アフィリエイト広告を利用しています
ファン
検索
<< 2020年01月 >>
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
最新記事
写真ギャラリー
最新コメント
タグクラウド
カテゴリーアーカイブ
プロフィール
ヨリちゃんさんの画像
ヨリちゃん
プロフィール

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

2020年01月07日

「日本の借金1000兆円」はヤッパリウソでした それ処か財政再建は実質完了してしまう!





 


 

  「日本の借金1000兆円」はヤッパリウソでした 

   それ処か財政再建は実質完了してしまう!



             1-9-5.jpg

              〜経済学者 嘉悦大学教授 橋 洋一〜


 鳥越俊太郎氏もダマされて居た

 先週26日(土曜日)大阪朝日放送の番組「正義のミカタ」に出た。大阪のニュース情報番組だが、東京とは違って自由な面白さがある。ソコで「日本経済の諸悪の根源はZ」と云うコーナーをやった。Zとは財務省である。
 その中で筆者が強調したのは「借金1000兆円のウソ」である。借金が1000兆円も有るので、増税しないと財政破綻に為ると云う、殆どのマスコミが信じて居る財務省の言い分が正しく無いと指摘したのだ。借金1000兆円、国民一人当たりに直すと800万円に為る。
 皆さん、コンナ借金を自分の子や孫に背負わせて好いのか。借金を返す為には増税が必要だ・・・こんなセリフは誰でも聞いた事があるだろう。財務省が1980年代の頃から繰り返して来たものだ。

 テレビ番組は時間も少ないので簡単に話した。「借金1000兆円と云うが、政府内にある資産を考慮すれば500兆円。政府の関係会社も考慮して連結して観ると200兆円に為る。これは先進国と比較しても大した数字では無い」 
 これに対して、番組内で、ゲストの鳥越俊太郎さんから「資産と云っても処分出来ないものばかりでしょう」と反論があった。それに対して、多くの資産は金融資産なので換金出来ると言った。

 筆者がこう言うのを財務省も知って居るので、財務省は多くのテレビ関係者に対して「資産は売れ無いものばかり」と云うレクをして居る。鳥越さんも直接レクされたかがどうかは定かで無いが、財務省の反論を言って来たのには笑ってしまった。
 番組が昼に掛かり15分位の休憩があった。その時、鳥越さんから「金融資産とは何ですか」と筆者に聞いて来た。「政策投資銀行(旧日本開発銀行)やUR都市機構(旧住都公団)等の特殊法人、独立行政法人に対する貸付金・出資金です」と答えた。それに対して「それ等を回収したらどう為るの」と更に聞かれたので「民営化か廃止すれば回収と云う事に為るが、それらへの天下りが出来なく為る」と答えた。

 この遣り取りを聞いて居た他の出演者は、CM中の方が為に為る話が多いと言っていた。実際に、番組中で言う積りだったが、時間の都合でカットせざるを得無くなった部分だ。借金1000兆円・・・これは二つの観点から間違って居る。

 バランスシートの左側を見てみれば・・・

 第一に、バランスシートの右側の負債しか言って居ない。今から20年近く前に、財政投融資のALM・資産負債管理を行う為に、国のバランスシートを作る必要があった。当時、主計局から余計な事をするなと言われながらも、私は財政投融資が抱えて居た巨額の金利リスクを解消する為に、国のバランスシートを初めて作った。
 財政が危ういと云う、当時の大蔵省の主張はウソだった事は直ぐに判った。但し、現役の大蔵官僚であったので、対外的に言う事は無かった。

 筆者の作った国のバランスシートは、大蔵省だからか「お蔵入り」に為ったが、世界の趨勢から、その5年位後から試案として、10年位後から正式版として財務省も公表せざるを得無く為った。今年3月に、2013年度版国の財務書類が公表されて居る。
 http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2013/national)

 その2013年度末の国のバランスシートを見ると、資産は総計653兆円。その内現預金19兆円・有価証券129兆円・貸付金138兆円・出資66兆円・・・計352兆円が比較的換金可能な金融資産である。その他に、有形固定資産178兆円・運用寄託金105兆円・その他18兆円。

 負債は1143兆円。その内訳は、公債856兆円・政府短期証券102兆円・借入金28兆円・・・これ等が所謂国の借金で計976兆円。運用寄託金の見合い負債である公的年金預り金112兆円・その他45兆円。
 ネット国債・・・負債の総額から資産を引いた額 詰まり、1143兆円−653兆円は490兆円を占める。先進国と比較して、日本政府のバランスシートの特徴を言えば、政府資産が巨額な事で政府資産額としては世界一である。政府資産の中身に付いても、比較的換金可能な金融資産の割合が極めて大きいのが特徴的だ。

 なお、貸付金や出資金の明細は、国の財務書類に詳しく記されて居るが、そこが各省の天下り先に為って居る。実は、財務省所管の貸付先は他省庁に比べて突出して多い。この為、財務省は各省庁の所管法人にも天下れるので、天下りの範囲は他省庁より広い。要するに「カネを付けるから天下りも宜しく」と云う事だ。

 財政再建は、実は完了して居る?

 第二の問題点は、政府内の子会社を連結して居ない事だ。筆者がバランスシートを作成した当時から、単体ベースと連結ベースのものを作って居た。現在も、2013年度版連結財務書類として公表されて居る。http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2013/national/hy2013_renketsu.pdf

 それを見ると、ネット国債は451兆円と為って居る。単体ベースの490兆円よりは少なく為って居る。但し、この連結ベースには大きな欠陥がある。日銀が含まれて居ないのだ。日銀への出資比率は5割を超え、様々な監督権限もあるので、紛れも無く日銀は政府の子会社である。
 経済学でも、日銀と政府は「広い意味の政府」とマトメて一体のものとして分析して居る。これを統合政府と云うが、会計的な観点から言えば、日銀を連結対象としない理由は無い。筆者は、日銀を連結対象から除いた理由は知ら無いが、連結対象として含めた場合のバランスシート作る事は出来る。

