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2020年04月28日

安倍政権の「鎖国政策」最早自殺行為に等しいと言えるワケ




 安倍政権の 「鎖国政策」最早自殺行為に等しいと言えるワケ

           〜現代ビジネス 町田 徹 4/28(火) 8:01配信〜


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              経済ジャーナリスト 町田 徹氏

              外資系企業から守ると言うが・・・

 安倍政権は、悪法・改正外為法の適用対象に医薬品と医療機器のメーカーを加えて、外資に依る買収を厳しく規制する方針・・・と報じられて居る。
 新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行に乗じて、欧州等で企業買収攻勢を掛けて居るとされる中国の影に怯えたらしい。しかし、ソモソモ日本に守るべき医薬品メーカーや医療機器メーカーが存在するのかさえ疑問だ。

 一方で、新型コロナウイルス感染症危機は、2030年代に為っても日本の経済成長を5%程度引き下げる履歴効果を残すとの予測も出る程、日本経済に深刻な影響を及ぼして居る。2030年代には日本経済はマイナス成長に転落すると云う。
 そんな時に、貿易や自由な資本取引を経済の立て直しに活用せずに、江戸時代の様な鎖国を目指す安倍政権の改正外為法政策は、国民経済と暮らしに取って自殺行為に為り兼ねない。

 事実上の安倍政権・鎖国政策強化を伝えたのは、4月23日(木曜日)付の日本経済新聞朝刊1面の「外資買収規制、医薬品・医療機器を対象に」と云う記事である。それに依ると、安倍政権は、医薬品・医療機器メーカーを、5月に施行する改正外為法の規制対象に加えて、外資系企業による買収から厳格に保護すると云う。
 感染症に関わるワクチンや医薬品・人工呼吸器等の高度医療機器を改正外為法の「安全保障上、特に重要な業種」に追加して、中国企業等による買収を事実上阻止すると云うもので、世界的な争奪戦が懸念される医薬品・医療機器の国内への安定供給を確保する狙いがあると云うのである。

 これは「令和の鎖国」だ

 この記事にある「5月に施行する改正外為法」は曲者だ。保護主義的で「令和の鎖国」に繋がると言わざるを得ないのだ。改正外為法が可決・成立したのは、昨年11月の事。原子力・電力・通信等安全保障分野に関わるインフラ企業への外国資本による出資の規制を強化すると云う触れ込みで、従来10%以上出資する場合に必要だった「事前届け出」の対象を1%以上に引き下げるものだ。
 又、既に出資した日本企業に、重要な事業の売却や役員の選任を提案する時も、今後は「事前届け出」の対象にすると云うものだ。

 その後、所管官庁のひとつ財務省は、3月半ばに改正外為法の政省令案を発表。外国金融機関等規制の例外を示す一方で、一般の外国人投資家が1%以上の出資を計画して居る場合に国への事前届け出が必要に為る業種として、武器・航空機・宇宙・原子力・軍事転用可能な汎用品の製造・サイバーセキュリティー・電力・ガス・通信・上下水道・鉄道・石油の12業種を定める方針を明らかにした。実際には、上場企業400〜500社が対象に為ると観られ、政府は社名リストを公表するとして居る。
 そして、報道に依ると、新型コロナウイルス感染症のまん延の結果、政府は医薬品や医療機器の重要性が高まって居るとして、12業種に上乗せする方針を固めた様だ。
 安倍内閣は4月24日(先週金曜日)、外為法改正に伴う政省令や告示に付いて閣議決定を行い、同法を5月8日に施行し、6月7日から全面適用する事を最終決定した。只、上場企業の内どの会社が規制に当て嵌るかのリスト公表に付いては、当初予定の4月中から5月8日に延期した。

 世界各国で外資規制の流れ

 規制強化の背景とされるのが、EU(欧州連合)や米国の動きだ。何れも、中国企業の買収攻勢等を警戒したもので、EUは昨年、安全保障を害する投資を規制する新規則を承認、これを受けてフランスが既に規制強化を決めた他、イタリアとスペインも独自の外資規制導入を検討中だ。
 アメリカも今年2月、外資によるアメリカ企業への投資案件を審査するCFIUS・対米外国投資委員会の権限を強化する最終規則を施行した。その際、イギリス・カナダ・オーストラリアの3ヵ国企業による重要インフラを保有する米企業の投資に付いては一部規制を免除した。

 一方、日本企業はそうした特例措置の対象に為らず、経済外交筋が苛立って居るのは事実らしい。しかし、そう云った風潮に便乗して、日本も外資規制を強化する必要が本当に有るのだろうか。ソモソモ外為法は、対外取引や国内の外貨建て取引等を必要最低限の範囲で管理する為の法律だ。正式名称は「外国為替及び外国貿易法」と云う。
 安全保障が主な目的で、財務省・経済産業省・日銀等の所管だが、各産業を扱う経済官庁も共管と為って居る。重要なのは、現在の外為法が長年に渉って、原則として「投資の自由」を掲げて来た事だ。戦後間も無い時期には、国内産業を守りつつ貴重な外貨を日本企業の設備投資に回す為対外取引が制限されて居た。1980年代に掛けて自由化に舵を切って以降は、日本企業への出資等を原則自由とする今の法規制が形作られた。
 今回の改正外為法に付いても、財務省は「投資自由の大原則は不変」としつつ、国の安全等を損なう恐れのある投資に適切に対応する為「メリハリのある対内直接投資制度を目指す」と主張して居る。

 過剰規制が及ぼす影響
 
 これに対して、外国金融機関やソブリン・ウェルス・ファンドから投資が困難に為るとの懸念が続出。外国金融機関に付いて「外国投資家」自らや改正外為法上の「密接関係者」が役員に就任しない等の免除基準を順守すれば、事前届け出を免除する仕組み等を、政府は受け入れざるを得なかった経緯がある。
 財務省は同様の趣旨から、ソブリン・ウェルス・ファンドと公的年金基金に付いても、取締役会等に参加しない等の上乗せ基準を満たせば、コア業種の10%未満の株式取得に付いて事前届け出を免除する仕組みを設けざるを得なかった。

 だが、こうした措置で、海外投資家の日本企業に対する投資意欲の低下懸念が完全に払しょくされる訳では無い。歴史的に見ても、12年前の2008年5月、英投資ファンドの「ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド」TCIが、Jパワー・電源開発株式の買い増しを進めた際に、日本政府が中止を命令した実績がある。
 筆者は当時、本州と北海道を結ぶ送電線を持つ唯一の電力会社であるJパワーが外資系ファンドのマネーゲームの対象に為る事のリスクを指摘して、この外為法に基づく指示を支持した。が、日本の証券会社も含めて資本市場サイドの日本政府に対する反発は激しかった。裏返せば、外国投資家の受けた衝撃はそれ以上に大きかったと云う事だ。およそ5カ月後、TCIは保有株をJパワーに売却してこの案件から撤退した。

 外国人労働者が消える?

 詰り、改正前の外為法は十分なパワーを持って居た。にも関わらず改正した事で、過剰規制が可能に為るのは明らかだ。その過剰規制が招くのは、極端な場合が江戸時代の様な「鎖国」であり、例えば中国企業に厳しく運用して、欧米諸国の企業には甘く運用すれば「ブロック経済体制」である。
 安倍政権が鎖国やブロック経済体制を視野に入れて居ると見做さざるを得無い、もう一つの政策が、既に閣議決定を終えて居り、月内にも国会に提出する予定の「令和2年度補正予算案」に盛り込まれた「サプライチェーン対策の為の国内投資促進事業補助金」である。

 中国等に流出した自動車や電機・機械等のメーカーの製造拠点を呼び戻し、サプライチェーンを国内に再構築しようと云うもので、今回の補正には2,200億円の予算が計上されている。更に、近い将来導入される可能性があるのが、外国人労働者を排斥する措置だ。
 アメリカではトランプ大統領が4月21日の記者会見で、米国の永住権・グリーンカード取得を目指す外国人の入国を60日間停止する政策を打ち出した。同大統領は「コロナウイルスの為に解雇された米国民が、海外から流入した新たな移民労働者に職を奪われるのは間違って居る」と強調したが、日本でも失業が急増の兆しを見せて居り、同様の措置が執られても可笑しくない。

 同じ過ちを繰り返すのか
 
 だが、これら3つ・・・外資による日本企業への投資・海外に流出したサプライチェーンの国内再編成・そして外国人労働者の排斥、即ち鎖国やブロック経済体制作りに依って、新型コロナ感染症の収束後の経済立て直しを図ろうと云うほど矛盾に満ちた戦略は無い。
 ソモソモ、戦前の先進各国のブロック経済体制指向が、日本やドイツを窮地に追い込み、第2次世界大戦の戦端が開かれる大きな切っ掛けだった事は幅広く知られた話である。加えて、今回の新型コロナ感染症の流行に伴う日本経済の落ち込みは、既に戦後最悪の事態を迎えつつある。

 老舗シンクタンクの日本経済研究センターが4月24日に公表した短期経済予測の改定を見ると、年内に外出自粛が解除されても、2020年度の日本経済の実質GDP成長率は「マイナス8%」と云う悲惨さなのだ。同シンクタンクは、一旦下がった成長軌道を「V字回復」させるのは至難の業で、2030年に為っても経済成長率を5%程度下方に引っ張る履歴効果が残ると云う。
 こんな異常事態に、鎖国やブロック経済体制が我々の取るべき選択肢と云う事は有り得ない。寧ろ、自由貿易体制下での輸出拡大等で弱り切った経済を下支えしないと、日本経済も我々日本人の暮らしも成り立た無く為るだろう。


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            町田 徹 経済ジャーナリスト   以上












絶望 安倍晋三のコロナ経済対策は「大大失敗」に終わる




  絶望 安倍晋三の コロナ経済対策は

 「大大失敗」に終わる


        〜プレジデントオンライン 渡瀬 裕哉 4/28(火) 9:15配信〜


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       早稲田大学招聘研究員 渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)氏

 矢継ぎ早に経済対策を打ち出す 米トランプ大統領

 新型コロナウイルスに関連した経済対策として、ドナルド・トランプ米大統領と米連邦議会による「第4弾」の財政支出の調整が着き、米国政府は巨額の経済対策を矢継ぎ早に打ち出して来た。
 米国政府は3月6日の第1弾、3月18日の第2弾、3月末に成立した第3弾・約220兆円の追加予算に加えて、第4弾の主な内容は中小企業の給与肩代わりをメインとした予算を組み上げた。これらの追加予算には企業存続・雇用維持に全力を注ぎ、米国の産業競争力を保ってV字回復を狙う、と云うトランプ政権の強い意志が色濃く反映されて居る。

 第1弾から第4弾の合計予算額は約300兆円に迫る超大型の補正予算群となっており、金額面からもその本気度を推し量ることが可能だ。
 トランプ大統領は公約である200兆円の巨額のインフラ投資予算を上記の第4弾に盛り込もうとしていたフシもあり、今後第5弾の財政支出を検討する段階では巨額のインフラ投資が組み込まれてくる可能性がある。また、11月の大統領選挙の結果として、仮に民主党大統領・連邦議会が誕生したとしても、このインフラ投資政策に対する政権の意欲は変わらないことが予測される。
 そのため、インフラ投資による巨額支出は、米国政府内で既に立案されており、遅かれ早かれ公表されることになると看做すことが妥当だ。

 日本の経済対策は「Too little, Too Late, Too Fake」

 米国が巨額の追加予算を次々と組み続ける理由は、間もなく未曽有の経済不況が各国経済を直撃することを理解していることにある。IMFが4月15日に発表した「World Economic Outlook」によると、2020年の世界経済はマイナス3%と急激に縮小することが予測されており、米国のGDP見通しはマイナス5.9%の大幅減という数字となっている。
 失業者数も歴史上の最大に達することが予想されるため、今このタイミングで適切な経済対策を断行しなければ、米国の経済・社会が大混乱に陥ることは想像に難くない。

 同レポートでは来年には各国ともにV字回復が予想されているものの、それも年内で新型コロナウイルス問題が収束し、金融機関のシステミックリスクなどが起きず、その産業競争力が維持されている、という希望的観測を前提としたものに過ぎない。したがって、トランプ政権と米連邦議会が尋常ならざる覚悟を持って経済対策に臨んでいることは必然的なことだ。
 一方、米国と比べて日本の経済対策は「Too little, Too Late(少なすぎる、遅すぎる)」の典型と言ってもいいだろう。さらに「Too Fake(偽物すぎる)」を付け加えたほうがより適切かもしれない。

 与党内の事前調整すらママ為ら無い政権運営のグダグダぶり

 米国は国内でパンデミックが発生している大混乱の中、連日のようにホワイトハウス・共和党・民主党が必死になって予算折衝を実施し、前述のような補正予算を次々と組み上げてきた。
 日本は米国のようなパンデミックによる混乱状態に陥っていないにも関わらず、4月末になって第1次補正予算が要約組み上がりそうと云う有様だ。IMFのレポートによると、2020年の日本のGDP見通しもマイナス5.2%と為って居り、安倍政権の危機感の無さは余りに異常過ぎる。その上、閣議決定された補正予算が公明党からの一喝で組み直しになる等、与党内の事前調整すらママ為ら無い政権運営のグダグダぶりは尋常ではない。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う補正予算の事業規模は約117兆1000億円とされている。政府はこの事業規模の数字を強調して説明するが、一般会計からの歳出(真水)は26兆円前後だと推量される。
 当初の補正予算案で16兆円前後とされていた真水の金額に比べれば一律給付金の追加分が上乗せされたことで若干増額したものの、第2四半期でマイナス25%(前年比)とされる日本経済を下支えする経済対策としていかにも心もとない。安倍政権は日本経済に襲い掛かる経済危機の波を正確に認識できていないのではないかとさえ心配になる。

 政府の対応が輪を掛けて経済的な問題を引き起こす

 又、修正された補正予算では国民の大半の人が受給できない30万円給付金は削除されることになり、全員が一律10万円の給付を受けられる形と為った。これ自体は評価したい処であるが、米国ではすでに国民一人頭12万円の給付金が既に4月12日から配布され始めている。
 日本では早くても給付金の受け取りは5月中とされているのに比べ、日米では給付金を人々の元に支給するスピードも雲泥の差だ。経済対策は必要な時期を逸すれば途端に有効性が落ちてしまうものだ。日本政府の政策は、一事が万事、少なすぎる・遅すぎる・偽物すぎる・・・を地で行く状況と為って仕舞って居る。

 では、日本を未曽有の大不況に突き落とす原因は一体何であろうか。もちろん、新型コロナウイルスの存在が問題であることは言うまでもない。しかし、政府の対応自体が輪をかけて経済的な問題を引き起こしている。
 日本の緊急事態宣言は、欧米のような強制力を持った都市封鎖を行うものではなく、国民に自粛を求める仕様となっている。しかし、それでもメディアによる私刑と組み合わさった政府の「要請」は、事実上の強制力を持っていることは自明のことだ。例えば、大手企業であれば自らのブランドイメージを保つため、政府に率先して協力せざるをえないことは大人なら誰でも判る。

 無能ぶりを世間に晒し続けている安倍晋三
 
 一方、資金繰りに余裕がない中小の店舗では営業を継続するところもあるかもしれないが、こちらは政府に大義名分を与えられた“正義マン”による事実上の摘発活動が盛んになっている。
 たとえば、4月20日まで大阪府ではコールセンターに、特措法の休業要請の対象となっている店が営業しているという通報が500件以上寄せられており、テレビメディアも自粛に必ずしも十分に応じていない商店街や行楽地などを槍玉にあげる報道を継続している。このような動きによって自治体が「要請」に従わない施設の名称を公表し、SNSなどでの私刑を実質的に推奨する結果を招きかねない状況も生まれている。

