならなくなってきました。英政権は、9月23日の独総選挙が終わるのを待ちわびているでしょう。EUの主要選挙が終わるまであと1か月の辛抱です。
9月の英国経済指標発表は、第3週(9月11日〜15日)がメインとなります。第1・2週は景気指標、第2・3週は実態指標・物価指標・金融政策、第5週にGDP確定値発表へと続きます。
政策決定指標
- 4-4-1. 英国政策決定指標
景気指標
9月1日発表された8月分製造業PMIは56.9でした。前回(55.1)を上回り、今回結果によって指標グラフの推移は上昇再開の可能性を窺わせる形状となりました。がしかし、市場は上昇再開に懐疑的なのか、反応は過去平均よりも小さく、しかも直後11分足が直後1分足の値幅を削りました。
9月5日に発表された8月分サービス業PMIは53.2でした。前回(53.8)を下回ったものの、現状で「ありそうな下降」への転換と言えるほど悪い数字ではありません。その結果、市場の反応は発表直後こそ陰線で反応したものの、直後11分足は陽線に転じました。
経済実態指標 - 4-4-2. 英国経済実態指標
9月8日に発表された7月分鉱工業生産指数は前月比+0.2%でした。前回6月分の+0.5%からは鈍化したものの、グラフ推移は2017年2月分をボトムに上昇中です。
同時発表された7月分製造業生産指数は前月比+0.5%で、この数値は今年最大でした。グラフ推移は2017年1月分をボトムに上昇に転じたように見受けられます。がしかし、プラス転換はまだ今年に入って2回(前回は4月分+0.2%)しかありません。
9月8日に発表された7月分貿易収支は△115.76億GBPでした。
内訳は、財・サービスが28.72億GBPの赤字で前月とほぼ同じ、製品輸出がEU向けで増え、EU外とは横這いでした。
グラフ推移は、長期的な下降基調(赤字拡大)が継続されています。前月よりは赤字が減ったものの、EU向け製品輸出しか改善されていない点を見ると、GBP安の影響は見出せません。
以上
4-4-1. 英国政策決定指標(2017年9月版)
BOEは、そうそう簡単に政策変更しないという話があります。もちろん、これは過去の実績で、BOE総裁もMPC委員も実際には入れ替わっているのだから、こんな話を当てにはできません。
3月MPCでは、昨年7月以来の利上げ主張する委員が現れました。6月MPCでは利上げ主張委員が3名に増えました。昨年6月の国民投票以降のGBP安による物価が急上昇が利上げ派の主要論拠で、賃金上昇への悪影響(景気への悪影響)の懸念が様子見派の主要論拠です。
6月15日のMPC声明では「政策変更にあたっては、EUの新たな貿易協定締結やその移行期間設置の合意など、EU離脱交渉次第」という条件が挙げられました。6月下旬には、BOE総裁が利上げ検討の必要性について言及しました。但し、利上げに当たっては「物価上昇に伴う消費減速を企業投資が補えるか」を前提に挙げていました。
利上げ気運にブレーキをかけた訳です。
そして、利上げ気運の高まった8月1日のMPCでは、利上げ派理事が1名退任したこともあって、利上げ賛成派が2名に減りました。一気に翌朝までにGBPJPYは300pips近い下落となりました。
300pipsはひどいじゃないか。これは、退任した利上げ派理事1名の代わりに、別の理事が利上げ賛成に回るかも知れない、という予想もあったので、発表までGBPが下がっていなかったのです。
(分析事例) BOE政策金利(2017年8月3日発表結果検証済)
直前10-1分足と直後1分足との方向一致率は68%なので、取引参加者は3回に2回の割合で発表直後の反応方向を当てています。英国は金融の国であり、予想分析もそこに乗って取引する人も、平均的な我々より平均的に上手なのかも知れません。
危ないので、大きな発表があるときは、追撃に徹した方が良いと思います。
先の総選挙での保守党公約は、移民削減(年間10万人未満)・2025年頃までの財政赤字解消・消費税を上げずに2020年までに法人税を17%まで引き下げ・高額役員報酬問題への歯止め・労働者の権利拡大・電気ガス料金の上限設定・キツネ狩り禁止法廃止の採決、等がありました。英国にとって都合が悪い内容ならEUと合意しない方がマシ、という首相発言も公約にあたるでしょう。
