2017年02月14日
【軍事】北ミサイルで米が陸軍6000人増検討 中国「とばっちり食った」…韓国THAAD配備に懸念[2/14]
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北朝鮮がミサイル発射を強行したのを受け、米政権は軍再建を本格始動させる方針だ。韓国では、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の早期配備が重要との声が高まっている。中国は韓国配備の動きが加速することを懸念。ロシアは対話での事態打開に期待を寄せている。
◇
【ワシントン=加納宏幸】北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、「米軍再建」を主張してきたトランプ米大統領は近く米議会指導者との間で予算措置を含めた対応を協議する。ミラー米大統領補佐官(政策担当)が12日、明らかにした。トランプ政権はオバマ前政権下で国防予算が削減されたことによる軍事力の低下を懸念してきた。陸軍新兵の募集目標を6千人上積みする案などが検討されている。
ミラー氏は米CBSテレビの番組で北朝鮮による弾道ミサイル発射に言及した上で、「偉大なる米軍の再建を始める。大統領は米議会に行き、疑う余地のない軍事力を再び持つため軍への投資を要請することにしている」と述べた。
これに関連し、USA TODAY(電子版)は12日、陸軍が今年秋までに予定している新兵の募集目標を6万2500人から6万8500人へ6千人上積みする計画だと報じた。1973年に完全に志願兵制になって以来、最大の募集で、約3億ドル(約340億円)の追加予算が必要。
上下両院で共和党が過半数を握る米議会は昨年12月、オバマ前大統領が提案していた2017会計年度(16年10月〜17年9月)の陸軍現役兵力46万人の充足目標を約47万6千人に上積みする国防権限法を可決し、オバマ氏の署名で成立させた。同法はこのほか空軍4千人、海軍2200人、海兵隊800人をそれぞれ追加した。
陸軍の新兵募集目標の引き上げはこれに伴う措置。同紙によると空軍や海軍も新兵募集を加速させる。
アフガニスタン、イラク両戦争の終結を公約したオバマ氏は13年から歳出の強制削減を実施するなど国防費の削減を進めてきた。米シンクタンク、米戦略予算評価センター(CSBA)によると、10会計年度から14会計年度にかけての下落幅は21%。訓練や装備品調達にしわ寄せが出ており、米軍の即応力や抑止力への影響が懸念されていた。
トランプ氏は「米軍が劣化した」とし、政策転換を主張。1月27日に米軍再建の大統領令に署名し、1カ月以内に即応性を検証し、来年1月をめどに国防戦略を策定するよう命じ、ミサイル防衛の強化も求めた。トランプ氏は大統領選で海軍艦艇を350隻▽陸軍現役兵力を54万人▽空軍戦闘機を1200機▽海兵隊を36大隊−にそれぞれ増強する計画を発表した。
■中国、日米結束強化に焦り
【北京=藤本欣也】中国外務省の耿爽報道官は13日、弾道ミサイルを発射した北朝鮮に対し、「国連安全保障理事会の決議に違反して発射活動を行うことに反対する」とコメントした。一方で「北朝鮮の核・ミサイル問題の根源は、北朝鮮と米国、韓国との対立にある」と指摘した上で、中国は関係各国に「対話を促す」などと述べ、改めて“責任転嫁”した。
ミサイル発射後、日米欧各国から非難声明が相次いで発表されたが、中国政府は1日以上、だんまりを決め込んだ。今年後半に中国共産党大会を控え、北朝鮮問題が権力闘争にも飛び火しかねない中、習近平政権がいらだちを募らせているのは間違いない。
まず、北朝鮮による弾道ミサイルの発射は、米国主導のミサイル防衛網整備の呼び水になってしまう。
中国は「地域の安全保障上の利益や戦略バランスを損ねる」として、米軍のTHAADの韓国配備に激しく反対してきた。しかし、北朝鮮のミサイル発射で韓国の配備推進派を勢いづかせる結果を招いた。
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報によると、遼寧社会科学院・朝鮮半島研究センターの呂超主任も「北朝鮮問題で中国はまたしても、とばっちりを食った」と指摘。「THAAD問題で中韓関係、中米関係が著しく損なわれても、北朝鮮にとって悪い話ではない。本当に損害を被るのは中国とロシアだ」との見方を示す。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170214/frn1702141530007-n1.htm
今回のミサイル発射をめぐっては、そのタイミングも中国には最悪だった。
