<個人的な評価:10点中7.5点>
下記、個人的な感想。
ネタバレあり
下記、個人的な感想。
ネタバレあり
『Suspiria (1977)』のリメイク。ただのリメイクではなく、時代背景にも密接に絡んだ作品となっている。1977年度のサスペリアは、赤い色&音楽に重点を当ててて、アートのような作品だった。
今作は、魔女集団&時代背景&独特なダンス(暗黒舞踏?)い重点を当てたものだ。
舞台のダンススクールは、1977年の作品に出てたダンス学校と違って、赤ではなく、一見すると、普通の地味なダンススクール。
しかし、衣装など、ところどころ、「赤」は出てくる。
ダンスは、独特。アートとさえ感じる。1977年度のは確かバレエだったと思うが、今回は、モダン的な暗黒舞踏のようなもの。魔女の儀式の時に、みんなで裸で踊ってたの、強烈すぎる。グロい場面もあったが、芸術とさえ感じる場面もあった。
時代背景は、1977年のドイツ。
西ドイツでは1977年の9月から10月にかけて「ドイツの秋」というテロ事件が勃発した時代だ。極左民兵組織(赤軍)&魔女集団を比較して、絡めた内容はなかなか面白いと思う。
双方、制圧された側の社会への復讐。
このテロ事件は、歴史にもある通り、赤軍側が敗北。
これと同じように、ダンススクールを支配してた魔女軍団のマルコス側の力も、最終的には敗北。
ダンスカンパニーをしきってたのは、老婆の魔女・マルコス。死にたくない、永遠の命を得たいがために、少女たちを生贄にしていた。そんな組織の生贄としてやってきた主人公スージー。
しかし、スージーの正体は、最強の魔女“マザー・サスペリオーム”だったと、後半で明らかにされる。
ここらへんが、オリジナルの要素と根本的に違うね。
スージーが、実際は、どの魔女よりも、強い魔女だったのは伏線があった。
クリスチャンの母から、「罪」といわれ虐待されてた事。
ダンスの才能があるのは、もちろんだが、やってきやばかりなのに、主役の座を自らやるといった。
舞踏団にやってきたばかりの、ぽっとでの癖に、一番新しい癖に、大人しそうにみえて、実は狡猾な奴だなと、私は思ったが...
本来なら、空気読めないとか、まわりからの嫉妬を買いそうだが、なぜかカリスマ性もあって、ダンスの仲間たちとも、打ち解ける。
マダム・ブランからは本当に大切にされてたと思うな...
今作は小説のように章に別れている。
ACT ONE:1977(第一幕:1977年)
1977年秋の西ドイツ・ベルリン。ドイツ赤軍によるテロが起き、触発された左翼系の学生たちのデモも勃発している中、パトリシアという若い女性は、年老いた心理学者ヨーゼフ・クレンペラー博士の家を訪れる。パトリシアはクレンペラーに自分が所属していた由緒正しい舞踏団マルコス・ダンスカンパニーのことを話す。パトリシアは、明らかに精神が病んでいるようだった。
パトリシアが言うには、そこの寮母たちは魔女で、秘密の部屋で恐ろしい活動をしているらしい。
科学的な事しか信じないクレンペラーは、当初は、彼女の話は、妄想だと思ってた。
パトリシアは「“マルコス”が私の頭の中にいる」と言い、出て行った。
同じころ、スージーという若い女性が、舞踏団のオーディションを受けにアメリカからやってきた。
また場面がかわり、同じころ、スージーの故郷のアメリカ・オハイオ州では、彼女の母親が危篤状態で、苦しんでいた。
スージーは、見事にオーディションに合格。マダム・ブラン(マルコスに次ぐ魔女の実力者)は、スージーの才能にほれ込む。
スージーは、同じ建物の舞踏団の寮で暮らす事になる。そして案内役のサラという女性と仲良くなっていく。
ACT TWO:Palaces of Tears(第二幕:涙の宮殿)
教官や寮母たち(魔女たち)が集まり、次の魔女の最高指導者を決める投票が行われる。
魔女たちはそれぞれ、マダム・ブランと現指導者“ヘレナ・マルコス”のどちらかに投票した。投票の結果、マルコスが現在の地位を維持。
しかし、このマルコスという人物の存在は、この時点では、まだ明らかになっていない。秘密の部屋で暮らしているのだろう。