ところで、キツネ狩りが英国でそれほどのテーマだなんて、知っていましたか。そんなこと言ってる場合か、という気もします。
9月1日発表された8月分製造業PMIは56.9でした。前回(55.1)を上回り、今回結果によって指標グラフの推移は上昇再開の可能性を窺わせる形状となりました。がしかし、市場は上昇再開に懐疑的なのか、反応は過去平均よりも小さく、しかも直後11分足が直後1分足の値幅を削りました。
9月5日に発表された8月分サービス業PMIは53.2でした。前回(53.8)を下回ったものの、現状で「ありそうな下降」への転換と言えるほど悪い数字ではありません。その結果、市場の反応は発表直後こそ陰線で反応したものの、直後11分足は陽線に転じました。
以上、英国8月分景気指標は、落ちそうで落ちない、といった状態です。
9月分は、製造業PMIが10月2日、サービス業PMIが10月4日、に予定されています。
以下、英国景気指標の反応傾向と分析事例です。
もともと景気指標は、各種実態指標よりも先に発表されるため、予想の論拠にし得る事実が乏しくなる、という性格があります。
よって、論拠たり得る事実は、(a) 指標グラフの推移(推移とは上昇/下降/停滞の3状態のどれかを指します)、(b) 指標発表時刻に取引量が多いEURGBPやGBPUSDの対象月の月足推移、(c) FTSE(株価)推移、指標と予想の関係性(市場予想後追い型か否か)、といった事柄に絞られます。
製造業PMIは、反応方向を確認したら早期参加して、反応が伸びるのを待って利確機会を窺えば良いでしょう。発表から1分を過ぎても、そのまま反応を伸ばしがちですが、安心してポジションを長持ちできるほどの確率はありません。追撃するなら、早期開始・短期利確繰り返し、が良いでしょう。
強調注意すべき点は、指標発表前の取引が危ないので避けた方が良い、という点です。直前10-1分足は、ときどき(頻度20%以上)20pips以上跳ねているものの、そうした動きがあったときに直後1分足はその跳ねと逆方向に反応することが過去実績86%にも達しています。知っていれば、指標発表後に逆に跳ねる予兆ですが、知らずに慌てて釣られてしまうと、反応が大きい指標だけにかなり痛手です。直前1分足もしばしば(頻度25%前後)10pips以上跳ねているものの、このとき直後1分足の反応方向は予想がつきません(直前に跳ねた方向に発表後も跳ねるとは言えません)。そもそも、このように直前10-1分足や直前1分足が大きく跳ねたとき、事後差異(発表結果ー市場予想)が大きくなった(発表結果が市場予想と大きく乖離した)、という事実(傾向)はありません。
(分析事例) 製造業PMI(2017年9月1日発表結果検証済)
サービス業PMIは、EURGBPの月足上下動と逆相関の関係が見受けられます。一方、数日前に発表される製造業PMIの結果との相関は「無くはない」と言った程度しかありません(60%未満、50%以上)。
前回結果・市場予想に対する発表結果の良し悪しには素直に反応するものの、戻り比率が大きいため追撃は高値(安値)掴みに気を付ける必要があります。反応方向を確認したら早期開始し、発表から1分を過ぎたら利確の機会を探る方がいいでしょう。その後も追撃するなら、短期利確の繰り返しです。
まれに、直前10-1分足や直前1分足が大きく動くことがあります。がしかし、こうした動きが直後1分足の反応方向とは関係ありません。釣られて追いかけると、痛い目に遭うことが多いでしょう。
(分析事例) サービス業PMI(2017年9月5日発表結果検証済)
主要国でCPI(消費者物価指数)・RPI(小売物価指数)・PPI(生産者物価指数)が一度に発表されるのは英国だけです。CPIやRPIの発表結果が揃って改善/悪化すると、驚くほど大きく反応するので注意が必要です。
BOEの目標インフレ率は年2%程度です。
8月3日に公表されたBOEのインフレ報告は「インフレ率は2017年10月に3%付近でピークと予想」との見通しを示しました。そして、8月9日には「ここ数か月の消費支出は減速し、ポンド安が輸出を支援するものの、英国のインフレはピークに近い可能性」との見解を示しました。
