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2017年02月27日
藻から油を取る仕組み解明
前回のブログでは藻類からジェット燃料用の油「バイオジェット燃料)を取る研究を4つの研究グループで紹介した。
今回は、藻から油・オイルを取ることについての基本的な解明を行っているグループ及び研究成果をご紹介。
東工大の大田教授と国立遺伝学研究所の黒川教授らは、自分の乾燥重量の最大50%以上のオイルを蓄える藻「ナンノクロロプシス」がオイルを効率よく作る仕組みの一端を解明した。
教授らはナンノクロロプシスの遺伝子を解析し、オイル生成に係わる3つの主要な酵素を明らかにした。
この内2つの酵素は油滴(下記)と呼ばれる細胞構造の表面にのみ存在することを発見し、これまで藻類は小胞体と呼ばれる別の器官内でオイルを合成するとされてきたのが、油滴の表面で直接オイルを合成しているのが生産能力が高い理由だと見られている。
研究グループは油滴の表面に特定のタンパク質を留める方法も突き止めており、今後は遺伝子工学を使いより合成効率の高い藻類の創出を目指すとしている。
ナンノクロロプシス : 直径3 μm(1 μmは1 mmの1,000分の1)ほどの海洋性微細藻類。培養条件により油を乾燥重量の最大50%以上蓄積することができることなどから、液体バイオ燃料生産に最有力とされる藻類。
油滴 : 脂質単層膜により成る細胞内構造で、殆どの生物種が作り出すことができる。内部に油脂をはじめとする疎水性物質を隔離・貯蔵する。単に油脂蓄積用の器官ではないことが明らかになってきており、種を超えて着目されている細胞内小器官である。
参照サイト1:東工大のサイト
参照サイト2:国立遺伝学研究所
参照サイト3:記者発表資料
今後、藻からのバイオオイルに関しては、藻の種類とその大量培養方式、オイル生成と精製、基礎解明の進展がますます面白くなりそうだ。
新しい進展があれば都度紹介して行く予定です。乞うご期待。
今回は、藻から油・オイルを取ることについての基本的な解明を行っているグループ及び研究成果をご紹介。
東工大の大田教授と国立遺伝学研究所の黒川教授らは、自分の乾燥重量の最大50%以上のオイルを蓄える藻「ナンノクロロプシス」がオイルを効率よく作る仕組みの一端を解明した。
教授らはナンノクロロプシスの遺伝子を解析し、オイル生成に係わる3つの主要な酵素を明らかにした。
この内2つの酵素は油滴(下記)と呼ばれる細胞構造の表面にのみ存在することを発見し、これまで藻類は小胞体と呼ばれる別の器官内でオイルを合成するとされてきたのが、油滴の表面で直接オイルを合成しているのが生産能力が高い理由だと見られている。
研究グループは油滴の表面に特定のタンパク質を留める方法も突き止めており、今後は遺伝子工学を使いより合成効率の高い藻類の創出を目指すとしている。
ナンノクロロプシス : 直径3 μm(1 μmは1 mmの1,000分の1)ほどの海洋性微細藻類。培養条件により油を乾燥重量の最大50%以上蓄積することができることなどから、液体バイオ燃料生産に最有力とされる藻類。
油滴 : 脂質単層膜により成る細胞内構造で、殆どの生物種が作り出すことができる。内部に油脂をはじめとする疎水性物質を隔離・貯蔵する。単に油脂蓄積用の器官ではないことが明らかになってきており、種を超えて着目されている細胞内小器官である。
参照サイト1:東工大のサイト
参照サイト2:国立遺伝学研究所
参照サイト3:記者発表資料
今後、藻からのバイオオイルに関しては、藻の種類とその大量培養方式、オイル生成と精製、基礎解明の進展がますます面白くなりそうだ。
新しい進展があれば都度紹介して行く予定です。乞うご期待。
2017年02月20日
藻からジェット燃料を作る。
地球温暖化防止のために世界中で炭酸ガス排出抑制の対策が検討・実施されている。
飛行で大量の燃料を消費する航空機についても、2010年国際民間航空機間(ICAO)と民間企業による国際航空運輸協会(IATA)が国際線のCO2排出量を21年以降増やさないというルールを決めた。
その対応策の切り札がジェット燃料をバイオ素材から作るバイオジェット燃料だ。
バイオ燃料の原料となるものにはいろいろな廃棄物もあるが、その大量収集が難しく、事業性を確保しにくい。その点藻は食品と競合せず、耕作に適さない土地でも培養出来、更に耕地面積あたりの油収穫量が高い。(パーム油の3〜5倍と言われている)
(IHI資料より)
以下代表として3会社及び1大学の藻からの生産状況をご紹介。
(尚今回は一般のバイオ素材や廃棄物からの取り組みは除外)
1.ユーグレナ
「ミドリムシ(学術名ユーグレナ)」は最も有名な藻だろう。学術名を会社名とした東大発のベンチャー企業ユーグレナは全日本空輸と協力し、藻・ミドリムシから燃料の生産を目指す。
ミドリムシは光合成により全体中の30%が油分。つまり“体脂肪率30%”ということだ。
