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2020年03月30日

新型コロナウイルス危機は人類史に何をもたらす? 2人の知の巨人の言葉を考察




 




 新型コロナウイルス危機は 人類史に何をもたらす? 

 2人の知の巨人の言葉を考察


              〜リアルサウンド 3/30(月) 19:12配信〜


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   『文庫 銃・病原菌・鉄(上)』と『21 Lessons 21 世紀の人類のための21 の思考』

 新型コロナウイルスが依然として猛威を振るい、日本も含めた世界各国で社会不安が広がっている現在、世界の「知識人」達の発言に大きな関心が集まって居る。その中でも、取り分け注目を集めて居るのが、日本でも多くの読者を持つ2人の「知の巨人」の言葉だ。
 そのタイトルのインパクトも関係して居るのか、今再び書店で手に取る人が増えて居ると云う大著『銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎』(草思社)で知られるジャレド・ダイアモンドと、人類の歴史をマクロ的な視点で読み解いた『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(河出書房新社)が世界的なベストセラーとなったユヴァル・ノア・ハラリだ。

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                ジャレド・ダイアモンド氏

 現在の世界に広がる富とパワーの「地域格差」を生み出したものとは何なのか。1万3000年に渉る人類史のダイナミズムに隠された壮大な謎を、進化生物学・生物地理学・文化人類学・言語学等広範な最新知見を駆使して解き明かした『銃・病原菌・鉄』でピューリッツァ賞を受賞。
 その後も『文面崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』(草思社)『昨日までの世界 文明の源流と人類の未来』(日本経済新聞出版社)そして昨年10月に、ペリー来航で開国を迫られた日本等、危機を突破した7つの国の事例から、これからの人類の有り方を解く『危機と人類』(日本経済新聞社)を出版したジャレド・ダイアモンドは、『日経ビジネス』2020年3月30日号に掲載された記事の中で「今こそ、次のウイルスの事を考えよう」と主張する。

 新型コロナウイルスの問題が依然として収束しない中、何故今、次の新型ウイルスに付いて考えなくては為ら無いのか。その理由に付いてダイアモンドは「2003年に重症急性呼吸器症候群・SARSが流行した時、我々は次なる感染症の大流行に付いて考える事を怠った」としながら「その結果、避けられた筈の今回の感染拡大を許してしまった」と自説を展開。
 詰り、今回の新型コロナウイルス・COVID-19は、SARS同様、中国を起点とする感染症で有り、それとホボ同じ経路で広がった事は元より、人間以外の哺乳類を感染源とする事も共通して居るにも関わらず、その最初の感染場所で有ると目される中国の野生動物市場が、依然として完全閉鎖されて居ない事をダイアモンドは問題視するのだ。

 中国は、今回の新型コロナの流行を受けて、野生動物市場の閉鎖に踏み切ったが、それは飽く迄も食用目的の取引であり、伝統医療目的の売買は、未だ為されているのでは無いか。これを完全に閉鎖しない限り「世界に広がる新興感染症はSARSやCOVID-19が最後と為ら無い事を、確信を以て予言する。中国だけで無く世界の全ての国・地域に於いて、野生動物が食用やその他の目的で幅広く利用され続ける限り、新たな感染症が発生する事は間違い無いだろう」とダイアモンドは警鐘を鳴らして居るのだ。

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                 ユヴァル・ノア・ハラリ氏

 一方『サピエンス全史』で人類の「過去」を『ホモ・デウス』で人類の「未来」を描いた後、昨年11月に出版された『21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考』(河出書房新社)では、人類の「現在」に付いて考察したユヴァル・ノア・ハラリは、3月15日付のアメリカ「TIME」誌に「人類はコロナウイルスと如何に闘うべきか――今こそグローバルな信頼と団結を」と題する文章を寄稿。その全訳が3月24日、Web河出に掲載され多くの注目を集めて居る。

 そこでハラリは、より実際的な提言を披露する。先ず、今回の新型コロナウイルスの大流行をグローバル化の所為にするのは間違いであり「長期の孤立主義政権は経済の崩壊に繋がるだけで、真の感染症対策には為ら無い」「感染症の大流行への本当の対抗手段は、分離では無く協力なのだ」と述べるのだ。
 その裏付けとしてハラリは、黒死病(ペスト)や天然痘等過去の例を挙げながら、グローバルな交通ネットワークが無い時代に於いても感染症が広がって行った事を指摘。「21世紀に感染症で亡く為る人の割合は、石器時代以降のどの時期と比べても小さい」としながら、病原体に対して人間が持つ最善の防衛手段は「隔離では無く情報」で有る事を断言する。

 更に、それ等の感染症の歴史が示すものとしてハラリは「国境の恒久的な閉鎖に依って自分を守るのは不可能であること」「真の安全確保は、信頼の於ける化学的情報の共有と、グローバルな団結に依って達成される」事を挙げ「今日、人類が深刻な危機に直面して居るのは、新型コロナウイルスの所為ばかりでは無く、人間同士の信頼の欠如の所為でもある」事を指摘。
 「信頼とグローバルな団結抜きでは、新型コロナウイルスの大流行は止められ無い」としながら「アラユル危機は好機でもある」「目下の大流行が、グローバルな不和に依ってもたらせれた深刻な危機に人類が気付く助けに為る事を願いたい」と綴って居るのだった。

 更にもう一つ、ハラリは3月20日付のイギリス「FINANCIAL TIMES」誌に「the world after coronavirus・コロナウイルス後の世界」と題する文章を寄稿。その全訳が3月28日、「クーリエ・ジャポン」に掲載された。
 「現在、人類は世界的な危機に直面して居る」と云う一文から始まるこの文章で、ハラリは今回の危機の結果として生じる「長期的な影響」も考慮すべきであると指摘して居る。曰く、この非常時に我々は「全体主義的な監視社会を選ぶのか、それとも個々の市民のエンパワメントを選ぶのか」「国家主義者として世界から孤立するのか、それともグローバルな連帯を執るのか」と云う2つの重大な選択を迫られて居るのだと云う。

 ハラリが懸念するのは、今回の緊急事態が、バイオメトリクス技術を用いた新しい監視システムに合法性を与えてしまう事だ。何故為らば「プライバシー」か「健康」かと云う二者択一を迫られた場合、大抵の人は健康を取るから。しかし、ハラリはこの二者択一がソモソモ間違っており「プライバシー」と「健康」は両立可能であるしそうすべきであると主張する。
 そこで重要に為って来るのが「市民のエンパワメント」である。ハラリは、新型コロナウイルスの地域的な大流行の阻止に成功した韓国・台湾・シンガポールを例に挙げながら「集中監視システムと厳罰の組み合わせが、有益な方針に人々を従わせる唯一の方法では無い。市民が科学的事実を告知され、そうした事実を伝える当局に信頼を寄せた時「ビッグ・ブラザー」が肩越しに目を光らせ無くとも、彼等は然るべき対応を執る様に為る」と述べながら、その為にも我々は「これから先の日々、根拠の無い陰謀論や利己的な政治家よりも、科学的なデータや医療の専門家を信頼する事を選択しなくては為ら無い」と提言するのだった。

 奇しくも「人類史」と云う膨大な歴史の中から、今を生きるヒントを取り出そうとして来た2人の「知の巨人」が、今回の危機に際して緊急寄稿した3つの文章。彼ラと同じく「新型コロナウイルス危機」と云う世界的な危機を目の前にした我々は、それ等の言葉から何を学び取るべきなのだろうか。この機会に、夫々の著作を手に取りながら、考えてみるのも好いかも知れない。


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               ライター 麦倉正樹      以上









 年末企画 麦倉正樹の 「2018年 年間ベストドラマTOP10」 

 多様性を巡る問題と脱構築の動き

  麦倉正樹 年間ベスト
  
 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末迄日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画・国内ドラマ・海外ドラマ・アニメの4つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は地上波及び配信で発表された作品から10タイトルを選出。第6回の選者は、無類のドラマフリークであるライターの麦倉正樹(編集部)

  @『透明なゆりかご』(NHK)
  2『女子的生活』(NHK)
  B『アンナチュラル』(TBS)
  4『dele』(テレビ朝日)
  5『おっさんずラブ』(テレビ朝日)
  6『中学聖日記』(TBS)
  F『僕らは奇跡でできている』(カンテレ/フジテレビ)
  8『隣の家族は青く見える』(フジテレビ)
  9『anone』(日本テレビ)
  I『獣になれない私たち』(日本テレビ)


   赤〇 管理人も観て面白かったもの 青〇 観てしまったが大してお勧めできないもの

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               透明なゆりかご DVD-BOX

 振り返ってみると、2018年は多様性と脱構築を意識したドラマが数多く見受けられた一年だったように思う。多様性とは、自分とは異なる価値観をもった他者を受け入れること。脱構築とは、既存のドラマ構造を超えて、新しい物語を描き出して行く事である。
 その両者が複雑に入り混じりながら、作り手たちのあいだでさまざまな試行錯誤が行われたのが、2018年のテレビドラマ界だったのではないだろうか。

 トランスジェンダーを主人公とした『女子的生活』は勿論、流行語大賞にノミネートされるほど注目を集めた『おっさんずラブ』あるいは『隣の家族は青く見える』に登場したゲイカップルや『中学聖日記』に登場したバイセクシャル。それらは何れも「LGBTをテーマとしたドラマ」と言うより、寧ろそれ等の人々をドラマ内に配置する事によって、その他の登場人物達の反応や戸惑いを視聴者と同目線で描き出し、それを彼/彼女たちがどう乗り越えていくのか? という点に主眼が置かれたドラマだった。
 そのことは、多様性とは社会の問題である以前に、個々人の寛容性の問題なのだという当たり前の事実を、改めて視聴者に理解させてくれたように思う。

 そのなかでも『女子的生活』は、全4話と短いドラマながら、志尊淳と町田啓太の好演もあって、最終的には、まるで青春物語のように爽やかな余韻を残す、実に忘れがたい作品となった。
 1位に選出した『透明なゆりかご』も、そんな多様性と無関係ではない。町の産科医のもとにやってくる人々が、それぞれに抱えている事情。それは時に、容赦ない現実を我々の前に突き付ける。けれども、それを既存の価値観で測るのではなく、看護師見習いの女子高生と云う、未だ何者でも無いフラットな視線で描くことによって、本作は同系のドラマである『コウノドリ』(TBS系)とは又違う、爽やかな感動を視聴者にもたらして居た様に思う。本作が初主演と為る清原果耶の瑞々しい演技も光っていた。

 これ迄と少しだけ視点をずらすことによって、物事の新たな側面に光を当てること。法医学という決して目新しくはない題材を、リアルで能動的な女性目線で描き出すことによって秀逸な現代性を獲得していた『アンナチュラル』も、そんな視点の新しさを感じるドラマだった。毎回抜群のタイミングで流れる米津玄師の「Lemon」の記憶共々、こちらも忘れがたい一本だ。
 多様性をめぐる問題は、ステレオタイプには陥らない新しい感性をもったドラマを・・・という脱構築の動きとも関連しているのだろう。とりわけ、名前と実績のある脚本家たちにとっては。その筆頭が、北川悦吏子の『半分、青い。』(NHK)になるのだろうけど、野島伸司の『高嶺の花』(日本テレビ)同様、個人的には余り成功していたようには思えなかった。

 「結局、何の話を見せられたのだろう?」そんな素朴な疑問が、最後に残ってしまったから。坂元裕二の『anone』野木亜紀子の『獣になれない私たち』にも、同じような脱構築の意識を強く感じた。この2つ関しては、役者陣の好演もあって、心奪われるシーンも数多くあったが、矢張り全体としては、何か釈然としないもどかしさが残ってしまった。
 無論、両者とも実に見応えのあるドラマではあったけれど、もし仮にそれが成立しているのならば、脚本よりも先ずは役者の好演を称賛すべきではないだろうか。

