2019年02月02日
映画「ミニヴァー夫人」戦時下の恐怖を描いた名作
「ミニヴァー夫人」(Mrs. Miniver)
1942年アメリカ
監督ウィリアム・ワイラー
原作ジャン・ストラッサー
脚本アーサー・ウィンペリス
ジョージ・フローシェル
ジェームズ・ヒルトン
クローディン・ウエスト
第15回アカデミー賞
作品賞、主演女優賞(グリア・ガースン)、助演女優賞(テラサ・ライト)、脚色賞、
撮影賞、監督賞(ウィリアム・ワイラー)、6部門受賞。
〈キャスト〉
グリア・ガースン ウォルター・ピジョン
テラサ・ライト
1914年(日本でいえば大正3年)、ボスニア=ヘルツェゴビナの首都サラエボにおいて、ひとりのセルビア人テロリストによってオーストリア皇太子フランツ・フェルディナント大公が暗殺されます。第一次世界大戦の幕開けでした。
それ以前からヨーロッパでは不穏な空気が漂っていて、テロリストによるオーストリア皇太子暗殺はそのキッカケを作っただけのものでしたが、やがてオーストリアはセルビアに宣戦布告をして、セルビアは同盟国であるロシアに泣きついたことによって戦線は拡大。世界を巻き込む大戦へと発展していきます。
時あたかも帝国主義の時代。食うか食われるかの世界版戦国時代です。その渦の中で日本も大戦に参戦はしましたが、ほぼ戦うことなく4年後の1918年に戦争は終結。日本は無傷でしたが、惨憺(さんたん)たる敗戦の憂き目に遭ったのがドイツでした。
莫大な戦後賠償によって、パンひとつ買うのに4000憶マルクというハイパーインフレに突入。ドイツ経済は壊滅状態に陥ります。
そんな状況の中で颯爽と登場したのが、アドルフ・ヒトラー率いるナチスでした。
第一次世界大戦の雪辱と世界制覇の野望を抱いて、1939年9月、ナチス・ドイツはポーランドに侵攻。戦火は再び世界を巻き込む広大な戦争へと突入していきます。
アメリカ・イギリスを主軸とする連合国と、ドイツ・イタリア・日本を含めた同盟国の間で約4年を超える熾烈な戦いが繰り広げられることになります。
映画「ミニヴァー夫人」は、そんな戦争の最中、イギリスの片田舎にあって、平凡ではあるが平和な家庭生活が徐々に戦時の苛酷な状況に追い込まれていく様子を描いていきます。
特にこの映画で際立った場面は、ドイツ空軍によるイギリスへの空爆で、有名なものはロンドン空襲ですが、40000人を超える死者を出した空襲はロンドンのみならず、リバプールやベルファストなどの主要な都市も破壊して大きな犠牲を出しました。
名匠ウィリアム・ワイラーによるこの映画は、戦火が拡大して地方都市にまで及び、空襲が身近なものに迫る恐ろしさを描いていきます。それがこの映画の主要なテーマであるともいえましょうか。
「ミニヴァー夫人」は戦時下で公開された映画であり、国策として戦意高揚を図った映画でもあるからです。
ラストの神父による、「敵と戦おう!」と叫ぶ場面にそれは如実に表れています(神父としてあるまじき行為ですが)。
しかし、戦意高揚映画は日本でも作られていますし、この時代のプロパガンダとして必要な手段のひとつだったのだろうと思います。
また、名匠による映画らしく、ミニヴァー一家が体験する空襲の怖さは、爆撃の場面に迫るのではなく、地下壕で怯える一家の表情をとらえることで、かえって生々しい怖さを伝えています。
そんな悲惨な状況の中にあっても、女性はおしゃれを楽しみ、若者は恋をし、ガーデニング文化を生んだ英国らしく民衆は園芸の趣味に興じています。
この映画の大きな特徴は「Mrs. Miniver」の題名にみられるように、ミニヴァー夫人(グリア・ガースン)の存在が大きな容積を占めています。まさに良妻賢母、容姿端麗、眉目秀麗、頭脳明晰、明眸皓歯。
非の打ち所のない美人にして、その艶(あで)やかさ。でも、そんな欠点のない女性というのも案外つまらないもの。そこで彼女には《浪費家》という欠点が与えられて、これがミニヴァー夫人の人間味を一層豊かなものにしています。
そんな艶やかな女性の名前を、自分が丹精を込めて育てた薔薇の名前にもらおうと、町のバラード駅長(ヘンリー・トラヴァース)は彼女に頼みます。
彼女の名前をもらって付けた薔薇の名前は「Mrs. Miniver」。
戦時下の生々しさを伝えるとともに、香り高い雰囲気を持った名作です。