日米首脳が米国で会っている最中に発射されたことで、トランプ米大統領が「偉大な同盟国日本を百パーセント支持する」と発言、強固な日米同盟ぶりを安倍晋三首相にアピールさせてしまった。
沖縄県・尖閣諸島をめぐり日本と対立する中国にとっては“対岸の火事”ではすまされない。日米同盟の強化は東シナ海にもそのままあてはまるからだ。
■韓国、軍事協力を増す必要性
【ソウル=名村隆寛】北朝鮮による新型弾道ミサイルの発射について、韓国は「露骨で明白な国連安保理決議違反で、朝鮮半島と国際社会の平和と安全に対する脅威だ」(外務省報道官声明)と強く非難。「国際社会と共に相応に懲らしめるよう最善を尽くす」(黄教安(ファン・ギョアン)首相)と対北圧力を強化する構えだ。
韓国与野党はミサイル発射をいずれも批判している。ただ、最大野党「共に民主党」や、次期大統領選挙への出馬を事実上、表明している同党の文在寅(ムン・ジェイン)前代表らは、北朝鮮のミサイルに対処する米軍のTHAADの韓国配備見直しや、日韓の安保分野の情報共有を可能にする軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を主張している。
しかし、今回のミサイル発射は、THAADや日韓GSOMIAなど日米との協力が韓国には必要であることを見せつけた。
聯合ニュースは、韓国軍がミサイルの軌跡を「発射2分以内」に探知、識別したとの軍関係者の話を伝えた。ただ、韓国保有のレーダーではミサイルが一定の高度に達するまで捕捉できないという。一方、米軍の早期警戒衛星なら発射と同時の探知が可能だ。
韓国軍は当初、発射ミサイルを「ノドン」と推定したが、5時間後に「ムスダン」の改良型、13日に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)技術を用いたミサイル、と訂正を余儀なくされている。
朴槿恵(パク・クネ)大統領の職務が停止中の韓国では、自国の対北対応への焦燥感も出ている。朝鮮日報(13日付)は社説で、日米首脳が夕食会などの最中にミサイル発射の報告を受け、緊急の共同記者会見を開いたことに触れ、「両首脳の機敏な対応を見て、自分のことが人ごとのようになっている状況を心配せざるを得ない」と韓国の現状を憂えた。
■ロシア、仲介役で存在感模索
【モスクワ=遠藤良介】ロシア外務省は13日、北朝鮮の弾道ミサイル発射が国連安全保障理事会の決議を無視していると懸念を示し、外交的手段で朝鮮半島問題を解決すべきだとの声明を発表した。プーチン露政権は、北朝鮮の核・ミサイル開発を容認できないとする半面、制裁や圧力よりも対話で事態を打開すべきだとする立場だ。トランプ米政権が北朝鮮との対話路線にかじを切り、ロシアが北朝鮮と日米韓の「仲介役」として存在感を高める展開を模索している。
安保理常任理事国と核超大国の地位を対外政策のよりどころとするロシアは、度重なる北朝鮮の核・ミサイル実験に強い不快感を抱いている。ただ、米国などの圧力で北朝鮮の体制が崩壊することや、日韓が北朝鮮の脅威を理由に、米国の後ろ盾で軍備増強に動くことを強く警戒してもいる。
ロシアの議員らは地元メディアに対し、北朝鮮の核保有や安保理決議違反は許されないと指摘。その一方、北朝鮮が制裁の強化によって譲歩することは考えられず、6カ国協議の再開こそが問題解決の道筋だ−などと語っている。
イワシェンツォフ元駐韓大使は、北朝鮮のミサイル技術が進歩しているのを受け、トランプ米政権が北朝鮮との「対話」再開を求めるロシアに呼応するとみている。プーチン政権は、北朝鮮とのパイプを生かした「仲介外交」によって東アジアでの存在感を高め、米欧に対する立場の強化につなげたい思惑だ。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/images/20170214/frn1702141530007-p1.jpg
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/images/20170214/frn1702141530007-p2.jpg
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/images/20170214/frn1702141530007-p5.jpg
平壌駅前の大型スクリーンで、新型の中距離弾道ミサイル発射実験のニュースを見る市民=13日(共同)
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/images/20170214/frn1702141530007-p3.jpg
北朝鮮の労働新聞が13日掲載した、ミサイル発射に立ち会った金正恩朝鮮労働党委員長(中央)の写真(共同)