 東京都などが独自の補償措置に動き始める中、安倍政権は補正予算の一部を地方自治体が補償に使用することを渋々認めた。しかし、家賃の補填については、いまだに政府案を作るのか、与党案を作るかさえも定まらず、その無能ぶりを世間に晒し続けている。危機に際して民間に責任をほぼ丸投げにするなら、政府に支払う税金など溝に捨てるのと同義だ。

 今のままでは民間企業の負荷があまりに重すぎる

 本来、政府が実施するべきことは、民間企業が営業活動を再開・継続していくためのガイドラインを示し、可能な限り平時の環境に近い状況を維持することだ。
 現在の環境下で個々の民間企業が世間の批判にさらされることを覚悟し、その営業活動を再開・継続する負荷はあまりにも大きすぎる。したがって、政府が身体を張ってその責任を引き受けることは当たり前のことだと言えるだろう。

 安倍政権はいつ終わるとも知れない戦いに国民を巻き込んでいる。仮に緊急事態宣言が成功裏に解除されたとしても「はい、今から通常通りの営業活動に戻ってください」と言った処で、失われた産業や雇用が簡単に元通りになる筈が無い。
 米国では既にトランプ政権がロックダウンを継続する州知事に対し、ロックダウンの解除を要請し、社会機能を復帰させる為の経済人の会議を招集し、その復帰プロセスについてのガイドラインを示している。政府としての能力だけでなく、その意思決定の責任を取るという覚悟の差は著しい。

 安倍晋三が日本経済のためにやるべきこと
 
 したがって、筆者はすでに安倍政権の新型コロナウイルス問題に対する経済対策について、危機意識、能力、覚悟の全ての面で期待することを半ば諦めている。しかし、安倍政権には日本経済のためにやるべきことがまだ1つだけ残っている。
 それは同政権が5%から10%まで2回の増税を通じて引き上げてきた消費税率を元通りに戻すことだ。この際、百歩譲って新型コロナウイルスは予期することができなかったアクシデントで対応ができなかったとしても良い。但し、消費税増税によって昨年10〜12月期に記録したマイナス7%超のGDPマイナスは、安倍政権自体の経済運営の失政そのものだ。新型コロナウイルス問題で曖昧になっている感もあるが、消費税増税が日本経済に与えた影響は大きく、確実にその回復に向けた動きの足枷となるだろう。

 安倍政権の新型コロナウイルスに関する経済対策への期待は既になくなった。ただし、最低限のこととして、消費税減税を実現することで自らの政権が日本経済に与えたダメージの尻ぬぐいをしてから政権を退陣するべきだろう。


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 渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや) 早稲田大学招聘研究員  国内外のヘッジファンド・金融機関に対するトランプ政権分析のアドバイザー 米国共和党保守派やトランプ政権と深い関係を有する

         早稲田大学招聘研究員  渡瀬 裕哉    以上














『板門店宣言』二周年 文大統領は「コロナ危機が新たな機会」と南北協力に強い意欲




 『板門店宣言』二周年 

 文大統領は「コロナ危機が新たな機会」と南北協力に強い意欲


        〜徐台教「二ュースタンス」編集長 4/27(月) 20:34 〜


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 今日27日で南北首脳による『板門店宣言』採択から二周年を迎えた。南北関係改善が暗礁に乗り上げて居る中、文大統領は新型コロナ危機を境に状況を突破して行く意志を大々的に明かした。

 「当時の感動と記憶が鮮やかに蘇る」

 南北の首脳が歴史的な板門店宣言をしてから2年に為りました。当時の感動と記憶が鮮やかに蘇ります。 私と金正恩委員長が手を取り合い共に軍事境界線を行き来する場面は、8千万同胞と全世界に胸一杯の感動を与え、二人の首脳が合意した板門店宣言は戦争の無い平和に向かう新たな朝鮮半島時代の序幕を開きました。

 韓国の文在寅大統領は27日、青瓦台(大統領府)で開催した主席補佐官会議の冒頭でこう発言し、当時を振り返った。2018年4月27日、11年振りの、そして金正恩委員長が朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の指導者と為って以降、初めて行われた南北首脳会談は世界中の注目を浴びた。
 会場と為った板門店は・・・実際の場所は南側の「平和の家」・・・1953年7月に朝鮮戦争の停戦協定が締結された場所だ。その後も度々南北で小競り合いが起き、今も南北が向き合う世界で唯一残る冷戦の最前線だ。

 当時採択された『板門店宣言』には3度目の南北首脳会談で初めて「朝鮮半島の非核化」と云う文字が入った事で注目された。2000年・2007年の会談には無かった内容だ。これが正確に何を指すのか実は2020年の今も明らかでは無い。だが2017年11月に「核武力の完成」を宣言した北朝鮮側が、首脳宣言に「非核化」を明記した事は確かな前進と評価された。又「過去の南北宣言とアラユル合意の徹底的な履行」が確認された点も大きかった。
 これは過去、李明博(イ・ミョンバク)朴槿惠(パク・クネ)政権の9年で断絶した南北関係に於ける「我が民族同士」や「平和統一」と云った原則を回復させる意味合いも在った。

 2018年は順風 2019年は停滞

 それから2年。現在の南北関係は「視界ゼロ」と言っても過言では無い。

 ○南北⇒米朝の流れ

 2018年はとても順調だった。南北首脳会談後の6月12日には、シンガポールで史上初めて米朝首脳会談が行われた。この場で金正恩委員長による「朝鮮半島の非核化」とトランプ大統領に依る「安全保障(平和体制への転換)」が明記され、この二つの完成を同時ゴールとする「平和と繁栄」の朝鮮半島の未来像が世界に向けて掲げられた。
 その後9月に南北首脳はこの年3度目と為る首脳会談を平壌で行い、二つの重要な合意を行った。先ずは『平壌共同宣言』で南北交流の拡大を唄うと共に、非核化措置に於いて「米国が相応措置を採る場合、寧辺核施設の永久的な廃棄」と云う重大な決断を明記した。

 そして同じ日に締結した『歴史的な「板門店宣言」履行の為の軍事分野合意書(以下、南北軍事合意書)』では、軍事境界線を挟んで多数の戦力が対峙する南北が「相手方に対する一切の敵対以降意を全面中止する」と明記された。
 これ等を踏まえ当時、文在寅大統領は金正恩委員長の隣で「戦争の無い朝鮮半島が始まった。南と北は今日、朝鮮半島の全地域で戦争が起こし得る全ての危険を無くす事に合意した」と述べる歴史的な瞬間を演出した。振り返ると2018年は南北関係の改善が米朝関係を引っ張ると云う、韓国の進歩派政権に取って金大中(キム・デジュン)政権以来の好循環が実現した時期だった。
 朝鮮半島問題とは南北だけ解決出来るもので無く、世界に於ける冷戦構造の最終的な解体を意味する国際的な問題で有る事を熟知した韓国政府による「リード」は上手く行くかの様に見えた。

 ○「ハノイ決裂」が尾を引いた2019年

 制裁緩和の為に会談がこう・・・決裂と為った。北朝鮮は制裁緩和・完全な制裁解除を求めた。しかし米国はその要求を聞き入れる事は出来無かった。 2019年2月28日午後、ベトナム・ハノイでトランプ大統領は記者団を前にこう述べた。前日から行われて居た米朝首脳会談の決裂を知らせる一声だった。 当時の焦点は「米朝がどの線で合意するか」に在った。
 北朝鮮が完全な非核化へのロードマップを提示する代わりに米国も平和協定締結のスケジュールを出すのか、若しくは段階的な非核化で双方が合意するのかと云ったものだ。 ヒントは昨年9月の「平壌南北首脳宣言」にあった。

 北朝鮮はこれに明記した様に「寧辺核施設の廃棄」を念頭に交渉に臨んだが、米国はそれで好しとし中ッた。北朝鮮は先に引用した「完全な制裁解除」を求めた訳では無かったが、いずれにせよ米国との思惑は異なった。 この結果は、金正恩氏の体面を大きく傷着けると共に「『寧辺核施設で行ける』筈だったのに話が違う」と云う、文在寅大統領への不信へと繋がって行く。
 背景には「南北軍事合意書」の様な南北単独の関係改善にブレーキを掛けたい米国の思惑も在った。更に、韓国政府も此処が勝負とばかりにトランプ大統領を説得する事が出来無かった。(し無かったと云う説もある)

 結局、この構図が今日迄残って居る。 米国は交渉条件で譲歩する気が無い上に、北朝鮮は韓国との対話の窓口を最小化しながら韓国政府への批判の視線を向ける。韓国はこの構図を突破する為には「無茶」をしなければ為ら無いが、そのタイミングが掴めない状況だ。2019年6月には板門店で南北米の三首脳が会合を持つ大きなイベントがあったが、成果には繋がら無かった。

 コロナ危機をどう生かすか

 去る2年は平和が一晩で達成されるものでは無い事を、もう一度切実に感じる期間でした。期待と失望が繰り返され、その都度コレに耐え、ユックリとした歩みかも知れませんが、平和プロセスを進展させる為努力して来た期間でした。
 今日の文大統領のこうした発言は、上で長々と書いて来た2年の時間の流れの上に位置付けられる。南北関係は現在、連絡を取り合え無い状況が続いて居るが、かと云って「南北軍事合意書」が破棄された訳でも無い。 北朝鮮は昨年5月から断続的に短距離弾道ミサイルや新型高射砲の発射実験を行って居るが、北朝鮮に対する大規模な追加制裁が課される事は無い。

 識者が「ローキー」と表現する様に、緊張を低く維持したママ小康状態が続いて居る。これを維持出来たのだけでも成果だろう。この日の文大統領の発言は意欲的だった。

 「朝鮮半島の運命の主人は私達自身と云う事実を私達が忘れ無い限り、道は開く筈だし、狭い道も少しずつ広い道にして行く事が出来る」としながら「最も現実的なアイディア」として「新型コロナウイルス(COVID-19)の危機が南北協力の新たな機会に為り得る」との見方を示した。
 その根拠としたのは今年3月に金正恩氏と行った「親書交換」だった。韓国が大邱(テグ)市での感染爆発を前に死闘を繰り広げて居た3月4日、金正恩氏は親書で「必ず勝つと信じて居る。南側の同胞の大切な健康が守られる事を願う」とエールを送った。

 当時、青瓦台が明かした処に依ると親書には「朝鮮半島を巡る情勢に対する率直な思いと立場も込められて居た」と云う。これに対し、文大統領も感謝の意を込めた返信を送った。 文大統領はこの日、具体的なアイディアも挙げた。

 「新型コロナに共同で対処する協力から始まり、家畜の伝染病と接境地域(軍事境界線に近い地域)での災害災難、そして気候環境変化に共同で対応する」と云うのがそれだ。更に「南北間の鉄道連結」「南北共同遺骸発掘事業」「離散家族再会事業」等の事業にも言及した。

 総選挙での与党勝利が後押し

 それでは具体的にはそんな動きがあるのか。 韓国の金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一部長官は24日、今年の6月15日に『南北共同宣言(2000年)』20周年を迎え南北共同行事を行う計画を明かした。この中には離散家族再会事業が含まれて居る。実現するとすれば急ピッチでの準備が始まる事に為る。
 そして今日27日には、江原道の江陵(カンヌン)⇔猪津(チェジン)区間を結ぶ鉄道連結事業の着工式が行われた。これは韓国東部の鉄道路線を整備し、行く行くは軍事境界線を越えて東海岸の鉄道を南北で繋ぐ事業だ。 又、新型コロナにマツワル人道支援も積極化される見通しだ。

 矢張り統一部は、3月と4月に夫々一件ずつ北朝鮮への支援許可を出したと明かして居る。これは北朝鮮側に受け入れ先があると云う事で、現実的な支援が軌道に乗り始めて居る事を如実に示して居る。
 これに関し米財務部では北朝鮮に対し、新型コロナウイルス診断キット・マスクや防護服等の装備・酸素呼吸器や医薬品を制裁対象外とする措置を今月に入り行って居る。この為、民間人道支援団体に依る北朝鮮への支援の動きは今後拡大すると思われる。
 統一部は他にも、金剛山観光・開城工業団地の再開と云う宿願作業も今年の計画に含めて居る。又「統一経済特区法」等の法整備も進めるものと見られる。

 4月15日に行われた総選挙の結果、与党・共に民主党は議席の6割180議席を占め、アラユル法案を一定の期間が過ぎれば単独で通せる様に為った。この為、南北関係改善を支える法整備は進むものと見られる。 実際、金統一部長官は『板門店宣言』を6月から始まる新たな国会で批准する事に言及して居る。
 「南北軍事合意書」の結果、板門店でも非武装化が進んだ・・・非武装のママ北朝鮮側に背を向けて立つ兵士も。

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 文政権下での南北関係改善はラストチャンス

 それでは現状をどう評価すれば好いのか。 朝鮮半島情勢や南北関係に詳しい統一研究院の趙漢凡(チョ・ハンボム)先任研究員は27日、筆者の電話インタビューに対し「今年に為って文大統領は南北関係改善にずっと意欲を見せて来た。今年は大統領選挙のスケジュール(22年5月)を考えても文大統領が南北関係で何か成果を残すラストチャンス」と述べた。
 更にその可能性に着いて「北朝鮮側が返事をしない状況はそのママだが、米国が動か無い為金正恩氏の立場では南北関係から突破口を探す可能性がある。総選挙の結果もあり、韓国国内の状況も悪く無い」と見立てた。

 文大統領はこの日、新型コロナウイルス拡散後、詰り「ポストコロナ時代」の精神として「連帯と協力」を挙げた。そして「板門店宣言の基本精神」も同様なものであると述べた。 今年6月には南北共同宣言から20周年、そして朝鮮戦争勃発から70周年を迎える。
 韓国政府に取っては、2019年に見る影も無く為った朝鮮半島の未来を切り拓く「勇気」を、再び発揮する時が来たと云える。何処迄進めるのか、今後6月15日までの動きに俄然注目が集まる。


                  以上









【管理人のひとこと】

 このレポートで窺い知るのは、既に韓国はポストコロナへと人々の関心が移って居る・・・と云う事なのだろうか。とても羨ましい限りだ。しかし、日本と比較はしない・・・比較も出来無い程の国情の違いもある。韓国・北朝鮮は、同じ民族・家族が未だに分裂する・・・何とも言い様の無い半島国家なのだ。この感情は、私達には簡単に想像出来無い。深い悲しみと互いに憤りを持ち合う隣同士・同じ民族でもある訳だから。
 両分裂国家は、未だに交戦中であり今は瞬時の休戦をして居る状況である。遂何年か前は、北朝鮮が一方的に或る島へ攻撃したばかりでもある。両国は戦争中であり、韓国の若者には一定期間の徴兵制度もあり、日本とは単純には比べるのは無意味だろう。
 隣国の我々には、ドイツの様に過去を捨て去り早く南北が統一して新たな国へと発展する事を願うばかりだが、日本は何一つの貢献も出来ず、拉致問題も一向に進展しない哀れな存在に為って仕舞って居る。我が国は只管国力を下げ続け、国としての価値の暴落に邁進している・・・誠に哀れな国家である。隣国から見ると「戦争も無い平和な国家なのに、どうして可笑しな政権を甘受して亡国へと向かっているのだろう・・・」と訝し気に見て居る事だろうか。私は最近、子供達の未来を考え、心が寒ーく為って来るのに耐えられ無く為って居る。
 もし、両国の思惑が一致すると、今後朝鮮半島に世界の目が集中する事も有り得、ポストコロナの世界の希望の星とも為らぬとも限ら無い。















 



 




2020年04月27日

「緊急事態延長」で迫る「経済停止」が招く大問題




 「緊急事態延長」で迫る「経済停止」が招く大問題
           
         〜東洋経済オンライン 日沖 健 4/27(月) 5:25配信〜


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         何故「コロナ長期化」への備えが必要なのでしょうか?