 2013年度末の日銀のバランスシートを見ると、資産は総計241兆円、その内国債が198兆円である。負債も241兆円で、その内発行銀行券87兆円、当座預金129兆円である。そこで、日銀も含めた連結ベースでは、ネット国債は253兆円である。(2014.3.31末)
 直近ではどう為るだろうか。直近の日銀の営業毎旬報告https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2015/ac151220.htm/を見ると、資産として国債328兆円、負債として日銀券96兆円、当座預金248兆円と為って居る。

 直近の政府のバランスシートが判らないので正確には言えないが、敢て概数で言えば、日銀も含めた連結ベースのネット国債は150〜200兆円程度であろう。そのママ行くと、近い将来にはネット国債はゼロに近く為るだろう。それに加えて、市中の国債は少なく資産の裏付けの有るものばかりに為るので、或る意味で財政再建が完了したとも言えるのだ。
 ここで「日銀券や当座預金も債務だ」と云う反論が出て来る。これは勿論債務であるが、国債と比べてホボ無利子であり、しかも償還期限も無い。この点は国債と違って、広い意味の政府の負担を考える際に重要である。

 滑稽過ぎる 「日本の財政は破綻する」論

 この様にバランスシートで見ると、日銀の量的緩和の意味がハッキリする。政府と日銀の連結バランスシートを見ると、資産側は変化無し、負債側は国債減・日銀券(当座預金を含む)増と為る。詰まり、量的緩和は、政府と日銀を統合政府で見た時、負債構成の変化であり、有利子の国債から無利子の日銀券への転換と云う事だ。

 この為、毎年転換分の利子相当の差益が発生する・・・これをシニョレッジ〔通貨発行益〕と云う。毎年の差益を現在価値で合算すると量的緩和額に為る。又、政府からの日銀への利払いは直ちに納付金と為るので、政府に取って日銀保有分の国債は債務で無いのも同然に為る。これで、連結ベースの国債額は減少する訳だ。
 量的緩和が、政府と日銀の連結バランスシートにおける負債構成の変化で、シニョレッジを稼げるメリットがある。と同時にデメリットもある。それはシニョレッジを大きくすればする程、インフレに為ると云う事だ。だから、デフレの時にはシニョレッジを増やせるがインフレの時には限界がある。

 その限界を決めるのがインフレ目標である。インフレ目標の範囲内であればデメリットは無いが、超えるとデメリットに為る。幸いな事に、今の処、デメリットは無く、実質的な国債が減少して居る状態だ。

 こう考えてみると、財務省が借金1000兆円と言い「だから消費増税が必要」と国民に迫るのは、前提が間違って居るので暴力的な脅しでしか無い。実質的に借金は150〜200兆円程度、GDP比で30〜40%程度だろう。
 ちなみに、アメリカ・イギリスで、中央銀行と連結したネット国債をGDP比で見よう。アメリカで80%・65%、イギリスは80%・60%程度である。これを見ると、日本の財政問題が大変で直ぐにでも破綻すると云う意見の滑稽さが判るだろう。

 以上は、バランスシートと云うストックから見た財政状況であるが、フローから見ても、日本の財政状況はそれ程心配する事は無いと云うデータもある。本コラムの読者であれば、筆者が名目経済成長でプライマリー収支を改善出来、名目経済成長を高めるのはそれ程難しく無い、財政再建には増税では無く経済成長が必要と書いて来たことを覚えて居るだろう。
 その実践として、小泉・第一安倍政権で、増税はしなかったが、プライマリー収支がホボゼロと為って財政再建出来た。これは、増税を主張する財務省に取って触れられたく無い事実である。実際、マスコミは財務省の言い為りなので、この事実を指摘する人は先ず居ない。

 更に、来2016年度の国債発行計画を見ると、新規に市中に出回る国債はホボ無く為る事が判る。これは、財政再建が出来た状況とホボ同じ状況だ。こうした状態で、少しでも国債が市中に出たらどう為るのか。金融機関も一定量の国債投資が必要なので、出回った国債は瞬間蒸発する。詰まり、とても国債暴落と云う状況に為ら無いと云う事だ。
 何しろ市中に出回る国債が殆ど無いので「日本の財政が大変なので財政破綻・国債暴落」と言い続けて来た、デタラメな元ディーラー評論家・・・元と云うのは使い物に為ら無かった人達と云う事・・・には厳しい年に為るだろう。

 今の国債市場は「品不足」状態

 2016年度の国債発行計画http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2016/gaiyou151224.pdfを見ると、総発行額162.2兆円・・・その内訳は市中消化分152.2兆円・個人向け販売分2兆円・日銀乗換8兆円である。
 余談だが、最後の日銀乗換は、多くの識者が禁じ手として居る「日銀引受」である。筆者が役人時代、この国債発行計画を担当して居た時にもあったし今でもある。これは、日銀の保有長期国債の償還分40兆円程度(短国を含めれば80兆円程度)迄引受可能であるが、市中枠が減少する為、民間金融機関が国債を欲しいとして日銀乗換分を少な目にして居る筈だ。

 要するに、今の国債市場は国債の品不足なのだ。カレンダーベース市中発行額は147兆円であるが、短国25兆円を除くと122兆円しか無い。ここで、日銀の買いオペは新規80兆円、償還分40兆円なので、合計で120兆円と為ると、市中消化分は、最終的にはホボ日銀が買い尽くす事に為る。
 民間金融機関は、国債投資から貸付に向かわざるを得無い。これは日本経済に取っては望ましい事だ。と同時に、市中には実質的に国債が出回ら無いので、これは財政再建が出来たのと同じ効果に為る。日銀が国債を保有した場合、その利払いは直ちに政府の納付金と為って財政負担無しに為る。償還も乗換をすれば好いので償還負担も無い。それが、政府と日銀を連結してみれば、国債は無いに等しいと云う訳だ。