 その一方で『dele』や『中学聖日記』は、作劇の構造によって脱構築するというよりも、むしろ役者の魅力を十全に活かしながら、丁寧な演出とカメラワークによって既存の枠組みを打破しようする作り手たちの野心が感じられ、個人的には、むしろこれらのドラマのほうに好感を持った。
 そして、主題歌や小ネタの数々が若干のノイズとなっているのが少し気に為ったけれど、主演の高橋一生を初め、個々の役者の魅力と、多様性に関する明確なメッセージ性が胸に響いた『僕らは奇跡でできている』は、もっと多くの人に観られてしかるべきドラマだったと思い、最後に加えさせてもらった。

 ちなみに、海外ドラマに目を向けると、『13の理由』『ナルコス』など人気作品の新シーズンが、いずれも期待値を超えるものではなかったの対し『オザークへようこそ』S2と『マーベラス・ミセス・メイゼル』S2は、何れも期待を上回る秀逸なシーズンだったように思う。そして、忘れてはならないのは、やはりドナルド・グローヴァーの『アトランタ』だ。毎回約30分程度の短いスケッチでありながら、既存の枠組みには決して収まらないその先鋭性に、とにかく衝撃を受けた。真の“脱構築”とは、こういうものなのかもしれない。とりわけ、S2E6「テディ・パーキンス」は、今年最も衝撃を受けたエピソードだったので、気になる方は是非チェックして頂きたい。


                   以上



 



 



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60年振りの営業赤字に転落した時 トヨタの経営者が話して居た事





 



 

 大企業は今何を為すべきか・・・

 60年振りの営業赤字に転落した時 トヨタの経営者が話して居た事

            〜プレジデントオンライン 3/30(月) 11:16配信〜

 〜新型コロナウイルスの感染拡大が企業経営にダメージを与えて居る。こうした危機への対応は歴史に学ぶべきだ。トヨタ自動車は2008年のリーマンショックの時60年振りの営業赤字に転落した。しかし当時会長だった張富士夫氏は「需要の減少は絶好のチャンス」と言い切った。神戸大学大学院の栗木契教授が、その真意を読み解く〜

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           記者会見をするトヨタ自動車の豊田章男社長達

 オリンピックイヤーが一転パンデミックの年に

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          栗木 契(くりき・けい) 神戸大学大学院経営学研究科教授

 新型コロナウイルスが世界経済を揺るがして居る。この様な危機に日本企業の先人はどの様に対応して来たか。目先の対策に終始せず時間の幅を少し広げて考えると、危機の中に於いてするべき事が見えて来る。今回、そうした観点からトヨタ自動車をケーススタディーとして取り上げたい。
 年の初めに皆さんは、2020(令和2)年と云う年を、どう予想しただろうか。夏には東京オリンピックが行われ、数多くの外国人が訪れる華やかな一年と為ると見て居た人も多いのではないか。

 だが、この予想は程無くして暗転する。国内外で中国武漢発の新型コロナウイルス感染症拡大の影響が社会、そして経済へと果てし無く広がって行く。国内外の人の動きが止まり、観光等の人の交流に関わる産業を初めアラユル産業に縮小の影が忍び寄って居る。にも関わらず、この感染症のグローバルな終息の見通しは現時点では建って居ない。

 需要の減少は天の与えて呉れた絶好のチャンス

 歴史を振り返れば、経済は成長と停滞を繰り返すものである。感染症だけでは無い。日本の産業は、コレ迄にも様々な外生的なショックに見舞われてはそれを乗り越えて来た。
 そのひとつが2008年に起きたリーマンショック後の世界不況だった。我が国でも倒産する企業が相次いだ。自動車産業もこの大波に飲み込まれ、2000年代の後半には極度の販売不振に陥る。巨大グローバル企業が次々と破綻に追い込まれる中で、トヨタも60年振りと云う営業赤字に転落する。

 この危機をトヨタはどの様に受け止めて居たか。当時の会長だった張富士夫氏のインタビュー記事がある。(文藝春秋・2009年3月号)
 ソコで張氏は、この金融危機に端を発する需要の減少に慌てず流されず、コノ販売不振が自社にもたらす影響のポジティブな側面を見据えて居た。冷静な理詰めの思考を語る中で張氏は「需要の減少は或る意味で天の与えて呉れた絶好のチャンス」と述べる。販売不振が、何故チャンスと為るのか。何故危機がチャンスなのか。

 張氏は、受注が減って要る時には、工場のラインを止めても営業等の部門との軋轢が生じ難い事を挙げる。受注が相次ぎ引切り無しに車を作り続ける必要が有った時には、出来無かった生産工程の見直しや設備の手直し・工場間のラインの移設・或いは調達する原材料の変更等を行うチャンスと為る。
 生産の現場だけでは無い。マーケティングに於いても同じ事が言える。世界各国で現地のニーズに応えたキメ細かい製品やサービスの開発や提供を行う必要性は感じて居ても、引切り無しの注文に必死に応えて行く状況の中では、量産型の画一対応を根本的に見直す事は難しい。需要がダウンサイズした時コソが、こうした方向性を見直すチャンスなのだと云う。

 併せて張氏は、その成果は直ぐに出る訳では無いとも述べて居る。実際にコノ2009年度にトヨタは黒字転換は果たすものの、営業利益率は0.8%に留まる(売上18兆9509億円・営業利益1475億円)財務上は厳しい状況に在った中で張氏は、以上の発言を行って居る。
 しかし此処で改善を積み重ねて置くと「次の好況時に一気に成果が現れて、利益が出る」のだと張氏は述べて居る。

 張氏が「危機はチャンス」と言い切れた理由
 
 強い企業に求められる条件は、事業の将来性・収益力の高さ・保有資産の潤沢さ・意思決定の迅速性等多く有るが「危機にチャンスを見い出す事が出来る」事も、そのひとつと云えるだろう。
 しかし、現在の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の渦中に在って、過つてのリーマンショック後の張氏の様に「コレは絶好のチャンス」と大胆に言い切る事が出来る企業人がドレだけ居るだろうか。何故張氏はアノ時、危機はチャンスと語る事が出来たのか。この問題を重ねて検討して行こう。

 何故、アノ発言が出来たのか。第1に注目して置きたいのは、張氏がこの記事に於いて、中長期の市場展望を踏まえての発言を行って居る事である。
 この時トヨタの販売不振が特に顕著だったのは北米市場だったが、危機の直前には自動車市場の全体として1700万台程だった年間販売が、4割減の1000万台程に迄落ち込んで居た。だが張氏は云う。当時の北米に於ける保有自動車台数は2億5000万台である。
 年間1000万台と云う販売数が続けば、平均して1台の車を25年間に渉って使い続ける計算に為る。
 その様な自動車の使用サイクルの展望は考え難いと云うので有れば、リーマンショック後の販売不振は中長期トレンドでは無い事に為る。この前提を抑える事で、短期の危機を前にしながら、より強靱な企業体質を作り挙げて置く為に、今何をして置くべきかと云う発想が生まれる。

 第2に、トヨタが高い財務の健全性を保つ事に注力して来た企業である事も忘れては為ら無い。危機に遭っても中長期の展望を失わ無い思考が出来るのは財務の支えが有るからである。「治に居て乱を忘れず」と云う。平時に在っても、資金ショートのリスクを低減して置く事が、危機をチャンスと捉える事に繋がる。

 「不具合が有ればラインを止めろ」と云う常識外れの指示の先

 第3に、トヨタと云う企業は「今さえ好ければ」と云う近視眼的な発想では経営されて居ない。この強靱な製造企業の足腰を支えて来たトヨタ生産方式は、日常のオペレーンションに於いて、目先の効率では無くその先に広がる未来を考える姿勢を生産現場に定着させる工夫を組み込んで居る。ソコから生まれる企業文化が、危機に於いて重要なのでは無いかと思う。
 1980年代にトヨタは単独では初の米国工場の運営に乗り出す。ケンタッキー工場で在る。張富士夫氏がトップを務めたこの工場の生産ラインでは、次の様な指示が行われて居たと云う。当時の米国の自動車製造現場では異色の方式だったが、それ迄のトヨタの国内工場に於いて脈々と引き継がれて来た遣り方である。(野地鉄喜トヨタ物語 日経BP社 2018年 338‐340頁)

 「不具合が在れば、紐を引いてラインを止めろ」

 トヨタの工場では、作業者が紐を引けばラインを止める事が出来た。そしてケンタッキー工場では、止まったラインを早く動かす事よりも、数時間或いは十数時間を賭けてでも徹底的に原因を追及し、何をどう変えれば好いかを検討する様にして居た。
 ライン全体で何も作業をしない重苦しい時間が続く。しかしコノ時間は一方で、ラインに於ける全作業者が、何故ラインが止まったか・何の為に止めるかに思いを巡らす機会と為ったと云う。こうして目先の効率に汲々として居た作業者が、より全体的な問題を考え始める。この変化を促し、変化するのを静かに待つのがトヨタの遣り方だった。

 止めたラインを早く再稼働させる事よりも、不具合の原因の追及を優先する・・・コレは、責任の所在を問う為では無く、何故、トラブルが起きたか何をどう直すかを考え、改善を絶やさ無い様にする為の姿勢である。
 この様にトヨタに於ける「カイゼン」とは、目先の効率を高める為の取り組みでは無い。今日の生産性の為に未来に繋がる根本的な問題から目を逸らして居ると、何れは組織の致命傷と為って返って来る。その様な事態を防ぐ為の方法なのである。

 とは言え、需要が伸びて居る時期には、スピードを上げてモノ作りやサービス提供を進めて行く必要はトヨタも変わりは無い。先のインタビューの中で張氏は、2000年代のグローバルな需要の拡大の中で、工場を越えたラインの移設には踏み込め無かったり、製品バリエーションの有るべき姿よりも、効率的に大量に作る事を優先して居たりして居たと述べて居る。

 「なぜ」を5回繰り返す事の意義

 日々の課題を熟して行く事も挑戦である。しかし、忙しい毎日の中に在って、その先の課題認識を怠ら無い。トヨタで語り継がれて来た言葉に「何故を5回繰り返せ」と云うものが有ると云う。(若松義人 トヨタの上司は現場で何を伝えているか PHP新書 2007年 154-155頁)
 何故を繰り返す事の意義は、近視眼を脱する事に繋がる事である。ソコで広げた視野から、順調に見える事業状況に於いても問題は山積みで有る事が組織に共有されて行く。だからトヨタは、危機を素早くチャンスと受け止める事が出来るのだろう。

 注文が激減する・顧客の姿が消える・・・しかし、この状況が未来永劫続く訳では無い。当面の財務上の備えに怠りは無い。未来の為に今遣って置くべき事は多く在る。不安が無い訳では無いが、遣るべき事を切り替えて、今を活かせば危機はチャンスと為る。この備えを平時から行って置く事に、トヨタと云う日本企業が培って来た経営の知恵を見る事が出来る。

 自動車産業は2000年代に入る頃から、グローバルな需要の急増に直面する。それ迄は日米欧の先進国が中心だった市場が、勃興する新興国へと広がり、成熟期を迎えたかと思われて居た自動車産業は、成長対応へと舵を切る事を迫られる。
 振り返るとリーマンショックは、このグローバル成長の時代の踊り場だった。ソコでトヨタはギアを切り替え、素早く体勢を整え直そうとして居た。
 現在の自動車産業の課題は10年前とは異なる。自動車製造の枠組みを超えた、移動に関わるビジネス・エコシステムの一大転換が迫って居る。平時には出来無かった実験的な活動を前倒しで行うには今はチャンスなのかも知れない。

 私達もそうだ。問題意識に片隅には感じて居ても、取り組めて居無かった事は多く為る。日本企業の先人から学ぶべき事は少なく無い。


 栗木 契(くりき・けい) 神戸大学大学院経営学研究科教授 1966年、米・フィラデルフィア生まれ。1997年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了 博士(商学) 2012年より神戸大学大学院経営学研究科教授 専門はマーケティング戦略 著書に『明日は、ビジョンで拓かれる』『マーケティング・リフレーミング』(ともに共編著)『マーケティング・コンセプトを問い直す』などがある

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          神戸大学大学院経営学研究科教授 栗木 契    以上



 





