
日米安保条約を無くしたらどう云う展望が開かれるか 全国革新懇総会 志位委員長の記念講演 2012年5月12日
日本共産党の志位和夫委員長

〜日本共産党の志位和夫委員長が、2012年5月12日に開かれた全国革新懇の年次総会で行った記念講演を紹介します〜 志位和夫委員長 全国からお集まりの仲間の皆さん今日は。
今年は、日米安保条約発効60年の節目の年です。私達の革新懇運動は、1980年の「社公合意」で、当時の社会党が、安保条約肯定・日本共産党排除の右転落をした事を契機に、革新の大義に建つ政党・団体・個人の統一戦線運動として誕生しました。
ですから、安保廃棄と云う課題は、革新懇運動に取って文字通りの原点とも云うべき大問題だと思います。そこで今日は「日米安保条約を無くしたらどう云う展望が開かれるか」と云うテーマでお話をさせて頂きたいと思います。
安保60年・・・「こんなアメリカ言い成りの国で好いのか」の声が噴き出す 先ず強調したいのは、発効から60年を経て、この異常な対米従属の体制が、どの分野でも行き詰まりをイヨイヨ深刻なものとし「こんなアメリカ言い成りの国で好いのか」と云う声が、保守の人々も含めて、広範な国民から噴き出して居ると云う事です。私は、そのことを四つ程話したいと思います。
沖縄米軍基地問題の矛盾は限界点を超えた 一つは、沖縄米軍基地問題の矛盾が限界点を超えたと云う事です。今、日米両国政府は、沖縄県民の総意に逆らって、普天間基地の「辺野古移設」に固執して居ます。その一方で、普天間基地を改修し、垂直離着陸機オスプレイを配備する等、固定化の動きも起こって居ます。「県内移設が嫌なら固定化だ」と云う脅しであります。米軍基地と県民との矛盾は既に限界点を超えました。
その下で、沖縄県民の中で、日米安保条約こそ沖縄の苦難の根源だと云う認識が広がって居る事は重要だと思います。最近、琉球新報と毎日新聞が行った共同世論調査(5月5、6両日に実施)によりますと「日米安保条約に付いてどう思うか」との問いに大して、沖縄県民では「維持すべきだ」と答えたのは僅か
15・8%に留まりました。「平和友好条約に改めるべきだ」が
55・4%「破棄すべきだ」が
15・5%で、“軍事同盟を無くす”と云う立場が
合計70・9%と圧倒的多数と為りました。沖縄県民の怒りの矛先は、日米安保条約に向けられつつあるのです。

安保条約と日本国憲法が、イヨイヨ両立し得無く為った 二つは、安保条約と日本国憲法がイヨイヨ両立し得無く為ったと云う事です。この間、日米軍事同盟の体制は、日米安保条約の枠組みさえ超えた、地球的規模の「日米同盟」への侵略的変質を強め、危険な事態が進展しています。
5月1日の日米首脳会談で交わされた「日米共同声明」では、日米の「動的防衛協力」為るものを初めて唄いました。これは、米軍と自衛隊が、地球的規模で、海外に打って出て、共同の軍事行動を行うと云うものです。取り分け、グアムとテニアンに、日米が共同使用する「訓練場」を建設し共同訓練を行い「多様な緊急事態に日米同盟が対応する能力を更に高める」と「共同声明」で明記して居る事は極めて重大であります。
それは「集団的自衛権」の行使に向けた重大な一歩を踏み出すものであり、日米安保条約は、憲法9条とイヨイヨ両立し得無く為っています。21世紀の日本の羅針盤として、憲法9条を選ぶか安保を選ぶかが、鋭く問われて居るのであります。
日本の経済主権を根底から損なう危機に直面して居る 三つ目は、日本の経済主権を根底から損なう危機に直面して居る事です。TPP(環太平洋連携協定)参加は、たんなる自由貿易協定ではありません。日本の主権を根底から損なう危険を持つものです。
この間の「事前交渉」を通じても「関税ゼロ」にはコメを含めて例外が無い事が全ての交渉国から念押しされました。「非関税障壁の撤廃」の名で、日本の経済と社会のあり方が、アメリカに都合の好い様に「大改造」される危険が、食品安全、公共事業、保険、医療等で具体的に突き着けられて居ます。しかも交渉内容を秘匿する合意を持つ秘密交渉であります。
農協、医師会、建設業界等従来の保守の人々を含む幅広い反対の共同が広がり、その中から「日本は主権を失うかどうかの瀬戸際だ」「こんなアメリカの横暴を許して好いのか」と云う声が、広く沸き起こって居る事は重要であります。

