2016年03月04日
【教育】オックスフォード大教授「日本の大学は授業の英語化を進めるより、教育内容の改善を優先すべき」
2014年、国際化を目指す大学を文部科学省が重点支援するスーパーグローバル大学(SGU)創成支援事業が始まった。
世界ランキング100位以内を目指す「トップ型」は、早稲田と慶應義塾、旧7帝大などの計13大学。取り組みに特色がある
「グローバル化牽引型」は24大学で、計37大学が選ばれた。各大学の10年間の構想調書には、数値目標が掲げられている。
だがこうした取り組みを、苅谷剛彦・英オックスフォード大学教授は「きわめて内向き」だと指摘、次のように話す。
* * *
スーパーグローバル大学創成支援事業は、きわめて内向きな「グローバル化」を目指す政策に見えます。その和製英語のネーミングが、おのずと物語っています。
日本の大学は、外国語で受けられる授業を増やすことが課題で、英語で教えられる教員が必要です。
各大学が10年間の計画をまとめた構想調書には、現状と数値目標が盛り込まれています。しかし、その教員は外国人教員「等」とあいまいさ
を残した表現になっています。ここには、外国籍や、海外で学位を取得した日本人の教員だけでなく、外国で通算1年以上3年未満の教育・研究歴のあ
る日本人教員が多数含まれるのです。
内訳を調べると、世界ランキング100位以内を目指すトップ型の大学でさえ、約4割が外国での教育・研究歴が1年以上3年未満の日本人教員でした。
その程度で英語で高度な内容を教え、学生同士の議論を裁けるでしょうか。
グローバル化とは、単なる「英語化」ではありません。外から国内の実態が見えてしまうのです。授業の言語やシラバスが英語になれば
、日本型のカリキュラムが海外に筒抜けになる。海外のグローバル大学と、日本の大学とでは教育レベルが全く違います。
英語化よりも教育内容の改善が先ではないでしょうか。
日本人は、外から実際にどう見られるかに疎い。昨年、文部科学省が文系学部の廃止を通知したと報じられました。
文科省は火消しに走りましたが、海外に広がった情報の訂正は困難です。その結果、海外では「日本では社会科学系は学べない」との認識が広がり、
知日家の卵を失いかねない事態に。国家的大損失です。
英語の習得は、日本人にとって深い意味があります。言語には、世界観の違いや、話す人が周囲をどう見ているかがよく表れます。
自分たちの文化や歴史を知る方法でもある。英語の学びやグローバル化が、こうしたことにもつながってほしいと思います。
※AERA 2016年2月29日号より抜粋
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世界ランキング100位以内を目指す「トップ型」は、早稲田と慶應義塾、旧7帝大などの計13大学。取り組みに特色がある
「グローバル化牽引型」は24大学で、計37大学が選ばれた。各大学の10年間の構想調書には、数値目標が掲げられている。
だがこうした取り組みを、苅谷剛彦・英オックスフォード大学教授は「きわめて内向き」だと指摘、次のように話す。
* * *
スーパーグローバル大学創成支援事業は、きわめて内向きな「グローバル化」を目指す政策に見えます。その和製英語のネーミングが、おのずと物語っています。
日本の大学は、外国語で受けられる授業を増やすことが課題で、英語で教えられる教員が必要です。
各大学が10年間の計画をまとめた構想調書には、現状と数値目標が盛り込まれています。しかし、その教員は外国人教員「等」とあいまいさ
を残した表現になっています。ここには、外国籍や、海外で学位を取得した日本人の教員だけでなく、外国で通算1年以上3年未満の教育・研究歴のあ
る日本人教員が多数含まれるのです。
内訳を調べると、世界ランキング100位以内を目指すトップ型の大学でさえ、約4割が外国での教育・研究歴が1年以上3年未満の日本人教員でした。
その程度で英語で高度な内容を教え、学生同士の議論を裁けるでしょうか。
グローバル化とは、単なる「英語化」ではありません。外から国内の実態が見えてしまうのです。授業の言語やシラバスが英語になれば
、日本型のカリキュラムが海外に筒抜けになる。海外のグローバル大学と、日本の大学とでは教育レベルが全く違います。
英語化よりも教育内容の改善が先ではないでしょうか。
日本人は、外から実際にどう見られるかに疎い。昨年、文部科学省が文系学部の廃止を通知したと報じられました。
文科省は火消しに走りましたが、海外に広がった情報の訂正は困難です。その結果、海外では「日本では社会科学系は学べない」との認識が広がり、
知日家の卵を失いかねない事態に。国家的大損失です。
英語の習得は、日本人にとって深い意味があります。言語には、世界観の違いや、話す人が周囲をどう見ているかがよく表れます。
自分たちの文化や歴史を知る方法でもある。英語の学びやグローバル化が、こうしたことにもつながってほしいと思います。
※AERA 2016年2月29日号より抜粋
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