 トヨタ 欧州全工場が一時停止へ コロナ感染拡大防止

            〜共同通信 3/30(月) 11:52配信〜
 
 トヨタ自動車が、新型コロナウイルスの感染拡大を抑える為、ロシアの工場の稼働を30日から4月3日まで停止することが30日分かった。トヨタは、既に稼働を止めて居る英国やトルコ等他の欧州6カ国の工場に付いて、再開時期は早くても4月20日以降とする事も明らかにした。トヨタの全ての欧州工場が一時、稼働停止する事と為る。

 トヨタは2019年、欧州全体で前年比0.4%増の約78万台を生産した。新型コロナの感染拡大で一部の国内工場も4月3日から停止する方針で、業績への影響は避けられ無い。トヨタはこれ迄、ポルトガルの工場を3月16日から2週間の停止とした。


                   以上



 



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安倍首相が 消費税増税後の事を語ら無い本当の理由





 





 安倍首相が 消費税増税後の事を語ら無い本当の理由

 大企業の景況感も消費も回復するだろう・・・否 中小企業の深刻な状況から目を背けるな

         〜ジャーナリスト 斎藤貴男 2020年01月28日〜


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 〜昨秋、消費税が8%から10%に上がってから4カ月近くが経つ。消費税増税はその間、日本の社会や経済にどんな影響を与えて居るのか?
 長年、消費税の有り方を追及して来たジャーナリストの斎藤貴男さんが、消費税に付いて様々な角度から考えるシリーズ。今回は、この4カ月の実態、その背後に潜む問題に付いて論じます〜
 (論座編集部)


 前回の「消費税の悪魔性 仕入れ税額控除の許され無い実態」に続いて「仕入れ税額控除」に付いて書く予定だったが、看過出来無い状況が有るので、当面、別の話題を先行させる事にしたい。

 スッカリ見慣れた安倍首相の光景

 通常国会が1月20日に始まった。安倍晋三首相は代表質問で、廃棄したとされて居る昨年の「桜を見る会」の招待客に関する調査を拒否。汚職に塗れた統合型リゾートIR事業を、それでも推進する意向を示し、或いは自衛隊を国会審議も経ずに、防衛省設置法の「所掌事務」に有る「調査・研究」名目で中東に派遣した事を「武器の行使に該当する恐れは無い」と根拠も示さずに正当化した。

 最早スッカリ見慣れた光景ではある。安倍氏は開会初日の施政方針演説でも「桜」をはじめ、IRの問題や、公職選挙法違反の疑いで相次ぎ辞任した閣僚等の任命責任に全く触れ無かった。沖縄の米軍普天間飛行場返還と辺野古新基地建設に付いてさえ、直接的には述べ無かったのだから何とも異様だ。

 アベノミクス自画自賛のウソ

 一方で、例によってアベノミクスを自画自賛「日本経済はこの7年間で13%成長し、来年度予算の税収は過去最高と為りました」「公債発行は8年連続での減額であります」等と胸を張った嘘である。過去最高云々は事前の、それも賞味期限切れの見通しだった。
 既に来年度の以前に今年度の補正予算案が下方修正され、税収も前年度割れが必定に為って居る。増収傾向に有るのは確かでも、近年の税収は、税率の引き下げや租税特別措置の乱発で大幅に減少した法人税収を消費税の増収で賄う形で推移して居り、来年度は後者が所得税を抜いて最大の税目と為る見込みだ。詰り、経済政策が成功した果実等では全く無い。

 東京五輪・パラリンピック開催の意義も繰り返し強調された。「日本全体が力を合わせて」「「国民一丸と為って」の連発が「一躍総活躍社会」の宣伝に繋げられて行く展開からは、2020年大会招致の目的が「国民統合」と「国威発揚」でしか無い実態を思い知らされるばかりだった。
 要は、都合の悪い事は何も無かった事にする。逆に、自らを強く大きく見せる為なら平気でウソを着くのである。ちなみに、8度目となった第2次安倍政権の施政方針演説で、普天間と辺野古が取り上げられ無かったのは今回が初めてだ。過去最高と為ったのは、税収では無く無かった事にする手口だった。

 消費税増税後の景況感は軒並み低調 

 以上の様な分析は、しかし一部の新聞でも為されて居る。本稿が指摘して置かなければ為ら無いのは、今回の施政方針演説が、昨年(2019年)10月の消費税率引き上げと、その後の経過を何も語ら無かった事である。
 問題点が山積し、国論が二分された中で強行された増税だった。為らば、それでどう為ったのかを報告するのは政治指導者の義務なのに、安倍首相は矢張り無事にして恥じ無い。それでも誰も怒ら無い日本国民とは、ツクヅク奴隷根性の塊だ。だから私が書く。

                     以上



 





 政府やメディアが刷り込んだ消費税の目的の嘘

 社会保障の充実と安定化の為 の増税と云う謳い文句とは正反対の現実

         〜斎藤貴男 ジャーナリスト 2019年09月20日〜

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 〜10月から消費税が8%から10%に上がります。メディアでは軽減税率やポイント還元策等が話題に為って居ますが、殊の本質はソコなのでしょうか。長年、消費税の有り方を追及して来たジャーナリストの斎藤貴男さんが、消費税が抱える根源的な問題に付いてシリーズで考えます〜 (論座編集部)

 全世代型社会保障改革を掲げた新内閣

 「新しい社会保障制度の有り方を大胆に構想して参ります」と安倍晋三首相は胸を張った。拡大内閣改造に付いて記者会見する安倍晋三首相・・・9月12日、第4次再改造内閣発足に臨む記者会見。「全世代型社会保障改革」を新内閣の旗に掲げ、その担当を兼務する西村康稔経済再生相(56)を中心に「70歳迄の就労機会の確保や年金受給年齢の選択肢の拡大」等の改革を進めると云う。

 所謂年金カット法(年金制度改革法)に基づくマクロ経済スライド方式の強化を初め、医療費や介護費用の自己負担比率増大、介護保険制度の利用者制限、生活保護の生活扶助費や住宅扶助費の減額等々、過去数年に渉って重ねられて来た社会保障の縮小或いは削減に、より一層の大ナタが振るわれて行く。
 側近の衛藤晟一氏が担当相に起用された「1億総活躍」の国策と合わせれば、権力に近く無い人間は死ぬ迄働くしか無い時代が見えて来る。

 ちなみに西村氏は内閣官房副長官だった2018年7月5日夜、安倍首相とその取り巻き達によるドンちゃん騒ぎの大宴会「赤坂自民亭」の模様を「好いなあ自民党」のコメントと共にツイートし問題に為った人物だ。翌日にオウム真理教事件の死刑囚7人の死刑執行が予定され、又中国・四国・九州地方で200人以上の死者を出すことに為る西日本大豪雨が既にその予兆を示して居たそのタイミングが、今も記憶に生々しい。

 社会保障の充実と安定化の為の増税だったが・・・/span>
 
 大胆な社会保障改革の実相も、それを担う人々の資質も、しかし、マスメディアは特に報じも論じもしなかった。新閣僚の首相との距離感や、派閥の内幕に付いては過剰な程詳しい新聞は、国民生活を左右する政策の意図や意味には関心が無いらしく、政権側の言い分を概ねそのママ垂れ流す。
 「全天候型社会保障改革」に批判的な報道が皆無だったと迄は言わ無いが、その場合でも、何故か、この改革と、或る要素との関係だけは、トコトン避けて通られて居る様だ。

 「或る要素」とは何か「消費税増税」の問題だ。来たる10月1日に、消費税率は8%から10%に引き上げられるこ都に為って居る。そして、政府とマスメディアはこの間ズッと、社会保障の充実と安定化の為の増税なのだと謳(うた)い続けて来た。それが、どうだ。現実は、マルで正反対の姿にしか為って居ないではないか。

 尻すぼみに終わった「老後2000万円問題」

 例の「2000万円問題」を、改めて考えてみよう。去る6月、政府の審議会が公表した報告書に、今後の日本社会で高齢夫婦が老後を暮らすには、支給される公的年金の他に約2000万円が必要になる旨が書かれて居て、日本中が大騒ぎに為った、アノ問題だ。
 だからどうするべきなのか、と云う問題提起では無い。金融庁長官の諮問を受ける「金融審議会」の「市場ワーキンググループ」が、飽く迄も金融サービス事業者向けに、だからこう云う金融商品を作って売ったら儲かりマッセ、と啓蒙するのが狙いの文書であり、2000万円ウンヌンは、その前提と為るデータとして提示されて居たのに過ぎない。

 目的はどうあれ、それでも多くの国民は反発し掛けた。官邸前の抗議集会やデモがあった。野党も結束して追及した・・・かに見えた。だが、ヤガテ尻すぼみになり、7月の参院選でも、然したる争点には為ら無かった。原因は明確で無い。野党のだらしなさ、権力に靡く一方のマスメディアと色々あるが、それだけでは説明出来無い。しかし、そう為った決定的な背景が、私には判る様な気がする。

 消費税率は上がれど悪化する社会保障
 
 1988年の事である。或る不動産会社が、自社商品の宣伝本を出版した。題して『パートナーシップ』一言に要約すると、こんな内容だった。

 〔日本銀行の試算によれば、現役を退いた高齢夫妻の老後は公的年金だけでは賄えず、平均でザッと1500万円の貯蓄が必要です。だから皆さん、当社のワンルームマンションに投資して、安心な老後に備えましょう〕

 時は正に金ピカ・バブル経済の真っ盛り。週刊誌の記者だった私は、その本を地上げ絡みのネタ元にさせて貰って居た同社幹部にプレゼントされ、思う処あって大切に保管して来た。消費税が導入されたのは翌89年。高齢化社会への対応が前面に打ち出され、紆余曲折を経てのスタートだったが、その後も同じ理由が繰り返し掲げられ、税率が3から5⇒8%へと引き上げられて、遂には2桁の大台に乗ろうとしている。
 考えても貰いたい。幾ら何でも、可笑し過ぎはしないか。消費税の導入前は1500万円の不足。税率10%を目前にした現在は2000万円の不足。何も変わって居ない、処か、事態は返って悪化して居る。一体何の為の消費税だったのか。

 消費税は大企業や富裕層の減税の財源

 ・・・等と吠えて見せるのもカマトトでは有る。財務省の資料「法人税率の推移」によれば、1988年度に42%だった法人税の基本税率は、翌年に消費税が導入されてからは減税に次ぐ減税で、現在は半減に近い23・2%だ。
 又、これも財務省のデータ「一般会計税収の推移」は、税収全体に占める税目別の割合が、消費税と法人税がホボ反比例して居る様子を示して居る。この間には所得税の累進性も可成り緩んだ。1999年からの8年間は累進の上限が年間所得1800万円超の37%。少し大きな会社の部長さんも大財閥のオーナーも、同じ税率だった。

 財政健全化の財源にすると強調された局面も屡々だった。けれども、この点にした処で、消費税が導入されて以降も、財政赤字は膨らむ一方であり続けて来た。税収が増えると、増えた分だけ土建屋政治や軍拡に勤(いそ)しんで来たからに他為ら無い。
 要するに、消費税は社会保障の充実や安定化・財政健全化の為に導入された訳でも、増税されて来た訳でも無い。敢えて単純化してしまえば、それは只、大企業や富裕層の減税の財源に為った。即ち、この間に政府やマスメディアが国民に刷り込んで来た消費税の目的為るものは、何もかも嘘(うそ)だったと断じて差し支え無いのである。

 自己責任論が強調される社会保障

 最も、殊の善悪の一切をサテ置く限り、取り分け近年に於ける状況は、言わば必然的な結果でもあった。民主党政権と自民・公明両党との「3党合意」で、国策「社会保障と税の一体改革」の目玉としての消費税増税が決められた2012年の冬「社会保障制度改革推進法」が可決・成立して居る。その第2条の1が、社会保障を、こう定義して居た。

 〔自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされる様留意しつつ、国民が自立した生活を営む事が出来る様、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援して行く事〕