国際政治に於ける日本外交の地位が著しく低下し、存在感が無く為っている そして、四つ目は、国際政治に於ける日本外交の地位が著しく低下し、存在感が無く為って居ると云う問題です。
私は、2010年にニューヨークの国連本部で行われたNPT(核不拡散条約)再検討会議に参加して、被爆国の政府にも関わらず、日本政府の存在感が全く無い事に驚きました。「何処に居るのだか判らない」と云う声を、日本から参加された被爆者の方からも聞きました。
日本政府は、核兵器禁止条約の国際交渉を求める国連決議に、16年連続で棄権と云う態度を執り、核兵器廃絶と云う国民的悲願に背を向け、全く無力で情け無い姿を曝け出して居ます。
又、例えば北朝鮮問題についても「6カ国協議」に参加する他の全ての国が、北朝鮮との外交交渉のルートを持ち、夫々の独自の外交戦略を持って臨んで居るのに対して、日本だけは外交ルートも戦略もありません。
世界でどんな大問題が起こっても、誰からも相談もされず、頼りにもされ無い。そう云う国に為ってしまって居る。この外交的無力は、外交面での対米従属を続けて来た結果に他為りません。この現実に対しても、多くの国民が、閉塞(へいそく)感を強めて今す。

国民世論の新しい変化・・・NHKの世論調査から 興味深い世論調査を紹介したいと思います。「日米安保の今」と題して発表された、NHKが2010年11月に行った世論調査です。
その調査結果を見ますと「日米安保は役立っているか」と云う問いに対しては、「役立っている」が31%「どちらかと言えば役立っている」が40%で、併せると
72%と多数に為っています。
処が「これからの安全保障体制」をどうするかと云う問いいに対しては「日米同盟を基軸に、日本の安全を守る」と答えたのは僅か
19%です。それに対して「アジアの多くの国々との関係を軸に、国際的な安全保障体制を築いて行く」が
55%「一切の防衛力を持た無いで、中立を保ち外交によって安全を築いて行く」が
12%と、アジア諸国との外交によって安全保障を図るべきだと云う立場が、
合計で67%と為って居ます。
更に「中国の動きへの対応」をどうするかと云う問いに対しては「アメリカの軍事的抑止力によって、対処して行く」と答えたのは僅か
12%です。それに対して「アジアにおいて他の国々と共に、対処して行く」が
57%、「日中二国間の関係を深めることで、対処して行く」が
23%と、中国とも外交による対応で友好関係を築いて行こうと云う立場が、
合計で80%に達して居ます。
他の党は、民主党も、自民党も、皆の党も「大阪維新の会」も、皆当たり前の様に「日米同盟が基軸」「軍事的抑止力が重要」と言います。しかし、国民世論は、なお多数が安保条約を肯定しつつも、単純な「日米同盟基軸」論「軍事的抑止力」論を乗り越えつつあるのであります。
これは、日本と東アジア諸国との人的交流、経済関係の目覚ましい発展を反映した、注目すべき変化だと思います。