同社は今夏にも沖縄石垣島で大量培養したミドリムシから燃料を精製する国内初の実証プラントを横浜市に建設する。
全日空はそこで出来た燃料を従来の燃料に混ぜ19年頃に試験飛行を行う予定だ。
一方ミドリムシは59種の栄養を含む高栄養体なので、大手製薬会社ともタイアップし、現在各種サプリメント
として製造・販売されている。
大量生産が軌道に乗れば、その搾りかすも高栄養の飼料として、また肥料としても有効利用されるだろう。
2.IHI
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が委託したIHIは別の藻を使って大規模製造技術を確立し2020年までに実用化の目途を立てる計画だ。使用する藻は「ポツリオコッカス」で“体脂肪率”はなんと50%なのだ。
この藻の特徴は培養中に自然と集まり回収に手間がかからないという。
NEDO資料より
3.デンソー
2016年4月から開始。使用藻は「シュードコリシスチス」。これまで屋外培養実験に成功。
今後熊本県天草市に80mのプールを3つ設置。2018年を目途に要素技術の確率を目指す。
「シュードコリシスチス」は屋外での培養に耐え、体脂肪率30から40%。
この藻は成長が他の藻より数倍速いのが特徴。デンソーは工場で排出する熱やCO2を投入して培養を加速させる手法も採用している。
更にデンソーはディーゼル車での使用も確認
4.東大生物生産工学研
淡水では無く、海水で育成出来る「デュナリエラ」を使用。“体脂肪率”35%程度。
他の藻類が生育出来ない塩分濃度の高い水中で育つ。海水深層水なら藻の栄養となる窒素やリンを高濃度で含んでいるため光合成を早める効果がある。
淡水が不要で日射が強いところでも培養出来るので西アジアや太陽直下の国での培養が考えられている。
政府は東京五輪を目標にバイオジェット燃料によるフライトを行ない普及に向けてアピールする計画。これに各社が対応し開発を急いでいる。
今後目が離せない分野の一つだ。
飛行で大量の燃料を消費する航空機についても、2010年国際民間航空機間(ICAO)と民間企業による国際航空運輸協会(IATA)が国際線のCO2排出量を21年以降増やさないというルールを決めた。
その対応策の切り札がジェット燃料をバイオ素材から作るバイオジェット燃料だ。
バイオ燃料の原料となるものにはいろいろな廃棄物もあるが、その大量収集が難しく、事業性を確保しにくい。その点藻は食品と競合せず、耕作に適さない土地でも培養出来、更に耕地面積あたりの油収穫量が高い。(パーム油の3〜5倍と言われている)
(IHI資料より)
以下代表として3会社及び1大学の藻からの生産状況をご紹介。
(尚今回は一般のバイオ素材や廃棄物からの取り組みは除外)
1.ユーグレナ
「ミドリムシ(学術名ユーグレナ)」は最も有名な藻だろう。学術名を会社名とした東大発のベンチャー企業ユーグレナは全日本空輸と協力し、藻・ミドリムシから燃料の生産を目指す。
ミドリムシは光合成により全体中の30%が油分。つまり“体脂肪率30%”ということだ。
同社は今夏にも沖縄石垣島で大量培養したミドリムシから燃料を精製する国内初の実証プラントを横浜市に建設する。
全日空はそこで出来た燃料を従来の燃料に混ぜ19年頃に試験飛行を行う予定だ。
一方ミドリムシは59種の栄養を含む高栄養体なので、大手製薬会社ともタイアップし、現在各種サプリメント
として製造・販売されている。
大量生産が軌道に乗れば、その搾りかすも高栄養の飼料として、また肥料としても有効利用されるだろう。
2.IHI
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が委託したIHIは別の藻を使って大規模製造技術を確立し2020年までに実用化の目途を立てる計画だ。使用する藻は「ポツリオコッカス」で“体脂肪率”はなんと50%なのだ。
この藻の特徴は培養中に自然と集まり回収に手間がかからないという。
NEDO資料より
3.デンソー
2016年4月から開始。使用藻は「シュードコリシスチス」。これまで屋外培養実験に成功。
今後熊本県天草市に80mのプールを3つ設置。2018年を目途に要素技術の確率を目指す。
「シュードコリシスチス」は屋外での培養に耐え、体脂肪率30から40%。
この藻は成長が他の藻より数倍速いのが特徴。デンソーは工場で排出する熱やCO2を投入して培養を加速させる手法も採用している。
更にデンソーはディーゼル車での使用も確認
4.東大生物生産工学研
淡水では無く、海水で育成出来る「デュナリエラ」を使用。“体脂肪率”35%程度。
他の藻類が生育出来ない塩分濃度の高い水中で育つ。海水深層水なら藻の栄養となる窒素やリンを高濃度で含んでいるため光合成を早める効果がある。
淡水が不要で日射が強いところでも培養出来るので西アジアや太陽直下の国での培養が考えられている。
政府は東京五輪を目標にバイオジェット燃料によるフライトを行ない普及に向けてアピールする計画。これに各社が対応し開発を急いでいる。
今後目が離せない分野の一つだ。