 一般の認識とは、天と地程も掛け離れては居ないだろうか。社会保障と言えば、普通は社会保険や公的扶助、公衆衛生、医療、社会福祉等の概念をまとめたものと理解されて居る。1950年に当時の「社会保障審議会」が打ち出した「狭義の社会保障」の定義が、多くの人々には、尚生き続けているのだ。 
 いずれにせよ、今風の表現では「公助」のイメージだ「社会保障制度改革推進法」の定義と対比されたい。そして、消費税率が8%に引き上げられる4カ月前の2013年12月、今度は「推進法」を具体化して行く為の「社会保障制度改革プログラム法」が可決・成立。同法では社会保障に於ける政府の役割が規定されて居るのだが、こちらはモッと凄まじい。

 〔政府は、住民相互の助け合いの重要性を認識し、自助・自立の為の環境整備等の推進を図るものとする〕

 徹底的な自己責任論であり、政府は努力義務しか持た無いと定めて居る。書籍や雑誌の記事、講演会などの場で、私が幾度も幾度も書き、語り、批判して来た事である。こう書くと確実に返って来るのは《消費税が無ければ、社会保障そのものが解体して居た》等と云った反論だろう。制度の持続可能性を錦の御旗とする政府やマスメディアが近年多用したがるロジックだが、これ程の本末転倒も無い。制度だけが持続しても、国民生活を支える事が出来無い制度なら無意味だ。

 「社会保障は国民生活に必優なものであるから、財源が足り無ければ、何処からか財源を工面して、社会保障の充実に充てるのが、政治家の仕事ではないか」と、鹿児島大学の伊藤周平教授(社会保障法)は喝破して退けて居る。(『社会保障入門』ちくま新書、2018年)
 生存権を規定した憲法25条を持ち出す迄も無く、消費税は上げるが社会保障の水準は下落の一途、等と云う政策は、本来、許されて好い筈が無いのである。


                 以上



 





 【管理人のひとこと】

 この記事は現在のコロナ禍以前のものであり、現在の状況は物凄い事に陥って居る訳だ。政権は、消費増税で破綻した我が国の経済を立て直す暇も無くこの新型ウイルス対策に翻弄され、遣る事為す事全てがゴテゴテに廻り諸手を挙げてしまった様な具合で、何一つ具体的な政策も打てない体たらく。
 この政権は、一切機能しない木偶の坊に等しい有様なのである。安倍氏の言葉の空虚さは今に始まった訳では無いが、この緊急時に何一つの手も打てないとは思いもしなかった人達が多いだろう。ったく早く辞めて頂きたいものだ。



 



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遅過ぎ ショボ過ぎ 安倍政権のコロナ対策はマルで話に為ら無い





 




 遅過ぎ ショボ過ぎ 安倍政権のコロナ対策はマルで話に為ら無い

              〜現代ビジネス  2020・3・30発信〜          


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                 写真 現代ビジネス

 もう1ヵ月以上遅れて居る

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                  経済学者 橋 洋一氏

 安倍首相は28日に記者会見し「緊急経済対策の策定と、その実行の為の補正予算案の編成を、この後指示する。今まさにスピードが求められて居り、10日程度の内に取りまとめて速やかに国会に提出したい」と述べ、今後10日程度でリーマンショックの時を上回る規模の緊急経済対策を策定し、新年度の補正予算案を編成する考えを示した。
 筆者の結論を言おう。これ迄の本コラムを読んで貰えれば判ると思うが「余りに遅過ぎで、シャビー・みすぼらしい」だ。

 先ず「遅過ぎ」から行こう。28日に記者会見が行われたのは、27日に2020年度予算が成立したからだ。この段階で、財務省の手順に従ってしまって居り「遅過ぎる」のだ。
 筆者はこれ迄の本コラムでも、3月中の2020年度予算の「修正」を主張して来た。2020年度予算を成立させてから「補正」で対応すると1ヵ月以上も遅れるのだ。又、中身に関わる話でもあるが、安倍首相は、現金給付の規模や対象に付いて「リーマンショックの時の経験や効果等を考えれば、ターゲットを或る程度置いて、思い切った給付を行って行くべきだと考えて居る」と述べ、全ての国民に一律の現金給付には慎重な考えを示した。

 これは、所得制限した上で現金給付をする積りなのだろう。今回の様な大きな経済危機の時には、何よりスピードが優先される。なので先進国では先ず現金給付をする。具体的には、筆者が本コラムで書いて来た様な政府振出小切手を国民に配ると云う遣り方だ。
 所得制限とは、通常は配布前に所得制限を掛けて行うものだ。具体的には、所得に応じて給付金を配布すると云う方法に為る。しかし、実際に行うには可成りの時間を要する。ソコで、政府振出小切手を一律に配布すると云う方法が執られる。この方式は、アメリカなら2週間程度で実施可能だ。

 ヤッパリ財務省が障害か

 「高額所得者に対しても一律に給付金を出せば批判される」と、財務省は国会議員を脅す。実際に、今回もその様な事が有った様だ。しかし、その脅しは簡単に切り返す事が出来る。と云うのは、アメリカでも同じであるが、税法の非課税措置を手当し無ければ(詰り何もし無ければ)、給付金は税法上「一時所得」に該当する為、高額所得者は限界税率が高く、それ為りの調整が為されるのだ。
 こうした危機に所得制限を示唆するとは、日本の国会議員はコロっと財務省に騙されてしまった様だ。序に言って置くが、日本の現金給付は政府振出小切手を使って居ないので、とても2週間では出来無い。

 リーマンショック時に給付された定額給付金は、所謂地方事務である。地方自治体から国民に、定額給付金の「申請書」が送られる。国民はソレに銀行口座等を記載し、本人確認書類などと共に地方自治体に「申請」する。受け取った地方自治体は、本人確認をして、銀行口座に振り込む。この間、1〜2ヵ月を要する。
 一方、政府振出小切手では、本人の処に小切手が届く。本人はソレに署名して銀行に持ち込む。銀行が本人確認して現金が付与される。この方式の方が簡便なので2週間位で実施出来る。

 官邸が財務省に遣られて居る

 次に、対策そのものの規模も情け無い程シャビーだ。一応「リーマンショックの際を上回る規模」と云うが、これは事業規模の話だ。リーマンショック時に政府が56兆円の事業規模で対策したのは事実だが、真水ベースだと15兆円程度だった。
 経済対策には、大別すれば(1)公共事業 (2)減税・給付金 (3)融資・保証がある。「真水」とは、(1)の内用地取得費(事業費の2割程度)を除いた部分 (2)は全額 (3)は含め無いで (1)(2)を合算したものを指す事が多い。

 実際の政策としては(2)でも消費に回ら無いと短期的にはGDP創出に繋がらないし (3)が無いと企業倒産に繋がり雇用の喪失を通じてGDPへの悪影響が出る。
 その意味では、全ての政策が相まって重要なのだが「真水」の考え方は「マクロ経済政策による有効需要増のGDPに対する比率」で表すことが出来る。その為、経済ショックで需給ギャップがGDPの一定割合に生じた際、どの程度まで穴埋め出来るかが簡単に判るので、景気の先行きを占う上で有効である。

 実は、筆者は、2010年1月5日から本コラムを書いて居る。最初の原稿「何故日本経済だけが一人負けなのか」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/60)では、リーマンショックのGDPギャップとその埋め方を、日米英独で国際比較して居る。その中で「日本は財政政策も金融政策も酷い」と論じて居る。
 安倍政権に為って、少しは民主党政権より経済運営が真面に為ったが、ここに来て、メッキが剥げて居る。自民党内の一部は真面であるが、今の安倍政権は官邸が機能して居ない。この為、財務省に遣られて居る。流石の安倍首相も、パワーが失われて居る様だ。

 「真水」で無いと意味が無い理由
 
 その結果、今回の経済対策も事業費ベースでは50兆円を超えるが、真水ベースではシャビーな案に為って居る。GDPに影響を与える真水ベースだと、精々20兆円ともい割れる。これではGDPの僅か4%である。アメリカでは2兆ドルベースの経済対策で与野党が一致して居り、これがGDPの10%に達する事と比べると、日本はシャビーと言わざるを得無い。
 何故「真水」が重要なのかと言えば、先に紹介した本コラムの第1回にも書いた様に、今回の様な経済ショックが有ると、有効需要が失われGDPが低下するが、それはGDPと失業率の関係を示すオークンの法則から判る様に「雇用の喪失」を意味するからだ。

 何処の先進国でも、雇用の確保はマクロ経済政策のイロハである。経済ショックが各国のGDPに与える悪影響も均一では無く、又それが失業に与える悪影響も同じでは無い。しかし、雇用の確保と云う観点から見れば、経済ショックに対する各国のマクロ政策には自ずと相場観が出て来る。そうした議論の為には「真水」の考え方で経済対策を見た方が適切だ。
 「真水」をシャビーにするのは財務省の意向だ。彼等がその言い訳に使うのが財政事情である。本コラムでは、日本の財政事情は悪く無いと何度も繰り返して来た。特に、今回の様な経済危機に於いては、先進国では同時に金融緩和も行われる。それは、財政問題を起こさ無い為でもある。

 実は「経済対策を国債発行で賄い、それと同時に金融緩和する」と云うのは、発行した国債を中央銀行が購入する事を意味する。そう為ると、国債の利払いは中央銀行に為されるが、それは納付金として政府の収入に為るので、実質的な利払い負担が無く為るのだ。
 この事は、前回のコラムにも書いた。しかし、実際の政治の現場では、政治家は財務省の言い為りに為ってしまう。どうしてなのか。

 「ポスト安倍」との絡み

 それには、自民党の党内力学が働いて居る様だ。ポスト安倍で、財務省に近い岸田文雄氏が図抜けて居ると云う事だ。岸田氏の派閥は宏池会だ。宏池会は、大蔵官僚から首相迄登り詰めた池田勇人氏を創設者とする自民党内の伝統派閥で、官僚出身議員が多く財務省の影響を強く受けて居る。
 麻生太郎財務大臣は、宏池会では無いが宏池会に近いとされて居る。勿論財務大臣なので、財務省の伝統的な手法をそのママ実施しようとして居る。消費減税や小切手案は、財務省が最も嫌う政策であり、岸田氏や麻生財務相も否定的なので、現段階で実施は政治的に無理なのだ。

 筆者も或る宏池会系の議員や記者から「貴方の言う消費減税や政府小切手等の政策は経済的には正しいが、財務省が否定するので政治的には採用され無い」と言われた事もある。それにしても、28日の記者会見で、消費減税に付いて質問した記者は足った1人。新聞社が軽減税率の恩恵を受けて居て、消費減税に反対して居るから質問出来無いのでは無いだろうかと思った位、残念だ。
 このママで自民党は大丈夫なのだろうか。先週末に行われた共同通信の世論調査では「望ましい景気対策」として、現金給付32.6%・商品券給付17.8%・消費減税43.4%と為って居る。意外と世論は好く見て居るのかも知れず、ポスト安倍は国民と財務省の板挟みで苦しむかも知れない。

 その他の対策も可笑しい
 
 何れにしても、今の安倍政権は一寸可笑しい。筆者が強くそう思うのは、経済対策だけでは無い。ひとつは新型インフルエンザ対策特別措置法の運用だ。コレは民主党政権時代の法律を改正したもので、3月13日公布・14日施行だった。
 筆者が驚いたのは、14日施行なのにこの法律に基づいて直ぐに政府対策本部を立ち上げ無かった事だ。既に首相官邸には新型コロナウイルス感染症対策本部が在ったので、それをソックリ移行させれば好かった筈だ。政府対策本部が発足したのは何と27日だった。

 緊急事態宣言が未だ出されて居ないのも奇妙だ。特措法改正時の3月10日、筆者は或るネット番組で「ヒゲの隊長」こと佐藤正久参院議員と対談したが、一刻も早く緊急事態宣言を出すべきとの意見で一致した。
 その時は未だ、今日の事態を必ずしも正しく予測して居た訳で無いが、各都道府県知事が強制措置を執るべき時になれば法的根拠を確保できるし、とるべきでなければやらなければいいだけだからだ。他国では軒並み緊急事態宣言やそれに準ずる状況であり、今更日本が緊急事態宣言を出しても特に問題には為ら無いので、遣らない選択肢は無かった。