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/images/20170214/frn1702141530007-p4.jpg
12日、北朝鮮の新型中距離弾道ミサイル発射に立ち会う金正恩朝鮮労働党委員長(朝鮮通信=共同)
北朝鮮がミサイル発射を強行したのを受け、米政権は軍再建を本格始動させる方針だ。韓国では、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の早期配備が重要との声が高まっている。中国は韓国配備の動きが加速することを懸念。ロシアは対話での事態打開に期待を寄せている。
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【ワシントン=加納宏幸】北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、「米軍再建」を主張してきたトランプ米大統領は近く米議会指導者との間で予算措置を含めた対応を協議する。ミラー米大統領補佐官(政策担当)が12日、明らかにした。トランプ政権はオバマ前政権下で国防予算が削減されたことによる軍事力の低下を懸念してきた。陸軍新兵の募集目標を6千人上積みする案などが検討されている。
ミラー氏は米CBSテレビの番組で北朝鮮による弾道ミサイル発射に言及した上で、「偉大なる米軍の再建を始める。大統領は米議会に行き、疑う余地のない軍事力を再び持つため軍への投資を要請することにしている」と述べた。
これに関連し、USA TODAY(電子版)は12日、陸軍が今年秋までに予定している新兵の募集目標を6万2500人から6万8500人へ6千人上積みする計画だと報じた。1973年に完全に志願兵制になって以来、最大の募集で、約3億ドル(約340億円)の追加予算が必要。
上下両院で共和党が過半数を握る米議会は昨年12月、オバマ前大統領が提案していた2017会計年度(16年10月〜17年9月)の陸軍現役兵力46万人の充足目標を約47万6千人に上積みする国防権限法を可決し、オバマ氏の署名で成立させた。同法はこのほか空軍4千人、海軍2200人、海兵隊800人をそれぞれ追加した。
陸軍の新兵募集目標の引き上げはこれに伴う措置。同紙によると空軍や海軍も新兵募集を加速させる。
アフガニスタン、イラク両戦争の終結を公約したオバマ氏は13年から歳出の強制削減を実施するなど国防費の削減を進めてきた。米シンクタンク、米戦略予算評価センター(CSBA)によると、10会計年度から14会計年度にかけての下落幅は21%。訓練や装備品調達にしわ寄せが出ており、米軍の即応力や抑止力への影響が懸念されていた。
トランプ氏は「米軍が劣化した」とし、政策転換を主張。1月27日に米軍再建の大統領令に署名し、1カ月以内に即応性を検証し、来年1月をめどに国防戦略を策定するよう命じ、ミサイル防衛の強化も求めた。トランプ氏は大統領選で海軍艦艇を350隻▽陸軍現役兵力を54万人▽空軍戦闘機を1200機▽海兵隊を36大隊−にそれぞれ増強する計画を発表した。
■中国、日米結束強化に焦り
【北京=藤本欣也】中国外務省の耿爽報道官は13日、弾道ミサイルを発射した北朝鮮に対し、「国連安全保障理事会の決議に違反して発射活動を行うことに反対する」とコメントした。一方で「北朝鮮の核・ミサイル問題の根源は、北朝鮮と米国、韓国との対立にある」と指摘した上で、中国は関係各国に「対話を促す」などと述べ、改めて“責任転嫁”した。
ミサイル発射後、日米欧各国から非難声明が相次いで発表されたが、中国政府は1日以上、だんまりを決め込んだ。今年後半に中国共産党大会を控え、北朝鮮問題が権力闘争にも飛び火しかねない中、習近平政権がいらだちを募らせているのは間違いない。
まず、北朝鮮による弾道ミサイルの発射は、米国主導のミサイル防衛網整備の呼び水になってしまう。
中国は「地域の安全保障上の利益や戦略バランスを損ねる」として、米軍のTHAADの韓国配備に激しく反対してきた。しかし、北朝鮮のミサイル発射で韓国の配備推進派を勢いづかせる結果を招いた。
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報によると、遼寧社会科学院・朝鮮半島研究センターの呂超主任も「北朝鮮問題で中国はまたしても、とばっちりを食った」と指摘。「THAAD問題で中韓関係、中米関係が著しく損なわれても、北朝鮮にとって悪い話ではない。本当に損害を被るのは中国とロシアだ」との見方を示す。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170214/frn1702141530007-n1.htm