魔女たちは食卓を囲み、パトリシアが去った今、次のマルコスの“入れ物”を誰にするかという協議もしていた。
その頃、心理学者クレンペラー博士は、国境を越えて東ドイツに入り、戦時中に生き別れになった妻、アンケとの思い出の別荘を訪れていた。
一方、舞踏団では、稽古の中で、パトリシアと仲が良かった、オルガというダンサーが、取り乱す。オルガは、ブランを、魔女と罵り、パトリシアがいなくなったのも彼女のせいだと言う。
その後、スージーは初のダンス稽古で、パトリシアがいなくなったパートを埋める事になる。
ブランはスージーの手と足を触り、何かの力を彼女に与える。どうやら、自分の力を与えているようだ。
一方でオルガは、舞踏団の建物を出ようとするが....罠にかかり、誰もいない鏡の部屋に閉じ込められ、魔女の呪いで、体が色んな方向に曲がりくねって、失禁もして、人間とはいえない、化け物のような格好で瀕死状態になる。この状態でまだ死んでないのがスゴイ。かろうじて息をしている。グロい。
その後、鏡の部屋で瀕死状態になったオルガを魔女たちが囲む。金属のフックで、オルガの身体を刺して持ち上げる。グロすぎる。そして、そこから、鏡の間にある秘密の扉の奥へと運んでいってしまう。
そのころ、クレンペラーはパトリシアが残した手帳を読む。そこには古来から伝わる3人の魔女の名前や何らかの儀式に参加させられ動けなくなったというパトリシアの体験談が書かれてた。クレンペラーは警察にパトリシアが行方不明になったと通報を入れる。
スージーは、マダム・ブランと親交を深める。
ブランは自作のオリジナル舞踏「民族」の主役を、スージーに踊ってほしいという。
スージーは、夜な夜な、不穏で奇妙な夢を見る。故郷の母や、魔女たちや、蟲や、儀式などが出てくる
ACT THREE:Borrowing (第三幕:借り物)
通報を受けた刑事が舞踏団の建物にやってきたが、魔女たちの力で、洗脳されたので、特に収穫はなし。
スージーは事務室の奥の部屋から笑い声がするのを聞いたので覗いた。すると、そこには、二人の刑事たちが、下半身を裸にされて、寮母たちに弄ばれていた。(この作品、男性の下半身、モザイクなしで出てくる)
それを見てもスージーは特に顔色も変えなかったので、この時点で、スージーも普通じゃないなと確信した。彼女も実は魔女なのかな?という疑惑が、視聴者の私の中に生まれた。
魔女たちは、スージーを生贄にする事を決めてたが、スージーに愛着がわいたブランは、積極的ではない。しかし最高指導者の“マルコス”の意向にはブランも逆らえない。
引き続き、夜な夜な、奇妙で不気味な夢を見続けるスージー。
ACT FOUR:Taking (第四幕:取り込み)
パトリシアの事を聞くために、サラに接近する心理学者クレンペラー。サラは舞踏団の教師たちを尊敬し、今まで、疑念もなく過ごしていたが、クレンペラーとの話で、サラは舞踏団に疑念を持ち始めた。
夜中、サラは寝室から抜け出して、鏡の間の奥にある、秘密の部屋の存在を見つけてしまう。秘密の部屋には、マダム・ブランと謎の老婆が並んだ肖像画や、奇妙なオブジェがたくさん並んでいました。サラはその中から、金のフックを見つけて持ち帰ってしまう。
翌日、サラは、クレンペラーに秘密の部屋の事を話して、フックも見せる。
パトリシアの手帳に書いてあった、キリスト教誕生以前から存在する三人の最古の魔女達。
「暗闇」の魔女“テネブラルム”、「涙」の魔女“ラクリマルム”、「嘆き」の魔女“サスペリオルム”。舞踏団を牛耳るマルコスは、その3人の魔女のうち誰かの権威を得ているのかもしれないとクレンペラーは言う。
マルコス舞踏団に対するサラの疑念は確信に変わっていく。
一方、スージーの故郷では危篤状態の母が、牧師に語り掛けていた。
「スージーを生んだのは私の罪。私は娘で世界を汚した」。
舞踏「民族」のコンサートの日。クレンペラーも鑑賞に来ていた。ダンサーたちは裸の上に赤い紐だけを巻いた衣装をきていた。主役のスージーは、髪の毛を切り、顔にも不気味な化粧があった。まるで、これから何かの儀式をするかのような....