日米安保条約の是非を根本から問う国民的議論を呼び掛ける 皆さん。直面する熱い問題で、一致点に基づく共同を夫々発展させながら、根源にある日米安保条約の是非を国民的に問うべき時期が来て居るのではないでしょうか。私は、日米安保条約発効60年にあたって「日米安保をこのまま続けて好いのか」を問う国民的議論を起こす事を心から呼び掛けるものであります。
安保条約を無くしたらどう云う展望が開けるか それでは、日米安保条約を無くしたらどう云う展望が開かれるか。私は、少なくとも三つのことが言えると思います。
第一 米軍基地の重圧から日本国民が解放される 第一に、米軍基地の重圧から日本国民が一挙に解放されると云う事です。条約第10条の権利を行使し、通告で安保条約を無くす。安保条約の下では、普天間基地一つを動かすにも日米合意が必要と為ります。しかし、安保条約を無くすのには、条約第10条の権利を行使して、一方が通告すれば可能と為ります。
日本国民の意思がまとまり、通告の措置を執れば、1年後には安保条約は解消し在日米軍も全て撤退することに為ります。撤退の費用もアメリカに持って貰います。
絶え間ない事件・事故・犯罪を引き起こし、日米地位協定による治外法権的な特権を持ち、数々の密約による“闇の特権”を持った、他に類の無い米軍基地の異常な重圧から、日本国民が一挙に解放される事に為ります。
私は、2009年に、沖縄県嘉手納町に伺った際、当時の宮城篤実町長から、こう云う訴えを聞きました
。「好く『普天間基地が世界一危険』と言いますが『嘉手納基地も世界一危険』なのです。日米安保条約の是非に関する新たな議論を国会の中で巻き起こして欲しい」こう云う要請でありますが、私は、庁舎の横に広がる、4000メートル級滑走路を2本持つ、極東最大の空軍基地を見て、確かにこの基地を動かそうと思ったら、日米安保を無くすのが早道ではないかと云う事を実感致しました。
それから、今年の5月3日の憲法記念日に行われた集会で、伊波洋一元宜野湾市長が
「日米安保を乗り越える時期に来て居る」「日米安保を見直すスタートの年にしよう」と訴えた事を、私は、大変印象深く聞きました。
普天間基地、嘉手納基地と云う危険極まり無い米軍基地の重圧に苦しめられて来た自治体の首長を務めて来られたお二人が、今こそ安保の是非を考えなければいけ無いと提起して居る事は重いものがあると思います。
速やかな基地撤去を求めながら、日米安保を無くせば全ての基地を無くす事が出来ると云う展望を、大いに示して行こうではありませんか。

アメリカの引き起こす戦争の根拠地から抜け出す 日本から米軍基地を無くせば、日本は、アメリカの引き起こす戦争の根拠地から抜け出す事が出来ます。在日米軍基地と云うのは、
海兵隊と空母打撃群等「日本防衛」とは無関係の「殴り込み」部隊によって構成され、ベトナム戦争、アフガニスタン・イラク戦争等、常に侵略と干渉の戦争の根拠地とされて来ました。「日米同盟」の名で、憲法を踏み破り米軍と自衛隊が海外で共同の軍事行動を行う動きも、エスカレートして来ました。
在日米軍基地を無くすことは、それ自体が、世界とアジアの平和に取って巨大な前進と為ると云う事を、私は、強調したいと思います。
在日米軍の為に充てている血税と土地を、国民の為に使う 更に、日本から米軍基地を無くせば、在日米軍の為に充てて居た血税と土地を、国民の暮らしの為に使う事が出来ます。在日米軍に対する駐留経費負担は、総額で言いますと、年間約7000億円に達しますが、その一切が不要に為ります。基地として使用されている
総評価額14兆円とも言われる土地の全てが返還されます。
新たな産業と雇用が生まれます。沖縄の全ての米軍基地が返還されれば、現時点の沖縄の経済力の下でも、誘発される生産額は2・2倍、所得額は2・1倍、雇用者数は2・7倍と為ります。(県議会事務局による)
皆さん「基地の無い沖縄」「基地の無い日本」を、安保条約を無くして実現しようではありませんか。

第二 アメリカの“戦争の根拠地”から、憲法9条を生かした“平和の発信地”に 第二に、安保条約を無くせば、日本が、アメリカの“戦争の根拠地”から、憲法9条を生かした“平和の発信地″に大きく変わります。軍縮への転換のイニシアチブを本格的に発揮する立場に立てる。
先ず強調したいのは、安保条約を無くしてこそ、日本は、東アジア地域で、軍縮への転換のイニシアチブを本格的に発揮する立場に立つ事が出来ると云う事です。4万人から5万人の在日米軍が撤退する事は、文字通りの「大軍縮」と為ります。自衛隊も、米軍を補完する部隊は不要と為り、大幅軍縮が可能と為ります。
今進行して居る東アジア地域の緊張の根源は、米国が、イラク・アフガニスタン戦争の終結を見越して、「西太平洋及び東アジアからインド洋並びに南アジアまで広がる弧」に焦点を当て「アジア太平洋地域に重点を移す」(米国防総省「世界における米国の指導性を維持・・・21世紀の国防優先事項」2012年1月5日)・・・覇権主義の戦略を進め、その為に米軍の再配置、軍事力の効率化、強化を測って居る事にあります。
「米軍再編」の名で、在日米軍基地の強化、日米の軍事一体化、グアム、ハワイ、オーストラリア等への海兵隊の分散配置が計画されて居ます。
一方で、中国が、経済的に成長する下で、軍事力を増大させ2011年度の国防予算は円換算で
7兆円を超え(中国政府の発表による)、米国に次いで世界第2位と為っていると云う問題があります。
日米安保条約を解消し、この地域の軍事的緊張の最大の根源と為っている在日米軍基地を撤去してコソ、日本は、中国や東アジアの国々に対して「共に軍縮の道に転じよう」と、軍拡から軍縮への転換を提起する、憲法9条を生かした平和のイニシアチブを本格的に発揮する立場に立つ事が出来ます。
それは、東アジア地域の平和と安定に取って、歴史的な転換点に為り得るものだと云う事を、私は確信を以て申し上げたいと思います。