 しかしながら、未だに宣言は為されて居ない。政府は「ギリギリの状況だ」と言う。特措法は医療崩壊を防ぐ為のものなので、それ程「ギリギリ」なら緊急事態宣言を政府が行い、各都道府県知事に対策の法的根拠と実施権限を与えて置くべきだ。
 小池百合子東京都知事が「ロックダウン」等と言っているが、法的根拠無しで行うのは危うい。

 最早終息のメドは立た無い

 その小池都知事も、モッと前に都民へ強く注意喚起をして置くべきだった。これは、3月19日の政府専門家会合で示されたデータだ。
 「感染源が未知の患者数の推移」であるが、これを見ると、東京と大阪で急激に増加して居り危ないと読める。実際、吉村洋文大阪府知事は、3月20〜22日の3連休前に兵庫・大阪間の往来自粛を呼び掛けて居る。その時の根拠として、吉村知事はTwitterで厚労省から説明を受けた事を明かして居る。(https://twitter.com/hiroyoshimura/status/1240892069507256320)

 厚労省から受けたこの提案を重視し方針を決定した。単なる有識者やコメンテーターが作成したものじゃ無い。国がこの書類を持って大阪府と兵庫県にワザワザ説明に来て提案された。重要な事実と判断して外に出した。多くのコメンテーターはこんな数字為る訳無いと思うだろうが僕は無視出来無い。 pic.twitter.com/hRvR85tcC6 ― 吉村洋文(大阪府知事) (@hiroyoshimura) March 20, 2020 
 
 大阪府が厚労省から説明を受けて居るのであれば、東京都も同じで在る筈だ。しかし小池都知事は、3月20〜22日の3連休前には何もしなかった。幾ら東京五輪の延期に手間を取られて居たとしても、これは重大なミスである。
 因果関係は判らないが、結果として、感染者数は急激に増加して居る。下図は、これ迄筆者が示して来た患者数推移予測の図を更新したものだ。従来の政策が有効で有るとの前提で立てた先週迄の予測は範囲内に収まって居たものの、今では大きく外れて居り終息のメドは立た無く為って居る。全く違うフェーズに入って居ると言わざるを得無い。

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 筆者は色々な場で「何時迄にこの騒ぎは収まるか」と聞かれて「東京と大阪が大丈夫なら○○までに」等と答えて来たが、その前提が崩れた今、当面確たることは言い難く為った。


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              橋 洋一 経済学者    以上




 【管理人のひとこと】

 安部氏の経済対策は「ゼロ」に等しいものだ・・・とするのは誠に同感だ。ゴモゴモ何を言ってるのか判ら無い「何もしません!」と最後に言ったのだけが理解できた。この様な時に何もせず要らぬ時に要らぬ事だけを一生懸命遣り遂げた男だった。
 産業界は、安倍氏に頼らず新たな指針を以て考えなければ為ら無い。無論コロナ対策に協力し乍らであるが、例えば今迄日本が弱かった面を、これを機会として出直す決意で以て構築する事である。詰り日本の構造の電子化・ネット化だろう。例えば、国会から地方議会での、そして企業・学校関係のものであり、そこと家庭・個人との連結だ。それには或る程度の投資が必要で時間も必要だ。
 韓国や中国でも、無論アメリカやその他の国でもだが、個人の行動が制限されると直ぐにネットに依る仕事・教育へと切り替わって、何とか遣り繰りをする。日本では未だに進んで居ないのでこの切り替えが出来無かった。その他、色々な事が考えられる・・・色々な提言が待たれる時なのだから。





 



 











「同調圧力に屈せず、多くの異論を」岩田教授に聞くコロナ危機対策




 「同調圧力に屈せず、多くの異論を」 岩田教授に聞くコロナ危機対策

               〜Forbes JAPAN 3/30(月) 10:05配信〜


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                  Getty Images

 〜新型コロナウイルスの感染拡大で、東京都では5日連続で40人以上の感染者が確認され、3月29日迄に日本全体の感染者数は2600人を超え60人以上が亡く為った。各国の増え続ける感染者数と対策はリアルタイムで比較され、様々な批判や意見が飛び交って居る。
 日本の感染症対策の第一人者である神戸大学感染症内科の岩田健太郎教授は、同調圧力が高い日本では「勇気が要る」と話しながらも、自身のブログや動画を通じて意見を積極的に発信。
 日本の新型コロナ対策に付いて一定の評価をしつつ警鐘を鳴らして来た。(関連記事 新型コロナ 日本は本当に感染がコントロール出来て居るのか)危機の時代に何が求められるのか。岩田教授に話を聞いた〜
 (インタビューは3月26日に実施)

 ・・・感染者の増加が続く東京都では3月25日に小池知事が外出自粛を要請しました。この増加に付いてどう受け止めて居ますか。

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 岩田健太郎教授 (以下略) 東京都は異なるフェーズに入ったと思う。25日はPCR検査数が108件で41人の陽性が判明し、陽性率が可成り高い。
 (編集部注 検査件数の計上日と陽性の判明日が合致するか不明だが、東京都の発表に依ると前日の24日の検査数は86件・陽性は17人)
 検査が追い着いて居らず、感染の実態が掴めて居ない。世界を見て居れば感染者が一気に増える事は予想出来たので、1日40人程度の増加は想定内だった筈だ。それ以上の感染爆発が東京でも起きる可能性はある。
 小池都知事の危機的なメッセージは、本当は患者数が増える前緊急会見をした25日の5日位前に出すべきだったと思う。しかし、延期が決まった24日迄、オリンピックの開催が念頭に有った為に、東京都はネガティブなメッセージは出せ無かったのでは無いかと云うのが私の推測だ。無論、関係諸氏は否定するだろうが。オリンンピックに対する忖度が危機対応を遅くして失敗した。
 全体的にはこれ迄の日本の新型コロナ対策は、ピークを抑えるミティゲーションとクラスター追跡で上手く対応が出来て居た。PCR検査が少ないと云う批判が有るが、PCR検査は偽陰性が出易く運用は難しい。PCR検査を可能性が高い人に検査を絞る事はピークを抑えると云う目的には合って居た。
 しかし今後は、東京とその他の地域で分けて考える必要がある。私の居る兵庫県では、クラスターが発覚した3月前半は危機的な状況に在ったが、その後は可成り抑えられて居る。東京の様に感染者数が増えて居る地域と、抑えられて居る地域で、それぞれの対策を考えなくては為ら無い。

 ・・・東京では今後、どの様な対策が必要に為って来るのでしょうか。

 今迄の対応では不十分だ。一人ひとりが外出し無い等、行動を変える必要がある。又、感染者数の実態が掴めて居ない為、人口を元にした抗体検査で感染者数を出すべきだ。
 (編集部注 現在、新型コロナウイルス検査に用いられて居るPCR検査は、鼻や口の奥の粘膜細胞を採取し、ウイルスのDNAの断片を増幅させて陽性か陰性かを判定する。抗体検査は、一度懸った人が獲得した免疫の抗体が血液中に有るかどうかを探す)
 現在、感染爆発が既に起きて居ると云う人と起きて居ないと云う人の間で論争に為って居るが、数を把握する為の検査はして居ないので実際の処は判らない。水掛け論をしても仕方が無いし、これ程感染者が増えている段階なので、数を把握する為の人口を元にした抗体検査をすべきだと考える。実際、イギリスでは既に350万個の抗体検査キットを準備して居る。

 「とても問題の大きい感染症だ」

 ・・・「これ迄上手く対応が出来て居た」のに東京で大幅に感染者数が増え始めたのは何故でしょうか。海外からの帰国者が増えたからでしょうか。

 海外渡航に依る感染例は、実は追跡が簡単なので大きな問題では無い。東京都で問題なのは、感染経路が追跡出来無い感染者が増えて居る点だ。発表でも有った様に、海外渡航者や院内感染以外に、半分程は感染経路が判って居ない。追跡出来て居ない感染者から国内で二次感染、三次感染が広がって居る可能性がある。

 ・・・地域毎の対策が重要に為ると云う話ですが、政府の専門家会議では、対策が出来る専門人材の不足が指摘されて居ました。

 自治体はこれ迄厚生労働省からの通達に従うだけだったのが、自分で考えて状況を判断し遂行し無ければ為ら無い。日本ではデータを活用する習慣が少なく、慣習や同調圧力で決めてしまい勝ちで、自分で決めて判断出来るリーダーが少ないので困った事に為るだろう。
 何を持って判断するのか、判断根拠と為るデータは何かをハッキリさせないと行け無い。これ迄に地力を培って来なかったと云う慢性的な問題だ。プロの人材は即時的に育成は出来ない。今からどうにか出来るものでは無い。

 ・・・新型コロナウイルスのデータに関しては、中国や欧米等から続々と研究が発表されて居ます。日本はダイヤモンド・プリンセス号の発生で諸外国より早く最初の危機を経験しましたが、日本発の論文は少無い様に見えます。

 日本からの論文は少ない。中国はアレ程大変な事態に為りながら、論文を出しており底力が有ると思った。日本は元々一杯一杯で医療制度を維持して居り、アカデミックな余力を削られて居る中で、アウトプットが出来て居ない。私自身も二本目に取り掛かって居るが、余裕が無くてナカナカデータを纏める事が出来無い状況だ。

 ・・・実際に新型コロナウイルスの患者を診て、どの様な印象を持たれましたか。

 とても問題の大きい感染症だ。8割は良く為ると云うのがミソだ。その方が感染は広がり易いから。エボラは致死率がモッと高いが、濃厚接触者にしか感染しない。依って、アフリカの限定的な感染症のママでそれ以外の地域では流行しない。新型コロナの致死率は1%有るか無いかだが、一部の人に怖い病気と云うのが厄介だ。

 「重要なのは、引き算の論理だ」

 ・・・8割が軽症の一方で、感染者の2割が入院、およそ5%に集中治療が必要に為ると言われて居ます。ニューヨーク州(人口約1900万人)のクオモ知事は、ピーク時には14万床のベッドと人工呼吸器3万台が必要に為ると連邦政府に支援を呼び掛けました。
 日本臨床工学技士会等が2月に実施した調査に依ると、日本で使える待機中の人工呼吸器は国内で約1万3000台。都内で約1800台。東京都は4000床を目指してベッドの準備をして居ます。人口も状況も異なりますが、十分な準備が出来て居るのでしょうか。


 ニューヨークは感染者数が一気に増加した為に、多くのベッドと人工呼吸器が一度に必要に為った。東京で足り無く為るのかどうかは分から無い。一度に多くの患者が出無い様にすれば足りるかも知れない。
 ソモソモ、人工呼吸器を買ってベッドを増やしても、使える医療従事者が居なければ、受け入れる患者は増やせ無い。此処でも人材は即席には作れ無い。専門技術を身に着けるのは時間が掛かる。これも地力が問われるので、今から急に増やす事は出来無い。
 この様な場合に重要なのは、引き算の論理だ。例えば、新型コロナの患者の8割は軽症者だが、現在は指定感染症に為って居る為原則入院・隔離措置が必要に為って居る。軽症者は入院させず、重症者にケアを集中させるべきだ。日本の医療には無駄が非常に多く、医療従事者に余裕が無い。無駄を排除する事で余力を作りキャパシティを増やせる。

 ・・・ダイヤモンド・プリンセス号で隔離措置の不備を訴えた岩田教授の動画は、世界のメディアで取り上げられ反響を呼びました。(その後、当初の目的を達成出来たとして動画は削除)一方で「一生懸命遣って居るのに批判するな」と云う様な、発信自体を否定する声も有りました。

 今でも批判を受けるし、LINE外しと同じ様な形で、学会のグループから黙って外す「虐め」の様な事も有った。同調圧力に合致し無い人を虐める文化が有るので、自分の意見を自分の名前で発信するのは難しいし勇気が要る。しかし、危機の時コソ意見を沢山言って議論する事が大事だと思う。
 英国では当初、強力な都市封鎖をせずに国民に免疫を着けさせる「集団免疫」と云う対応を取ろうとした。しかし、その後多くの批判を受けて他の欧州諸国と同じ様な対応に転換した。議論が二転三転したが、科学に基づいて対応すると云う点ではブレ無かった。失敗を認知して方針転換が出来た。