対する8月15日の物価指標発表結果は、CPIが横這い、RPIが上昇。PPIが下降でした。まちまちの結果となったものの、それでもCPI前年比は+2.6%です。
(分析事例) 物価指標(2017年9月12日発表結果検証済)
過去の傾向は、早期参入・早期利確の追撃に適した指標です。指標発表から1分を過ぎてからは、初期反応の値幅を削ったり反転することの方が多くなっている点に注意しましょう。
反応が大きい指標なのであまり勧められませんが、直後1分足の事前差異との方向一致率が80%近くある指標です。指標発表前に事前差異と同方向にポジションを取得し、指標発表直後に跳ねたら利確であれ損切であれ、ポジションを解消するやり方も可能です。
8月9日、BOEは「英企業の採用状況は厳しく、賃上げ率も2-3%の小幅に留まる」見通しを示しました。また「製造業者は、追加雇用よりも自動化や生産性向上を通じ、輸出増に対応する考え」も示しました。
英国は2013年以降、財政緊縮のため公務員の賃上げ率が1%以下に制限されています。日本も同様の政策を採っていたものの、アベノミクスではこの制約を見直して公務員給与を民間に先駆けて(大企業とはほぼ同時期に)引き上げました。英国がEUとの離脱交渉の結論が見える時期に、利上げや公務員賃上げを行う可能性は高い、と考えています。そもそもEUを離脱すれば、財政収支の制約がなくなるのだから。
8月16日雇用統計発表では、7月分失業保険申請件数が5か月ぶりにマイナスとなり、6月分失業率も直近最低の4.4%まで低下しました。6月分平均所得も2%を上回り、全面的に良い結果となりました。
発表直後の反応は2015年8月以来の大きな陽線を形成したものの、それでも発表から2時間も経つ頃には「行って来い」で指標発表前のGBPJPY水準に戻しました(GBPUSDでは半値戻し)。
GBPを買い上げる環境にはない、ということです。
(分析事例) 雇用統計(2017年9月13日発表結果検証済)
発表から1分を過ぎると、どちらに反応するかがわからない指標なので、追撃は早期参加・短期利確が基本です。
【4-4-1.(1) 金融政策】
3月MPCでは、昨年7月以来の利上げ主張する委員が現れました。6月MPCでは利上げ主張委員が3名に増えました。昨年6月の国民投票以降のGBP安による物価が急上昇が利上げ派の主要論拠で、賃金上昇への悪影響(景気への悪影響)の懸念が様子見派の主要論拠です。
6月15日のMPC声明では「政策変更にあたっては、EUの新たな貿易協定締結やその移行期間設置の合意など、EU離脱交渉次第」という条件が挙げられました。6月下旬には、BOE総裁が利上げ検討の必要性について言及しました。但し、利上げに当たっては「物価上昇に伴う消費減速を企業投資が補えるか」を前提に挙げていました。
利上げ気運にブレーキをかけた訳です。
そして、利上げ気運の高まった8月1日のMPCでは、利上げ派理事が1名退任したこともあって、利上げ賛成派が2名に減りました。一気に翌朝までにGBPJPYは300pips近い下落となりました。
300pipsはひどいじゃないか。これは、退任した利上げ派理事1名の代わりに、別の理事が利上げ賛成に回るかも知れない、という予想もあったので、発表までGBPが下がっていなかったのです。
(分析事例) BOE政策金利(2017年8月3日発表結果検証済)
直前10-1分足と直後1分足との方向一致率は68%なので、取引参加者は3回に2回の割合で発表直後の反応方向を当てています。英国は金融の国であり、予想分析もそこに乗って取引する人も、平均的な我々より平均的に上手なのかも知れません。
危ないので、大きな発表があるときは、追撃に徹した方が良いと思います。
【4-4-1.(2) 財政政策】
先の総選挙での保守党公約は、移民削減(年間10万人未満)・2025年頃までの財政赤字解消・消費税を上げずに2020年までに法人税を17%まで引き下げ・高額役員報酬問題への歯止め・労働者の権利拡大・電気ガス料金の上限設定・キツネ狩り禁止法廃止の採決、等がありました。英国にとって都合が悪い内容ならEUと合意しない方がマシ、という首相発言も公約にあたるでしょう。
ところで、キツネ狩りが英国でそれほどのテーマだなんて、知っていましたか。そんなこと言ってる場合か、という気もします。
