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2016年09月30日

小説「お化け坂を訪ねて」

「夜になるとお化けが出てくると言うウワサがたつような、暗くて淋しい坂道が意外と各地には存在しているのです。そのような坂には、実際に、お化けが出てきたり、不思議な怪現象が起こったりもしています。私は、そうした坂ばかりを探して、こうして訪ね歩いているのです」私は言った。
 私のそばには、ぶっきらぼうな雰囲気の中年男がつっ立っていて、私の話に耳を傾けてくれていた。
 私たちは、少し距離をあけて、アスファルトの一本道の上に立っており、道の左右は見渡す限り荒野だった。私たち以外に人影はない。風が少し強く吹いているが、空は青く晴れ渡っていた。
「もっとも有名なお化け坂は、江戸時代の随筆家、小泉八雲が記録に残しています。紀伊の国坂と言いましてね」と、私は話を続けた。
「その話は聞いた事がある。確か、のっぺらぼうが出てくるんだろう?」男が、急に私の話に割り込んできた。
「そうです。しかも、一人の被害者が立て続けに二回、そののっぺらぼうに出くわして、驚かされています。最初は、道ばたで座り込んでいた女性に声を掛けて、振り向いた顔がのっぺらぼうでした。その事を屋台の主人に知らせてみたら、その主人も振り向くと、のっぺらぼうだったと言う話です。こののっぺらぼうの正体はむじなだったのではないかとも言われています」
「あんたが知っている他のお化け坂にもむじなが出てくるのかい?」
「分かりません。むじななのかもしれないし、もっと違う化け物なのかもしれません。そのへんがはっきりしないから、<お化け>の坂なんです。たとえば、こんなお話もあります。


(つづきは「ルシーの明日とその他の物語」で)

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posted by anu at 18:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説
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