 〜コロナ禍の影響から緊急事態宣言が4月7日に出されて、連休最終日の5月6日迄外出自粛等の対応が続きます。国民の多くは、此処で感染拡大を抑え込んで連休明けに緊急事態宣言が解除され、早期に普段の生活を取り戻せるものと期待し我慢を続けて居ます。
 一方「本当に連休迄にケリが着くのか」「緊急事態宣言が延長され、再延長され、延々とコノ状態が続くのではないか」と云う不安も過ります。どう為るのか予断を許しませんが、最悪を想定するのが危機管理の基本。短期で決着すると云う好ましいシナリオだけで無く、長期戦に為ると云う苦渋のシナリオも想定して置く必要が有ります。今回は、何故長期戦への備えが必要なのか、そこではどう云う対策が求められるのかを考えてみましょう〜


 「コロナの短期決戦」を目指す安倍首相

 今年1月16日に国内で最初の感染者が確認されてから今日迄、政府は様々な対策を講じて来ました。その基本姿勢は「短期決戦」です。安倍首相は2月26日に「コノ1・2週間が感染拡大防止に極めて重要」とし、その後も繰り返し「この1・2週間が正念場」短期決戦への協力を呼び掛けて来ました。そして「経済をV字回復させる」(3月17日)と急回復を目指しました。
 しかし、コロナとの戦いは決着せず、3ヵ月が経ち緊急事態宣言・その全国拡大へと追い込まれました。現在は「この緊急事態を1ヵ月で脱出する」事を目指して居ます。

 日本では、法律を変え無い限り、都市封鎖等更に厳しい措置を取る事は出来ません。緊急事態宣言は、政府が持って居るカードを出し切った形。最終兵器を目にした国民の心には「流石に此れで大丈夫でしょ」と云う期待と「これでダメなら一体どう為るんだ」と云う不安が交錯して居ます。

 今後を占うのは困難ですが、有効なワクチンや治療薬の開発には、通常2〜3年、今回可成り急いでも1年掛かると云われます。又、早期に感染抑制に成功したとしても、北海道等で一旦収まった感染拡大が再加速して居る状況を見ると、安易に警戒を緩める訳にはいきません。短期で戦いが決着する可能性は低いと覚悟した方が好いでしょう。
 京都大学・山中伸弥教授は、自身のホームページで「新型コロナウイルスへの対策は長いマラソンです。都市部で市中感染が広がり、暫くは全力疾走に近い努力が必要です。又、その後の持久走への準備も大切です」と述べて居ます。又、ハーバード大学に依ると2022年迄ソーシャル・ディスタンシングを続ける必要が有るとの事です。私達は、短期で終息させる為に努力すると共に、長期戦を覚悟しその為の対策を講じる必要が有るのです。

 「経済対策」は感染対策と同じ位重要

 では、新型コロナウイルス対策の長期戦の為には何が必要に為るのか。先ず「感染対策」に付いては、感染者数の増大に備えて、検査体制や治療体制を拡充する必要があります。特に、高齢者が多い一方、病院・医師が不足する地方での体制整備がカギに為ります。
 只、同時に大切なのが「経済対策」です。軍事学で「短期戦は戦術で決する、長期戦は兵站(へいたん)で決する」と云われる通り、長期に渡って戦い続けるには、必要物資を安定的に届ける体制と経済力が欠かせません。

 現在政府は、連休中に感染拡大を抑え込む事を目標に、経済への悪影響に目を瞑って国民に外出自粛や接触8割減を、企業に休業や在宅勤務を要請して居ます。しかし、この目標を達成出来ず、更に1年、いえ半年でも現在の対策を続けたら日本は一体どう為るでしょうか。
 既にGDP成長率はマイナスに転じて居り、4〜6月は前期比▲25%(ゴールドマンサックスの試算)と壊滅状態に為ると懸念されます。経済停止の状態が更に数ヵ月続いたら確実に倒産ラッシュが起こります。
 今は真っ先にリストラの標的にされたパート・派遣等非正規労働者の窮状が問題に為って居ますが、企業が無く為れば正社員も安泰では有りません。数百万人の失業者が街に溢れ自殺者の増加も考えられます。

 1か月とかの短期間なら、多くの国民が給付金等国からの支援で何とか生活を維持出来ます。しかし、財政状態が逼迫した日本では、追加で給付金を支給するのは1〜2回が精一杯。給付金を頼りに長期間生きて行くのは不可能です。
 これは企業への休業協力金でも同様です。倒産・失業、そして経済的な死を防ぐには、企業は事業活動を再開し、国民はソコで働いて稼ぐしか無いのです。今は短期戦の真っ最中なので、経済の事を口にすると「感染と戦う大事な時に余計な事を言うな!」「自粛に応じ無い非国民!」とバッシングされます。
 しかし、経済無視は、短期戦では正解ですが長期戦では不正解です。長期戦では、感染対策と経済対策を両輪で推進する必要があります。

 長期戦で求められる「経済対策」
 
 長期戦での「経済対策」には何が必要か。先ず、経済活動を「原則自粛」から「原則自由」に方針転換します。現在、都道府県単位で対策が進められて居ますが、市町村単位に細分化しキメ細かく対応に差を付けます。
 例えば東京都でも、都内全域一律に活動自粛するのでは無く、感染拡大が続く港区・渋谷区等では今迄以上に活動を厳しく制限する・・・原則禁止。一方、感染リスクが小さい福生市・あきる野市・三宅島等では自由・・・原則自由に活動して貰います。この方針転換を受けて、企業は事業所が所在する地域毎の活動計画を作り、原則自由地域では事業活動を推進します。又、原則禁止地域から原則自由地域への事業活動の移管を進めます。

 「今工場を稼働させてモノを作っても売れ残るだけ」と云うなら、マスクの生産を始めたシャープの様に、既存製品に拘らず、社会の維持・発展に貢献出来る製品を知恵を絞って探しましょう。更に、非接触型ビジネス等感染リスクに影響され無い新事業の創造が期待されます。
 働く側も、感染リスクが小さい者から働き始めます。新型コロナウイルスは、60歳以上の高齢層で重篤化・死亡のリスクが高く、若年層では比較的症状が軽微に落ち着く傾向があります。原則自由地域に住む現役世代には、高齢者や原則禁止地域の住人の分迄懸命に働いて貰います。

 国には、長期戦の方針を明確に打ち出すと共に、企業・国民の前向きな経済活動を融資・補助金等で支援する事が期待されます。又、国に依るビジネス・人材のマッチングも効果的です。
 例えば、今回の危機で飲食業やホテル業では従業員が余って居る一方、農業では、収穫作業を担って居た技能実習生が帰国し深刻な人手不足に陥って居ます。国が広域的にマッチングをすれば、事業継続と失業抑制が実現し一石二鳥です。

 「長期戦への備え」は待った無し
 
 歴史を振り返ると、一ノ谷の戦い・桶狭間の戦い・日本海海戦等、日本人が絶賛する戦いは何れも短期決戦。逆に長期戦は、壬申の乱・応仁の乱・太平洋戦争等、グダグダと迷走する冴え無い戦いばかりです。伝統的に日本人は、短期決戦を好み長期戦は苦手な様です。
 太平洋戦争で東条英機首相は、真珠湾攻撃でアメリカの戦意を喪失させて短期間で講和する積りでした。しかし短期戦が決着せず、ズルズルと長期の消耗戦に為り、長期戦への備えが無かった日本は、経済力・国力の差でアメリカに敗れました。

 太平洋戦争以来の危機と云われる新型コロナウイルス。太平洋戦争の過ちを繰り返さ無い様、今コソ長期戦への備えを推進する事が必要です。


 ※編集部注 本記事は2020年4月25日に執筆したものです。

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 日沖 健 経営コンサルタント 1965年 愛知県生まれ 1988年 慶應義塾大学商学部卒業 1988年 日本石油(現・JXTG)に入社 大阪支店・社長室・財務部・シンガポール現地法人IR室に勤務 1998年 Arthur D. Little School of Management修了 MBA with Distinction 2002年 日沖コンサルティング事務所を開業 
 産業能率大学総合研究所・兼任講師 中小企業診断士(中小企業診断協会・会員)中小企業基盤整備機構・アドバイザー 日本経営分析学会・会員 日本経営診断学会・会員


                    以上









 コロナショックで 世間が騒ぐ以上の「社会的危機」が到来して居た!

          〜現代ビジネス 大原 浩 4/27(月) 8:01配信〜


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            コロナ危機で広まる「相互不信」の恐ろしさ!

 〜新型肺炎の脅威が世界に広がる中で、相互不信が広まって居る事は否定出来無い事実である。何しろ、自分身の周りの他人だけでは無く友人・知人家族でさえ危険なウイルスを保有して居る可能性があるのだ。味も素っ気も無い話だが、生物学に於いてキスやセックスは「体液の交換」と定義付けられる。
 詰り「感染症を持って居るかも知れない貴方と接触して体液を受け入れても好いですよ」と云う重大な意思表示なのだ。別に堅苦しい説教をする積りは無いが、今回の新型ウイルスはAIDS以上に世界中の人々の性行動を変えるかも知れ無い。勿論男女間だけでは無く、握手やハグ等の習慣に影響を与える事は十分考えられる。
 勿論、どの様な人々も偏見無く受け入れる姿勢は立派だが、相手がどの様な人物で有るかを見極め無いで「見境無く」付き合えば、某国首相夫人の様にメディアを常に賑わすだけでは無い。場合に依っては命の危険に晒されるリスクが有る事を肌身で感じた人々が多い筈だ。ソコで、その様な環境下でもお互いに信頼し助け合う事が出来る人々をどの様に見付け、関係を維持して行くべきかに付いて考えたい〜


 「囚人のジレンマ」

 人間同士の信頼関係に関する科学的研究の中で最も有名なものは、ゲーム理論に於けるゲームの1つである囚人のジレンマだ。1950年にプリンストン大学教授で数学者のアルバート・タッカーが考案したものである。ランド研究所のメリル・フラッドとメルビン・ドレシャーの行った実験を基に、ゲームの状況を囚人の黙秘や自白に例えた為、この様な名が着いて居る。
 ゲーム理論研究が盛んに為った背景には、1950年の朝鮮戦争勃発(この時マッカーサーは「限定的」核の使用を提言したが米国政府に却下されて居る)に依って始まった冷戦が、1962年のキューバ危機に依って緊張が極限迄高まった事が挙げられる。
 相手の信頼度と裏切りの可能性を分析し「核のボタンを押すべきか、辞めるべきか」を判断すると云う重大決断の為の研究ニーズが飛躍的に高まったのだ。残念ながら核戦争の様な「一発勝負」では、多数の有能な研究者の努力にも関わらず正解と云うものは見付かって無いが、この研究が無駄で有った訳では無い。

 「仲間を裏切る」と云うのは危険な行為
 
 囚人のジレンマと云うゲームを大胆に簡略化すれば次の様に為る。

 1. 強盗団の一味が捕まって 一人一人別々に取り調べを受ける
 2. 強盗団の一味が誰も口を割ら無ければ 物証が乏しいので嫌疑不十分で釈放される
 3. 誰かが情報を提供して仲間を裏切ったら 裏切った人間は司法取引で刑期が5分の1に為る
 4. 裏切られた仲間達は 20年の懲役と為る


 勿論、実際には仲間を裏切ったら、釈放された後報復を請け負った殺し屋に撃たれる・・・等色々な要素が有るが、ここでは考慮に入れ無い。この場合も、核戦争ボタンの時と同じ様に、1回限りを考えると正解は無い。しかし、この強盗団が何時もチームを組んで(或いは1つの組織の中の一部として活動して)居たとしたら答えが見えて来る。
 次も同じメンバーで仕事を組んだり、1つの組織の中での評判を維持し無ければ為ら無い時には「仲間を裏切る」と云うのは危険な行為である。前述の様に報復されると云うだけでは無く、次に条件の良い仕事が回って来なくて損をすると云う事である。
 勿論、犯罪を奨励して居る訳では無く、ビジネスを含む社会のどの様な人間関係にも囚人のジレンマの考え方は当て嵌るのだ。繰り返しゲームを行えば「誰が裏切り者か」が分かって来る。その為には長い時間を掛けた人間関係が重要なのだ。

 評判・ブランドは「繰り返し」に依って形成される/span>

 投資の神様ウオーレン・バフェットが、100年以上の歴史と伝統がある(例えばコカ・コーラやアメックス等)企業に好んで投資をする事は有名だ。企業(会社)は「法人」と呼ばれるが、正しく人の集団で有りその企業に所属する人々が運営・維持して居る。
 特に、鉄鋼・鉄道・化学・造船等の重厚長大産業からITやサービス等のビジネスへと移行して居る現代では、会社が持つ資産よりも人材の質或いは企業を形作る社風の方が遥かに重要に為って来る。

 先ず、大恐慌や第2次世界大戦、更にはリーマンショック等の数多くの危機を乗り越えて来た伝統有る企業が、今回の新型肺炎ショックを乗り越える事が出来る可能性は高い。更に、長年に渉って投資家に対して誠実で有った企業は、粉飾決算等で誤魔化す可能性も少ない。
 バフェットは投資を好く結婚に例えるが、今日出会った人と一目惚れで結婚するよりも、長年の付き合いが有り周囲の評判が高い人と結婚した方が「確率的(例外が有る事は認める)」に幸せな結構生活を送る事が出来るのは間違い無い。その点では2019年3月2日の記事「恋愛結婚は見合い結婚より幸福か? 行動経済学的視点で考えてみた」の内容も意味を持つと思う。

 信用される迄最低10年

 バフェットの師匠であるベンジャミン・グレアムが過去10年間のデータを徹底分析してから投資を行った事は、3月29日の記事「バフェットの師匠が教える『粉飾決算の見分け方』」で述べた通りだが、人間の集団である法人(会社)を信じる事が出来るかどうかと云う尺度に「10年」と云う期間を使った事は興味深い。
 又、世の中に数有るブランドも、高い評価を得る迄には10年は掛かって居る筈である。「消費者の要望に誠実に応えて呉れる」或いは「消費者を裏切ら無い」と云う信頼が数年程度ではナカナカ生まれ無いのは経験的に明らかだ。

 ブランド確立に少なくとも10年は必要だし、老舗の店舗やブランドは江戸時代や場合に依っては鎌倉時代の創業の歴史を誇って居る。ちなみに、西暦578年に聖徳太子の命を受けて、百済から招かれた3人内の一人で有る金剛重光が初代の金剛組(寺社等の建築業)は、色々な曲折を経ながらも現在迄1400年以上の歴史を受け継いで居る。
 詰り、ブランドと云う「信頼」は幾ら資金や労力を投入しても短時間で獲得する事は出来ず、長期間誠実に振る舞わ無ければ獲得出来無いのだ。同じ様に人間も、長い間付き合ってみなければ信頼と云う「ブランド」が成立し無いと云う事である。.