【4-4-1.(3) 景気指標】
9月1日発表された8月分製造業PMIは56.9でした。前回(55.1)を上回り、今回結果によって指標グラフの推移は上昇再開の可能性を窺わせる形状となりました。がしかし、市場は上昇再開に懐疑的なのか、反応は過去平均よりも小さく、しかも直後11分足が直後1分足の値幅を削りました。
9月5日に発表された8月分サービス業PMIは53.2でした。前回(53.8)を下回ったものの、現状で「ありそうな下降」への転換と言えるほど悪い数字ではありません。その結果、市場の反応は発表直後こそ陰線で反応したものの、直後11分足は陽線に転じました。
以上、英国8月分景気指標は、落ちそうで落ちない、といった状態です。
9月分は、製造業PMIが10月2日、サービス業PMIが10月4日、に予定されています。
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以下、英国景気指標の反応傾向と分析事例です。
もともと景気指標は、各種実態指標よりも先に発表されるため、予想の論拠にし得る事実が乏しくなる、という性格があります。
よって、論拠たり得る事実は、(a) 指標グラフの推移(推移とは上昇/下降/停滞の3状態のどれかを指します)、(b) 指標発表時刻に取引量が多いEURGBPやGBPUSDの対象月の月足推移、(c) FTSE(株価)推移、指標と予想の関係性(市場予想後追い型か否か)、といった事柄に絞られます。
製造業PMIは、反応方向を確認したら早期参加して、反応が伸びるのを待って利確機会を窺えば良いでしょう。発表から1分を過ぎても、そのまま反応を伸ばしがちですが、安心してポジションを長持ちできるほどの確率はありません。追撃するなら、早期開始・短期利確繰り返し、が良いでしょう。
強調注意すべき点は、指標発表前の取引が危ないので避けた方が良い、という点です。直前10-1分足は、ときどき(頻度20%以上)20pips以上跳ねているものの、そうした動きがあったときに直後1分足はその跳ねと逆方向に反応することが過去実績86%にも達しています。知っていれば、指標発表後に逆に跳ねる予兆ですが、知らずに慌てて釣られてしまうと、反応が大きい指標だけにかなり痛手です。直前1分足もしばしば(頻度25%前後)10pips以上跳ねているものの、このとき直後1分足の反応方向は予想がつきません(直前に跳ねた方向に発表後も跳ねるとは言えません)。そもそも、このように直前10-1分足や直前1分足が大きく跳ねたとき、事後差異(発表結果ー市場予想)が大きくなった(発表結果が市場予想と大きく乖離した)、という事実(傾向)はありません。
(分析事例) 製造業PMI(2017年9月1日発表結果検証済)
サービス業PMIは、EURGBPの月足上下動と逆相関の関係が見受けられます。一方、数日前に発表される製造業PMIの結果との相関は「無くはない」と言った程度しかありません(60%未満、50%以上)。
前回結果・市場予想に対する発表結果の良し悪しには素直に反応するものの、戻り比率が大きいため追撃は高値(安値)掴みに気を付ける必要があります。反応方向を確認したら早期開始し、発表から1分を過ぎたら利確の機会を探る方がいいでしょう。その後も追撃するなら、短期利確の繰り返しです。
まれに、直前10-1分足や直前1分足が大きく動くことがあります。がしかし、こうした動きが直後1分足の反応方向とは関係ありません。釣られて追いかけると、痛い目に遭うことが多いでしょう。
(分析事例) サービス業PMI(2017年9月5日発表結果検証済)
【4-4-1.(4) 物価指標】
主要国でCPI(消費者物価指数)・RPI(小売物価指数)・PPI(生産者物価指数)が一度に発表されるのは英国だけです。CPIやRPIの発表結果が揃って改善/悪化すると、驚くほど大きく反応するので注意が必要です。
BOEの目標インフレ率は年2%程度です。
8月3日に公表されたBOEのインフレ報告は「インフレ率は2017年10月に3%付近でピークと予想」との見通しを示しました。そして、8月9日には「ここ数か月の消費支出は減速し、ポンド安が輸出を支援するものの、英国のインフレはピークに近い可能性」との見解を示しました。
