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2020年04月03日

父の寿命

blacklily-02.jpg


4月1日で80歳の誕生日を迎えた私の父。

そして、この日に、病院で昨日受けた検査の結果が。


癌でした。

あと長くて2〜3年ということです。


父が死ぬ。

癌ではなかったとしても、確実に、親は必ず、絶対に、死ぬ。(そして私自身も)


今すぐに、急に、というわけではないので、

悲しみとか喪失とか、そういうセンチメンタルなものは置いといて…、



今、この瞬間に私が感じていることを書きます。


父の死までに、あと2〜3年で、何ができるか、と私は考えた。

そう思うと悔しさがこみあげてきた。

私は…

なんでこんなにいつまでも「無名の」「売れない」漫画家なのか、と。


漫画家にはなれた。

そして毎日仕事はしている。毎日、漫画を描いている。

漫画だけの収入で、一人生きてはいけている。


それでも、心の奥は、いつも、モヤモヤとしている。

すごく、悔しいと感じている。


売れている漫画家や作家の人に対しての嫉妬?も、あるのかもしれない、

けど、単純に「嫉妬」という言葉ではしっくりこない。

本が何万冊も売れて、ドラマ化もされて話題になって…という

作家さんのことを知るたびに

「羨ましい」とはなんか違う、別の感情が渦巻く。


「どうして私は売れないの」


とはいつも思う。


特別絵がうまいというわけではないけれど、

私くらいのレベルなら、もうちょっと売れてもいいはずだ、

なんておこがましくも感じてしまう。

実際、いつもいつも編集者は

「おもってたよりも売れないですねー」と言う。


漫画家として生きているだけ。ただ、それだけ。

それが悔しい。


「好きなことが仕事になってスゴいですねー」と

言われるたびに胸がぎゅうーっと、つらくなる。


「仕事があるのはいいことですよ」と言われるのも

つらい。違う、といいたいけど、何が違うのか

わからない。


お正月に実家に帰った時、

(親が創価学会なので)新年勤行会に母と行って、

昔お世話になった人に久々に会って、

「まだ漫画描いてるのー」と言われ、

「お母さん、娘さんが漫画家になって、良かったねー」と母に言ってた。

ものすごい違和感をかんじだ。


漫画家になっただけではダメなんだ。


その人は私の漫画を読んだこともないくせに「スゴイねー」と言う。

どこでも「仕事は何ですか?」と聞かれ

「漫画家です」というと「スゴいねー」と言われる。


スゴいねー、なんて言われたくない。





私の漫画を読んで、感動してほしい。



それが私の願い。


だけど、知り合った人は私の名前を検索して

適当に読み放題で出てきた漫画を見て

「見ましたよ」とせせら笑うだけ。

感想はない。


おもしろかったか、とか、感動したか、とか

どう感じたか、とか

それを私が求めるのは間違ってる。

感想が何もない、ということは

「別に」ということなのだ。


それがショックだ。

私は、私の漫画で「おもしろい」とか

感動を与えられなかった。

それが、本当につらい。




いい漫画を描かなければいけない。



人が感動するような。


人の心に残るような。


人の人生を変えるような。



そんな漫画を描かなければ意味がない。


漫画家になった、だけではダメなんだ。




だからすごくつらい。


あと2〜3年で、そんな漫画を発表できる私に、

なれるだろうか。


どうしても私は、本当の意味で

「漫画家になったよ!」と

父に言いたいのだ。




なぜかというと、

私が漫画を描くようになったのは、

父親が漫画が好きだったから。



父親が手塚治虫のファンだったから、

私も漫画に夢中になった。


高校を卒業するとき、

進学も就職もイヤで、悩み過ぎて泣き出した時、


父は「お前は何がしたいんや」といい、

私は「アルバイトをしながら漫画家を目指す」と言った。

そしたら

「ほな、それでええやないか」

と、言った。


世間的にちょっとずれてる、ちょっと、おかしい

こんな父でよかった。

ああ、なんだ、それでいいのか、と私は救われた。




私にとって、漫画とは



私の人生を、作るもの、変えるものなのだ。



普通の人生は就職したり、結婚したり子を産んだり

するのだろうけど、それはそれで素晴らしいしまっとうな生き方

なんだろうけど


私にとっては、漫画を描いていないと

そこで人生がストップしてしまうように感じる。



出版社の望むくらい売れることは

できなかったけど、

私は自分で考え悩み、作り出すストーリーの中で

わたし自身が成長している。

自信も何にもなかった私が、自分を一から作ってこれた、

漫画という手法で。



だから自分だけでなく、

私の漫画で、同じように感動してほしい。

笑ってほしい。

泣いてほしい。

恋してほしい。

切なくなってほしい。



それができるまで


父に生きていてほしい。

























posted by 蒼乃シュウ at 15:54 | TrackBack(0) | 日記

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ティーンズラブを主に描いておりました。以前は本名でミステリーや普通の少女漫画も描いていました。 Twitterは @pinokodoaonoshu ぴのこ堂
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