 こう云う状態で国債金利はどう為るだろうか。市中に出回れば瞬間蒸発状態で、国債暴落ナンて有り得ない。何しろ必ず日銀が買うのだから。こうした見方から見れば、2016年度予算http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2016/seifuan28/01.pdfの国債費23.6兆円の計上には笑えてしまう。23.6兆円は、債務償還費13.7兆円・利払費9.9兆円に分けられる。
 諸外国では減債基金は存在しない。借金するのに、その償還の為に基金を設けて更に借金するのは不合理だからだ。なので、先進国では債務償還費は計上しない。この分は、国債発行額を膨らせるだけで無意味と為り、償還分は借換債を発行すれば好いからだ。

 利払費9.9兆円で、その積算金利は1.6%と云う。市中分がホボ無く国債は品不足なのに、そんなに高い金利に為る筈無い。実は、この高い積算金利は、予算の空積・架空計上であり、年度の後半に為ると、そんなに金利が高く為ら無いので不用が出る。それを補正予算の財源にするのだ。

 マスコミは何時まで財務省のポチで居るのか

 この様な空積は過去から行われて居たが、その分、国債発行額を膨らませるので、財政危機を煽りたい財務省に取って好都合なのだ。債務償還費と利払費の空積で、国債発行額は15兆円程度過大に為って居る。こうしたカラクリは、予算資料を貰ってそれを記事にするので手一杯のマスコミには決して判ら無いだろうから、今コラムで書いて置く。

 何れにしても、政府と日銀を連結したバランスシートと云うストック面、来年度の国債発行計画から見たフロー面で、共に日本の財政は、財務省やそのポチに為って居るマスコミ・学者が言う程には悪く無いことが判るだろう。にも関わらず、日本の財政は大変だ・財政再建が急務・それには増税と云うワンパターンの報道ばかりである。軽減税率のアメを貰ったからと言って、財務省のポチに為るのはもう辞めにして欲しい。


                    以上







国内最大級の大型スポーツ専門店
「スーパースポーツゼビオ」「ヴィクトリア」で使えるクレジットカード
今なら毎月抽選で200,000ポイントプレゼント!!
メルマガ登録で100ポイントプレゼントキャンペーンも実施中

https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=35B9KK+2GPLWY+48U8+5YZ77





成功故の失敗?オバマが称賛したリベラリズム論とは パトリック・J・デニーン 『リベラリズムは何故失敗したのか』宇野 重規による解説





 


 成功故の失敗? オバマが称賛したリベラリズム論とは 

 パトリック・J・デニーン『リベラリズムは何故失敗したのか』宇野 重規による解説


              〜ALL REVIEWS 1/7(火) 6:00配信〜



       1-8-2.jpg

           『リベラリズムは何故失敗したのか』(原書房)

           1-8-3.jpg

           政治学者・東京大学社会科学研究所教授 宇野重規氏

 〜ヨーロッパ各地の極右政党・トランプ大統領誕生・ブレグジット・・・リベラリズムとデモクラシーはもう終わりなのか?2018年7月にオバマ元米国大統領がフェイスブックで称賛、今もアメリカで話題を読んで居る政治学書が日本でも先日翻訳出版された。政治学者・宇野重規による解説を公開する〜

 リベラリズムは死に体か?

 昨今、リベラリズムやデモクラシーの衰退を説く本は多い。無理も無いだろう。これ迄リベラル・デモクラシーを牽引して来たと見られたイギリスやアメリカで、ブレグジットやトランプ現象が生じる一方、世界各地で独裁的・権威主義的な指導者の台頭が目立って居るからである。或いはリベラリズムやデモクラシーも普遍的な理念では無いかも知れない。その様な思いが、世界の各地で拡大して居る。
 世界価値観調査等を見ても、リベラル・デモクラシーを信頼すると回答する人は急激に低下して居る。特に若者のリベラル・デモクラシーへの幻滅は著しい。それを思えば、悲観論の続出も止むを得ないのかもしれない。

 或る意味で象徴的なのは、本書でも触れられて居る様に、アメリカの政治学者フランシス・フクヤマであろう。冷戦終焉に際して「歴史の終わり」を説き、リベラル・デモクラシーの最終的な勝利を高らかに宣言したフクヤマであるが、その僅か一〇年後にはバイオテクノロジーと「ポストヒューマン的未来」を論じた著作の中で、科学技術の進展による人間環境の変化、そしてそれがリベラル・デモクラシーにもたらす危機を認めて居る。
 更に近年『政治の衰退』を刊行し、アメリカにおけるガバナンスの危機に警鐘を鳴らして居る。この鋭敏な知性の関心の推移だけを見ても、リベラル・デモクラシーに何らかの地殻変動が起きて居る事がわかる。

 本書も又リベラリズムの失敗を説く本である。但し、著者の主張の特徴の一つは、現代の危機がリベラリズムを実現出来無かったことによって生じたのでは無く、寧ろリベラリズムが成功したからコソ起来たとしている点にある。その意味で、本書は近代リベラリズムを総体として批判する政治哲学の書である。

 著者によれば、リベラリズムの論理は、個人を伝統的な社会や組織の束縛から解放する事を目指すものであった。個人は抽象的な自由と権利の担い手とされ、伝統的規範では無く、自らの理性によって全てを判断することを期待された。
 しかしながら、結果として何が生じたか。伝統的な社会や組織から解放されたと思った個人は、実は国家と市場と云う、より大きな機構に自らの運命を委ねてしまっただけでは無いか。個人は自由に為ったのでは無く、より脆弱に為り、依存的に為ったのではないか。

 著者は本書の中で、繰り返しリベラリズムの個人主義が、決して国家の大きな役割と矛盾するものでは無いこと、寧ろ両者が強く結び付いて居る事を強調する。過つてフランスの政治思想家アレクシ・ド・トクヴィルが『アメリカのデモクラシー』で指摘した様に、伝統的な社会から解放され、他者との結び付きを失った個人は、寧ろ民主的権力や集権的国家に依存する様に為る。
 身近な近隣の住民と協力して、地域の諸課題を自分達の力で解決する習慣を失った個人は、最早中央権力に縋るしか生活の用を果たす方法を知ら無いからである。この民主的社会における個人主義と国家主義の結び付きに付いて、著者はトクヴィルを導き手として議論を進める。