サラの姿は見当たらない。
サラは、再び隠し部屋の奥へ向かっていた。
サラ!!!!!!この子が一番可哀想だな.....
ACT FIVE:In the Mutterhaus; All the Floor are Darkness
(第五幕:マザーの家で全てのフロアは暗闇)
サラはと隠し部屋で、衰弱しきりボロボロになったパトリシアを見つけて助けようとするが、パトリシアは、もう人間ですらないようだ。そして、後ろで影から這い寄ってくる化け物かに気づき、サラは必死に逃げ出す。サラが逃げている最中、床に穴が開き、彼女は転んだり、足から骨が飛び出てきたり、苦しむ事になる。
舞台では、サラがいないまま、ダンスの発表会が行われていた。ダンサーたちは、六芒星の書かれた床の上を、一心不乱に踊っていた。まるで何かの儀式のようだ。
サラの元に、マダム・ブランやミス・タナーがやってきて、サラの足を直した。
しかし、サラはもうサラではないようだ。サラは催眠術にかかって、そのまま、舞台に出る事になる。
しかし、舞台の途中で、サラは、我に返ったのか、叫び声をあげ、足はまた骨折して、骨が飛び出てきた。
舞台は中断。寮母たちは、サラを、どこかに運んでいった。
その場を目撃したクレンペラーも、サラを助ける事ができなかった。
スージーは、自分が何者かであるか悟っているようだ。
その夜、スージーと、マダム・ブランは、テレパシーで会話をした。
その夜は、スージーは夢をみなかった。
ACT SIX:Suspiriorum(第六幕:嘆きの魔女)
いよいよ、儀式の日。
クレンペラーも、幻想をみて、誘い込まれ、魔女たちにとらえられて、儀式を目撃する事になる。
隠し部屋の地下の奥の広間で、魔女たちの“儀式”が行われる。
寮母やダンサーたちが、全裸で、一心不乱になって踊り狂っていた。
サラ、パトリシア、オルガ。死んでいてもおかしくない状態の3人は、虚ろな目をして、突っ立っていた。そして、彼女たちは、魔女たちに生きたまま体を裂かれ内蔵を取り出される。グロ!!!!!