1942年アメリカ
監督ウィリアム・ワイラー
原作ジャン・ストラッサー
脚本アーサー・ウィンペリス
ジョージ・フローシェル
ジェームズ・ヒルトン
クローディン・ウエスト
第15回アカデミー賞
作品賞、主演女優賞(グリア・ガースン)、助演女優賞(テラサ・ライト)、脚色賞、
撮影賞、監督賞(ウィリアム・ワイラー)、6部門受賞。
〈キャスト〉
グリア・ガースン ウォルター・ピジョン
テラサ・ライト
1914年(日本でいえば大正3年)、ボスニア=ヘルツェゴビナの首都サラエボにおいて、ひとりのセルビア人テロリストによってオーストリア皇太子フランツ・フェルディナント大公が暗殺されます。第一次世界大戦の幕開けでした。
それ以前からヨーロッパでは不穏な空気が漂っていて、テロリストによるオーストリア皇太子暗殺はそのキッカケを作っただけのものでしたが、やがてオーストリアはセルビアに宣戦布告をして、セルビアは同盟国であるロシアに泣きついたことによって戦線は拡大。世界を巻き込む大戦へと発展していきます。
時あたかも帝国主義の時代。食うか食われるかの世界版戦国時代です。その渦の中で日本も大戦に参戦はしましたが、ほぼ戦うことなく4年後の1918年に戦争は終結。日本は無傷でしたが、惨憺(さんたん)たる敗戦の憂き目に遭ったのがドイツでした。
莫大な戦後賠償によって、パンひとつ買うのに4000憶マルクというハイパーインフレに突入。ドイツ経済は壊滅状態に陥ります。
そんな状況の中で颯爽と登場したのが、アドルフ・ヒトラー率いるナチスでした。
第一次世界大戦の雪辱と世界制覇の野望を抱いて、1939年9月、ナチス・ドイツはポーランドに侵攻。戦火は再び世界を巻き込む広大な戦争へと突入していきます。
アメリカ・イギリスを主軸とする連合国と、ドイツ・イタリア・日本を含めた同盟国の間で約4年を超える熾烈な戦いが繰り広げられることになります。
映画「ミニヴァー夫人」は、そんな戦争の最中、イギリスの片田舎にあって、平凡ではあるが平和な家庭生活が徐々に戦時の苛酷な状況に追い込まれていく様子を描いていきます。
特にこの映画で際立った場面は、ドイツ空軍によるイギリスへの空爆で、有名なものはロンドン空襲ですが、40000人を超える死者を出した空襲はロンドンのみならず、リバプールやベルファストなどの主要な都市も破壊して大きな犠牲を出しました。
名匠ウィリアム・ワイラーによるこの映画は、戦火が拡大して地方都市にまで及び、空襲が身近なものに迫る恐ろしさを描いていきます。それがこの映画の主要なテーマであるともいえましょうか。
「ミニヴァー夫人」は戦時下で公開された映画であり、国策として戦意高揚を図った映画でもあるからです。
ラストの神父による、「敵と戦おう!」と叫ぶ場面にそれは如実に表れています(神父としてあるまじき行為ですが)。
しかし、戦意高揚映画は日本でも作られていますし、この時代のプロパガンダとして必要な手段のひとつだったのだろうと思います。
また、名匠による映画らしく、ミニヴァー一家が体験する空襲の怖さは、爆撃の場面に迫るのではなく、地下壕で怯える一家の表情をとらえることで、かえって生々しい怖さを伝えています。
そんな悲惨な状況の中にあっても、女性はおしゃれを楽しみ、若者は恋をし、ガーデニング文化を生んだ英国らしく民衆は園芸の趣味に興じています。
この映画の大きな特徴は「Mrs. Miniver」の題名にみられるように、ミニヴァー夫人(グリア・ガースン)の存在が大きな容積を占めています。まさに良妻賢母、容姿端麗、眉目秀麗、頭脳明晰、明眸皓歯。
非の打ち所のない美人にして、その艶(あで)やかさ。でも、そんな欠点のない女性というのも案外つまらないもの。そこで彼女には《浪費家》という欠点が与えられて、これがミニヴァー夫人の人間味を一層豊かなものにしています。
そんな艶やかな女性の名前を、自分が丹精を込めて育てた薔薇の名前にもらおうと、町のバラード駅長(ヘンリー・トラヴァース)は彼女に頼みます。
彼女の名前をもらって付けた薔薇の名前は「Mrs. Miniver」。
戦時下の生々しさを伝えるとともに、香り高い雰囲気を持った名作です。
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