 リベラリズムは「アンチカルチャー」

 本書のもう一つの特徴は、この様な分析を特に文化の領域に即して進めて居る事だ。著者はリベラリズムが「アンチカルチャー」の側面を持つとさえ主張する。
 既に触れた様に、リベラリズムは個人を伝統的な社会や組織から解放する為に、寧ろ個人を抽象的な存在として扱った。社会契約論が象徴であるが、リベラリズムが想定する世界で、人間は自然と切り離され過去を持たず現在を生きる存在とされ、更に土地との結び付きを失った。これ等は正に、個人の自由な選択を阻む束縛と見做されたのである。

 しかし、その事の代償も又大きかった。自然とも時間とも場所とも切り離された個人は、結果的に文化を生み出す力とも切り離されたのではないかと著者は問う。
 「文化(カルチャー)」は語源から言っても、土地の耕作と深く結び付いて居る。土地を開拓し耕作し、世代を超えて継承して行く事は、文化の創出と継承と全く同型である。具体的な自然との接触を無くした個人は、果たしてその本性を開花する事が出来るのか。身近な人々と協働の経験無くして、人々はそのコモンセンスを発展させる事が出来るのか。アリストテレス以来の哲学を重視する著者は、この事に疑問を呈する。

 リベラリズムとリベラル・アーツの関係を巡る考察も興味深い。リベラル・アーツは現在では「教養」を意味するが、この言葉の本来の意味は、人々を自由にする為の技術(アート)であった。
 古代ギリシア以来の古典は、個人にいかに自らの欲望をコントロールし、生を統御するかを教えた。いわば、その目的は人々に自制する為の技術を授ける事にあった。その背景には、自由は人間が生まれながらに持つ能力では無く、時間を掛けて修養を積むことで要約手にするものであると云う考え方があった。

 これに対し、近代のリベラリズムは、只管個人の欲望の解放を推し進める一方で、それをコントロールする為の術を教え無かった。結果として個人の欲望に歯止めが掛から無く為る一方で、決して人々は満足する事を知らず、常に欲求不満と不安を抱えて生きる事に為った。その意味で、今求められて居るのは、古典が教えて呉れる、自らの生を統御する技術を学ぶ事に他為ら無いと著者は説く。

 目指すべきは「ポリスの生活」

 本書が最終的なゴールとして示すのは「ポリスの生活」である。ポリスとは古代ギリシアの都市国家であり、そこへの回帰を説く本書は、酷く反時代なものに映るかも知れない。
 しかしながら、著者が再び参照するのはトクヴィルであり、トクヴィルはアメリカのタウンシップと呼ばれる地域共同体に強い印象を受けて居る。人々は近隣の住民と共に地域の問題を解決し、自制と自律の習慣を身に着ける。その事は人々の政治的判断力の養成にも繋がって居る。

 著者はその延長線上に、人々が身近な地域との結び付きを取り戻し、そこから世代を超えた知恵や文化の継承と創出に参加して行く姿を描き出す。それはいわば、時代を超えた人々の自由な知的・社会的営みとの交流に他為ら無い。
 本書は、現代政治哲学で言えば、コミュニタリアン・共同体主義リパブリカニズム・共和主義に近い発想の持ち主と言えるかも知れない。しかしながら、大切なのはその様なラベルでは無く、そこから何を学ぶかである。過つてアメリカの大統領だったバラク・オバマはこの書を高く評価したと云う。日本においても、この本をどの様に読んで行くべきか。大いに知的刺激を受ける一冊であろう。


            1-8-4.jpg

       [書き手]宇野重規 政治学者・東京大学社会科学研究所教授

[書籍情報]『リベラリズムはなぜ失敗したのか』 著者パトリック・J・デニーン  翻訳 角 敦子  出版社 原書房 / 発売日 2019年11月21日  ISBN 4562057106 原書房

                     以上








国内最大級の大型スポーツ専門店
「スーパースポーツゼビオ」「ヴィクトリア」で使えるクレジットカード
今なら毎月抽選で200,000ポイントプレゼント!!
メルマガ登録で100ポイントプレゼントキャンペーンも実施中

https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=35B9KK+2GPLWY+48U8+5YZ77


会員さま限定セールも実施【ゼビオカード】




「野党利権」が蝕む日本政治〜そして民主主義は危機を迎える




 





  「野党利権」が蝕む日本政治 〜そして民主主義は危機を迎える

              〜現代ビジネス 1/7(火) 8:01配信〜


           1-8-1.jpg

 臨時国会1日4億円だが・・・

 今でもお昼の「ワイドショー」は人気があるから、その様な番組で政治・経済情報を仕入れて居る人々には「ワイドショー国会」も楽しい娯楽の1つなのかも知れない。しかし、臨時国会の運営費用は1日4億円も懸かるとされる。それだけの費用を掛けて製作されるテレビのワイドショー等多分存在しないだろう。
 その4億円は、国民の血税から支払われ、この様な無駄使いが無ければ、社会保障や国民を繁栄させる為の政策に有効に使う事が出来た筈である。

 国会と云うのは、国民・国家を代表する「国権の最高機関」の筈だから「国権の最高機関」が日夜ワイドショーを繰り広げて居るのであれば、日本が「ワイドショー国」と言われても仕方があるまい。
 勿論「国民の幅広い支持」を得る努力は民主主義の重要な要素の1つだが「パンとサーカス」(ローマ時代の皇帝は、民衆に充分な食料を供給する事と、闘技場での殺し合い等の娯楽を提供する事によって民衆の支持を得た)に成り下がってしまっては、民主主義とは呼べ無いかも知れない。
 ポピュリズム・大衆迎合と云う言葉を最近好く聞くが、日本の特定野党の様に、週刊誌・ワイドショー的な「ネタ」で国民の関心を引き付ける遣り方がその典型と言えるだろう。

 特定野党の様なポピュリズムが蔓延する民主主義は、英国首相・ウィンストン・チャーチルの次の言葉に集約されるかも知れない。「民主主義は最悪の政治と言える。これ迄試みられて来た、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが・・・」
 要するに、ファシズム・共産主義・軍事独裁等のアラユル政治形態と比べて民主主義は「まだまし」だが、その民主主義も「欠点だらけ」だと云う事だ。従って、野党がダラシ無いからと言って「民主主義」を他の(既存の)政治形態に変え様等と云う試みは愚かであるが、野党がダラシ無ければ、我々国民が直接政権政党の監視をし無ければ為ら無い。

 「代議制」が日本の民主主義の基本であるが「代議制」は現在の様に通信が発達する前に生まれた制度である。オールドメディアや特定野党の「嘘」が頻繁に暴かれる様に為り、彼等の影響力が低下したが「代議制」においても「ネット空間での議論」がモッと反映する様に為れば「最悪の政治である民主主義」がもう少し改善するのでは無いだろうか?