 日本は「皆で話して決めた事だから」と失敗を押し通してしまう。ダイヤモンド・プリンセス号も失敗し無かったと言い抜け様として居る。感染者のピークをナダラカにすると云うプランAの計画が上手く行っている間は好いが、Aが失敗した時の代案と為るプランBが無い。Aの失敗を予測し認める事が出来無い。
 失敗の基準が無ければ、何が起きても失敗には為ら無い。失敗を認知して方針を変えられるのは、プライドと気概、そして正義感を持ったプロフェッショナルだ。


 ・・・新型コロナウイルスはマダマダ分から無い点が多く「◯◯が効く」と云った様々な情報が出回って居り、何を信じるべきか戸惑ってしまいます。不確かさに耐える事が大事に為る。分から無い事は分から無い。無自覚で中途半端に分かった積りに為って居るのが一番失敗する。分から無いと云う事実に耐えられるかどうか、一人ひとりの成熟とプライドが試されて居る。

            Forbes JAPAN 編集部  以上









 【管理人のひとこと】

 国民的な人気コメディアンの志村けんさんが新型コロナウィルスで亡く為られた・・・心からご冥福を祈りたい。今迄素晴らしい笑いを全国に届けて頂き有難う御座いました。
 この様な著名人が犠牲に為られた事で、この感染症に対する意識が新たなレベルへと進んでしまった感がある。満70歳で現役で活躍されて居た・・・その人が意図も簡単に・・・との思いは多くの人に共通するものだろう。

 サテ、それで無くとも国民からの信頼の無い政府が、何を遣っても批判されるのは致し方ないのだが、一貫性の無い諸政策と「思い付き」の様な根拠の無い個々の要望・声明・・・経済的裏付けも無い諸政策に国民から怒りの声が発せられ、それに対して何時まで経っても何の具体策も出せない政府には、怨嗟に似た溜息が漏れて居る。全く遣る気が無いのか能力が無いのか、何を遣ってもダメなのが安倍政権なのだろう。
 誰かが批判を覚悟でリーダーと為り遣り切ら無ければ為ら無いのだが、政府主導のコロナ対策の諸機構に対し、岩田教授の様な非政府系の研究者の提言は実に貴重なもので、この様なものを汲み上げより良い方向へと進む基礎と為る。徒に言い訳や批判・反論をせず真摯に受け止めて頂きたい。
 抗体検査・・・これが今後の一つのポイントに為るだろう。詰り、新型コロナウィルスは既に蔓延して居ると仮定し、現状の・・・半分程度の確率でしか判定出来ないPCR検査と平行に抗体検査・・・ウィルスに対する免疫・抗体の有無を調べるレベルへと移行する必要がある・・・との提言だ。詰り多くの人が抗体を持つ事で次の対策が打て、将来の終息へと近付く道へと進める訳だ。









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東京に在る「孤立集落」の余りに厳しい現実




 東京に在る「孤立集落」の余りに厳しい現実

             〜東洋経済オンライン 3/29(日) 5:40配信〜


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  台風19号で大きな被害を受けた日原地区は今どう為って居るのでしょうか。以下、写真は全て3月中旬撮影(筆者撮影)

 人口約1400万人・・・世界でも有数のメガシティ東京の西北部に「孤立」との闘いを強いられて居る小さな集落がある。東京都西多摩郡奥多摩町日原(にっぱら)地区だ。東京の水源地で有る奥多摩は豊かな森林と山々に囲まれ、清冽な水が流れる川や沢が点在する東京の秘境と称される魅力溢れる地域だ。東京都心からは電車を利用して1時間半余りで着く。
 奥多摩町の中心に在る奥多摩駅から約10km、山を分け入った所に在るのが日原地区の中心地である。日原鍾乳洞や奥多摩登山・渓流釣りの拠点でシーズンには観光客やハイカー釣り人等で賑わう。

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 そんな山間(やまあいの小さな集落には40世帯66人が暮らして居る。人口の3分の2が65歳以上という超高齢社会の縮図といっていい地域である。スーパーや雑貨店は1軒も無い。買い物は約10km離れた奥多摩町の中心部に向かうしか無い、そんな集落だ。

 台風19号で大きな被害を受けた

 全国に猛威を振るった昨年10月12日の台風19号で、日原地区も大きな被害を受けた。被災直後の奥多摩町役場の職員による状況確認では、断水・停電・携帯電話不通が確認された。これ等の被害は復旧作業により1週間以内に解消されたが、町と日原地区を結ぶ唯一の生活道路である一般都道204号(日原街道)が、大沢バス停が在る平石橋付近で大量の土砂に依って崩落した。町から約3km・集落迄は7.4kmの地点である。
 日原街道は全面通行止めと為り、車が通行出来無い状況に陥った。一般車だけで無く、救急車や消防車と云った緊急車両も通行不可能。こうして集落の孤立が始まった。

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 生活道路の通行止めで先ず困るのは生活物資等の運搬である。台風直後の10月17日〜19日には自衛隊のヘリコプターが燃料・食料を計5回に渉って輸送した。9日後の21日に為って、崩落現場に人ひとりが通れる仮設の歩道が出来た。これで生活物資の運搬が徐々に可能と為り、町は日原自治会の協力を得て送迎サービスを開始した。
 奥多摩駅から崩落現場迄を町が、仮設歩道を各自で渡り、崩落現場から日原地区迄を自治会が車で送迎すると云うもので、平日は1日5便、休日は1日2便で実施された。

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 急峻(きゅぅしゅん)な崖と川に挟まれた崩落現場には大型の重機が入れず、復旧作業はナカナカ捗ら無い。そうこうして居る内に日原に冬が訪れた。標高600mを超える日原の冬は寒さが厳しい。12〜2月の最低気温は氷点下に為る。そんな冬を人々はどう乗り切ったのか。関係者に話を聞いた。

 消防職員が1カ月間は日原に寝泊まりして待機

 「今年は例年に比べ雪は少なかったですね。一度20cm程積もった位でした。冬場に欠かせ無い灯油は町の業者の方が隔週で運んで呉れました。日常の食料品や生活用品は、中継点(崩落現場)迄10人乗りのワゴン車等で行き、仮設の歩道を渡って役場が手配して呉れた送迎の車等で町に行って買って来ると云う生活です。有り難い事に2人の方が車を貸して下さり、その車も利用させて頂きました」(日原保勝会の担当者)

 何とも不自由な生活を余儀無くされた訳だが、台風から5カ月経った3月中旬現在でも孤立状況は解消されて居ない。この間、体調を崩したりした人は居なかったのだろうか。

 「台風から1カ月間は消防の職員の方が日原に寝泊まりして呉れました。その後も崩落現場に救急車が待機して呉れて居ます。今迄に救急搬送は3回ありましたが、幸い大事には至って居ません」(同)

 子供達の通学はどう為って居たのか。

 「小学生の子が2人居る世帯がありましたが、今は町に在る小学校の近くに家を借りて居ます。別の世帯の保育園に通って居る園児は、お母さんが町の保育園に送迎して居ます。この子は4月から小学生です」(同)

 孤立状態に置かれた日原の住人達は、地域の人々・町役場・有志等、色んな人々の助け合い・協力で寒い冬を乗り切って来たのだ。
 3月中旬の或る日、修復工事を進めて居る東京都建設局西多摩建設事務所の許可を得て、日原街道の崩落現場を取材した。3月14日に都道204号(日原街道)の奥多摩町側の一部区間(2.6km)が通行止め解除と為り、路線バスも崩落現場近くの大沢バス停まで運行を再開して居た。1日9便だ。

 取材日は快晴で穏やかな春日和。朝10時10分に奥多摩駅を出発する路線バスに乗り込む。乗客は筆者のみだった。大沢バス停迄の約10分間、乗り降りは1度も無かった。運行再開後、地元の人以外では、大沢の渓流釣り場を訪れる人が数人乗車したのみだと云う。

 切り立った崖に沿う様に仮設歩道

 大沢バス停に着くと、20分後に折り返すこのバスを数人の人達が待って居た。町への買い物だろうか。バス停近くの駐車場には、イザと云う時に備えて救急車両が待機して居る。
 ゲートが設けられた平石橋には通行止めの看板が立て掛けられ、ガードマンが通行をチェック。取材の旨を伝えて橋を渡り道を進む。
 100m程行くと、工事関係者の車が数台止まって居る。その奥で小型の油圧ショベルが作業して居る光景が目に入って来た。復旧工事が行われて居る道路の右端に安全柵が設けられ、切り立った崖に沿う様に仮設の歩道が延びている。

 「1名ずつ通行してください」「手荷物重量40kg(ポリ缶2個)程度」「自転車・バイク通行禁止!!」の表示が有る。通行人が誰も居ない事を確認して仮設歩道を進む。アスファルトの道を10m程進むと今度は鉄板の道に為る。安全柵の左側は崩落現場だ。
 道路が削り取られた斜面の土砂の部分はコンクリートで固められて居る。清流は何事も無かったかの様な美しい流れを見せて居る。鉄板の仮歩道の長さは100m程だろうか。終点近くの河原には山から転がり落ちて来たのだろう、巨岩が上部に土砂を付けた状態で転がって居る。
 仮歩道を渡り切った先の道路上にはミニパトカーが待機。改めて崩落現場をチェックする。落下して来た岩や石が河原にゴロゴロと散乱し、道路が大きく抉り取られた跡が何とも痛ましい。

 急峻な崖と川に挟まれた崩落現場での工事は、素人目で見ても大変である事が分かる。工事関係者らの全力の復旧作業で、ゴールデンウィーク頃には仮復旧し、日原街道の通行止めが解除される見通しだ。最も、路線バスの様な大型車は運行不可で、完全復旧には未だ1年半以上掛かる見込みだと云う。それでもマイカーの通行が可能に為れば、日原の人達の不便解消に繋がる事は間違い無い。

 多くの観光客が訪れる日原鍾乳洞の再開は?

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 冒頭でも触れたが、日原地区には関東随一と云われる日原鍾乳洞が在る。日原を代表する観光スポットで、年間10万人の観光客が訪れる。此処も台風以来、閉鎖されたママだ。日原保勝会の方が内部をチェックした処、鍾乳洞内には被害は無かった。
 だが、道路に立って居た電柱が傾いてしまい、鍾乳洞内部は停電が続いて居ると云う。その補修工事も、日原街道の通行止めが解除され無いと出来ない。昨年10月迄に7万7000人の観光客が訪れた鍾乳洞。12月迄で2万人以上の観光客を失った事に為る。

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 崩落現場の対岸の道路の脇に1体のお地蔵さんが鎮座して居た。地酒が供えられたお地蔵さんは新しい真っ赤な帽子とマフラーを身に纏い、崩落現場の復旧作業を見守って居る様だった。
 現場の取材を終え、奥多摩への道をユックリと歩きながら下って行くと、春の穏やかな日差しを浴びて紅白の梅の花が咲き誇って居た。真っ青な空を見上げると、オオタカだろうか大きな猛禽類の鳥が羽を広げて優雅に舞って居る。

 「こうした生活が長引いて、不安やストレスが溜まって居る人も居ます。でも、日原の住民は我慢強いから何1つ文句も言いません。今は、1日も早く復旧して欲しい。それだけですね」(日原保勝会の担当者)

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 一極集中が加速し、東京オリンピック・パラリンピックに向けた再開発ラッシュが続いて来た東京。その片隅に、未だに台風被害による孤立状況が続く集落があった。


            山田 稔 ジャーナリスト   以上



 











 


江上剛の「福島第1原発を見て来た」【怒れるガバナンス】




 





 江上剛の 「福島第1原発を見て来た」【怒れるガバナンス】

           〜時事通信 作家・江上 剛 3/29(日) 10:04配信〜


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 今、日本国内、そして世界が新型コロナウイルスと云う、見え無い恐怖に怯えて居る。見え無い存在に対し、人間は必要以上に恐怖を覚える。見えて居れば、具体的な対策を講じる事が出来るのだが、見え無い存在に対してはそうはいか無い。一方、恐怖が人間の行動に制約を加える事で、人間は今日迄、生き延びる事が出来たのかも知れない。

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 過つて原発事故処理の拠点と為ったJヴィレッジ。訪れた時は丁度、サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)候補の強化合宿が行われて居た。写真左は、指示を出す高倉麻子監督 2020年2月19日 福島県楢葉町【時事通信社】