今回のミサイル発射をめぐっては、そのタイミングも中国には最悪だった。
日米首脳が米国で会っている最中に発射されたことで、トランプ米大統領が「偉大な同盟国日本を百パーセント支持する」と発言、強固な日米同盟ぶりを安倍晋三首相にアピールさせてしまった。
沖縄県・尖閣諸島をめぐり日本と対立する中国にとっては“対岸の火事”ではすまされない。日米同盟の強化は東シナ海にもそのままあてはまるからだ。
■韓国、軍事協力を増す必要性
【ソウル=名村隆寛】北朝鮮による新型弾道ミサイルの発射について、韓国は「露骨で明白な国連安保理決議違反で、朝鮮半島と国際社会の平和と安全に対する脅威だ」(外務省報道官声明)と強く非難。「国際社会と共に相応に懲らしめるよう最善を尽くす」(黄教安(ファン・ギョアン)首相)と対北圧力を強化する構えだ。
韓国与野党はミサイル発射をいずれも批判している。ただ、最大野党「共に民主党」や、次期大統領選挙への出馬を事実上、表明している同党の文在寅(ムン・ジェイン)前代表らは、北朝鮮のミサイルに対処する米軍のTHAADの韓国配備見直しや、日韓の安保分野の情報共有を可能にする軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を主張している。
しかし、今回のミサイル発射は、THAADや日韓GSOMIAなど日米との協力が韓国には必要であることを見せつけた。
聯合ニュースは、韓国軍がミサイルの軌跡を「発射2分以内」に探知、識別したとの軍関係者の話を伝えた。ただ、韓国保有のレーダーではミサイルが一定の高度に達するまで捕捉できないという。一方、米軍の早期警戒衛星なら発射と同時の探知が可能だ。
韓国軍は当初、発射ミサイルを「ノドン」と推定したが、5時間後に「ムスダン」の改良型、13日に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)技術を用いたミサイル、と訂正を余儀なくされている。
朴槿恵(パク・クネ)大統領の職務が停止中の韓国では、自国の対北対応への焦燥感も出ている。朝鮮日報(13日付)は社説で、日米首脳が夕食会などの最中にミサイル発射の報告を受け、緊急の共同記者会見を開いたことに触れ、「両首脳の機敏な対応を見て、自分のことが人ごとのようになっている状況を心配せざるを得ない」と韓国の現状を憂えた。
■ロシア、仲介役で存在感模索
【モスクワ=遠藤良介】ロシア外務省は13日、北朝鮮の弾道ミサイル発射が国連安全保障理事会の決議を無視していると懸念を示し、外交的手段で朝鮮半島問題を解決すべきだとの声明を発表した。プーチン露政権は、北朝鮮の核・ミサイル開発を容認できないとする半面、制裁や圧力よりも対話で事態を打開すべきだとする立場だ。トランプ米政権が北朝鮮との対話路線にかじを切り、ロシアが北朝鮮と日米韓の「仲介役」として存在感を高める展開を模索している。
安保理常任理事国と核超大国の地位を対外政策のよりどころとするロシアは、度重なる北朝鮮の核・ミサイル実験に強い不快感を抱いている。ただ、米国などの圧力で北朝鮮の体制が崩壊することや、日韓が北朝鮮の脅威を理由に、米国の後ろ盾で軍備増強に動くことを強く警戒してもいる。
ロシアの議員らは地元メディアに対し、北朝鮮の核保有や安保理決議違反は許されないと指摘。その一方、北朝鮮が制裁の強化によって譲歩することは考えられず、6カ国協議の再開こそが問題解決の道筋だ−などと語っている。
イワシェンツォフ元駐韓大使は、北朝鮮のミサイル技術が進歩しているのを受け、トランプ米政権が北朝鮮との「対話」再開を求めるロシアに呼応するとみている。プーチン政権は、北朝鮮とのパイプを生かした「仲介外交」によって東アジアでの存在感を高め、米欧に対する立場の強化につなげたい思惑だ。
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平壌駅前の大型スクリーンで、新型の中距離弾道ミサイル発射実験のニュースを見る市民=13日(共同)
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北朝鮮の労働新聞が13日掲載した、ミサイル発射に立ち会った金正恩朝鮮労働党委員長(中央)の写真(共同)
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12日、北朝鮮の新型中距離弾道ミサイル発射に立ち会う金正恩朝鮮労働党委員長(朝鮮通信=共同)
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