 与党もダラシが無い

 筆者のこれ迄の記事を読まれて来た読者は、安倍政権に高評価を与えて居ると云う印象を持って居る筈だ。現在でも、経済政策は別にして・・・余分な事をし無ければ、日本経済は民主党政権時代の悪夢から自律的に回復した、外交を中心とした成果は、明治以来の首相の中でナンバーワンだと思う。
 だが、11月27日の記事「習近平を『国賓』で呼ぶのは日本の国益に反すると断言出来る理由」で述べた共産主義中国、更にはロシアに対しては、日本のお家芸である「弱腰外交」を行って居る様に思える。

 更に、憲法改正問題に関して「煮え切ら無い」態度なのは「花見の会」の件等の特定野党の妨害工作の影響も大きいが、マルで「憲法9条を改正されると困る共産主義中国やロシア」等に忖度して居る様にも思える。まさかとは思うが、与党が本気に為れば、国民の支持を受けて居る憲法改正は実現出来る筈である。
 憲法改正の諸問題に付いては、12月12日の記事「日本は侵略されて初めて『憲法改正』を行う積りなのか…?」を参照頂きたい。

 勿論、特定野党が政権を獲得し<悪夢の民主党時代>が再現されるのも困るが、一度痛い目に合って居る日本国民は、そこ迄愚かでは無い筈だ。現在の与党である自民党をチャーチル風に言えば「自民党は最悪の政党と言える。日本に存在する、自民党以外の全ての政党を除けばだが」と云う事に為る。

 世界的なリベラル(偽装共産主義)の退潮
 
 現在、米国の大統領はドナルド・トランプ、英国の首相はボリス・ジョンソン、日本の首相は安倍晋三である。先進主要3カ国の代表者がこの様な状況に有るのは決して偶然では無く「歴史的必然」である。
 逆に、12月12日の総選挙で大敗した労働党、自党の大統領候補者に巨大ブーメランが返って来て居るのに「ウクライナ疑惑」(詳細は10月15日の記事「『ウクライナ疑惑』で、トランプの大統領再選は確実に為りそうだ」参照)で、国民の支持を得無い弾劾を続けて居るのが米国・民主党だ。日本での、特定野党の動向は改めて語るまでも無いであろう・・・

 リベラル・偽装共産主義・革新政党が不調なのは「リベラル」の欺瞞が暴かれて来て居るからである。暴かれて居る問題点の内重要なのは、次の2つだ。

 1. リベラルは立派な事を言うが「口先だけ」で、自らは恥ずべき事を行って居る
 2. 少数派・弱者を守ると言いながら、それ等を隠れ蓑に「ブローカー」として利権を漁って居る。

 
 1 が暴かれたのはインターネットが普及した恩恵だ。それ以前は、「国民の知る権利」が事実上奪われ、オールドメディアの思うがママに「世論が操られて居た」と思うと恐ろしい。彼等が「第4件権力」と呼ばれて居たのも当然だが、その「第4件権力」の大部分がリベラルであった訳だ。彼等の力が衰えた事が、偽装共産主義・革新政党の力を弱めて要る原因である。
 2 に付いては、10月3日の記事「世界を支配する『少数派』が利権の温床と為る『これだけの理由』」で詳しく述べた。先ず、民主主義において「少数派・弱者」に配慮する事は絶対に必要だ。そうで無ければ「多数決は多数派の横暴」にしか為ら無い。しかし、民主主義の目標が「最大多数の最大幸福」を目指すべきである事も明らかだ。「少数派・弱者」が我儘・勝手を言い続ける事も許され無いのだ。

 但し、少なくとも現状では「少数派・弱者」の人々が我儘・勝手を、許容範囲を超えて主張して居るとは思え無い。問題なのはそれ等の「少数派・弱者」をネタにして利権を漁る「少数派・弱者ブローカー」である。
 「少数派・弱者」の大部分の人々は「自分達を尊重して欲しい」だけだが「少数派・弱者ブローカー」の目的は「カネを含めた利権を漁る事」であり、その欲望には限りが無く、要求は際限無くエスカレートする。特に、社会的弱者を集票マシンにして、国会の議席を獲得した某政党には怒りを感じる。

 先進3カ国の良識ある人々は、リべラルが実は「少数派・弱者ブローカー」の集合体であると云う事に気が付き始めて居る。だから、多くの良識有る国民がリベラル・偽装共産主義・革新から離れつつあるのだ。
 ベルリンの壁崩壊以来、イメージが悪く為った「共産主義」を「リベラル・革新」と云う名前で偽装して来た人々は「リベラル・革新」と云う言葉の評判が悪く為る中、次はどの様な言葉で偽装するのであろうか?

 工作活動は有るのか無いのか?
 