 世間で騒ぐ以上の「社会的危機」が到来して居る

 「人間は10年付き合ってみないと分から無い」と云う言葉は、私が若い頃にも屡々聞いた事がある。その頃の10年と云うのは「中学3年+高校3年+大学4年」だから途方も無い長さに思えたが、現在では「10年等アッと云う間だ」と感じる事が屡々有る。
 又、学生時代と云うのは、社会的利害関係が少なく「本当の友情」を育む事が出来る。しかし、その友情が「綺麗事で済まない社会」の中で脆くも崩れ去る事が多い事実も否定出来無い。結局、私の経験から言えば、社会の中で揉まれて初めて「友情の確かさ」が確認出来ると思う。だから、若者はその点で少々ハンディキャップが有るかも知れないが、こればかりは致し方ない。

 現在は、世間で騒ぐ以上の「社会的危機」が到来して居る様に感じられる。勿論、資産を保全する事も大事だが「本当の社会的危機」に於いて財産は余り役に立た無い。戦後の食糧難の時代に、多額の現金や貴重な骨とう品を持参して都会の人々が頭を下げてもナカナカ農家から米を分けて貰え無かった事を思い起こさ無ければ為ら無い。
 数々の苦難の歴史を乗り越えて来たユダヤ人や客家・華僑が、集団としての結束を重視し「裏切り者」に厳しい制裁を加えるのも「危機に於いては『信頼出来る人間』が最大の財産」であり、信頼出来る人々の集団に属する事に依って生き残りを図るべき」であるからだ。

 だから、世界中でグローバリズムの幻影が消え去り「自国民優先」は当たり前の事に為る。更には、企業や地域社会に於いても信頼出来る組織に属して居なければ厳しい状況に直面する。そして個人単位では「危機に於いて信頼出来る人々の顔」を思い浮かべるのと同時に「危機に於いて自分を信頼して呉れるで有ろう」人の顔も思い浮かべ無ければ為ら無い。個人の間の「信頼」は基本的には相互関係だからだ。
 金(きん)も不動産もそれ自身が働いて何かをして呉れる訳では無い。ピーター・ドラッカーは「工場も店舗もそれ自身が利益を生む訳では無い。利益を生む事が出来るのは、それ等を活用する事が出来る人間だけだ」と述べて居る。同じ様に、金・預金・不動産等の資産が危機に対応して呉れる訳では無い。

 人間だけが危機に対応出来るのであり「危機に於いて信頼出来る関係」程重要なものは無いのだ。


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 大原 浩 国際投資アナリスト 株式会社大原創研代表取締役・GINZAXグローバル経済・投資研究会代表 同志社大学法学部を卒業後 上田短資(上田ハーロー)に入社 外国為替・インターバンク資金取引等を担当 フランス国営・クレディ・リヨネ銀行入行 金融先物・デリバティブ・オプション等先端金融商品を扱う 大原創研を設立して独立 『証券新報』の顧問を約7年半に渉り務める 2018年 財務省OBの有地浩氏と人間経済科学研究所を立ち上げる 著書に『韓国企業はなぜ中国から夜逃げするのか』(講談社)『銀座の投資家が「日本は大丈夫」と断言する理由』(PHP研究所)他多数

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新聞・TV「政府の言いなり」の何とも呆れる実態




 新聞・TV「政府の言いなり」の何とも呆れる実態

        〜東洋経済オンライン 当銘寿夫 4/27(月) 12:40配信〜


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 「政府の正式発表が無いと報じられ無い」と云う状況が続けば、都合の良い情報だけを垂れ流す事にも為り兼ねない・・・「お上のお墨付きが無いと、今がどう云う状態なのか判断出来無い」「感染が確認された事業者自身がサイトで発表して居るのに、行政が発表して居ないと掲載し無い」
 新型コロナウイルス感染拡大に関するニュースが大量に飛び交う中、報道機関の働き手からコンな声が続出して居る。日本マスコミ文化情報労組会議・MICが実施したアンケートで判明した実態だが、マルで第2次世界大戦の時代を彷彿とさせる令和の大本営発表とも呼べる事態ではないか研究者等の厳しい見方も交えつつ、大メディアが殆ど報じ無かったMICアンケートの内容を伝える〜


 「上から下迄忖度と自主規制 事なかれ主義」

 MICは新聞労連や民放労連等を束ねた組織で、マスコミ系の労働関係団体として日本最大規模に為る。今回は2月下旬から「報道の危機アンケート」を実施し、214人から有効回答を得た。この内ネットメディアやフリーランス等は15人しか居らず、回答者の多くは新聞や放送の現場で取材・報道に携わる人達だ。

 「貴方が現在の報道現場で感じて居る『危機』に付いて教えて下さい」

 その問いに対する自由記述での回答からは、様々な危機が見える。

  国会論戦を放送し無かったり、或いは遣っても短い。官邸記者が政権に都合の悪いニュースを潰したり、番組にクレームを付ける。これは日常茶飯事。官邸記者が政権のインナーに為って居る
  ニュースソースが官邸や政権で有る事。その結果、番組内容が官邸や政権寄りにしか為ら無い。彼等を批判し正して行く姿勢が全く無い。と云うか、例え在ったとしても幹部が握られて居るので放送され無い
  上から下迄、忖度と自主規制・事無かれ主義・・・サラリーマンばかりで、ジャーナリストは居ない
 「過剰な忖度」で有ると現場の制作者も中間管理職も判って居乍ら、面倒に巻き込まれたく無いとの「事なかれ主義」が蔓延して居る

 こうした最中、首相官邸報道室は4月上旬、官邸記者クラブに対し、新型コロナウイルスの感染防止策として、首相会見に出席する記者を1社1人に限る様要請した。海外メディアやフリーランスの記者は10席しか割り当てが無く、希望者が多いと抽選と為る。
 MICに依ると、報道室に依る要請以前、会見場には130程度の席が在ったが、現在は29席に絞り込まれて居る。平日に1日2回開かれる官房長官会見に付いても、同様に記者数に制限が設けられて居ると云う。

  コロナとの関連で会見が可成り制限され、入る事さえ出来無く為ったものも有る。不都合な質問を受けて出来るだけ答えを出したく無いと云う意図も感じる

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 コロナ禍での官邸取材に付いて、MIC議長の南彰氏人差し指サイン(新聞労連委員長 朝日新聞労組出身)はこう話す。

 「緊急事態宣言で政府に権限を集中させて、その権限が適切に行使されて居るかをチェックし無ければ為ら無い時に、チェックする術(すべ)が制限されてしまって居る。官邸会見での記者数の絞り込みには何社か反対した様ですけど、官邸側の要請が強く『人数制限は呑めない』は多数意見に為ら無かった。危機に便乗した取材制限に繋がら無い様にするは、どうしたら好いか。そこが今、最大の課題です」

 「医療崩壊と書くな」と言われて

 コロナ問題に関する回答では、見過ごせ無い記述も並んで居る。

  記者勉強会で政府側から「医療崩壊と書か無いで欲しい」と云う要請が行われて居る。医療現場から様々な悲鳴が聞こえて来て居るので、報道が止まる処迄は行って居ないが「感染防止」を理由に対面取材も難しく為って居り、当局の発信に報道が流されて行く恐れがある
  医療崩壊と云う言葉に付いても、政府や自治体の長が「ギリギリ持ち応えて居る」と表現すると、それをそのママ検証もせずに垂れ流してしまって居る。実際の現場の声よりも、政治家の声を優先して伝えてしまって居る事に危機感を持って居る。お上のお墨付きが無いと、今がどう云う状態なのか判断出来無い
  感染が確認された事業者自身が貼り紙やサイトで公表して居るのに、行政が発表して居ないと(内の新聞は)掲載し無い

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 福島第一原発の事故に関する取材をズッと続けているフリーランス記者の人差し指サイン添田孝史氏(元朝日新聞記者)は、アンケートの回答を見て手厳しく語った。

 「東日本大震災の時の原発事故でもそうでしたが、行政のトップが『高い放射線量の情報を出すと、パニックを煽るから書くな』と言い、記者クラブの人達も追随する事が有りました。危機の際の情報発信にはチャンとした論文も在って、キチンと情報を出さ無い方が寧ろパニックを引き起こすんですね。福島の事故から9年経ちますが、本当に学んで居ないな、と」

 「書くな」と言われたらそれ自体が大ニュース

 「コロナの様な危機に為ると、手作りマスク500枚寄付みたいな記事とか、中学生がお小遣いでマスク縫って寄付した話とか、良いお話も載せなきゃと云う無理矢理感も多いんです。その一方、行政側・政府側が『医療崩壊した』と言わ無い限りは『医療崩壊』と書か無いと云うのであれば、ジャーナリズムとして仕事の放棄です。
 自分達の取材を通して『こう云う状態です』とハッキリ言えば好い訳で、権威有る人が言う迄書か無いと云うのは可笑しい。ソモソモ『医療崩壊って書くな』って言われたなら、それだけで書けよ、って思う。それ自体が大ニュースです。MICのアンケートの回答に書いて居る場合じゃないだろう、と」


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 情報メディア法に詳しい人差し指サイン田島泰彦・元上智大教授は、こう指摘する。

 「記者会見のメンバーがセレクトされるとか(会見の)時間の制約が有るとか、会見そのものが非常に一面的な方向に為り得るからこそ、従来以上に独自の取材や報道を進め無くてはいけ無い筈です。それが本来の報道機関の役割なんです」

 「普段は見過ごされて居るけど、今回の様な重大な事態に為ると、報道機関がどれだけ政府の情報に依拠して伝えて居るかが露骨に為る。メディア全体として見ると、過つての『大本営発表』と同じ様な役割をしてしまっている。
 そこの部分を本気に為って変えて行く事をしないといけ無い。真実を守る為、報道の自由を大事にすると云う事を遣って行かないと、最終的には市民から見放される。(今も)極めて厳しい自己批判をしなくちゃいけないと思います」


 好く知られて居る様に、日本の新聞やラジオは第2次世界大戦の際、軍部(大本営)の発表を右から左へと垂れ流したばかりか、寧ろ好戦的な紙面を作り国民を煽った歴史を持つ。田島氏の指摘は、まさに今が大本営発表と同じではないかと云う点に主眼がある。

 記者クラブの権力監視が機能して居ない
 
 こうした指摘に対し、MIC議長の南氏「記者クラブを拠点とした取材スタイルの限界が露呈して居る」と言う。

 「記者クラブを拠点にしながら、番記者制度の下、取材対象に肉薄して色んな事を聞き出して来るスタイル自体が、一番権力を監視し無くては為ら無い時に機能し無い事が露呈してしまった。このシステムはズッと問題だと言われて来たけれど、愈々メディア側も『これでは難しい』と認識出来たと思います」
 
 「メディア側も変わらないといけ無い。此処数年の公文書の問題も含めて、非常に不透明な、情報開示に消極的な権力に対して、どう確り説明させて行くのか。それも記者クラブに限定せず、社会全体に透明性を持って説明させて行くか。それが今、私達の置かれて居る状況だし、此処を転換点にしていかないといけ無いと」

 マスコミで報道に携わる彼等彼女等の声を、以下で全て紹介する。「マスコミの報道が劣化して居る」は言い古された言葉だが、アンケートの回答を読み通すと、その実態に改めて驚愕するかも知れ無い。


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 日本マスコミ文化情報労組会議『報道関係者への「報道の危機」アンケート結果(概要)に付いて』(PDFファイル、2020年4月21日) 取材 当銘寿夫「フロントラインプレスFrontline Press

                  以上

















安倍政権のコロナ対 マスマス「世界の常識」から遠ざかって居る!




 安倍政権のコロナ対策 

 マスマス「世界の常識」から遠ざかって居る!


           〜現代ビジネス 渋谷健司 4/27(月) 7:31配信〜


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        キングス・カレッジ・ロンドンで教授を務める渋谷健司氏

 〜世界の一部では、新型コロナウイルスの感染拡大の抑制に成功し始めて居る処が出て来た。しかし、日本では未だ先行きが不透明で、安倍政権に依るコロナ対策への不満が高まって居る。「世界を比較すると日本政府のコロナ対応は不十分と言わざるを得無い」と指摘する専門家も少無く無い。
 では、日本の何処が問題で、これから何をすべきなのか・・・公衆衛生のスペシャリストで、現在はキングス・カレッジ・ロンドンで教授を務める渋谷健司氏は、「日本では依り抜本的なコロナ対策が必要だ」と指摘する。WHO事務局長の上級顧問も務める渋谷氏が、世界のコロナ対策の最前線から日本の「いま」と「これから」に付いて緊急提言する〜


 「検査」と「隔離」の基本が無視されて居る

 今日本では新型コロナウイルス対策は正念場を迎えて居ます。「非常事態宣言」が全国に広がったのは歓迎すべきですが遅過ぎました。そして、そこにどうしても政策が付いて行けて居ない様に思います。此処に私がハッキリと申し上げたいのは、日本は直ぐに厳格なロックダウンをして感染連鎖を抑えて、WHOが示している検査と隔離を徹底する事です。これは私の住む英国が初動に失敗し、被害が拡大した事からの教訓です。
 又「ステイホーム(家にいましょう)」の為の強力なメッセージが必要です。東京オリンピックを1年後に開催すると決めた以上は、日本が国際的にもイニシアチブを取って欲しいと云う事です。

 私はWHO事務局長の上級顧問ではありますが、WHO職員でも有りませんしWHOの肩を持つ積りも有りません、WHOにも色々と問題は有ります。しかし、WHOが今遣って居る事は感染対策の基本中の基本を示して居るに過ぎません。この事をご理解頂き、新型コロナウイルスに於ける現状を確り踏まえて、今後の事に思いを巡らせて欲しいと思います。
 私は「検査」を増やすべきだと訴えて来ました。これ迄は厚労省のクラスター対策班の尽力でどうにかこの数か月を持ち応えて来ましたがフェーズが変わりました。

 思い切った「PCR検査の拡充」を!