日本と東アジアの安全保障・・・軍事に頼ら無い“平和的安全保障”を追求する それでは、安保条約を廃棄した後の日本と東アジアの安全保障をどうするか。国民世論は、その方向を示して居ます。先に紹介したNHK世論調査に示された様に「アジアの多くの国々との関係を軸に、国際的な安全保障体制を築いて行く」・・・この方向で知恵と力を尽くす事が大切だと考えます。
東アジア地域と云うのはどう云う地域でしょうか。社会体制を見ても、発達した資本主義国、発展途上国、社会主義を目指す探求を行って居る国等、様々な国々が存在しています。
文明と云う点から見ても、仏教、イスラム教、キリスト教、ヒンズー教等、異なる文明が存在して居ます。同時に、この地域は全体として大きな経済的発展の中にあり、経済的な交流と相互依存が年を追う毎に緊密に為りつつあります。それだけに、この地域での国と国との戦争は、最早有り得ないし、又絶対に起こしては為ら無いと云う事は明らかだと思います。
私は、この地域の安全保障で何よりも重要なことは、こうした現実に立って、“軍事依存の安全保障”から脱却し、異なる体制、発展段階、文明を、相互に尊重する対話と信頼醸成の努力を図り、紛争の平和的解決に徹する等、道理に立った外交で安全保障を図る、“平和的安全保障”を追求する事にあると考えるものです。

ASEANで作られている重層的な平和と安全保障の仕組み これは理想論でしょうか。決してそうではありません。東南アジアに見習うべき先駆的実例があります。この地域には、過つて米国中心の軍事同盟・・・SEATO(東南アジア条約機構)がありました。東南アジアの一部の国は、アメリカの側に立ってベトナム侵略戦争に参戦しました。
地域に深刻な分断が持ち込まれ、互いに傷つけ合う事に為りました。ベトナム戦争でのアメリカの敗北と撤退の後、軍事同盟によっては平和や安定は守れ無いとの反省からSEATOは解消されました。
軍事同盟が解消される下で、東南アジアの国々はASEAN(東南アジア諸国連合)を発展させる事に力を注ぎました。私達は、野党外交の中で、その教訓をASEANの各国の政府から直接聞く機会がありましたが、今ASEANが平和と安全保障の枠組みとして重視して居るものが四つあるとの説明でありました。
⊡第一は、TAC・・・東南アジア友好協力条約であります。1976年に締結されたTACは、武力行使の放棄と紛争の平和解決等を掲げ、先ずASEAN域内の関係を律する行動規範と為り、1987年以降はこれを国際条約として域外に広げて来ました。既にTACは、ユーラシア大陸のホボ全域とアメリカ大陸にまで及ぶ55カ国・地域に広がり、
世界人口の7割が参加する巨大な流れに成長して居ます。
⊡第二は、東南アジア非核地帯条約であります。「核兵器の無い世界」を作る上で、東南アジアが先駆的役割を発揮しようと云うものです。
⊡第三は、ARF・・・ASEAN地域フォーラムであります。27カ国が参加する機構に発展して居るARFは「対話と信頼醸成」の為の機構と位置づけられ「予防外交」「紛争の平和的解決」の機構に発展させると云う展望をもって活動しています。
注目すべきは、ARFには、韓国と北朝鮮の双方が加入して居ると云う事です。双方で紛争問題が起こった際に、ARFは外交的解決に力を発揮して来ました。
⊡第四は「南シナ海行動宣言」です。ASEANと中国が締結して居るもので、南シナ海の諸島の領有を巡る紛争をエスカレートさせず、平和的方法で解決を目指すものです。この「行動宣言」を、更に法的拘束力のある「行動規範」に発展させ様と、交渉を続けて居るのが現状であります。
これ等の重層的な仕組みの全体を貫いている考え方は、軍事的手段・軍事的抑止力に依存した安全保障と云う考え方から脱却し、地域の全ての国を迎え入れ、対話と信頼醸成、紛争の平和的解決等、平和的なアプローチで安全保障を追求する・・・
“平和的安全保障”と云う新しい考え方であります。