対する8月15日の物価指標発表結果は、CPIが横這い、RPIが上昇。PPIが下降でした。まちまちの結果となったものの、それでもCPI前年比は+2.6%です。
(分析事例) 物価指標(2017年9月12日発表結果検証済)
過去の傾向は、早期参入・早期利確の追撃に適した指標です。指標発表から1分を過ぎてからは、初期反応の値幅を削ったり反転することの方が多くなっている点に注意しましょう。
反応が大きい指標なのであまり勧められませんが、直後1分足の事前差異との方向一致率が80%近くある指標です。指標発表前に事前差異と同方向にポジションを取得し、指標発表直後に跳ねたら利確であれ損切であれ、ポジションを解消するやり方も可能です。
【4-4-1.(5) 雇用指標】
8月9日、BOEは「英企業の採用状況は厳しく、賃上げ率も2-3%の小幅に留まる」見通しを示しました。また「製造業者は、追加雇用よりも自動化や生産性向上を通じ、輸出増に対応する考え」も示しました。
英国は2013年以降、財政緊縮のため公務員の賃上げ率が1%以下に制限されています。日本も同様の政策を採っていたものの、アベノミクスではこの制約を見直して公務員給与を民間に先駆けて(大企業とはほぼ同時期に)引き上げました。英国がEUとの離脱交渉の結論が見える時期に、利上げや公務員賃上げを行う可能性は高い、と考えています。そもそもEUを離脱すれば、財政収支の制約がなくなるのだから。
8月16日雇用統計発表では、7月分失業保険申請件数が5か月ぶりにマイナスとなり、6月分失業率も直近最低の4.4%まで低下しました。6月分平均所得も2%を上回り、全面的に良い結果となりました。
発表直後の反応は2015年8月以来の大きな陽線を形成したものの、それでも発表から2時間も経つ頃には「行って来い」で指標発表前のGBPJPY水準に戻しました(GBPUSDでは半値戻し)。
GBPを買い上げる環境にはない、ということです。
(分析事例) 雇用統計(2017年9月13日発表結果検証済)
発表から1分を過ぎると、どちらに反応するかがわからない指標なので、追撃は早期参加・短期利確が基本です。
以上
4-4-2. 英国経済実態指標(2017年9月版)
少し前までのIMF予想では、英国の2017年経済成長は2.0%となっていました。最新の見通しでは、2017年が1.7%、2018年が1.5%です。対する米国は2017年・2018年ともに2.1%(4月時点で2017年は2.3%)で、EUはともに1.9%・1.7%となっています。英国との関係が深いEU・米国に成長率が今年抜かれるという点がポイントです。
6月30日に発表された1-3月期GDP確定値は前期比+0.6%・前年比+2.0%でした。
がしかし、7月26日に発表された4-6月期改定値は前年比+1.7%で、1-3月期確定値を下回り、米国4-6月期GDP速報値+2.6%に抜かれました。+1.7%というのは悪い数字ではないにせよ、相対的悪化と見なせます。
8月24日に発表された4-6月期も速報値同値で、市場の反応は陰線でした。この反応は、個人消費(+0.1%)・企業投資(0%)ともに、悪化と見なされたようです。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年7月26日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年8月24日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年6月30日発表結果検証済)
速報値は、早期参加・追撃徹底に適しています。少なくとも発表から1分足を過ぎて、直後1分足値幅を削ることは27%あっても、直後1分足と逆方向に反転したことは7%しかありません。
一方、改定値の市場予想は、前回発表値(同期速報値)といつも同じです(2013年1-3月期以降、例外は2回)。発表結果も、ほぼ市場予想通りになりがちです(例外6回)。その結果、指標発表後は、直後11分足の戻り比率(1ー値幅/跳幅)が48%にも達し、かなり上下動が大きくなっています。反応は一方向に伸びずに途中反転することも多く、追撃に向いていません。