 既に感染者は、日本が示して居る数字よりもモッと広がって居る事が予想されます。もう皆さんご存知でしょうが、この新型コロナウイルスは感染して居ても症状が出ない人も多く、そうした探知出来て居ない感染者が今感染を広げて居ます。今後は益々感染が広がり、発症する患者も急速に増えて行く事が懸念されます。
 医療崩壊を抑える為には、もうクラスターだけを潰しに行くフェーズは終わり、誰がどの様に感染して居るのかを察知する為に、検査を増やして行くフェーズに入って居ます。その体制を早急に整える必要が有るでしょう。その中心に為る政策は、医療機関の外に検査センターを設置する事です。
 風通しを良くした大きなテントの様なものでも好いし、韓国等の様にドライブスルー方式でも可能です。これと遠隔診療の組み合わせで医療機関の院内感染も防げます。こうして感染者を割り出して直ぐに「隔離」する事です。

 今迄は、検査が陽性と為れば全て入院させて居た事から病院のベッドが一杯でした。検査を増やす際に大切な事は、軽症者に自宅やホテル等の代替施設で療養して頂く事です。病院に入院する必要は有りません。それに依って、本当に治療が必要な方への病院での対応が可能に為ります。
 医師会の方々が頑張って呉れて、初診から電話・オンライン診療が始まって居ますし、自治体レベルで検査の拡充する所も増えて来て居ます。今こそ思い切った検査拡充をするときだと思います。
 一方で「家に居ましょう」を徹底する為に、政府はモッと徹底的な休業の為の補償を組み立てるべきです。又、日本で言われて居る様に「外出禁止」の法的要件が日本に無い事が盛んに指摘されて居ますが、実は余り関係が無いと私は思って居ます。

 例えばイギリスでは先ず、最初にパブやレストラン等の店舗を補償付きで閉鎖した後、ロックダウンを宣言しました。パブやレストランを閉める事で社会的隔離を進めると同時に、更に「家に居ましょう」を徹底させたのです。
 店が閉まった事で国民に危機意識が芽生え、そこにロックダウンと畳み掛けて云った事は、強力な一貫したメッセージと為りました。

 「3月の休校措置」は余り効果が無かった

 一方で日本では自粛をお願いしたり、非常事態宣言を出した後に、どの店は開けても好い・どの店はダメと云う議論をして居ます。国民に家に居て欲しいなら、一気に店は閉めてしまったり・交通も制限したりしないと明確なメッセージには為りません。又店の方も政府が売り上げの補償をしないから閉めたくても閉められ無い。この問題をクリアにして行か無いと為ら無いでしょう。強力なメッセージを発する為に、一貫した政策をどの順で繰り出して行くか。戦略的な見地が必要です。

 例えば、学校の3月時点での休校は余り効果を示しませんでした。今の日本政府の対策を見て居ても変わらずチグハグでスピードが遅く、政府に長期的な戦略が有る様には見えません。この要因は、国家非常事態にも関わらず平時のペースで遣って居る事、そして、政治と科学が独立して居ない事から起こって居る様に思います。
 専門家会議の位置付が不明瞭で、政治的判断に強く影響されて居る様に見えます。的確な政治決断の為には、正しいデータと科学的知見に基づいて提言を行い、又それをどの優先順位で実行して行くか戦略を練る独立した組織を作る必要があるでしょう。

 科学的データを信用すること

 中国の武漢の例を見ても、2〜3ヵ月で感染爆発を終息させて居る。ロックダウンと徹底した「検査と隔離」が在ったからです。もう皆さんは忘れて居るかも知れませんが、この武漢や中国で起こった状況をWHOと中国政府が調査した『WHO・中国合同ミッション報告書』が出されたのは2月下旬の事でした。その調査には日本の感染症研究所の専門家も参加しました。
 そこには、アウトブレイクの有る国の取るべき政策として「積極的かつ徹底的な症例発見・即時の検査と隔離・綿密な接触者追跡及び濃密接触者の厳密な隔離を優先する」事と示されています。詰り「検査と隔離」の徹底が一番大事であると明記されて居ます。

 この新型コロナウイルスに付いては、少なくとも今得られる確実かつ大規模な調査によるデータはこの報告書しかありません。実に累計7万5000件もの症例を基に示されて居り、これ以上の実証データは存在しないのです。処がこの報告書は中国寄りとか数字が疑わしいと云う理由でデータを疑問視する論調もあります。
 しかし、見誤っては為ら無いのは、此処で示されて居る対策を実施する事で、武漢は元より、韓国・台湾やドイツの例の様に確実に効果が見られて来ると云う事です。

 「東京五輪」と「グローバルヘルスリーダー」
 
 今スケープゴートの様にWHOは相次ぐ批判を受けて居ますが、今世界中が協力してこの感染対策に取り組ま無ければ為ら無い時です。勿論WHOも完璧ではありません。しかし、WHOにイニシアチブを取って貰う事無しには、その見通しは立ちません。
 実は2014年に起こったエボラ出血熱のアフリカでの大流行の時もWHOの初動が遅れた事が批判されました。ソコで、当時の塩崎恭久厚労大臣の尽力で日本を含む7か国やマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏の財団「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」等が資金を出して、G7伊勢志摩サミット後にCEPI・Coalition for Epidemic Preparedness Innovations感染症流行対策イノベーション連合と云うパンデミック・ワクチン開発の基金を作りました。

 安倍晋三首相はサミットでグローバルヘルスを主な課題として取り上げ、CEPIを「積極的にバックアップする」と言って呉れた。実は日本は、世界からは「グローバルヘルスのリーダー」として高く評価されて居るのです。
 日本は1年後に東京オリンピックを開催する事を念頭に置いて居ます。しかしワクチン開発はWHOも、そして、今新型コロナウイルスのワクチン開発に全力を注いで居るビル・ゲイツ氏も早くても18ヵ月と云う見通しを示して居ます。

 一刻も早く鎮静化させる為に

 新型コロナとの戦いは、厳格な対策を取って先進国で武漢の様な成果を見ても、未だ新興国に広がって行きます。先進国の様な対策が取れ無いアフリカ諸国では、マダマダ長期間の対策を強いられる事に為るでしょう。そうすると世界から人を集める五輪を開く為には、世界規模で感染が抑制される状況を何とか作って行かないと為りません。
 その時東京オリンピックを開催したいと願う日本は動機も鮮明で、グローバルヘルスリーダーとして国際的にもイニシアチブを執れる立場に有ります。是非そうして欲しいと願って止みません。その為には、今の状況を一刻も早く鎮静化する為に、抜本的な感染対策を行う必要があると思います。日本にはそれが出来る力があると信じて居ます。


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 渋谷 健司 英キングス・カレッジ・ロンドン教授 WHO・世界保健機関 事務局長上級顧問 WHO・世界保健機関・東京大学教授を経て ポピュレーション・ヘルス研究所長 WHO事務局長上級顧問、CEPI・感染症流行対策イノベーション連合科学諮問委員を務める

                     以上








 【管理人のひとこと】

 今迄の安倍政権の根本的失政として・・・

 1 政府・政権の認識の遅れ・・・中国の局地的なものと認識・・・初動対策の遅れ・国内準備の遅れ
 2 オリンピックを抱える事での政治的対応を優先・・・検査の抑制とクラスター追跡に固執・・・意図的に発症件数を抑える・・・対策のゴテゴテ・チグハグの繰り返し
 3 長期政権の腐敗・・・危機管理の低下・医療政策の意図的財政抑制政策・官僚の腐敗・・・既に効果的対策を打て無い政権構造に為って仕舞って居た
 4 政権への不信感増大・信頼感の低下・・・国民から圧倒的不信感に依って、政策そのものへの不信感に繋がり更に効果的対策を打てない政権への怨嗟・諦め感が漂う様に・・・緊急時なのに、本日も国会では平時の如く時間を費やして居る・・・国民の現場と為政者との感覚のズレが認識出来無い・従来の形式に拘りスピード感を出せ無い・・・失敗を恐れて一歩も踏み出せない・・・何もしない事へ繋がってしまう。下記〔特別定額給付金〕支給の方法でも、国民の為に支給するとする趣旨に反する官僚・お上のヤツッケ仕事的な温かみの無い、そして面倒で多くの人手の掛かる手続きを負わせ、不効率で経済的・人的負担の掛かる手段を臆面も無く続けて居る。










 10万円一律給付の〔特別定額給付金〕

 申請方法を 総務省が発表


            〜Impress Watch 4/27(月) 12:32配信〜


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         写真 Impress Watch ※クリックして拡大出来ます 

 総務省は、新型コロナウイルス感染症による経済対策として〔特別定額給付金〕に関する概要や申請方法を発表した。特別定額給付金等の緊急経済対策を実行する為の補正予算案は、政府が27日に国会へ提出し30日にも成立する見通しと為って居る。

 4月20日に閣議決定された〔新型コロナウイルス感染症緊急経済対策〕に於いて、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行なうとし、給付対象者1人につき10万円の給付を実施する。給付対象者は基準日(2020年4月27日)に於いて、住民基本台帳に記録されて居る者で、受給権者はその者の属する世帯の世帯主と規定されて居る。
 〔特別定額給付金〕の申請方法は「郵送申請方式」か、マイナンバーカード所持者向けの「オンライン申請方式」の2種類があり、前者は市区町村から送られて来る申請書を、後者はマイナポータルを利用し、夫々振込先口座等を記入する。郵送申請方式の場合、本人確認書類の提出が必要と為る。

 受付開始日や給付開始日は市区町村に依って異なるが、可能な限り迅速な支給開始を目指すとして居る。又、申請期限は郵送申請方式の場合は申請受付開始日から3カ月以内とされて居る。
 尚、配偶者からの家庭内暴力(DV・ ドメスティックバイオレンス)を受け、避難の為に異なる市区町村に居住して居る者に付いては、基準日(4月27日)迄に住民票を移した場合、避難者の住民票が所在する市区町村が行なう。
 一方で、家庭内暴力の被害者が、諸事情により基準日迄に住民票を移せ無い場合や、基準日の翌日以降に暴力が発生して避難した場合は、以下の一定の要件を満たしその旨を申請すれば、申出者の住民票が所在する市区町村では無く、申出日時点で居住する市区町村から支給される。

 以下、家庭内暴力の被害者が特別定額給付金を受け取る為に必要な一定の要件を原文で掲載している。

 (1)申出者の配偶者に対し、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号。以下「配偶者暴力防止法」と云う)第10条に基づく保護命令(同条第1項第1号に基づく接近禁止命令又は同項第2号に基づく退去命令)が出されて居る事。
 (2)婦人相談所による「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書」(地方公共団体の判断により、婦人相談所以外の配偶者暴力対応機関が発行した確認書を含む)が発行されて居る事(確認書を発行する際は別紙様式1を参考とすること)
 (3)基準日の翌日以降に住民票が居住市区町村へ移され、住民基本台帳事務処理要領(昭和42年自治振第150号自治省行政局長等通知)に基づく支援措置の対象と為って居る事。

 又〔特別定額給付金〕とは異なるが、経産省は個人事業主に最大100万円・中小企業に最大200万円を支払う〔持続化給付金〕の申請方法の速報版を発表した。経産省が速報版として発表した申請手順にある〔持続化給付金ホームページ〕は、補正予算成立の翌日、恐らく5月1日頃に開設される。経産省に依ると、申請してから2週間程度で給付する事を想定して居ると云う。

【お詫びと訂正】14:30頃の記事追記時に〔特別定額給付金〕と〔持続化給付金〕の説明を混同する誤りがありました。お詫びして訂正させて頂きます。


            PC Watch 中村 真司     以上




















  





2020年04月26日

「始皇帝」を生んだ男達 〜秦帝国 天下統一への道【中国歴史夜話】




   【中国歴史夜話】 

  「始皇帝」を生んだ男達 秦帝国 天下統一への道
              
          〜サライ.jp 文 砂原浩太朗 小説家 4/26(日) 11:05配信〜


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 暴君か英雄か評価は分かれるにしても、歴史上、秦の始皇帝(前259〜210)の存在感は誰もが認めざるを得ない。何しろ、500年以上に渉り乱れに乱れた世を統一した人物なのである。好悪は別として、只者で有る訳も無い。
 だが、言うまでも無く天下統一は始皇帝一人の功績では無い。彼が13歳で王位に就いた時、秦は既に他を圧倒する強国と為って居た。云わば「始皇帝」誕生の地均(じなら)しが出来て居たのである。本稿では、秦を覇者足らしめた男達を通じ、大帝国胎動の軌跡を追う。

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                小説家 砂原浩太朗氏
 
 法に生き、法に死す〜商鞅(しょうおう)

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 秦は元々中国の西北辺境に暮らす民で、主に牧畜を行って居たと云う見方が有力である。天下を治めた周王室が衰退、国々が争い乱れたのが春秋・戦国時代(前770〜221)だが、この初期に諸侯の列へ加えられた。が、その後も他の国より一団低く見られる時期が続く。
 それが一変したのは、商鞅(しょうおう ?〜前338)に依る改革の為。衛(えい)と云う小国の王族出身で本名は公孫鞅と云うが、後商の地を与えられたのでこう呼ぶ。
 孝公(在位前361〜338 この時代は、未だ王を名乗って居ない)に仕え、未だ辺境の一国に過ぎなかった秦を法治国家へと変貌させた。

 村落をまとめて「県」と云う行政単位を作り、中央から派遣した役人に治めさせる、バラバラだった度量衡(長さ・容積・重さの単位)を統一する等、後に始皇帝が行った政策は、商鞅に起源を持つものが多い。又、自ら幾度か軍功を挙げ、君主の一族でも功無き者はその籍に入れ無い等、厳しい統制で強国への道を志向した。
 彼を巡っては興味深いエピソードが色々と残って居るが、此処では代表的なものを二つ紹介する。先ずは孝公に仕官する折の事。最初、徳を以て世を治める道を説いたものの全く関心を持たれ無かった為、日を改め面会を願った。
 つぎは短時日にして強国を作り上げる方法を披露した処、孝公は痛く感じ入り、商鞅を信任する様に為ったと云う。何より実利を重視すると云う国の性格が好く出た挿話だろう。

 もう一つは、彼の最期に纏わるもの。商鞅は極めて厳格に法を用いる人物で、君主の一族や貴族でも容赦なく罰した。その為恨みを買う事深く、孝公が没するや直ちに失脚、命を狙われる身と為って逃亡する。その途次、或る宿屋に泊まろうとしたものの断られてしまった。
 慌てて逃げた為置き忘れて来たのか、追われる身ゆえ出す訳に行かなかったのか、身分を証明する書類が示せ無かったのである。無論、相手がこの国の宰相等と知る由も無いママ、宿の主が云う「商鞅さまの法では、身元が判らない者を泊めると、罰せられる事に為って居りますので」
 自ら作った法に依って追い詰められた形と為り、結局は車裂きの刑と云う悲惨な最期を遂げてしまう。が、彼が大国秦の礎を築いたのは疑う余地の無い事である。

 勝ち過ぎた名将・白起

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 商鞅の改革に依って強国と為った秦は、昭王(在位前307〜251)の世、更なる大躍進を遂げる。王は始皇帝の曽祖父に当たり、57年の長きに渉ってその位に在った人物。宰相・范雎(はんしょ)に依る遠交近攻(遠方の国と結び、近くの国を討つ)策を採り、七雄と呼ばれる諸侯の内と親しみ、楚や韓・魏・趙と争った。

 この時代、軍事面で絶大な貢献をしたのが名将・白起(はくき ?〜前257)である。度々諸国との戦で功を建てたが、司馬遷の「史記」には「首を捕る事24万」「13万」「5万」「城を落とす事61城」等、凄まじい迄の戦歴が記されて居る。無論誇張も大きいだろうが、連戦連勝の勢いだった事は間違い無い。
 中でも特筆すべきは、秦の覇権を決定付けた「長平(山西省)の戦い」を相手とする戦だが、当初、秦軍は敵将・廉頗(れんぱ「刎頸の交わり」と云う故事で有名な人物)の持久戦術に悩まされて居た。ソコで「秦が恐れて居るのは、趙括(ちょうかつ)が将軍と為る事だ」と云う噂を流す。

 趙括は若き俊才で兵法の研究にも長けて居たが実戦の経験は少なかった。目論見が当たり、廉頗に代わって趙括が派遣されて来た処で側も猛将・白起を投入する。
 軍は難無く撃破・包囲され40万人と云う犠牲を出して再起不能の状態に追い込まれた。実際、後に始皇帝が天下統一へ乗り出した折も、は早々と滅亡の憂き目を見る事と為る。

 だが、戦国最大とも云うべき犠牲を出したこの戦は、勝者で有る白起の心にも深い傷を残したらしい。彼は僅か3年後、王から叛意を疑われ自決を命じられるが「長平でアレ程の人を殺したのだから、当然だ」と云って死の座へ就いたと云う。

 始皇帝即位の立役者・呂不韋

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 「長平の戦い」は、後の始皇帝・政(せい)が生まれる前年の事。この頃、彼の父で昭王の孫に当たる子楚は、何と戦の相手である趙の都に人質と為って居た。故国で在るが、現在身を置くに決定的な大勝を収めてしまったのだから、命さえ危ぶまれる身の上である事は言う迄も無い。
 だが、そんな彼に手を差し述べる人物が現れた。呂不韋(りょふい)と云う豪商がそれである。子楚は20人以上居る子の一人に過ぎなかったが、利用価値が有ると踏んだのだろう「奇貨居くべし(掘り出しものだ、押さえて置こう)」と云って接近した。

