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　昨年の母の日の5月10日、米ネブラスカ州のテカムセ州立刑務所では暴動で収拾がつかなくなった。厳重に警備されている刑務所の広い区域を受刑者たちが乗っ取り、刑務官を襲撃して火を放ったほか、長期の刑に服していた性犯罪者2人を殺害した。



　州の捜査によると、刑務官の不足と高離職率のため、経験の浅い刑務官が大半で、過酷な勤務にあえいでいる刑務官も少なくなかった。これが同州の刑務所で半世紀以上ぶりに起きた暴動の背後に潜む要因だった。



　同じような人員不足問題が全米各地で目立ってきている。米国の失業率が5％未満に低下するなか、各州の矯正局が労働力確保で厳しい競争に直面しているためだ。この問題をさらに複雑にしている要因として、退職する刑務官の増加、強制的な残業の増加、地方での刑務官採用の難しさがある。地方に設置されている刑務所が少なくないのだ。



　ニューメキシコ州では、新任刑務官の圧倒的多数が3年以内に辞職する。このため、一部の刑務所ではここ数カ月、空きのポストが全体に占める比率（未充足求人率）が50％近くに達している。ウィスコンシン州では、州全体の看守と看守部長の未充足求人率が過去5年間で2倍以上増え、10％を超えた。ユタ州立刑務所では、529の刑務官のポストのうち100以上が未充足になっているため、施設の一部の閉鎖を余儀なくされている。



　各州は昇給やボーナス（賞与）でそれに対応している。テキサス州議会は昨秋、刑務官の給与を10.5％引き上げたほか、一部の刑務所で新規採用の刑務官に4000ドル（約45万円）のボーナスを支給している。未充足求人率は直近でピークだった昨年4月の14％強から11％弱に下がった。テネシー州では、全ての刑務官に1000ドルの残留ボーナスが最近支払われた。離職を抑えるためだ。



　ユタ州議会は昨年、過去10年間で最大の賃上げを了承し、刑務官の初任給を時給16.67ドルに引き上げた。刑務官は最近、追加賃上げを了承された。これは、さらに良い給与を提示する他の法執行機関との競争や、3.4％という州の低い失業率が背景にある。



　ユタ州矯正局のロリン・クック氏は、「彼らは他に行って働けば、同じような手当とより多い給与が得られる。経済が非常に良くなると、われわれは常に厳しい立場に置かれる」と話す。



　一部の州では、刑務官の平均給与が国の平均給与を下回っていて、人員不足が最も顕著だ。2014年の政府の直近のデータによると、ネブラスカ州では刑務官の平均時給が17.03ドルと、全国平均の21.59ドルを下回っている。マサチューセッツやニュージャージーなどの州では時給は30ドルを超えている。



　ネブラスカ州議会は、刑務官を維持するための残留ボーナスについて協議している。このほか、ベテランの刑務官の給与が新規採用の刑務官のそれとあまり変わらないという給与体系の変更を検討している。直近の同州の予算案には、刑務官の採用と維持のための150万ドルが計上された。矯正局はまた、大量離職が続くことへの理解を深めるため、刑務官特有の職場環境に関する調査を完了しつつある。



　ヒース・メロ州議会議員は「問題は採用にあるのではない。職員の維持にある」と述べ、「育てた刑務官を失うのは高くつく」と指摘した。



　受刑者の数は09年末にピークに達したが、職員へのニーズは必ずしも低下していない。全米州予算担当者協会のリポートによると、受刑者の数は、本格的な刑務所閉鎖につながるほど減っていないことがうかがえる。



　矯正の仕事は危険だ。国立労働安全衛生研究所の研究者が13年に出したリポートによると、刑務官は職場で負傷する率が最も高い職業の1つだ。主因は受刑者からの襲撃やその他の暴力行為にある。このリポートは安全性向上のための重要な方法の1つとして、人員不足への対応を挙げている。