 リベラル・偽装共産主義・革新政党と、海外の共産主義国家との繋がりに付いては、これ迄も色々な「疑惑」が取りざたされて来た。更には、12月22日公開の「韓国・北朝鮮・中国は最早有事・・・『日本海防衛』と云う切迫した問題」で述べた様に、オーストラリア、ニュージーランドで、スパイによる政界工作が行われて居る。重要な事なので下記に再掲する。

 ・・・ニュージーランドの現職国会議員(中国出身)が中国のスパイ容疑で、2017年に情報機関の捜査を受けて居る。この議員が中国軍の教育機関・洛陽外国語学院に通って居た経歴を隠蔽して居た事が捜査の始まりだ。洛陽外国語学院は、中国軍唯一の外国語大で、所謂スパイの養成を行う学校である。
 又、同じ年には、オーストラリアの2大政党が、中国共産党と繋がりを持つ富豪2人から長期に渉り、巨額の献金を受け取って居た事が明らかに為って居る。更に、今年の11月24日には、高級車ディーラーの男性に100万オーストラリア・ドル約7400万円を支払い「メルボルンの選挙区から連邦議会選に立候補させようとした」と云う中国の工作疑惑をオーストラリア・大手メディが報じて居る。
 この男性は、2018年末に、スパイに為る様打診されたと明かし、今年3月にモーテルの部屋で死亡して居るのが見付かって居る。


 勿論、米国・英国等の先進国でのスパイ・工作活動も頻繁に摘発されて居る。日本でスパイが摘発され無いのは「スパイ天国」と揶揄される様に、真面なスパイ防止法が無くMI6やFBIの様な本格的諜報機関が無い為、野放しにされて居るだけにしか過ぎ無いと考えられる。
 スパイ防止法と本格的諜報機関の設立は急務だが、この様な視点で特定野党の活動を改めて見直すと、色々なものが見えて繰る筈である。何れにせよ、現在の野党の状況は「民主主義の危機」を呼び起こす可能性が高いから、国民は「ワイドショー国会」に現(うつつ)を抜かして居る場合では無いのである。


            大原 浩   以上






メルマガ登録で100ポイントプレゼントキャンペーン実施中【ゼビオカード】








 

これは何かの冗談ですか?日本人が知らない「大日本帝国の終戦構想」



 
 

 


 これは何かの冗談ですか?日本人が知ら無い 「大日本帝国の終戦構想」 

               〜現代ビジネス 1/7(火) 11:01配信〜


            1-7-5.jpg

 戦争をどう終わらせる積りだったのか

 今から79年前の1941年12月、大日本帝国はアメリカやイギリスと勝ち目の無い戦争を始めた。「勝ち目が無いって、今だからそんな事を言えるんだろ」と云う人が居るかも知れない。しかし当時も、軍人を含む少なからぬ為政者達が、アメリカを屈服させる事が不可能である事は分かって居た。では、為政者達は何故戦争を始めたのか。そしてどう遣って戦争を終わらせる積りだったのか。
 今回は開戦までの経緯と、戦争終結構想を観て行こう。戦争を終わらせるのは戦争を始めるより遥かに難しい事、国は、と云うより為政者達は時に飛んでも無い間違いをすると云う事が分かる筈だ。

 1930年代から40年代初頭に掛けて、中国や南方への進出を進める日本に対し、アメリカは態度を硬化させて行った。決定的だったのが1941年7月の南部仏印進駐だ。アメリカは在米日本資産を凍結し、極めて重要な戦略物資である石油の対日輸出を全面禁止した。
 当時、石油の殆どはアメリカから輸入して居た為、日本としては大きな痛手だった。石油が無ければ多くの兵器が役立たずに為る。兵士を戦地に送る事も難しく為るのだ。当時の首相・近衛文麿は、対米戦に慎重な海軍を支えとして陸軍の好戦派を押さえ様として居た。処が燃料である石油を止められた海軍は、石油確保の為に更なる南方進出を見据える。

 近衛文麿首相は対米戦を回避すべく、乾坤一擲(けんこんいってつ)の策を講じる。ルーズベルト米大統領と頂上対談をし中国撤兵を約束する。そして直ぐに昭和天皇の許可を得る・・・と云うものだ。処が肝心のアメリカが乗って来なかった。

         1-7-6.jpg

                首相・近衛文麿氏

 「戦争は出来ません」と言え無かった事情

 9月6日、昭和天皇が臨席する御前会議で「帝国国策遂行要領」が決定された。外交交渉がマトまら無い場合「10月上旬頃に至っても要求が貫徹出来ない場合は、直ちに対米英蘭開戦を決意する」ものだ。
 戦中派世代の作家、五味川純平が「軍部に追従する事だけに終わった近衛の政治歴の中で、最も決定的な失敗」(御前会議)と断じた決定であった。

 只、海軍にも慎重論は根強かった。日本と米・英、殊にアメリカとは国力が大きな差があった。そのアメリカとの戦争と為れば主戦場は太平洋であり、と為れば海軍力が勝敗を大きく左右する。当時は軍艦の保有量などで観ると米英が世界1位と2位で帝国は3位だった。
 イギリスはドイツとの戦争で相応の戦力を割か無ければ為ら無いが、アメリカは左程でも無い。帝国海軍の物量的劣位は明らかだった。
 陸軍はどうか・・・1937年に始まった中国との戦争が泥沼化し大きな戦力を割いて居た。米英との戦争と為れば東南アジア・太平洋諸島が戦場と為る。と為れば典型的な二正面戦争と為る。米英より遥かに軍事力で劣る中国さえ屈服させられ無い日本が米英を屈服させる事は不可能だった。

 その事は陸・海軍とも分かって居た。為らば戦争が出来る筈が無い。しかし両方とも、そうは言え無い事情があった。アメリカとの交渉をマトめる為には、中国からの撤兵は避けられ無い。営々と中国侵略を進め、傀儡国家満州国を造る等、多くの「成果」を得て来た陸軍としてはそれは避けたい。
 一方で、代々の仮想敵国はソ連でありアメリカとの戦争は必ずしも望むものでは無い。出来れば海軍から「戦争は出来ない」と言って欲しい。それが陸軍の思惑だった。海軍もアメリカとの戦争とは避けたい。しかしそのアメリカを仮想敵国として獏大な国費を費やして来た手前「アメリカと戦争は出来ません」とは到底言え無かった。

 或る組織、例えば陸軍や海軍の人間が自分の組織の利益を最優先するのは自然だ。夫々の利益が矛盾した場合、当事者同士の交渉では解決しない。第三者が調整力・指導力を発揮して止揚し無ければ為ら無い。しかし、大日本帝国ではそうは為ら無かった。