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                  政 始皇帝

 秦本国の有力者に働き掛け、子楚を太子とする事に成功する(第9回参照)。のみ為らず、イヨイヨ険悪と為った情勢を睨み、の都から子楚を脱出させたのも彼だった。
 又、始皇帝の生母が元呂不韋の寵姫で有った為、彼コソ実の父であると云う説迄囁かれて居る。無論伝承の域を出ないが、呂不韋が居なければ、後の始皇帝・政が王と為れた目は極めて小さい。それ処か、幼くして趙の都で殺されていた可能性も高いから、彼コソ「始皇帝」を生んだ男だとは言えるだろう。

 子楚は在位3年にして没し政が13歳で王位に就く呂不韋は父の代から引き続き宰相に任じられた。3,000人の食客を抱え、現代迄伝わる「呂氏春秋」と云う書を編纂させる等、絶大な勢威を奮う。
 が、太后(政の生母で、呂不韋の寵姫だった女性)の愛人である「ろうあい」が反乱を企てた際、同心を疑われて罷免、程無く自ら命を絶つ事と為る。政が天下統一戦に乗り出したのは、呂不韋の死から5年後。大願を波多氏、中国最初の皇帝と為るには、そこから9年しか掛から無かった。

 後進国と目されて居た秦は、商鞅以来100年余りで天下を統一するに至った。だが、こうして振り返れば、その功労者とも云うべき人物が揃って天寿を全うして居ない事に気付く。秦に限らず、国家の誕生には、数多の流血を必要とするのだろう。歴史に触れる事は楽しみであり喜びだが、胸の隅にこうした視座を持って居ても好い様に思うのである。


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 文 砂原浩太朗(すなはら・こうたろう) 人差し指サイン 小説家 1969年生まれ 兵庫県神戸市出身 早稲田大学第一文学部卒業 出版社勤務を経てフリーのライター・編集・校正者に 2016年「いのちがけ」で第2回「決戦!小説大賞」を受賞 著書に受賞作を第一章とする長編『いのちがけ 加賀百万石の礎』共著『決戦!桶狭間』『決戦!設楽原(したらがはら)』(何れも講談社)がある

               サライ.jp   以上















日本社会は「巨大な中学校」のよう コロナ危機で克服すべき3つのこと




 日本社会は 「巨大な中学校」のよう 

 コロナ危機で克服すべき 3つのこと


       〜現代ビジネス 内藤 朝雄 明治大学准教授 4/25(土) 9:01配信〜


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 日本社会を根本的に組み換える

 新型コロナウィルスは、放置すると社会に大量死を齎す可能性が大きい。それは言わば、そうし無ければ物凄い数の人が死ぬぞと云う恐怖に依って、人々の行動様式と社会を変える事を要求して居る。
 即ち、感染を避ける為に人と人が肉体的に接触するのを避ける。非接触と云う仕方で産業や公共サービスを立ち上げる。非接触の原理で社会を組み立て直す。

 それに対し筆者は次の事を提言する・・・新型コロナが強いる非接触の原理に依る社会の組立て直しを、これから述べる (1)経済縮小(2)低い生産性(3)中間集団全体主義の3つを克服して望ましい日本社会を作り上げる為の、社会システムの根本的な組み換えに転化する・・・以下で詳しく説明しよう。

 新型コロナウィルスが出現する迄のこれ迄の日本社会は、どの様な状況で在ったか。日本の経済は驚く程小さく為って居る。世界の富の中で、夫々の国が占める率をみると日本の富は縮小の一途を辿って居る。IT化・グローバル化等で、世界の産業と経済は大きく変わった。どの様にすれば収益が上がるかと云う様式が変わった。それにも関わらず、日本は変わる事が出来無かったのだ。
 日本の時間辺りの生産性は、OECD36カ国中21位・・・主要先進7カ国中の最下位だ。更に近年貧困が拡がって来た。子供の貧困率は凄まじく、日本は最早先進国とは云え無いと云っても好い状態に為って来て居た。
 新型コロナウィルスが現れ無くても、日本は破滅の坂を転がって居た。それにも関わらず、茹(ゆ)でガエルの様に何も変えようとして来なかった。それでは、貧乏に為っても人が幸せに暮らす社会であったか・・・そうでは無い。

 日本社会=「大きな中学校」

 日本は1945年、アメリカとの無謀な戦争に完敗する事に依って、全体主義国家で有る事を辞めた。日本国憲法の下、国のレベルでは自由な社会の体裁を整えて来た。近年ソレが破壊されつつ有る・・・詳しくは『世界が警戒する日本の「極右化」〜私たちはいま、重大な岐路にいる』を参照されたい。
 だが、戦後の日本社会は、学校と会社を基体とする中間集団全体主義社会に為った・・・中間集団全体主義に付いて詳しくは拙著『いじめの構造』を参照されたい。他の先進諸国の人々が目撃すれば「狂って居る」と思う様な人格支配が学校と会社の当たり前の常態に為った。人間存在は、深い処から集団のモノで無ければ為ら無いと云う生き方が、学校と会社の日常生活の中で細かく強制されて来た。

 学校に付いては、筆者が講談社現代ビジネスの論考で何回も書いて来た通りである。企業が従業員の人格・態度・感情迄企業のものにしようとする支配は、小学校や中学校と同様のものである。日本は社会全体が、言わば「大きな中学校」なのである。
 この様な日本社会の有り方は、独特の奴隷的な心理生活を一人一人に運命として強いるものであり改善は困難であった。

 経済の縮小・低い生産性・人間を魂の深い処から会社と学校の従属物にする中間集団全体主義と云う3点セットは、不可分に結び付いて日本の社会と人々に呪いを掛けて来たと云っても好い。
 日本の雇用はワーク型では無くメンバーシップ型と言われて居る。ソコでは、次の様な現実感覚が貫き通されて居る。即ち、良い商品や良いサービスを市場に提供して収益を上げる事よりも、一人一人の社員が、人格の深い処から会社のメンバーとして染め上げられた会社のモノで有る事を、仲間内で示し合う努力・・・その様なフリをする精神的な売春に耐える事が働く事で有る・・・と云う現実感覚である。詰り、多くの「企業人」に取って中学校の集団生活ゴッコをする事が働く事なのである。

 それは丁度、長時間一定の姿勢で座り、センセイの話を右の耳から左の耳に通してノートに字を書く事が英語や数学を学習する事である・・・と誤認する習慣を学校生徒が身に着ける様な事である。これは「生徒らしく」する事であって、英語や数学を学習する事では無いにも関わらず、本人は学習して居ると認識してしまう。結果、朝から夕方まで学校で授業を受け、更に塾に迄行っても、英語や数学がロクに出来無い無能が身に着く。
 彼等が身に着けて居るのは、学校の生徒らしい生徒であると云うメンバーシップで有って、英語や数学では無いのである。

 この様に中学生が授業を受ければ受ける程無能に為るのと同様、メンバーシップ型雇用で会社員に為った人々は、無駄に集まり無駄にベタベタさせられ、皆で会社のメンバーらしい振る舞いをし合う事を以て仕事をする事であると誤認する。
 良い製品やサービスを市場に提供する苦労では無く、会社の中の人間関係を気にする不安が、最大の仕事上の苦労に為る。これでは主要先進7カ国中、生産性が最下位に為るのも当然である。
 長時間会社で中学校の部活の様に過ごし、無駄に集まる人間関係が仕事の主要部分を占める。これが学校と会社の奴隷と為った日本人の不幸であり、経済的非効率の元凶であり、私達大人を貧乏な中学生に貶める原因なのである。

 「なめるなよ、54のおっさんを!」【事例1】
 
 パナソニック産機システムズの人事課長が、内定者にSNSでハラスメントを加え自殺に追い込んだ。人事課長は、書き込みが少ないと云った理由で内定者をSNSから排除したり「無理なら辞退してください邪魔です」等と内定辞退に言及したりした他「ギアチェンジ研修は、血みどろに為る位に自己開示が強制され、4月は毎晩終電迄ホボ全員が話し込む文化がある」等と入社後の過重労働を示唆したりして居たと云う。(朝日新聞デジタル 2020年4月9日付記事、2020年4月17日入手)

 上記「朝日新聞デジタル」中の写真・・・「人事課長による内定者SNSサイトへの書き込みの文面(遺族代理人提供)」には、次の様な人事課長の言葉があった。

 サイト やってないような奴は、丸坊主にでもして、反省を示すか? 僕も人間です。感情はあるよ。僕は徹底して、露骨にエコ贔屓するからね。なめるなよ、54のおっさんを! 決して人格者ではないよ。 嘘つく奴は許せないんだ。

 会社員が「社畜(会社の家畜)」と呼ばれる日本企業では、この様な事は延々と繰り返されて来た。他の先進諸国からは気が狂って居ると思われる様な事ではあるが、会社が従業員を人格の処から会社の色に染め上げようとするのは、日本社会では有り触れた光景である。
 此処で着目すべきは、パナソニック産機システムズは産業機械の会社であるにも関わらず、報じられた人事課長によるハラスメント言動の中に「機械」のキの字も出て来ない事である。「過重労働を示唆した」と報じられる「過重労働」の中身は、自分や自分の心に付いて、徹底的に告白させられるとか「お話し会」を延々と遣らされると云った事であって、機械を扱う本物の労働では無い。被害者を自殺に追い込む迄過重だったのは、労働では無く他人から心を弄繰り回される奴隷ゴッコである。
 勿論、研修に多大な費用を掛けてこんな事をさせても、企業の収益には為ら無い。新入社員を会社の色に染め上げる奴隷ゴッコに熱中して居るだけである。日本企業の生産性が低いのは、こう云う事をして居るからである。

 強制的な「諂(へつら)い仲良し」体質【事例2】

 或る産業機器メーカーの若い社員A氏は極めて優秀で、営業では売り上げナンバーワンを記録した。機械に付いての試験でもトップ成績である。要するに会社に取っては、仕事が出来る有望社員である。彼は、入社後、下品な上司と飲みに付き合い、仕事と関係の無い無駄話に延々と付き合わされるのが拷問の様に苦痛であった。
 特に性的な接待が嫌いなA氏は「親父達」のキャバクラに付き合わされるのが最も苦痛であった。「気持ち悪くて吐きそうになる」無能な支店長は、会社の経費で飲み食いやキャバクラ遊びを楽しみたい。内心嫌がっている部下達を引き攣れて飲み歩く事を強制した。支店長はそれを部下の教育と称して居た。

 本社の幹部達は効率的な経営を目指して居たが、地方支店の非効率は著しかった。顧客と飲みに行って慣れ合うのが営業スタイルに為って居た。A氏は、飲みの集まりでは無く、機械に付いての要点を判り易く説明する、顧客ニーズに併せたセミナーを有料で行うスタイルを作り、会社でトップの営業成績を出した。
 顧客も、ダラダラと集まって酒を飲むよりも、収益に繋がる機械の活用法を知り、適正な価格で購入し個別の事情に応じた運用への道筋を着けたかった。A氏以外にも優秀な若手が高い営業成績を上げる事が有ったが、上司に虐められて会社を辞めた。A氏は、段々支店長から毎日の様に罵倒され、刺々しい言葉を浴びる様に為った。A氏の妻が妊娠し子供が生まれる時期には、支店長は「流産する」と云った言葉をA氏に浴びせることすらあった。

 A氏は会社の幹部にそのことを話した。幹部達は、支店長を二度と浮かび上がれ無い様な左遷コースに落とした。会社は、これ迄の古い体質を改善しようとして居る時期に在った。何十年か勤めた支店長を切り、有能な若手社員のA氏の方を選んだ。
 支店長は、幹部達に咎められた時、A氏の為を思ってA氏を社員として教育しようとして居たと言い訳をした。その様な言い訳は通じなかった。A氏は何とか生き延びたが、A氏以外の有能で高い営業成績を残した何人かの若手社員達は、無能な上司に対する諂いや極めて不快な人間関係を要求する圧力に屈して会社を辞めた。会社に収益をもたらす優秀な若手程会社を辞めるのだ。
 この様なメンバーシップ型雇用の、上司を中心とした強制的な「諂い仲良し」体質が会社の非効率と収益の低さをもたらしていた。だから日本は衰退して来た。

 【事例1】で見た奴隷ゴッコの研修費用も【事例2】で見た飲み屋やキャバクラの費用も企業の経費である。その分は商品やサービスの価格に上乗せされる。詰り、市場に提供する製品やサービスが割高に為る。企業の側から言えば、商品が割高に為れば市場での競争で不利に為る。不利な状況が続けば企業は存続出来無い。又、顧客の側から言えば、割高の商品を買わされて居る事に為る。顧客が企業で或る場合、会社の購入担当者が飲み屋やキャバクラで接待されるよりも、その分商品の価格を下げてコストカットをしたいと思う。
 もし購入担当者が飲み屋やキャバクラでの接待目当てに割高の商品を仕入れたとしたら、それは不正行為であり処分の対象に為る。又、その様な商慣行が蔓延する社会は腐敗した社会であり、生産性が下がりその国の経済は上手く回ら無く為る。貧しい国々はこの腐敗に苦しんで居る。

 更に言えば、仕入れ先企業の奴隷ゴッコ研修の費用が上乗せされて割高に為った商品等、購入したく無い筈である。洗脳研修を受けた社員が涙や鼻水で顔をグチャグチャにしながらプライベートな事を告白させられる姿を想像して見れば、この悍(おぞ)ましい奴隷遊びを実施する経費のお陰で割高に為った商品を買わされるのは、嫌であろう。
 飲み屋やキャバクラ・奴隷遊び研修・無意味な会議等、ワタシは会社に身を捧げて居ますと云うフリをする為に人が集まる精神的売春の為の経費は、全て商品価格に上乗せされ、恰も消費税が5パーセントから40パーセントに引き上げられるのと同様の、酷い経済減速効果をもたらす。

 良い製品やサービスを市場に提供して収益を挙げると云う本物の仕事では無く、仲間内で会社のメンバーらしいメンバーで有るフリをし合う精神的売春の労苦に耐える事を働く事であると共同誤認する習慣は、企業を生産の場と云うよりも人間関係の政治の場にしてしまう。そうすると派閥や属人主義と云う企業に取って破壊的な要素が大きくなる。
 IT技術がこれ迄人間が行って来た業務に取って代わり、産業と経済の変化は世界規模で加速して居る。社会全体が「大きな中学校」の様に出来て居る日本は、変わる事が出来ずに衰退の一途を辿って来た。社会が硬直してしまって動け無い仕組みの一つに、日本独特の「規制」と呼ばれる仕組みがある。

 人命よりも「規制」が重要?【事例3】
 
 新型コロナに対して世界の代表的な企業が(異業種で在っても)医療機器を生産する様動いて居る中、経団連の中西宏明会長は「規制が在るので、異業種が直ぐに生産出来るものでは無い」と述べた(「時事ドットコム」2020年4月14日付記事、2020年4月18日入手)
 例え、人がドレだけ死んでも規制は動かしません・・・と言って居るかの様だ。この不合理に付いて考えてみよう。中西会長の発言は、このママでは医療機材が不足して人が大量に死ぬかも知れ無いと云う時に、100点満点の95点のものしか出してはいけません、75点のものは不可ですと言って居る様なものだ。

 大日本帝国とアメリカが戦争をしている時にもこう云う事があった。零戦は繊細な名人芸が必要な95点の芸術品であった。少数しか生産出来ないし、パイロットの訓練も難しい。それに対し、アメリカは操縦し易い75点のハイパワー戦闘機を大量生産した。当然、アメリカの勝ちである。
 中西会長は「規制」と云う言葉で、例えどれだけ人が死んでも、75点の医療機器を生産してはいけ無い、95点の医療機器で無ければダメですと言って居るのだ。