 風評被害

 処で、今迄日本を見え無い恐怖に陥れたのは、コロナ等のウイルスだけでは無い。2011年3月11日の東日本大震災における巨大津波が引き起こした、東京電力福島第1原発事故による放射性物質放出もそうだ。
 私は東京在住だが、近所のコンビニエンスストア・自動販売機からペットボトル入りの水が全て消えた。放射能被害を恐れた人々がパニックを起こしたのだ。今年2月18〜19日の2日間、私は東電のスタッフに案内されて、福島第1原発の廃炉状況などを見学して来た。今、廃炉の現場はどう為って居るのだろうか。東電の社員や廃炉作業に携わる人々の思いは、如何なるものだろうか。

 2月18日、常磐本線いわき駅に到着。放射能の風評被害と闘いながら、高付加価値農業に取り組む広野町振興公社に立ち寄る。此処では、バナナを栽培して居る。ナカナカ採算ベースに乗ら無いのが悩みだ。これ等の地域復興事業は、東電の福島復興本社が販売活動等で支援して居る。
 復興本社の担当者によると、イベント等を行うと、福島の農産物は好く売れるのだが、スーパー等の恒常的な流通ルートには風評被害の為に流れ無い。それが最大の悩みだ。中国、韓国の福島産品忌避は問題だが、日本国内での風評被害はもっと大きな問題だ。

 事実と記憶と記録

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    福島第1原発事故の対応拠点だったJヴィレッジ内に建てられた仮設住宅 2011年9月6日 福島県楢葉町【時事通信社】

 宿泊はサッカー施設「Jヴィレッジ」原発事故の際、警戒区域の半径20キロ圏から外れて居た為、此処を拠点に原発事故処理に当たった事で有名に為った。今では、元のサッカーコートに戻り、往時を忍事は出来ない。コートではサッカー日本女子代表(なでしこジャパン)候補が練習して居た。
 2月19日、イヨイヨ廃炉作業の見学に行く。先ず訪れたのは、富岡町にある東京電力廃炉資料館。資料館の担当者が真剣な思いと資料館の役割を説明して呉れた。

 「事故の事実と記憶と記録。これをキチンと残し、それ等を踏まえた私ドモの反省と教訓を決して忘れる事無く社会にお伝えする。これは単に私ドモの責任の一つと捉えて居ます」
 「30年・40年の長きに渉る廃炉事業の全容をお伝えする事で、皆さんの不安を少しでも払拭(ふっしょく)する」
 「あの巨大津波は事前の予想が困難だったと云う理由で、今回の事故を天災と片付けては為ら無いと考えて居ます。当社は事前の備えに依って防ぐべき事故を防ぐ事が出来ませんでした。この事実に正面から向き合い、私達東京電力は深く反省致します」


 思わず身が引き締まるが、その説明の中で、事故を防ぐ機会が6回程在ったのだが、安全に対する過信や利益重視等から対策を講じ無かったとの説明には、正直に言って驚いた。東電の旧経営陣が事故を予測出来無かった、と裁判で主張して居た記憶が有るからだ。資料館の担当者の説明は、旧経営陣と立場を異にする様な気がした。

 「責任は経営者に」
 
 「私達と云う表現で東電の責任を強調されて居ますが、事故の本当の責任は誰に有ると思いますか」と私は聞いた。担当者は即座に「経営者だと思います」と回答した。
 私は、その言葉に廃炉や復興現場で働く東電社員の覚悟を思い知った。事故は天災では無い人災なのだ。だから、二度と起こさ無い様に取り組む事が出来るのだ。

 電源喪失・注水作業・ベント(排気操作)等の様子がスクリーン上で細部に渉って説明される。

 《3月11日14時46分地震が発生。出力運転中であった1号機・2号機・3号機は設計通り原子炉自動停止。地震により、発電所の外部からの電気を受電出来無く為ったが、非常用電源に切り替える事が出来、原子炉の冷却が維持された。地震発生からおよそ50分後、15メートルもの巨大な津波が発電所を襲った》
 
 刻々と変わる事故状況に、私の胸は締め付けられる様に緊張し始める。津波で非常用電源を喪失した原子炉の高温化を防ぐ為、懸命の注水作業が行われる。しかし《12日15時36分、1号機原子炉建屋で水素爆発が発生》テレビで見た、原発が爆発すると云う信じられ無い光景が蘇る。

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       東京電力福島第1原発の吉田昌郎所長[代表撮影](2013年7月9日死去)【時事通信社】

 使命感だけで

 高い放射線量の中、消防車等で海水注水が進められる。何とか原子炉を冷却し無ければ為ら無い。処が《3号機原子炉建屋で水素爆発》《4号機原子炉建屋で水素爆発》 実際に事故処理作業に当たった人がスクリーンに映し出され、彼等が当時の状況を語る。後世の東電社員が事故当時の事を追体験する為に、彼等の肉声を残したのだ。事故処理に必要な人材は此処に残る・・・との指示が吉田昌郎所長から出る。

 「誰一人NOと言う人は居なくて、皆残って作業を続けたいと云う思いが有りました。アノ数字のレベルから言うと、相当危ないと云うのは皆認識して居たんですけど、多分、それを誰も感じる事無く、恐らく、使命感だけで皆残る、俺が遣ら無きゃどうするんだと」
 「そんな意向でですね、皆率先して、自分から残って呉れたんだと思います。今、思い起こせば、色んな準備不足はヤッパリ有ったと思います。当時、発電をしてナンボの部隊だと、ズウっと考えて居りましたので」
 「文字や画像だけでは伝わら無いものが結構有りまして、我々は、体験者として・語り部として、暫らく遣って行か無いといけ無いと思います」

 
 事故を知ら無い若い東電社員に、彼等の体験が血肉と為って伝われば好いと切に思った。

 ヒーローで無く加害者

 映画「Fukushima 50」が公開された。原発事故の時、決死の覚悟で現場で働いた東電社員達の姿を描いたものだ。担当者に依ると、東電は映画には一切、協力して居ないと云う。その思いは、自分達はヒーローでは無く、事故を起こした加害者なのだと云う意識からだろう。
 実際、これから事故の責任を抱えながら、何十年も続く廃炉作業、そして、事故を起こした自分達の失敗を語り継がねば為ら無い事を想像すると、私は東電が無間地獄に落ちてしまったのではないかと感じた。しかし、絶対に手を緩める事無く、継続して貰いたい。東電社員の覚悟が試されるだろう。

 廃炉のスケジュールは、困難を極めて居る。原子炉の安定化を保ちつつ、燃料やデブリと云う燃料が溶けた物を取り出さねば為ら無い。溜り続ける汚染水を何とかしなくては為ら無い。

 「事故当時の1号機です」写真が映し出される。当時を思い出し、胸が痛む。

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 福島第1原発の1号機原子炉建屋(中央)左は水素爆発を免れた2号機原子炉建屋 2011年4月11日 [東京電力提供]【時事通信社】

 汚染水対策

 「1号機は、使用済み燃料プールからの燃料取り出しに向けて、建屋内のガレキ撤去作業を継続。今後は、大型カバーを設置し、カバー内で撤去作業を進めます。燃料デブリ取り出しに向けては、原子炉格納容器内の調査を進めて居ます」
 「2号機は、1号機の水素爆発の衝撃により、原子炉建屋上部側面のパネルが開きました。水素が外部へ排出された為水素爆発は免れました。現在はパネルを閉じ、使用済み燃料プールからの燃料取り出しに向けて、より安全かつ安心な工法に決定し、準備作業を進めて居ます」
 「又、新たな津波が襲来した場合に備えて、防潮堤工事等を進めて居ます。構内の地表は、放射性物質の飛散抑制や放射線量を低減する為に、フェーシング工事に取り組み、殆どのエリアで完了しました」
 「汚染水対策も進んで居ます。汚染水は、破損した建屋の屋根から入り込む雨水と建屋に流れ込む地下水が、放射性物質に触れる事で発生します。その為、雨水が地面に染み込む事を防ぐフェーシングや、建屋周辺の井戸からの地下水汲み上げ、更には、建屋を囲む様に土の中に氷の壁を作り、流れ込む地下水の量を減らして居ます」
 「海へと向かう地下水は、沿岸に造った鋼鉄製の壁で塞ぎ止め、溢れない様、海際の井戸で汲み上げる事で、港湾内の環境はより安全な状態を保てる様に為って居ます。発電所の周辺海域では、様々な箇所でサンプリングを実施しており、放射性物質の濃度は、国の基準を下回る数値で安定して居ます」




 





 今に為って

 映像を見ながら丁寧な説明が続く。私が一番関心が有るのは汚染水問題だ。実は、3月に朝日新聞出版から「トロイの木馬」を出版した。汚染水を巡って、詐欺師が国家転覆を図り暗躍する物語だ。何故、こんな小説を書いたのか。それは風評被害に対する怒りからだ。
 事故当初、政府は汚染水から放射性物質のトリチウムが取り除け無い等とは説明し無かった。それなのに、今に為って、他国の原発でも、トリチウムを含んだ汚染水を海に流して居る為、福島原発の汚染水も海に流す事を検討すると言い始めた。しかし、風評被害や地元の反対を受け放出時期は未定だと云う。

 学者は安全だと言うが、誰もそんな事を信じて居ない。〔放出時期未定〕は、それに依る問題に対して、責任を取る覚悟が無いのを印象付けたからだ。
 汚染水は、東電も苦労して居る。地下水が、燃料デブリ等放射性汚染物質に触れる事で、汚染水に為る。現在970基のタンクが設置されて居るが、2022年にはタンクが一杯に為ってしまう。汚染水は喫緊の問題なのだ。

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 陸上自衛隊の消防車による福島第1原発3号機(左手前)への放水 2011年3月18日 [陸上自衛隊中央特殊武器防護隊提供]【時事通信社】

 四つの対策
 
 「地下水の抑制が、この汚染水の抑制にも繋がると云う事で、大きな対策を四つ実施して居ります。先ずは、建物の手前で井戸を掘り、地下水を汲み上げて居ます。この汲み上げた水は、東電で水質の検査を実施して居ます」
 「世界保健機関・WHOの水質、飲料水の水質ガイドラインと云う国際的な基準が有ります。その基準より、トリチウムは6分の1・セシウムは10分の1と云う非常に厳しい目標値を設定しております。この目標値を満たした水に付いては全て、現在も海洋へ放出して居ます」
 「二つ目が、建物の直近で地下水を汲み上げてしまう『サブドレン』と云うものです。1号機から4号機の周囲45カ所、このサブドレンが在ります。汲み上げた水は、汚染源に近い事から一部浄化設備を通します。浄化設備を通した水を、東電と第三者機関で検査して、運用目標値以下の水は海へ放出して居ます」
 「三つ目が遮水壁です。凍土壁と云う言い方もして居ました。1号機から4号機の周囲1.5キロ、グルッと直径50センチ程の太い配管を2本張り巡らして居ます。その直下に1メートル間隔で地下30メートル迄細い配管を埋設して居ます」
 「その中にマイナス30度の冷媒を流し込み地中で土を固めてしまう。丁度アイスキャンディーを反対にした様な、そう云ったイメージです。そうする事で、陸側から来る地下水を一度此処でブロックして、海側へ迂回(うかい)させます」

 
 凍土壁に付いては、上手く機能して居ないと云う情報のみを記憶して居たので、私は「上手く機能したんですか」と聞いた。 回答は「機能して居る」とキッパリ。

 「四つ目が、ビデオの中で出て来たフェーシングと云われる舗装工事です。爆発し燃料デブリが有るこの大熊町のエリアで、全面的にフェーシング工事を実施しました」







 自然との闘い

 「それと、もう一つ。先程申しました燃料デブリですが、水で冷やす必要性があります。新たな水を外部から注水すると汚染水が増える一方なので、地下から入って来る水を流用する事で、地下水の発生を抑制して居ます」
 「汚染水と為った水は、人体に影響の有るセシウムとかストロンチウムを、セシウム吸着装置と云う装置で取り除きます。取り除いた後の水を淡水化装置に落とします」
 「現在福島第1には、処理前の水と合わせて118万トン程、水を保管して居ます。この水を処理する技術は世界的に未だ確立して居ません。ですので、浄化装置『アルプス』を通した水は風評被害も考慮して、コチラ大熊町のエリアにタンクを設置し保管して居ます」