 歴史に「もしも」は禁物とされるが・・・

            1-7-7.jpg 武藤章軍務局長

 日米交渉は進ま無いまま10月上旬を迎え、戦雲が立ち込めて来た。同月14日、陸軍の中で対米戦回避を模索して居た武藤章軍務局長富田健治の元を訪れた。富田は第2次・第3次近衛内閣で内閣書記官長を務めた人物。内閣の要であり陸海軍と内閣の連絡・調整も行う役目だった。

 富田は1962年、近衛内閣の内幕を綴った『敗戦日本の内側 近衛公の思い出』を著して居る。現在は入手困難だが、2019年秋に刊行された『近衛文麿と日米開戦 内閣書記官長が残した『敗戦日本の内側』』川田稔編・祥伝社新書で内容を確認出来る。

 富田によれば、武藤は以下の事を言った。

 「海軍が本当に戦争を欲し無いなら、陸軍も考えねば為らぬ。処が海軍は、陸軍に向かって表面はそう云う事は口にしないで、只総理一任だと言う。総理の裁断と云う事だけでは、陸軍内部を抑える事は到底出来ない。
 しかし海軍が、この際は戦争を欲し無いと公式に陸軍に言って来れば、若い連中も抑え易い。海軍がそう云う風に言って呉れる様に仕向けて貰えないか」


             1-7-8.jpg 岡敬純軍務局長

 富田は武藤の依頼を海軍の岡敬純軍務局長に伝える。岡は「海軍としては、戦争を欲し無い等と正式には言え無い。首相の裁断に一任と言うのが精一杯」と述べた。
 ゲタを預けられそうに為った近衛は10月16日、内閣総辞職を選んだ。天皇が次の組閣を命じたのが東条英機陸軍大将である。内大臣の木戸幸一が好戦的だった東条を首相に推挙した処、昭和天皇が「虎穴に入らずんば虎児を得ずと云う事だね」と言った事は好く知られている。(木戸日記)

           1-7-9.jpg 東条英機陸軍大将

 東条に、陸軍の主戦派を押さえて戦争を回避させたい・・・そう云う狙いだった。しかしその東条も対米戦に前ノメリと為る陸軍を抑える事は出来無かった。
 陸軍から開戦の是非を事実上委ねられた海軍が「アメリカとの戦争はすべきでは無いと考える」と言って居たら、近衛が「海軍に判断を任されたから自分が裁断する・・・明治憲法の制度上極めて異例だが。アメリカとの戦争は避ける。それを前提に今後の国策を決める」と決めて居たら、日本の現代史は大きく変わって居ただろう。

 歴史に「もしも」は禁物とされるが、筆者はケースバイケースだと思う。「もしも」は為政者達の判断ミスや不作為を炙り出す、有益な思考実験にも為り得るからだ。只海軍だけの責任では無い。中国からの撤兵を頑として拒んだ陸軍にも巨大な責任があるし、軍部を制御出来なかった政治家にもある。適切なシビリアンコントロールが出来なく為る様な、明治憲法体制の構造的問題でもあった。

 講和に向けた筋書き

 為政者達は米英等との戦争を決めた。目指して居たのは講和である。勝て無い以上、妥当な目標ではある。ではどう遣って講和するのか。
 筋書きが決まったのは1941年11月15日大本営政府連絡会議であった。同会議は首相や外相等の主要閣僚と、陸軍の参謀総長と海軍の軍令部総長らが構成し国策決定・戦争指導に関わるものだ。同日「対米英蘭蒋戦争終末促進ニ関スル腹案」をマトメた。『戦史叢書 大本営陸軍部 大東亜戦争開戦経緯5』防衛庁防衛研修所戦史室
 
 先ず「方針」が示された
 一 速ニ極東ニ於ケル米英蘭ノ根拠ヲ覆滅シテ自存自衛ヲ確立スルト共ニ更ニ積極的措置ニ依リ蒋政権ノ屈服ヲ促進シ独伊ト連携シテ先ツ英ノ屈服ヲ図リ米ノ継戦意志ヲ喪失セシムルニ勉ム
 二 極力戦争相手ノ拡大ヲ防止シ第三国ノ利導ニ勉ム
 更に「要領」
 一 帝国ハ迅速ナル武力戦ヲ遂行シ、東亜及西南太平洋ニ於ケル米英蘭ノ根拠ヲ覆滅シ、戦略上優位ノ態勢ヲ確立スルト共ニ、重要資源地域並ビニ主要交通線ヲ確保シテ長期自給自足ノ態勢ヲ整フ(後略)
 凡有手段ヲ尽シテ適時米海軍ノ主力ヲ誘致シテ之ヲ撃滅スルニ勉ム
 二 日独伊三国協力シテ先ヅ英ノ屈服ヲ図ル。(以下略)


 要するに
 (1) 東アジアや西南太平洋におけるアメリカ・イギリス・オランダの勢力を排除する。重要資源を確保、長期自給自足体制を整備する
 (2) 中国の蒋介石政権への圧力を強め、屈服させる
 (3) 三国同盟を結んで居たドイツ・イタリアと連携し、先ずイギリスを屈服させる
 (4)それによってアメリカの戦意を失わせる。それで講和に持ち込むと云うものだった。

 
 最も現実味があったのは(1)である。実際、開戦後はフィリピンからアメリカ、シンガポールからはイギリス、インドネシアからはオランダを追い払った。石油など重要資源の供給地も押さえた。只それを運ぶ為の制空権・制海権を長く保持出来なかった為、長期自給自足態勢は出来なかった。
 そして(2)中国との戦争は泥沼化して居て決着する見通しは無かった。決定的に問題なのは(3)(4)である。ドイツはフランスを占領する等、開戦後破竹の勢いを見せて居た。しかし海軍力が弱くイギリスに上陸し「屈服」させる事は難しかった。更に1941年6月にはソ連との戦争を始め典型的な二正面作戦をして居た。