最近、日本共産党の緒方靖夫副委員長(国際委員会責任者)が、ASEANの国の一つ、フィリピンを訪問し、政府・議会の要人と会談しました。フィリピンは、マルコス独裁政権を打倒した1986年の「ピープル・パワー革命」の後の1692年、アジアで最大級の
スービック海軍基地とクラーク空軍基地と云う二つの米軍基地を閉鎖・返還させました。
緒方さんが先方と話しますと、その事によって「抑止力が無く為って心配」と云う声は一つも無かったとの事であります。政治的立場を問わず共通して居たのは「基地撤去で何も問題は起こら無かった」と云う事だったと言います。
中国との関係も経済関係を強化し、領土を巡る紛争問題を抱えて居ますが、紛争が起こっても拡大せずに、外交的に解決する関係を作っています。米軍とフィリピン軍との共同訓練等が行われていますが、外国軍事基地の再設置は「ピープル・パワー革命」以後に制定された憲法の下では、考えられ無いとのことでありました。
北東アジアに平和の地域共同体を広げる 皆さん。こう云う東南アジアで発展している平和の地域共同体を、北東アジアにも広げようと云うのが、私達の提案であります。北東アジアに、平和の地域共同体を築く条件はあるでしょうか。
この地域には、
北朝鮮問題と云う難しい問題があります。北朝鮮の国際合意を無視した行動には、元より厳しい批判が必要です。同時に「この地域で絶対に戦争をやっては為らない」と云うのは、全ての国の共通の強い思いだと思います。
それ為らば、平和的・外交的に解決することが最善かつ唯一の道ではないですか。困難はあっても「6カ国協議」と云う枠組みを活用した外交的解決に力を傾注する必要があります。
「6カ国協議」には、この地域に関連する全ての国々が参加して居ます。2005年9月の「共同声明」では、朝鮮半島の非核化と共に、この枠組みを北東アジアの平和と安定の枠組みに発展させて行くと云う展望も明記されました。この「共同声明」に立ち返り、非核の朝鮮半島を作り、核・拉致・ミサイル・過去の清算等の諸懸案の包括的解決を図り、この枠組みを、北東アジアの平和の地域共同の枠組みに発展させる外交努力を尽くすことこそ、何よりも大切ではないでしょうか。
加えて強調したいのは「6カ国協議」に参加する全ての国が、TACとARFの参加国とも為って居ると云う事です。これ等の機構を、北東アジアの平和と安定の為にも、積極的に活用して行く外交努力も重要だと考えます。
憲法9条を生かした平和外交、軍事に頼ら無い“平和的安全保障”と云う考え方に建って、日本と東アジアの安全保障を図ろうと云うのが、私達の提案であります。

