2021年08月03日
into the amber
掲げたグラスから、白ワインを一口含む。
やはり美味しい。
こういうところは、彼の選択に間違いはない。
程なく、アンティパストが運ばれてくる。
間違いない美味しさ。
ワインも合う。
順に運ばれる料理を楽しみながら、彼が、相変わらずの軽口を披露する。
肉料理の前に、少し型の違うグラスに赤ワインが注がれる。
彼が、またグラスを掲げる。
応えるように、自分のグラスを軽く上げる。
一口含む、やはり美味しい、そしてワタシの好み。
間違いのない選択を称賛するように、食事中は大人の受け答えを続ける。
やがて、デザートが運ばれてくる。
辺りにカカオとマスカルポーネの香が漂い、口にする前から美味しいことが分かる。
彼が、ウェイターに何か囁く。
グラスが二つ運ばれてくる。
琥珀の液体が、微かに揺れている。
「覚えているかい」
彼が答えを待たずに続ける。
「今も、この組み合わせが好きでね」
言いながら、ティラミスを一口運ぶと、続けてグラスから琥珀の液体を含む。
満足気に微笑む彼。
初めて彼に、仕事の話を打ち明けられたとき、教えられた組み合わせ。
束の間、ティラミスの甘さとともに、甘い記憶が蘇る。
何年前のことかしら…。
ハッとして、グラスのブランデーを呷るように飲む。
甘さと記憶とを打ち消して言う。
「そろそろ本題に入ったら、食事しに来たワケじゃないでしょ」
「それだけでもいい、と思い始めているんだが」
「ワタシにそんな気はないわ、分かってるでしょっ」
言いながら、半ば自分に言いきかせていることに気づく。
言葉でそう言わないと、心地よさに流されてしまいそうになる。
今は、付かず離れずの距離がいい。
ワタシの心を察するかのように彼が言う。
「そうだな、本題か、まぁ君とは、また」
「…」
それには応えずに、彼の言葉を待つワタシ。
「頼みたいのは、こういうことだ」
彼の声に、黙って聴き入る。
彼が話し終える頃合い、見計らうように、ウェイターがエスプレッソを運んでくる。
彼が、グラニュー糖をたっぷり入れる。
ワタシは、軽く一匙だけ。
苦味を楽しみつつ拭い去るamberカラーの思い出。
やはり美味しい。
こういうところは、彼の選択に間違いはない。
程なく、アンティパストが運ばれてくる。
間違いない美味しさ。
ワインも合う。
順に運ばれる料理を楽しみながら、彼が、相変わらずの軽口を披露する。
肉料理の前に、少し型の違うグラスに赤ワインが注がれる。
彼が、またグラスを掲げる。
応えるように、自分のグラスを軽く上げる。
一口含む、やはり美味しい、そしてワタシの好み。
間違いのない選択を称賛するように、食事中は大人の受け答えを続ける。
やがて、デザートが運ばれてくる。
辺りにカカオとマスカルポーネの香が漂い、口にする前から美味しいことが分かる。
彼が、ウェイターに何か囁く。
グラスが二つ運ばれてくる。
琥珀の液体が、微かに揺れている。
「覚えているかい」
彼が答えを待たずに続ける。
「今も、この組み合わせが好きでね」
言いながら、ティラミスを一口運ぶと、続けてグラスから琥珀の液体を含む。
満足気に微笑む彼。
初めて彼に、仕事の話を打ち明けられたとき、教えられた組み合わせ。
束の間、ティラミスの甘さとともに、甘い記憶が蘇る。
何年前のことかしら…。
ハッとして、グラスのブランデーを呷るように飲む。
甘さと記憶とを打ち消して言う。
「そろそろ本題に入ったら、食事しに来たワケじゃないでしょ」
「それだけでもいい、と思い始めているんだが」
「ワタシにそんな気はないわ、分かってるでしょっ」
言いながら、半ば自分に言いきかせていることに気づく。
言葉でそう言わないと、心地よさに流されてしまいそうになる。
今は、付かず離れずの距離がいい。
ワタシの心を察するかのように彼が言う。
「そうだな、本題か、まぁ君とは、また」
「…」
それには応えずに、彼の言葉を待つワタシ。
「頼みたいのは、こういうことだ」
彼の声に、黙って聴き入る。
彼が話し終える頃合い、見計らうように、ウェイターがエスプレッソを運んでくる。
彼が、グラニュー糖をたっぷり入れる。
ワタシは、軽く一匙だけ。
苦味を楽しみつつ拭い去るamberカラーの思い出。
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