 筆者は、その裏には様々な業界の慣習や利害関係が絡まって居るのではないかと勘ぐってしまうが、それを知る手立ては無い。只この発言は、新型コロナによる大量死が予測される状況下では、人命を軽視し人命よりも「規制」為るものを重視して居ると解されても仕方が無い類のものだ。
 新型コロナが発生してもし無くても、元々、社会システムを変え無ければ為ら無かった。ソコに、新型コロナが発生した。社会システムを変え無ければ多くの人が死ぬと云う事態が突き着けられた。
 好く考えてみよう。もう一度戦争の例を出す。戦争に負けても負け無くても、極端に貧しい小作人と地主と云うシステムは変え無ければ為ら無かった。社会が硬直して居てそれが出来無かった。女性参政権も必要だった。

 勿論、戦争に負ける様な悲惨は無い方が良いに決まっている。しかし戦争に負けたマイナスに付随するプラスは進めるべきだ。貧乏な小作人が娘を身売りする事が無く為り、女性が参政権を得たのは、戦争でアメリカに負けたお陰だ。戦争に負けさえし無ければ、この様な善い事は決して起き無かった。
 これと同じ事が、新型コロナに付いても言える。新型コロナと云う悲惨に対する対処は、同時に、生産性を高める仕組みづくりに為る。人が接触出来無く為る事は、人間が会社と学校の奴隷に為る中間集団全体主義を辞めさせる事にも為る。

 様々な工夫(イノベーション)を試してみれば、今迄、遣ら無くても好い多くの無駄を遣ら無ければ為ら無いと誤認して来たのだ、と云う事を人々は嫌と云う程発見するだろう。新型コロナ対策は、様々な経済活動や教育活動のIT技術による置き換えを加速し、この事に依って生産性を飛躍的に高める事が出来る。
 新型コロナに依る危機が新しいイノベーションを生み出す。危機が去った時、私達はウィルスとの闘いの中で、日本の経済を蘇らせて居た事に気付くだろう。又、私達は、会社と学校の奴隷で無く為って居る事に気付くだろう。 筆者は此処で以下の提言をする。

 新型コロナ対策に依って強いられる事・・・詰り社会を新型コロナウィルスに適応させる為の構造の組み換えを、日本経済の縮小・低い生産性・人間を魂の深い処から会社と学校の従属物にする中間集団全体主義と云う3点セットの呪いを克服する、より深い処からの社会システムの変革に転化しよう。
 生活の保障に付いて補足しよう。上記社会変革に際しては生活の保障は絶対的に必要である。それは手術をする時の麻酔の様なものである。麻酔を一定時間して居る間に急いで手術をする様に、手厚い生活保障を一定期間して居る間に急いで社会の構造変革をするのだ。社会システムの構造転換と生活保障は、車の両輪のように必要である。

 人類が一丸と為る為に

 最後に人類規模の問題に付いて提言する。北朝鮮の核兵器開発を巡り核戦争勃発一歩手前の処迄来た2017年、筆者は用途限定の世界政府を樹立するべきと提言した(講談社現代ビジネス「未曾有の北朝鮮危機を乗り越える為の、二つの緊急提言」を参照) 今回、地球規模の大量死をもたらしかね無い新型ウィルスの脅威により、人類は用途限定の世界政府を必要とする。
 アメリカ・ファースト等と言っていてはいけ無い。相手の過失(流石に中国が意図的に遣ったとは考えられ無い)を殊更に責め立てるよりも、兎に角人類の惨禍と戦う為に全ての国がチームを組むしか無い。

 ナショナリズム、民族主義は人類が長年病んで来た有害な共同幻想である。新型コロナ対策を、この幻想の力を弱める切っ掛けにする事が出来る。日本人や中国人や朝鮮人やユダヤ人やドイツ人・・・或いはキリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、共産主義教徒、天皇国体教徒・・・と云った共同幻想に憑かれた人達が、その幻想の為に死ぬ事を美化したり、その「美しい死」を他人に強いたり強いられたりする狂気が人類の歴史を貫いて来た。
 人類が一丸と為って新型コロナと戦う中で、この様な狂気の幻想が如何にくだら無いもので有るかが、地球規模で実感される様に為るかも知れない。

 新型コロナに依って、国境が閉ざされナショナリズムを煽る独裁政権が乱立し、これ迄進行して来たグローバル化が止まると云う逆のシナリオも考えられて居る。しかし、私達人類は、この不幸なシナリオを止める事が出来る。新型コロナ対策に依って、これ迄のグローバル化を、非接触のグローバル化に高めて拡大する事が出来る。
 国境は人と人が物理的に接触しない条件の元で、幾らでも開く事が出来る。コミュニケーションはITに依って非接触のモードで行えば好いので、ジェット燃料を使って人が移動する必要は無い。身体の移動に依って生じるコストを削減出来るので、経済効率は好く為る。船舶やパイプラインによる原料や部品の輸送では、それ程ウィルスは撒き散らされ無い。航空機を用いても貨物の輸送であればウィルス拡散を止めるのは容易だ。非接触のグローバル化は地球に優しい

 新型コロナに対する緊急措置に便乗した独裁政権が国内を暴力と恐怖で制圧しても、新型コロナ対策で団結した世界政府チームとグローバル報道網がそれを許さ無い、と云う仕組みを作る事も出来る。天安門事件の報道で世界中が怒り、強力な経済制裁を科した様な力は、人と人が握手したりハグしたりし無くても、電子会議に依る非接触のグローバル・ガバナンスでも可能だ。
 又、戦争は究極の接触で有る。新型コロナに依って人類が要請される非接触のグローバル化を、戦争を減らす方向で進める事が出来るかも知れない。実際に、新型コロナに依って戦争をする事が出来無い状況が既に生じて居るかも知れない。もしそうだとすれば素晴らしい事だ。


 新型コロナ対策を、人類がより望ましい方向で次の段階に移行する切っ掛けにする事が出来る。その可能性に賭けてみようではないか。

           内藤 朝雄 明治大学准教授       以上



 【管理人のひとこと】

 私は、何か素晴らしい提言の様に受け止めた。現状は、発表される日々の発症者数に一喜一憂してるのだが、非接触型社会は、ホボ完成に近付いて居る・・・全く夢の話では無い。日本はその利用に少し遅れているが、その原因も今回のコロナ禍により炙り出され、先進国並みの普及へと進む道も残されて居る。詰り、全ては政治に依り解決が可能な案件であり、今迄の政治がそれを妨げたか推進しなかっただけだ。菅官房長官が「ネット回線費用を現状の半額に」と頑張ったが、ナカナカ現状はその様に迄は為って居ない。
 教育関係もその他の事も非接触を推し進めれば、現在の様に石油消費が減少し温暖化にも対処出来る。何よりも移動が減少し、地球規模の移動コストが削減されるだろう。人と人が触れ合う為には、直接顔を合わせ話をし時間を掛けて築き上げるのが今迄の方法だったが、これからは、非接触で誰とでも何人とでも会話や顔合わせは可能だ。移動しないで済む分、距離や交通便を考慮せず時間だけを念頭にして接触出来る訳だ。
 この様にコミニュケーションが安価に便利に為ると、人材交流が益々活発に為り相互理解が深まり、中には喧嘩も起きるだろうが・・・直接殴られる事も無く仲直りも可能だ。先ずは、コロナ後の対策には、この提言を優先し考慮される事を望みたいものである。













 【自然派わんこの厳選ごはん】

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安倍政権のPCR検査「ハードル高過ぎ」に 厚労官僚からも怒りの声




 安倍政権の PCR検査「ハードル高過ぎ」に 

 厚労官僚からも怒りの声


               〜現代ビジネス 4/25(土) 7:01配信〜


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        国民から大フーイング 安倍政権のコロナ経済対策は「大失敗」に終わる!

 改訂で更に「検査抑制」へ

 「厚生労働省にコンな政策決定をさせたのは誰か。これジャア、感染者は増えるばかりだ。拡散の抑止が出来無い!!」

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             文 ジャーナリスト 時任 兼作氏
 
 厚生労働省の医療行政を担当する事務官が、新型コロナウイルスに対する同省の杜撰な対応に付いてこう吐露する。理由は、新型コロナウイルスの感染の有無を調べる為に行われるPCR検査のハードルが高過ぎるからだ。巷では、発熱して居る人でもPCR検査が受けられ無いとの苦情が頻出して居る。厚生労働省のガイダンスに依れば、確かに検査要件は非常に厳しい。
 2月1日に出された「新型コロナウイルス感染症に対応した医療体制に付いて」との事務連絡や、2月17日付の「新型コロナウイルス感染症に対する行政検査に付いて(依頼)」と題された事務連絡等に依ると、PCR検査迄のプロセスは、当初の段階では以下の様に為って居た。

 1 「帰国者・接触者相談センター」 保健所等に設置 に連絡
 2  2条件の確認
  (1) 2週間以内に感染者と濃厚接触が有り、発熱又は呼吸器症状が有る
  (2) 2週間以内に中国・湖北省を訪問したか、或いは湖北省への渡航歴が有る者と濃厚接触があり、発熱    に加えて呼吸器症状がある
 3 (1)(2)の何れかに該当する場合に限って「帰国者・接触者外来」でPCR検査・・・但し、外来の場所は原    則非公開

 その後、この規定は改訂された「湖北省」が「流行地域」に変更され、又第3・第4の条件が適用されたのである。一見すると検査適用枠が広げられたかに見えた。だが、実際は寧ろ検査を抑制する様なものであった。

 韓国ではトックに1日2万件なのに・・・

 追加されたのは、

 (3) 発熱に加えて呼吸器症状が有り、入院を要する肺炎が疑われる
 (4) 医師が総合的に判断した結果、感染の疑いが有る

 との条件だ。しかしながら(3)(4)に該当したとしても直ぐに検査は受けられ無い。インフルエンザやその他の呼吸器感染症の検査を行った上、それ等の感染が無かったと判明するか、或いは感染が判って治療しても症状が治まら無い事が明らかに為って初めてPCR検査への道が開ける。これだけの関門を潜っても検査は未だだ。これで要約「PCR検査の実施に付いて保健所に相談」する事に為るのである。
 こうした抑制の結果、感染者が一番多い東京都の場合、2月から3月に掛けて4万件を超える相談が「帰国者・接触者相談センター」に寄せられたものの、PCR検査が受けられたのは、その割図か2%強・・・1,000件を下回る程の絞り込み様だった。検査希望者の大半が受けられ無かったと言うべきだろう。

 この間、隣の韓国では積極的に検査が行われて居た。感染者が激増した2月下旬、韓国はPCR検査を保健所以外でも実施。車に乗った状態で検査が受けられる「ドライブスルー方式」を採用し、3月上旬に掛けては一日当たり2万件もの検査が為された。
 更に同月下旬には、検査対象者が一人ずつ透明のブースに歩いて入り、医師が外側から検査する「ウォーキングスルー」と呼ばれる方式も採用。検査時間の短縮も可能にし、今や感染の山場を越えた。

 政権への「忖度」が此処にも
 
 冒頭の厚労省事務官が続ける。

 「日本だって同じ様な事が出来無い筈は無い、にも関わらず遣ら無かった。これに付いては、予て東京五輪開催の為に感染者数を出来る限り少なく見せ様と云う政権の意向が強く働いて居たとの指摘が有ったが、マサにそうだとしか思え無い」

 3月下旬、東京五輪の中止が決定された直後から、東京を初め日本各地で感染者数が急増した。以後、その勢いは増すばかりである。4月7日、政府は7都府県を対象に緊急事態宣言を発し、16日にはそれを全国に拡大した。
 そうした中、要約厚生労働省はPCR検査の枠を広げるべく動き始めた。4月15日、同省は検査体制の拡充を目指し、全国各地域の医師会等がPCR検査を実施出来る体制を整備する様促す事務連絡を都道府県等に対して発した。同時に、韓国で行われた「ドライブスルー方式」の導入にも言及して居る。緊急事態を前にイヨイヨ真摯に取り組み始めたかに見えた。だが、検査体制の変更は、国内の実情に合わせたものでは無い・・・と先の厚労省事務官は断じる。

 「これも政権の意向を反映しての事ではないか。安倍晋三首相は4月6日、新型コロナウイルスを上手く制御した韓国を意識するかの様に『一日辺りのPCR検査数を2万件迄増やす』と表明し、その後『ドライブスルーも含めて検討して行きたい』と付言して居る。
 内閣官房には、厚労省から派遣されて居る内閣審議官(内閣官房副長官付)等も居て、ダイレクトに厚労省へ政権の意向が伝えられる。検査抑制が政権の意向に沿って居たのと同様、今回の対応も政権の方針転換に合わせたに過ぎ無く全て首相への忖度だ」  
 「オマケに、事務連絡は好く読むと判る通り、首相の発言をなぞった程度で形だけのもの。実務は全て地域の医師会等に丸投げと云った有様だ。コレでは、直ぐに検査が受けられる様な体制整備等望め無い。結局、国民の事は眼中に無いと云う事だ」


 誤魔化しは隠し切れ無い
 
 国民に不評の布マスクの配布や給付金の支給に付いても、新型コロナウイルスを拡大させた政府の愚策から国民の目を逸らす為の弥縫策(びほうさく)だ、と云う指摘が霞が関周辺では少なく無い。一方、或る弁護士はこう憤る。

 「新型コロナウイルス蔓延は、行政の不作為の結果だ。しかも、検査体制が改善方向に向かったとは云え、未だ誰もが直ぐに検査を受けられる訳では無い。その間、症状が悪化したり、場合に依っては生命を失ってしまう人も出て来るだろう。国家賠償法に依れば、公権力の行使に不作為があった場合、国は国家賠償の責任を負わ無ければ為ら無いと定められて居る。厳に追及されるべきだ」
 
 政治を優先させた結果、感染者を増やした政府の誤魔化しに、国民は今気づきつつ有る。悲鳴を上げる医療現場へも対応を含め、政府・厚生労働省の動向が注視される。


           時任 兼作 ジャーナリスト   以上




















2020年04月25日

内部留保多い日本企業 はコロナ恐慌に耐えるか




 内部留保多い日本企業 はコロナ恐慌に耐えるか

          〜東洋経済オンライン 岩崎 博充 4/25(土) 16:01配信〜


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      〜キャッシュをどれだけ持って居るかが 不況に耐える力を左右する〜

 新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりが経済に暗い影を落として居る。今回のパンデミック・世界的な流行が与える経済へのインパクトを1930年代にアメリカで起きた「世界大恐慌」と重ね合わせる専門家が多く為って来て居る。
 当時の失業率は30%程度迄拡大した。日本に当て嵌めれば1,800万人が失業する様な異常事態だ。リスクマネジメントとは、常に最悪のシナリオを想定して、それを乗り越えるシミュレーションをして準備する必要がある。
 処が、日本では未だそうした緊張感や切迫感が希薄な様な気がして為ら無い。その背景には企業が抱える463兆1308億円(2018年度)とも言われる「内部留保」が有るのかも知れない。

 「うちは従業員の給料の数年分の内部留保が有るから倒産しない」

 大企業で有ればある程安心感が有る・・・そんなイメージを持って居る人も多いのではないか。しかし、この新型コロナウイルスとの戦いを、世界的な規模で人類とウイルスが戦う戦争と考えると、そう簡単に解決出来る様な代物では無い。
 ソモソモ、日本人の多くは「内部留保」を間違った概念で考えている人が多い。内部留保とは、企業の「内部に蓄えた利益」では無く、現金や預金のみ為らず、国内外の債券や株式に投資した「自己資本」の1つと考えた方が好い。
 日本企業の場合、通常2〜3カ月分の売り上げに匹敵する運転資金をキャッシュ・現預金で持って居れば比較的安全と云うのが一般的な認識だが、これから先もソレで持ち応えられるのか。昔と比較して、大きく様変わりしたと言われる日本企業の財務体質に付いて考えてみたい。