憲法9条を生かした平和外交によって、世界平和に貢献する 安保条約から抜け出した日本は、憲法9条を生かした平和外交の力によって、世界平和に貢献する新しい日本へと生まれ変わります。国連憲章に規定された平和の国際秩序を作る「核兵器の無い世界」を作る、異なる文明間の対話と共存の関係の確立を図る・・・これ等は世界の大多数の国々が追求して居る世界平和の大目標ですが、安保条約の下での日本は、米国の覇権主義の戦略に拘束され、それ等の課題に真面に取り組む処か、逆行する役割さえ果たして来ました。
安保条約の廃棄は、この状況を一変させるでしょう。日本が、憲法9条を生かして世界平和に貢献する、素晴らしい役割を発揮出来る様に為る事は間違いありません。
核兵器廃絶の取り組みでも、安保条約を無くし、米国の「核の傘」から抜け出し、名実共に「非核の日本」と為ってこそ、被爆国の政府に相応しい「核兵器の無い世界」へのイニシアチブが発揮出来る事に為るでしょう。ヒロシマ・ナガサキの惨禍を体験した日本が、そうしたイニシアチブを発揮すれば、この人類的課題の実現に向けて、どんなに大きな貢献と為るかは、図り知れません。
第三 日本の経済主権を確立する確かな保障が作られる 第三の変化は、安保条約を無くせば、日本の経済主権を確立する確かな保障が作られると云う事です。経済の面でも、アメリカ言い成りで、どれだけ日本経済が歪められて来たか。農業では、小麦から始まって、牛肉・オレンジ、そしてコメ迄も輸入自由化の対象とされ、日本の食料自給率は
約4割と、世界の主要国で他に類を見ない異常な水準に落ち込んでいます。
エネルギーでも、日本が「原発列島」にされた根源には、アメリカによる濃縮ウランと原子炉の押し付けがありました。
金融自由化と超低金利政策の押し付けによって、日本国民から莫大(ばくだい)な富が吸い上げられて来ました。労働でも、規制緩和の押し付けで派遣労働が自由化される等「人間らしい労働」が破壊されて居ます。
「日米構造協議」「年次改革要望書」等、経済的従属の異常な「制度化」も進みました。TPP参加は、これ等の流れの総仕上げであり、日本の経済主権を根こそぎ奪うものに他為りません。
これ等の根底には、日米安保条約第2条の「締約国は、その国際経済政策における食い違いを除く事に努める」と云う規定付けがあります。「食い違いを除け」と条文に唄われている。この下で、アメリカ型のルールの日本への押し付けが、横暴勝手に進められて来たのであります。
安保条約を無くせば、日本経済をあらゆる面で歪め、国民を苦しめて来た経済の面での“アメリカ言い成り”を根本から断ち切る事が出来ます。日本経済は、従属の枷(かせ)から解放されて、自主的発展の道を進むことが出来るでしょう。
そうしますと、例えば地球環境の問題、投機マネーの規制の問題等、世界が直面する経済問題でも、日本が自主的イニシアチブを発揮し、民主的な国際経済秩序を作る為の貢献を果たす事が出来る様に為ると、私は考えるものであります。

日米友好条約の締結、非同盟諸国首脳会議への参加 皆さん。日米安保条約を無くせば、これだけの素晴らしい展望が開けて来ます。アメリカとの関係も、私達が望むのは決して対立や敵対ではありません。
日米安保条約に代えて日米友好条約を結ぶと云うのが私達の提案であります。
支配・従属の下では真の友好は決して作れ無い、対等・平等の関係に為ってこそ日米両国、両国民の真の友好を築く事が出来ると云うのが私達の確信であります。
非同盟諸国首脳会議は、既に138カ国、54億人が参加(オブザーバーを含む)し、非軍事同盟・中立、国連憲章に基づく平和の国際秩序、核兵器の廃絶、公正で民主的な国際経済秩序を目指す巨大な潮流として発展しています。
安保条約を無くした日本は、この世界史の本流と合流しようではないか、と云うのが私達の提案です。それは、世界の進歩への巨大な貢献と為る事は疑い無い、ここにコソ21世紀の日本が進むべき道はあると訴えたいのであります。
東アジアに平和的環境を作る緊急の外交努力を 最後にのべて置きたいのは、日米安保条約の廃棄を目指す取り組みと共に、東アジアに平和的環境を作る緊急の外交努力を、一貫して追求する事が重要だと云う事であります。4点程述べて置きたいと思います。
軍事的対応の拡大と悪循環を厳しく退ける 一つは「軍事には軍事」と云う軍事的緊張の拡大と悪循環は、いかなる形であれ厳しく退けると云う事です。北朝鮮が、国際法や国際合意に違反する行動を執った場合に、日本の対応として、外交的解決の努力よりも軍事対応が突出する傾向がシバシバみられますが、こうした態度は厳しく戒める事が必要であります。
この問題は、今後も複雑な局面が予想されますが、どんな場合でも、国際社会が一致して外交的解決に徹すると云う態度を堅持する事が、北朝鮮に違法行為を辞めさせ、国際社会の責任ある一員として行く上で、何よりも重要であると云う事を、強調して置きたいと思います。
米中・日中関係・・・軍事力で対抗する思考から抜け出し、軍拡から軍縮に 二つ目に、日中両国が「戦略的互恵関係」を確立し、米中両国も「戦略・経済対話」の仕組みを制度化し、夫々が経済関係、人的交流をイヨイヨ深化させる下で、これ等の国と国との戦争は決して起こしては為ら無いし、最早起こせ無い事は誰の目にも明らかに為っています。
その現実に立って、双方が、軍事力で対抗すると云う思考から脱却し、軍拡から軍縮に転じる事を、我が党は強く求めるものであります。
領土を巡る紛争問題・・・歴史的事実と国際法に基づく外交的解決に徹する 三つ目に、この地域に存在する領土を巡る紛争問題の解決に当たっては、歴史的事実と国際法に基づく冷静な外交的解決に徹することが何よりも重要であります。日本政府にこの点での弱点がある事が、紛争解決の障害と為って居る事を、私達は率直に指摘し、道理に立った領土問題解決の提案を行って来ました。
同時に、領土問題に関わって、紛争当事国の一部から一方的措置や武力行使容認論等が主張されて居る事は、相互不信を増幅するものと為っており、私は、是正する努力を求めたいと思います。
歴史問題の解決は、東アジアに平和的環境を作る土台 四つ目に、日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は、東アジアに平和的環境を作る土台に為ると云う事です。我が党は「従軍慰安婦」問題等、未解決の問題を速やかに解決すると共に、歴史を偽造する逆流の台頭を許さ無い事を、日本政府に強く求めます。
過去を変える事は出来ませんが、過去を直視しそこから反省と教訓を引き出し、未来に生かす事が出来ます。そう云う姿勢を貫いてこそ、日本は、東アジア諸国との本当の友情を作る事が出来ると云うのが、私達の確信であります。