他の国の実態指標ではあり得ないほど大きく反応します。
現状は先々の成長鈍化が予想されており、平均的には指標への反応が、上に小さく下に大きくなると思われます。
8月17日に発表された小売売上高指数は前回を下回り、グラフ推移を見ると2016年12月頃を起点とする下降基調がはっきりしてきました。これではBOE利上げに繋がりません。
(分析事例) 小売売上高指数(2017年8月17日発表結果検証済)
本指標は、発表結果の良し悪しを、直前10-1分足の方向が示しがちです。そして、指標発表後の反応持続性には不安があるので、追撃はほどほどにしておかないと痛い目に遭いかねません。
なお、指標発表前に10pips以上跳ねることが散見されるものの(頻度33%)、その方向は指標発表後の反応方向との関係が見出せません。指標発表前後を問わず、長いヒゲを生じることも多く見受けられます。こうした長ヒゲを形成しがちな指標は、取引が難しいものです。
9月8日に発表された7月分鉱工業生産指数前月比は+0.2%、7月分製造業生産指数前月比は+0.5%でした。
グラフ推移は、鉱工業生産指数が前回6月分の+0.5%からは鈍化したものの、2017年2月分をボトムに上昇中です。製造業生産指数も、2017年1月分をボトムに上昇に転じたように見受けられます。
(分析事例) 鉱工業生産指数(2017年9月8日発表結果検証済)
同時発表される鉱工業生産指数・製造業生産指数の反応への寄与は、鉱工業生産指数>製造業生産指数、です。特に、鉱工業生産指数前月比の事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足との方向一致率は高くなっています。
追撃は、早期開始・短期利確の繰り返しに向いており、ポジションの長持ちには向かない指標です。
ほぼ反応しないので、取引は行いません。
8月10日に発表された7月分RICS(王立公認不動産鑑定士協会)住宅価格指数は+1でした。
本指標には長周期の波が観察されており、前回の波の底はEU離脱国民投票直後の2016年7月で(+6)、その後11月に直近ピーク(+30)をつけてから現在は下降中でした。今回結果+1は、前回の波の底を下抜けたことになります。直近のボトムは2016年12月分の△2.0%となります。
8月21日に発表された8月分ライトムーブ住宅価格前月比は△0.9%で、前月のプラス転換(+0.1%)は前月のみに留まりました。2017年2月を直近ピークに、価格上昇率が低下傾向になっており、今回のマイナス再転換によって、下降基調が明確になりました。
EU離脱条件がはっきりするまでに、企業の英残留・縮小・欧移転がどの程度決まるかがわかりません。そして、英不動産投資は高値掴みとなる恐れがあるうちは、上昇基調転換は難しいと見込まれます。
7月7日に発表された5月分貿易収支は△119億GBPの赤字でした。
8月10日に発表された6月分貿易収支は△127億GBPの赤字でした。
英国貿易収支は月々の上下動があるものの、長期的にその上下動は赤字拡大側に推移しています。
英国貿易収支は他の指標と発表されることが多く、反応も同時発表される他の指標に従いがちです(影響力が弱い)。よって、指標分析を行っても、そこで得られる傾向は貿易収支によるものを分離して分析することができません。
【4-4-2.(1) 経済成長】
6月30日に発表された1-3月期GDP確定値は前期比+0.6%・前年比+2.0%でした。
がしかし、7月26日に発表された4-6月期改定値は前年比+1.7%で、1-3月期確定値を下回り、米国4-6月期GDP速報値+2.6%に抜かれました。+1.7%というのは悪い数字ではないにせよ、相対的悪化と見なせます。
8月24日に発表された4-6月期も速報値同値で、市場の反応は陰線でした。この反応は、個人消費(+0.1%)・企業投資(0%)ともに、悪化と見なされたようです。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年7月26日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年8月24日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年6月30日発表結果検証済)