マザー・マルコスの正体が明らかになる。年寄りというレベルではなく、まさに化け物だ。
見た目も酷いが、なんか、すごく臭そう。何歳かは知らないが、100歳どころではないだろう。200歳、300歳?全身が醜く爛れ、裸で座っていた。マザー・マルコスは、見た目が、醜いだけじゃなく、心も醜く、サディスティックで、腐っていた。彼女は自分が生きながらえるために、新しい魂の依り代になる若い女性を探していたのだ。
マルコスは、スージーを見て喜ぶが、ブランは彼女を止めようとする。
しかしスージーは、覚悟はできているとの事。
それでもブランは反対し、儀式自体を止めようとするが、それにマルコスは怒り、魔力でブランの喉先を切きさき、血が吹きだす。これもグロすぎる。
マルコス:「母は一人だけだ。他の母を捨て私を受け入れよ。お前を産んだ女を殺せ!」と言う。
しかし、スージーは冷静だ。
すると、広間の床の隠し扉が空き、醜く恐ろしいモンスターが現れた。
スージーが、自分の正体を明らかにする。
スージーは「私がサスペリオルムよ」と告げる。
そう、彼女は、マルコスなんかより、もっと上の存在、マルコスに魔女の力を与えた、張本人だったのだ。これですべてが繋がった。
スージーは、人間として暮らしていて、魔女としては、今まで長い眠りにいたのだ。
しかし、自分が普通の人間じゃないことは、昔から薄々、気づいていたようだ。
舞踏団に入ったのも運命。全て運命に導かれるままに。そして舞踏団で暮らすうちに、夜な夜な、奇妙な夢をみるうちに、彼女は自分自身が何者か、思い出していったのだ。
スージーこそが、嘆きの魔女サスペリオルム!!!!!
スージーは、怪物を操っているようだった。怪物もスージーの一部なのか。
怪物は、マルコスのに、死の口づけをした。
マルコスは死亡した。
スージー:「私こそマザーよ!ほかのマザーには死を!」と叫ぶ。
マルコスに投票していた魔女たちも次々と怪物に殺されていく。
しかし、スージーは、直接、犠牲になった少女、サラ達3人の元に近づき、“彼女らが望む安らかな死を与えた。スージーの力で、彼女たちを復活させる事はできなかったのかな?うーん。
サラは最後はスージーの上に抱かれて死んでいった。
マダム・ブランに投票した魔女たちは生き残った。
明け方になるとクレンペラーは、生き残った魔女に付き添われて建物を出た。
クランペラー、殺されなかったね。
エピローグ
翌朝、若いダンサーたちは、何も覚えておらずいつものように稽古場で練習を始めていた。
教官はマダム・ブランがダンスカンパニーを辞めたと皆に告げた。
“儀式”が行われた秘密の部屋で、生き残った魔女たちが掃除をしていた。
ブランは首がもげかけながらも、なんとか生きてたけど、首は元に戻らないのかね?
どうするんだろう.....
マダム・ブランは、スージーにとっては一番の味方でしょうに。
どうやら、ダンスカンパニーをこれから牛耳るのはスージーかな?
その後、クレンペラーに家にきたスージー。
クレンペラーに優しさを見せる。
スージー、いや、魔女サスペリオルムは、クレンペラーに、生き別れになった妻がどうなったか、真実を教える。
クレンペラーの妻は、はぐれた後ナチスの収容所に入れられた。1943年11月11日に収容所所長が極寒の中人々を外に調査と称して出したのが原因で凍死。収容所で仲良くなった女性たちと一緒だったので、孤独な死ではなかったとの事。最期までクレンペラーの事を想っていたこと。最後に脳裏に浮かんだのは、彼女の誕生日に、クレンペラーが連れていってくれたショパンとブラームスのコンサート。
クレンペラーはそれを聞いて涙を流した.....
スージー(魔女サスペリオルム)が、悪い魔女にみえない。
魔女だから、もちろん正義の熱血ヒーローではないけど。スージーの場合は、マルコスのような強欲さはなく、悟った印象がするので、これが真の魔女サスペリオルムなんだろうな。
スージー:「人間には罪と恥の意識が必要です。ただそれはあなたの物ではない」という。
スージーは、クレンペラーから、魔女たちの事や、パトリシア、サラ、そして妻アンケに関する記憶を消す。
クレンペラーにも安らかな死を与えるのかなと思ったが、クレンペラーは、記憶を失っただけで、その後も生きていく。
以上、SUSPIRIAの内容。
クレンペラーという人物にも集点をあてた事で、当時の時代背景が上手く表現されていた。
個人的に、グッとくる内容の作品ではなかったけど、ホラー作品としてはユニークな作品だと思う。