日米安保条約を無くす国民的多数派を作ろう 皆さん。日米安保条約を無くす為には、それを求める国民的多数派を作る事が必要であります。その為には平和を願う国民要求から出発して、日米軍事同盟の他に類の無い異常を一つひとつ正す戦いを発展させると共に「安保を無くしたらどう云う展望が開かれるか」を、広く国民のものにして行く取り組みが大切であります。
沖縄を初めとする米軍基地撤去、治外法権的な日米地位協定の改定、「米軍再編」の名での地球的規模での日米軍事共同を辞めさせる、米軍への「思いやり予算」を廃止する、国民を欺く「核密約」等秘密取り決めを撤廃する、TPP参加を阻止する等、国民の切実な要求に基づく戦いを、夫々の一致点を大切にしながら、大きく発展させようではありませんか。
その中で「安保を無くしたらどう云う展望が開かれるか」を、広い国民のものにして行く努力を一貫して強めようではありませんか。日米安保条約廃棄を求める国民的多数派を作る事は、
民主連合政府を樹立する大きな条件を開く事にも為ります。
皆さん。力をあわせて、本当の独立国と言える、平和・中立の新しい日本を作りましょう。その事を、最後に訴えて、私の話とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。
以上

【管理人のひとこと】 この講演は2012年5月と云うから、今から7年も以前の事です。その7年後にアメリカの大統領が自ら「日米安保の破棄」を非公式にでも口に出す時代へと変貌したのです。アメリカの相対的地位の下落、中国の急伸・・・と国際環境は色々変化したのです。
アメリカは既に同盟国の防衛問題には関心が無く、イラクの核問題の様な直接自らに降り掛かる問題にだけ絞って対処する様に、自国の国民に向けたパフォーマンスである大統領選挙に向けた人気取りに徹した言動を続ける大義の無いトランプ氏に翻弄されて居ると言っても過言で無いでしょう。
我が国では、今回のトランプ氏の言葉に右往左往して居る様ですが、既に志位氏はその事を予言する様に、安保無き後の日本の姿を「待ってました!」とばかりに誇らしく語って居ました。我が国では事在る毎に「米追従」を批判されて来たのですが、現実の政治では憲法を曲解し「集団安全保障」が可能な法律まで作らされてしまった。完全にアメリカの属国と為ってしまった様です。政治も経済もアメリカに従い、この20年間の間に日本は、先進国最低の極貧国へと為り果てたのです。
これは、単に安倍晋三が悪いのでも自民党が悪いのでも無く、呑気に現状を肯定し政治に対して真摯に向き合って来無かった私達国民が一番に責を負うべきであり、私達が生み出した現状の悲惨な国の有様なのです。何とかするのは、政治では無く私達国民の責任なのです・・・ ワールドビジネスサテライトや産経新聞、雑誌プレジデントでも紹介
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