以下について、とあるFPのかたに質問させていただきましたところ、丁寧に回答してくださいました。また、そのかたのメルマガでも取り上げてくださいましたので紹介します。
初めまして。トクゾーと申します。毎回楽しくメルマガを読ませていただいております。
質問させていただきます。
今までのNISAと比較して、つみたてNISAを行うメリットがよくわかりません。
つみたてNISAでは、個別株への投資ができないので、株主優待や株式配当の
恩恵を個人が受けられませんし、大手のネット証券において、現在のNISAでは、
株式売買費用が無料なのにもかかわらず、つみたてNISAでは、信託報酬などで
実質的な手数料を取られてしまいます。
取引経験上、長期で保有していれば価格が上がるとは限らず、
価格が上がって自分が納得したときに売った方が
パフォーマンスは良かったです。
手数料収入目的の証券会社を喜ばせるために始めたのではないかと
思ってしまうようなつみたてNISAですが、それでもメリットはあるのでしょうか?
せめて、つみたてNISAでも個別株への投資も認めてくれれば良かったのですが。
(ご回答)
トクゾーさん
こんにちは、
ご質問ありがとうございます。
売買手数料に関して、つみたてNISA口座が
特に不利ということはありません。
投信であれば、どの口座(特定、NISA、つみたてNISA)でも
原則手数料は同じです。
(ただし、特定のキャンペーンを実施している場合は別です)
個別株式と投信を混同されているのかもしれませんが、
個別株式とインデックス投信ではリスクが異なります。
個別株式は倒産などの個別リスクが大きいですが
インデックス投信の場合は投資先が幅広く分散されており、
個別リスクを低く抑えることが可能です。
上でも書きましたが、長期投資の場合、
投資が終わってしまうリスクは極力避けるべきで、
個別リスクはその回避すべきリスクになります。
例えばですが、
個別株を保有すると、JALや東芝のような事態が
将来起こらないとは限りません。
一方、そのような事態が起ころうとも
日経225やTOPIX自体にはほとんど影響がありません。
これがインデックス(というか分散投資)の
最大のメリットの一つです。
複数の個別株を保有することで、
個別リスクをある程度低減させるような投資法もありますが、
リスク管理が煩雑ですし、そもそも少額では難しいです。
つみたてNISAはその思想から、
20年投資を継続することを前提としており、
投資家に余計なリスクを負わせないための
制度設計ということかと思います。
金融庁による(余計な?)親心かもしれませんが、
一般的な長期投資のツールとしては
インデックス投信が妥当という認識がありますから
こういうものだと思うしかなさそうですね。
ちなみにiDeCoも個別株はなく、基本は投信です。
が、iDeCoにはつみたてNISAのような基準がなく、
しばしば高コストな投信も紛れていますので
ご注意ください。
参考になれば幸いです。
(ここまで)
(追加のご質問)
ご回答ありがとうございます。
現在のNISAで個別株を楽天証券や、
SBI証券で売買すると、その売買手数料は、無料です。
一方で、投資信託の売買の場合は、
「販売手数料」「信託報酬」「信託財産留保額」の3つがあり、
そのうちの少なくとも信託報酬は、無料とはなっていないようです。
そうなると、現在のNISAで個別株を売買するよりも、
つみたてNISAで投資信託を売買する方がコストが高く
不利と考えられるのではないかと思います。
また、JALや東芝のような個別株の倒産とは、
いわゆるネガテイブインパクトによる上場廃止かと思われますが、
帝国データバンクの数値を元に上場会社のうちどれくらいの割合の会社が
ネガティヴインパクトによる上場廃止になっているかを計算したら、
1パーセント未満の割合でした。
つまり、それだけ低いリスクであり、
さらにファンダメンタル分析をして
(最低限、自己資本比率やPER、PBRだけでも見て)
個別株式を選別すれば倒産株リスクをさらに抑え、
その上、損切りルールを決めて徹底すれば、
選択した個別株の倒産リスクは限りなく0に近いリスクとなります。
そうすると、低リターンな投信によるつみたてNISAよりも、
現在のNISAでバリュー株投資をして上昇した時点で
売却していった方がパフォーマンス良くなる可能性が
高いと思うのですがいかがでしょうか?
(ご回答)
Tさん
追加のコメント頂きましてありがとうございます。
まず、こうした議論では個々人の場合と全体の場合(一般論)の
2つの視点で分けて考える必要があります。
最初の視点、個々人の場合、つまり、Tさんの場合ですが
帝国データバンク等を利用して個別株に投資されることは、
「何ら問題ありません」。
投資に絶対の正解が無い以上、どのような方法であれ、
個人の信念と責任においてであれば、全く問題ないと言えるでしょう。
また、パフォーマンスが高いか低いかは、
それこそ個々人の選択とスキル次第であり、
僕も含め、他人がどうこう言う問題ではないからです。
次に、全体の場合について考えてみます。
全体で考える場合は、平均値等の統計データを
利用して議論することになりますが、
まず個別株へ投資することにより、
市場平均を上回るパフォーマンスが出せるという
一般的な証拠となるデータは今のところ無いようです。
また、買って売らない場合と、随時売買を繰り返す方法を比較する場合、
一般的には売買を繰り返す方がパフォーマンスが
概ね20から40%ほど下がるという報告もあります。
このあたりの詳細については関連書籍やWEB上の資料をご覧ください。
(クレディ・スイスグローバルインベストメントリターンズイヤーブック2014に
関連の記述があったのですが、残念ながら今は非公開です…)
繰り返しますが、これは全体の話(統計的な一般論)であり、
個々人の場合とは区別すべきです。
Tさんが個別リスクをいとわず、
一般よりも売買のスキルが高いのであれば、
一般論よりも高いパフォーマンスを上げられる可能性は
当然あると思います。
(ただしその場合はシャープレシオで測るのがより良いでしょう)
最後に信託報酬ですが、個別株コストと単純比較するのは
商品が異なりますのでさすがに酷だろうと思います。
とはいえ、信託報酬の水準が現状でOKということではなく、
投資大国の米国等の状況と比べても
まだまだ改善の余地はあろうかと思います。
このあたりは、おっしゃるとおり議論の余地は
十分にあると思います。
(ここまで)
以上、ブログのコメント欄の方へ
回答させて頂きました。
コメント欄には書かなかったのですが、
TさんにはつみたてNISAではなく、
現行のNISA制度の方が合っているのかもしれません。
以上の回答をいただきました。