 アベノミクスで増え続けた企業の現預金

 ソモソモ内部留保とは何か。簡単に説明すると、1年間に稼いだ「純利益」から配当等を差し引いた言葉で、決算上は「利益剰余金」として処理されるのだが、実は法令で定められたものでは無い。
 要するに企業が稼いだ利益から配当等社外に出て行ったものを除いて、内部留保と呼んで居るに過ぎ無い日本独特のものだ。大きく分けて、企業内にそのママ留保される「社内留保」そして貸借対照表上に計上して処理される「利益剰余金」と考えて好いだろう。

 日本の上場企業の社内留保463兆円と云う数字は、この社内留保と利益剰余金を合計した金額と言って好い。更に、此処に「法人企業統計上の内部留保」と云うものもある。2016年度の数字では次の様な構成に為って居る。 (金融業・保険業を除く、財務省「法人企業統計調査」より大和総研調べ)

  社内留保 損益計算上の企業に残る最終利益 30兆円
  内部留保 貸借対照表上に計上される蓄積された利益剰余金 406兆円
  法人企業統計上の内部留保 資金調達の内訳の中にある数値 48兆円
 
 ソモソモ日本企業が内部留保を貯め込む切っ掛けと為ったのは、リーマンショックや安倍政権誕生と大きな関わりが有ると考えられて居る。何時の間にか「内部留保=企業の貯蓄」の様なイメージを持たれてしまって居るが、日本企業の内部留保が急速に増えたのもアベノミクスと大きな関係が有ると云う事だ。
 内部留保=現預金では無いのだが、日本企業の現預金が此処10年以上増え続けて来たのは間違い無い。法人企業統計に依ると、企業の現預金が増え始めたのはリーマンショックの2008年前後からだ。
 以前の企業は、現在の欧米の企業同様に現預金の積み上げを回避する傾向に在った。それが、2008年度のリーマンショックを機に、日本企業の現預金は加速度的に増して行く。実際に、2000〜2009年度迄の企業の現預金の伸びは年率1.2%だが、2009年度から2016年度には年率4.3%と伸びて居る

 現預金は150兆円211兆円に

 金額にして、2009年度には150兆円程度だったのが、2016年度には211兆円に迄増えて居る。この背景には、日本銀行に依る異次元緩和の影響が大きい。日銀が量的緩和で、市中の日本国債を大量に買い入れた為、その資金が巡り巡って家計や企業の現預金に回って行く。
 しかも、企業はその現預金を従業員の賃金や株主への配当に回さずに、海外の企業買収・M&A資金等に回した。本業のビジネスでは稼げ無いから、海外の利益の高い企業に投資して利益を稼いで来た。それが、日本企業の現実と言って好い。

 更に、M&A等の資金を銀行から借り入れて行うのでは無く内部留保の現預金で行って来た。その背景には、借り入れの様なリスクを取りたく無いと云うのもある。又、内部留保が多いと銀行に対する信用度が増す為に、資金調達の1つの方法に為って居ると考えられる。
 無借金経営の企業が多いのもそうした背景が有るからだ。その反面で、株主からは増配を求められ政府からは「内部留保課税」を課すプレッシャーを掛けられる。従業員からの賃上げ要求は、労働組合を形骸化する事で免れて来た。

 実際に、実質無借金企業の割合は、2008年度には37.3%だったのが、2017年度には51.7%に達して居る。アメリカの18.3%(2017年)に比べれば大きな差だ。(財務省財務総合政策研究所調べ、TOPIX500から金融機関を除いた企業)
 サテ、問題は内部留保の使われ方だが、貸借対照表上の統計では、内部留保は大きく分けて「有形固定資産」「投資有価証券」そして「現預金」に分けられる。これ等の2006年度から2016年度の推移を見ると、次の様に為る。 (財務省年次別法人企業統計)

  投資有価証券(株式や債券等) 179兆円304兆円 125兆億円増(+69.7%) 
  現預金(預金等のキャッシュ) 147兆円211兆円 64兆円増(+43.4%)
  有形固定資産(設備投資) 464兆円455兆円 9兆円(2.0%)

 ちなみに、同じ10年間で内部留保の殆どを占めて居る「利益剰余金」は252兆円から406兆円と153兆円増えて居る。プラス61.0%の伸びだ。この10年間の企業の「負債及び純資産合計」は1,390兆円から1,647兆円と、257兆円増えて 、伸び率+18.5%から考えても内部留保の伸びは顕著だ。
 要するに、企業は内部留保の格好で資産を貯めて居たのだが、その蓄えた資金を設備投資に回したりせずに、主として国内外の株式や債券に投資して居ると考えて好い。又、現預金も総額で211兆円も貯め込んで居る

 只、言い換えれば内部留保とは云っても比較的自由に使える資金は、現預金の211兆円しか無いとも言える。今回の新型コロナウイルスによる経営危機で、従業員への支払いや固定費の支払い等で多額の資金が必要に為る訳だが、それで賄えるかどうかだ。

 コロナで生き残れる企業と生き残れ無い企業? 

 そこで、注目されるのが新型コロナウイルスによる経営危機で、日本企業は生き残れるかどうかだ。今回のパンデミックは、世界中の企業が破綻の危機を迎える可能性が有ることを示して居る。企業が破綻する最も多い状況は、手持ちの資金が枯渇して破綻するケース。リーマンショック時のリーマンブラザーズの様に、潤沢な資産を持ちながら、目の前の決済に必要なが確保出来ずに経営破綻するケースだ。
 そこで注目されるのが「ネットキャッシュ」と云う概念だ。手持ち資金が豊富な企業の財務体質は健全であり、パンデミックの様な状況でも強いと考えられる。ネットキャッシュと云うのは「現預金と短期保有の有価証券の合計額から、有利子負債と前受け金を差し引いた」金額のこと。

 例えば、東洋経済オンライン編集部は、年に2回、ネットキャッシュに関わるランキングを公開して居る。そのベスト10を見ると、次の様に為って居る。

 <手元流動性(ネットキャッシュ)が潤沢な企業ベスト10>

 ・1位 ソニー  1兆4,351億円
 ・2位 任天堂 1兆0829億円
 ・3位 信越化学工業 1兆0274億円
 ・4位 東芝  9,008億円
 ・5位 キーエンス 8,632億円
 ・6位 SUBARU 8,512億円
 ・7位 ファナック  6,221億円
 ・8位 京セラ 6,042億円
 ・9位 ファーストリテイリング 5,865億円
 ・10位 SMC 5,443億円
 
 (出所 東洋経済オンライン「最新版! これが『金持ち企業トップ500社』だ」2019年12月4日配信)

 例えば、1位ソニーの1兆4351億円のネットキャッシュの内訳は、現預金1兆4700億円・短期保有有価証券1兆3245億円・・・但し有利子負債1兆3594億円はマイナス材料に為る。健全性の高い企業と言われる有利子負債0円と云う企業も、任天堂やキーエンス・ファナック等がランクインされて居る。
 但し、これ等のランキングは飽く迄も平時の企業財務の健全性を測る目安と言って好いのかも知れない。問題は「短期保有有価証券」の額だ。短期保有有価証券と云うのは、例えば債券の場合、決算日から満期迄の期間が1年以内で有れば「短期保有有価証券」と為り、1年超で有れば「投資有価証券」と為る。

 短期保有有価証券を換金する動きも有り得る

 詳細は省くが、ドチラも内部留保なのだが、問題はパンデミックの様な状況下で、市場で売買されている債券や株式を内部留保に組み入れて居る企業だ。子会社化した企業の株式と云う形で保有して居るケースも有るが、市場価格の有る有価証券で有れば、価格変動のリスクを受ける事に為る。

 現預金で1兆4,700億円も有るソニーの様なケースでは、余り問題無いかも知れないが、現預金が余り多く無く短期保有有価証券を沢山持って居る様な企業の場合、そして有利子負債も多い企業の場合、銀行等の緊急融資では間に合わずに短期保有有価証券を市場で換金しようと考える筈だ。今後、緊急事態宣言が長引いた場合には多数出て来る事が予想される。

 そう為れば、債券市場や株式市場は再び「売り圧力」に晒される事に為る。銀行に潤沢な資金が日銀から提供されては居るものの、想定外に集中した場合、銀行からの融資がショートする様な事態は、経済的なショック時には好く有る事と言って好い。企業も取り敢えず有利子負債を増やすよりも、手持ちの短期保有有価証券を市場で処分しようと考える筈だ。
 実際に、パンデミックに依る緊急事態宣言が出る前から、企業や家計で現金を確保して置く動きが有ると言われる。株式や債券を売却して、現金化して置く事で何時でも使えるマネーを手元に置いて置きたい、と云う動きだ。

 今後、このママの状況が続けば、企業は一斉に内部留保を現金化して、賃金等の支払いに回す事が予想される。債券市場や株式市場でも大きく売られる事に為る。株式市場も、日本銀行がETFを買って市場の価格を支え続けて居るが、今後は支え切れ無い状況に為る事が予想される。市場は、再び2番底を試す局面に陥る可能性が高いと云う事だ。
 債券市場も、売り圧力が高まると金利が徐々に上昇する事に為る。パンデミックの下では、人命に関わる事なので財政出動に躊躇して居る余裕は無いが、経済危機は何かのイベントが起きた後に遣って来る。

 短期保有有価証券が多い企業は油断大敵かも

 どんなに手元流動性が豊かでも、例えば現預金が少なく短期保有有価証券や有利子負債が多い様な企業は、盤石な財務状況とは言い難い。又、有利子負債ゼロの優良企業でも、現預金が少なく短期保有有価証券が多い様な企業は、パンデミックの様な状況では不透明だ。速やかに現預金を増やす動きに出る筈だ。
 更に、企業の中には極端にネットキャッシュが少ない企業もある。同じく本サイトで発表されている「手元資金に対し借り入れが多い会社」のランキングを見ると、その実態が好く判る。列記して置くと・・・

 <手元資金に対し借り入れが多い会社(10社)>

 ・1位 ソフトバンク  −11兆8265億円
 ・2位 武田薬品工業  −5兆0488億円
 ・3位 東京電力ホールディングス −4兆8901億円
 ・4位 東海旅客鉄道 −4兆2062億円
 ・5位 三井物産 −3兆8708億円
 ・6位 三菱商事 −3兆7592億円
 ・7位 関西電力 −3兆6728億円
 ・8位 日本電信電話 −3兆3165億円
 ・9位 住友不動産 −3兆1705億円
 ・10位 東日本旅客鉄道 −3兆0107億円

 (出所 東洋経済オンライン「最新版『借金が多い企業』ランキングTOP500社」2019年12月5日配信)
 
 自動車ローンを扱っている自動車メーカーそして金融系企業を除いたランキングだが、どの企業も有利子負債が莫大な額に為って居る企業ばかりと言って好い。有利子負債が多い事自体はそれ程大きな問題では無いのだが、矢張り現預金の少ない企業は、現在の様な緊急事態ではヤヤ不安が残る。
 好く言われる事だが、企業倒産には「黒字倒産」と云う言葉が有る様に、資金がショートしてしまえば倒産する事に為る。ソフトバンクの様に、15兆6000億円もの有利子負債が有るにも関わらず、3兆8,000億円の現預金しか無い状況は楽観出来無いのかも知れない。しかも、ソフトバンクは世界中のIT関連企業に投資して居る為、今後の資金調達方法には注目して置く必要が有るかも知れない。

 又、心配なのはパンデミックで世界の貿易がストップして居る状況では、三井物産や三菱商事と云った総合商社、そして観光収入が大きい東日本旅客鉄道等も大きな影響を受け易い事だ。最も、こうした社会インフラの要素が強い企業は政府が支援するだろうが、問題はリーマン級の「大き過ぎて潰せ無い企業」が、今回は同時に複数出て来る可能性が有る事だ。
 政府が躊躇せずに救済出来るかが大きな課題だが、安倍総理も黒田日銀総裁も日常的に「躊躇せずに行動する」と言って置きながら、イザと為ると躊躇し捲くって居る事が気に為る処だ。

 「現預金を除く内部留保」が多い企業は要注意?

 本来、日本企業の内部留保が多いのは国際的に見るとヤヤ異常だった。欧米系の投資ファンド等「モノ言う株主」は、再三に渉って内部留保は株主に還元すべきだと主張して居た。配当若しくは自社株買いに依って株主に還元する事で、利益を株主に還元するのが資本主義社会の考え方だ。
 その点、日本企業の多くは従業員の低過ぎる賃金に充てるでも無く、株主への配当も怠って来た。では何をして来たかと言えば、海外の株式や債券に投資して来た。実際に、406兆円も有る利益剰余金は、現預金の211兆円を除いた資金は別の形に変えて居る。これ迄紹介して来た様に残りの200兆円弱の資金が「投資有価証券」や「設備投資」「不動産」に為って居る訳だ。

 言い換えれば、今後は「現預金を除く内部留保」が多い企業と云うのは、世界的な景気後退局面の中で、損失を出して来るケースが増える筈だ。取り分け、短期保有有価証券等は既に大きく額面割れして居る筈であり、今後相場が急速に回復する事も望め無い。企業に依っては、意外と財務体質が弱い事が明らかに為るケースも増えて来る筈だ。

 このパンデミックが何時終息するか判ら無い現状では、今後は様々なリスクに備える必要がある。歴史的に見ると、例えばペストが流行した14世紀のヨーロッパでは、それ迄最も人々に信頼され権力も握って居た教会が「信者を守れ無かった」と云う理由で急速にその権威を失ったと言われる。
 現在、圧倒的多数で権力を握って居る自民党も、コロナショック後には消えて居るかも知れない。それだけの覚悟を持って企業も生き残りを図る必要が有ると云う事だ。


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 岩崎 博充  経済ジャーナリスト 雑誌編集者等を経て1982年に独立し 経済・金融等のジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立 雑誌・新聞・単行本等で執筆活動を行う他、テレビ・ラジオ等のコメンテーターとしても活動して居る

                   以上









 【管理人のひとこと】

 日本を代表する大手企業の財務内容の概略を教えて貰った。何と財務内容の優秀な企業のトップのワンツーがソニーと任天堂と云うゲーム関連の企業である。トヨタや金融企業を除いたランキングではあるが、コテコテの製造業では既に利益を上げられる時代では無かった訳で、情報・通信関連企業が世界中から利益を吸い上げて居るのが理解出来た。
 その中で日本の大手企業は、自社での利益を設備投資にも株主にも従業員も配らず、只管、全てを内部留保として蓄え、その殆どを他国や自国の利益を上げる企業へ投資し、そこからの利潤で潤って居た訳だ。国内の従業員にも内外の株主にも一切の恩恵も無く、人・従業員への投資も無い設備投資も遅れに遅れ益々競争力を減退させ、他者の利益を「棚ぼた」の様に待つだけの企業・・・何と無く、タコが自分の脚を食う様な・・・将来を見通せない状況だった訳だ。
 政府は政府で、遠い将来を見通した全ての社会的インフラ整備(教育・福祉・人材育成等も含めた)を怠り、全てを後回しにし続ける・・・安倍氏のお友達や仲間・応援団にのみ利益を終息させる・・・ソンな日本の大手企業が、如何にして世界的大不況の時代を乗り切れるのか・・・そして現在の心許無い安倍政権でこの難局を乗り切れるのか・・・ウットオシイ世の中である。
















 









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