速報値は、早期参加・追撃徹底に適しています。少なくとも発表から1分足を過ぎて、直後1分足値幅を削ることは27%あっても、直後1分足と逆方向に反転したことは7%しかありません。
一方、改定値の市場予想は、前回発表値(同期速報値)といつも同じです(2013年1-3月期以降、例外は2回)。発表結果も、ほぼ市場予想通りになりがちです(例外6回)。その結果、指標発表後は、直後11分足の戻り比率(1ー値幅/跳幅)が48%にも達し、かなり上下動が大きくなっています。反応は一方向に伸びずに途中反転することも多く、追撃に向いていません。
【4-4-2,(2) 実態指標】
他の国の実態指標ではあり得ないほど大きく反応します。
現状は先々の成長鈍化が予想されており、平均的には指標への反応が、上に小さく下に大きくなると思われます。
(2-1) 小売
8月17日に発表された小売売上高指数は前回を下回り、グラフ推移を見ると2016年12月頃を起点とする下降基調がはっきりしてきました。これではBOE利上げに繋がりません。
(分析事例) 小売売上高指数(2017年8月17日発表結果検証済)
本指標は、発表結果の良し悪しを、直前10-1分足の方向が示しがちです。そして、指標発表後の反応持続性には不安があるので、追撃はほどほどにしておかないと痛い目に遭いかねません。
なお、指標発表前に10pips以上跳ねることが散見されるものの(頻度33%)、その方向は指標発表後の反応方向との関係が見出せません。指標発表前後を問わず、長いヒゲを生じることも多く見受けられます。こうした長ヒゲを形成しがちな指標は、取引が難しいものです。
(2-2) 生産
9月8日に発表された7月分鉱工業生産指数前月比は+0.2%、7月分製造業生産指数前月比は+0.5%でした。
グラフ推移は、鉱工業生産指数が前回6月分の+0.5%からは鈍化したものの、2017年2月分をボトムに上昇中です。製造業生産指数も、2017年1月分をボトムに上昇に転じたように見受けられます。
(分析事例) 鉱工業生産指数(2017年9月8日発表結果検証済)
同時発表される鉱工業生産指数・製造業生産指数の反応への寄与は、鉱工業生産指数>製造業生産指数、です。特に、鉱工業生産指数前月比の事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足との方向一致率は高くなっています。
追撃は、早期開始・短期利確の繰り返しに向いており、ポジションの長持ちには向かない指標です。
(2-3) 住宅
ほぼ反応しないので、取引は行いません。
8月10日に発表された7月分RICS(王立公認不動産鑑定士協会)住宅価格指数は+1でした。
本指標には長周期の波が観察されており、前回の波の底はEU離脱国民投票直後の2016年7月で(+6)、その後11月に直近ピーク(+30)をつけてから現在は下降中でした。今回結果+1は、前回の波の底を下抜けたことになります。直近のボトムは2016年12月分の△2.0%となります。
8月21日に発表された8月分ライトムーブ住宅価格前月比は△0.9%で、前月のプラス転換(+0.1%)は前月のみに留まりました。2017年2月を直近ピークに、価格上昇率が低下傾向になっており、今回のマイナス再転換によって、下降基調が明確になりました。
EU離脱条件がはっきりするまでに、企業の英残留・縮小・欧移転がどの程度決まるかがわかりません。そして、英不動産投資は高値掴みとなる恐れがあるうちは、上昇基調転換は難しいと見込まれます。
【4-4-2.(3) 貿易指標】
7月7日に発表された5月分貿易収支は△119億GBPの赤字でした。
8月10日に発表された6月分貿易収支は△127億GBPの赤字でした。
英国貿易収支は月々の上下動があるものの、長期的にその上下動は赤字拡大側に推移しています。
英国貿易収支は他の指標と発表されることが多く、反応も同時発表される他の指標に従いがちです(影響力が弱い)。よって、指標分析を行っても、そこで得られる傾向は貿易収支によるものを分離して分析することができません。
以上