 コレだけ対策を講じても、汚染水は未だに1日170立方メートル発生して居る。以前は400立方メートル以上の汚染水が発生して居た。今後は100立方メートル以下に迄抑え込む努力が為されて居る。自然との闘いが続く。

 「現在、この処理水の扱いに付いては、大きく三つの方針が示されて居ます。大気放出・海洋放出・又は大気放出と海洋放出の両方です」
 「今後、政府が地元の方々との意見調整を行い、最終的な処理方針が決定されます。それを東電が受けて、再度、地元の方々と話し合いをさせて頂いて、丁寧に対応して行きます」
 「今は、常時4000人以上の方々に廃炉作業に協力頂いて居ます。(中略)作業員の被ばく量ですが、昨年の11月単月の平均値は1人当たり0.31ミリシーベルトと云う値です」
 「被ばく量は国の基準があり、単年度で50ミリシーベルト、又は5年間で100ミリシーベルト。厳しめにすると、5年間で100ミリシーベルト単年度は20ミリシーベルトと云う値に為ります。この20ミリシーベルトを東電の管理値として居ます」


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 東京電力福島第1原発事故で放射能に汚染された土地の除染作業で出た廃棄物を保管する仮置場 フレコンバッグと呼ばれる黒い袋に詰められて居る 2016年1月28日 福島県南相馬市原町区【時事通信社】

 大量の黒い袋

 廃炉資料館を出発して福島第1原発に向かう。広野町等、早期に避難解除に為ったエリアは、9割の人が帰還し新しい住民等も増え人口増に為ったのだが、富岡町の様に最近避難解除されたエリアは、1割程度しか住民が帰還して居ない。
 その為、学校には生徒が少なく、東電の社員が生徒達と一緒に体育の授業を行う等の支援をして居ると云う。

 「富岡町のこの区間は、車のみの通行と云う事で、オートバイや自転車、或いは徒歩での通行が禁止されて居ます。又、車に付いても、窓ガラスを閉める等対策が推奨されて居ます」
 
 「未だ線量が高いんですか」
 「一部、未だ高いエリアがあります」  
 「しかし、福島第1原発が普通に作業出来る線量なのに、どうしてソンなに高いんですか」  
 「福島第1原発の中は、東電が作業するに当たり、作業者の安全確保と云う処から除染を終了して居ます。しかし、発電所の外の除染に付いては、国等にお任せして居る状態です。その為、未だ除染が進んで居ないエリアが非常に数多くあります」

 道路沿いには、廃虚と為った大型店が点在して居る。侘しさを感じる。除染作業で出た廃棄物を入れた大量の黒い袋「フレコンバッグ」群が見える。

 「福島県内各地には、この様な一時保管場所が約720カ所程有ると伺って居ります。2023年の3月迄には、福島第1周辺で建設しております中間貯蔵施設に全て運び入れられると伺って居ります」

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 東京電力福島第1原発の敷地内の放射能汚染水を貯めるタンク 2019年1月30日 福島県大熊町[代表撮影]【時事通信社】

 汚染水のタンク群

 大熊町に入る。福島第1原発は、大熊町と双葉町に跨って居る帰還困難区域だ。無人の家が続く。住居はそのママ残り周囲を雑草が覆って居る。悲しい景色だ。

 「民家の入り口にバリケードが張られて居ます。このバリケードが張られた家に付いては、年間30回と云う回数限定で戻られ、荷物等の整理をされて居ます」

 除染作業を行って居る様子が見える。表土を20〜30センチ程剥ぎ取り、新しい土を入れ直す。剥ぎ取った土はフレコンバッグに入れ、福島第1原発の近くで建設して居る中間貯蔵施設に運び入れる。

 「この大熊町の中屋敷地区と大川原地区は、昨年の4月10日避難指示が解除されました。大川原地区は昨年、事故以降初めて稲作が行われました。秋には稲の収穫も終えて国の検査に出されて居ます。合格したお米に付きましては、これから県内外のイベントに使われると伺って居ます」

 タンク群が見えて来る。汚染水のタンクだ。福島第1原発に到着。グレーの建物が新事務本館。東電社員の執務スペースで1000人程が働く。と、此処迄書いて来て、規定の分量を超えてしまいました。残念ですが、この先は次の機会にご報告したいと思います。


         時事通信社「金融財政ビジネス」2020年3月23日号より

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 江上 剛(えがみ・ごう) 早大政経学部卒 1977年 旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行 総会屋事件の際、広報部次長として混乱収拾に尽力 その後「非情銀行」で作家デビュー 近作に「人生に七味あり」(徳間書店)等 兵庫県出身










  「彼等はヒーローに為れ無いジレンマを背負って居る」
 
 「Fukushima 50」若松節朗 バツ1「いちえふ」竜田一人 対談


              〜Movie Walker 3/29(日) 20:30配信〜


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            「Fukushima 50」をめぐる特別対談、後半も白熱!

 〜国内興行ランキングで2週連続1位と為り、その後もランキング上位をキープして話題を呼んで居る映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ) 東日本大震災時の福島第一原発事故を描く本作では、死を覚悟して現場に残った作業員達の真実が描かれ、大いに反響を呼んで居る。
 ソコで、本作のメガホンを執った若松節朗監督と、事故後に福島第一原発(イチエフ)で作業員として働いた体験談を綴った漫画「いちえふ 〜福島第一原子力発電所案内記〜」の竜田一人の対談を実施、互いの作品に付いてタップリと意見交換をして貰った。今回はその後編をお届けする〜


 「Fukushima 50」のタイトルは、事故の対処に当たった作業員達が世界のメディアからFukushima 50・フクシマフィフティと呼ばれた事にちなむ。主演の佐藤浩市を初め、渡辺謙・吉岡秀隆・緒形直人・火野正平・平田満・萩原聖人・佐野史郎・安田成美と云った演技派俳優達が挙って参加し話題と為って居る。
 又、第34回MANGA OPENの大賞を受賞した「いちえふ 〜福島第一原子力発電所案内記〜」は、東日本大震災を機に会社を辞め、福島第一原子力発電所で作業員として従事した竜田自身の経験を元に、克明なタッチで描くルポルタージュ漫画と為って居る。


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 「廃炉作業はこの先も続くから、彼等はヒーローには為れ無い」若松監督

 ・・・実際にイチエフで働いて居た竜田さんには「Fukushima 50」の登場人物はどう映りましたか?

 竜田 事故の時、どう云う人達が頑張って呉れて居たのかが好く判りました。作業員にしても渡辺謙が演じた吉田所長にしても、結局は普通の人間なので、そう云う人達が必死に頑張って居た事が伝われば好いなと思いました。世界中からFukushima 50とヒーローみたいに言われて居るけど、実は普通のおじさん達なので。
 若松 確かに、映画を観た人達の中には「ヒーローの様に描かれて居る」と云う人達も居ます。原発問題が全て収まって居るのならヒーローと言い切って好いのかも知れないけど、この先もズッと続いて行く。だから、彼等はヒーローには為れ無いんです。
 竜田 確かに、その辺りのジレンマに付いても考えて欲しいですね。

 ・・・竜田さんは、震災後にイチエフで働き始められましたが、実際に働いてる方は、殆ど地元の方だそうですね。

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 竜田 地元の方々は、臭いかも知れないけど「俺達が何とかして遣る」ミタイな使命感が有るんだと思います。又、原発にお世話に為ったから、最後迄看取って遣ろうと云う人も居れば、単純にお金が稼げるから行くと云う人も居ます。だからイチエフは、世間で言われて居る程地元で嫌われて居る存在では無いです。その辺りの空気感の違いは、自分で行ってみて初めて判りました。
 若松 アソコで働く人が居なければ事故後の処理も出来無いし、廃炉の作業をして行く人も必要に為りますし、その人達のお世話をする人も居なければいけ無い。これからも大変ですよね。

 「アソコは未だ危険なんだと云うイメージを払拭して行きたい」竜田

 ・・・終盤、佐藤さん演じる伊崎が、帰還困難区域と為って居る富岡町で満開の桜を観るシーンが非常に印象的でした。「原発は明るい未来のエネルギー」と云う看板もカメラが確りと捉えて居ます。

 若松 実は、シナリオでは中盤に描かれて居たんですが、あのシーンは一番最後に出したいと思ったので、僕の意地でそうしました。
 竜田 でも・・・車が走って居るルートが実際とは違いますよね?現地を知って居るとワープして居るのが判っちゃうので(苦笑)
 若松 それはゴメンなさい!でも、映画的には伊崎があのルートを通って来た事に意味があったので・・・
 竜田 重箱の隅を突く様で申し訳ありません。勿論、演出的に考えるとアレしか無かったとは思いました。更にもう1つ・・・好いですか。映画の通り、アノ時点では桜を見て居る見物客が居ないんですが、その後、アノ桜並木のエリアが部分的に解除されて行って、今はお花見が出来る様に為って居ます。双葉町の一部や大熊町の一部が避難解除に成り、夜ノ森駅も解除に為って、3月14日は常磐線が通りました。

 若松 そうでしたか!とは言え、全部は解除に為って居ない訳ですよね。
 竜田 そうナンです。未だ全部では無いけど、映画で描かれて居るよりも更に長い範囲で花見が出来る様に為ったので、ドンドン伝えて行かないとダメだなと。そうじゃ無いと、アソコは未だ危険なんだと云うイメージだけが残ってしまう。
 僕が漫画の中で描いた楢葉のコスモス畑の場所にも商業施設が出来ました。もう1回田んぼに為れば好いなと思って居たんですが、今は新しい病院や復興住宅・スーパー等、色んなものが出来て来ました。長らく積まれて居た汚染土もドンドン片付けられて居ます。

 「風評被害を防ぐ為の漫画を、是非描いて欲しい」(若松監督)

 ・・・地元では、少しズツでも復興が進んで居ると云う事ですね。

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 若松 そう云う情報を得られるだけでも印象が随分変わりますね。原発のタンクの水を海に流すかどうかと云う問題はどう為って居るんですか?
 竜田 実は大前提として、今溜まって居る水全部が一度に流れたとしても、環境にも生物にも影響は無いと云う報告が上がって来て居ます。では何故漁師さん達が反対して居るかと云うと、タンクの水を流すと風評被害が起きると心配して居るからです。只一方、ドンドン溜め続けて行く事に依っても「未だ、アンナに危険なものが一杯有る」と云う事自体が風評に為って行くので、どうにかしなければ為りません。
 若松 何故、国が現状をキチンと説明出来ないんだろう?
 竜田 最終的には、責任有る立場の人間が石を投げられる覚悟で「私が責任を取るから遣りましょう」と言うしか無いでしょう。東電も漁師さん達も「流してください」とは言え無いから。誰かが泥を被るしか無いんです。

 ・・・可成りハードルが高そうですね。

 竜田 風評被害が起こると云うけど、実は今迄も水の放出は実施して居るんですが、ソコ迄騒ぎには為ら無かった。勿論タンクの水を流すと為ると、多少は騒ぎに為ると思いますが、計画的に情報公開をしながら遣って行けば、風評被害を防ぐ事も可能な筈です。それは、ズッとこの事象を追って来た人なら判る事だと思います。
 若松 ソレを漫画で描く事は出来ませんか?
 竜田 何とか漫画にしたいんですが、この話を描いてもエンタテインメントに為ら無いんです。
 若松 勿論、全部を真面目に描くのでは無く、途中に貴方の歌等も入れたりして。

 ・・・竜田さん、被災地で弾き語りもされて居ますし、漫画にも登場して居ますよね。

 若松 コレは誰でも出来る事では無いので。竜田さんの漫画は判り易いので是非描いて欲しいです。コレは竜田さんに与えられた使命ですよ!
 竜田「そう言われると辛いですが、頑張ります(苦笑)


      Movie Walker・取材・文 山崎 伸子    以上



 



 








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