 そんな状況で、仮にドイツがイギリスを降伏させたとしても、それでアメリカが戦意を失い日本との講和に乗り出す保障は全く無い。詰まり大日本帝国は、希望的観測・・・ドイツがイギリスを遣っ付ける、の上に空想・・・イギリスが離脱すればアメリカは戦意を失うかも知れ無い・・・を重ねた様な構想で、戦争を始めたのだ。

 『昭和天皇実録』に書かれて居ないこと
 
 さて2014年に公表された『昭和天皇実録』『実録』は宮内庁が四半世紀の時間と2億円の国費(人件費を除く)を費やして編纂した昭和天皇の一代記であり国家の正史だ。全61巻、1万2000ページと云う膨大な量でありながら「驚くべき事に」と言うべきか「やはり」と言うべきか『実録』には昭和史における極めて重要な事項で書かれて居ないことがある。大日本帝国の「終戦構想」もその一つだ。

 それがマトマった日、1941年11月15日の『実録』を見ると、昭和天皇は皇后と共に朝、葉山御用邸を出て皇居に戻った。午後1時過ぎから、陸海軍の首脳が陪席する中「戦争初頭を想定したマレー・香港・ビルマ・蘭印・フィリピンを中心とする南方作戦の指導とその推移に関する兵棋演習を御覧に為る」陸軍の杉山元参謀総長に「支那軍の北部仏印への動き」や、海軍の永野修身軍令部総長に「陸軍輸送船団の護衛問題」等に付いて夫々聞いた。
 夕方には杉山から「外交が成立すれば戦闘行為を止め、大命に従って軍隊を退けること」等の説明を受けた。

 この部分の記述の典拠の一つに、『実録』は『戦史叢書』を挙げて居る。しかしその『戦史叢書』が挙げて居る終戦構想に付いては全く触れて居ないまま記述が進む。

「御夕餐後、皇后と共に映画『君と僕』文化映画『塩都運城』を御覧に為る」

 昭和天皇がどんな映画を見たのか。それは昭和天皇研究の上で重要なのだろうが、筆者としてはモッと知りたいのは、国民の運命を左右する戦争をどう終わらせるかと云う構想を、天皇が聞いて居たのかどうか、聞いたとしたらどう感じたのか、と云う事だ。しかし筆者のみた限り『実録』からはそれが分から無い。

 司馬遼太郎の指摘

           1-7-10.jpg 

              戦車部隊の小隊長時代の司馬遼太郎氏

 以下『実録』を巡る余談である。これが公表された2014年、新聞やメディア各社が大きく報じた。筆者は勤務する毎日新聞で分析チームの一員と為った。マスコミへの発表から報道迄、短時間で読み込ま無ければ為らない。一人で読み通す事は到底出来ず同僚と手分けした。
 筆者は自分の担当箇所を読みつつ、昭和史の中でも極めて重要と判断した幾つかの事項に絞り『実録』にそれがどう書かれて居るか、或いは書かれて居ないのかを見て行った。記事掲載までの限られた時間の中で、『実録』の本質を覗う為にそれが有効だと判断したからだ。

 すると「当然書いて有るだろう」と思って居たことが、幾つも抜け落ちて居た。終戦構想の顛末はその一つである。国家の正史と言えども、全ての事項・資料を網羅出来る筈がない。どの資料を選ぶのか、或いはその資料のどの部分を抜き出し文脈に嵌め込むのか。何れも編纂者の編纂意図によって左右される。国家が描く歴史物語は、その事を念頭に置いて読み進めるべきだろう。何故勝ち目の無い戦争を始めたのか『実録』を幾ら読み込んでも明確な答えは出て来ない。

 その点で興味深いのは、幕末や戦国時代を中心とした時代小説で多数のベストセラーを書いた作家・司馬遼太郎の指摘だ。本名は福田定一、大阪外国語学校を学徒出陣で繰り上げ卒業と為り陸軍に召集された。戦車部隊の小隊長として満州に渡った。
 司馬は、エッセー「大正生まれの『古老』」新潮文庫『歴史と視点』に収録で書いて居る・・・陸軍が1937年、ノモンハンでソ連軍に「完敗」したにも関わらず「僅か二年後に米国と英国に宣戦布告をして居るのである。こう云う愚行が出来るのは集団的政治発狂者以外に有り得るだろうか・・・とした。

 更に司馬は・・・兵力の分散を避けると云うのは軍事の初歩だが、彼等は足腰の立つ国民を総浚(そうざら)いにして地球そのものにバラ撒いてしまった。バラ撒いた後、どう始末する積りも無かった。如何なる軍事的天才でもこれを始末出来る様な戦略を考えられる筈が無い・・・とし、それでも開戦に踏み切った東条英機を・・・集団的政治発狂組合の事務局長の様な人・・・と断じた。

 司馬の指摘には説得力がある。しかし「軍人達が狂って居たから」と開戦の理由を片付けるだけでは「何故戦争を防げ無かったのか」と云う分析がそこで止まってしまう。
 筆者もその「なぜ?」に確たる解答を持って居る訳では無い。只言えるのは、為政者は、時として国民全体の利益より、自分が属して居るより組織のメンツ或いは利益を優先すると云う事であり、又その結果取り返しの付か無い間違いを起こすと云う事だ。
 そしてそのツケは、国策決定に関わら無い市民に広く長く押し着けられる。蜃気楼の様な終戦構想で310万人もの同胞を失い、今に至るまで戦争・敗戦の後遺症を抱えて居る私達国民が学ぶべきはそう云う事だと思う。


             1-7-11.jpg

              栗原 俊雄    以上








 【管理人のひとこと】

 大日本帝国の終戦構想・・・との事で大い為る興味で読み進んだ。が、しかし、案の定「終戦を考えずに無謀に開戦した・・・」結末の様だ。素人なので判らないが、一国が戦争を開始する決意をし宣戦布告する時、同じ様に「終戦・停戦・交渉・・・」等の結果を幾通りにも読み込んで「結果」を構想して作戦の大綱を練るものだと思って居た。
 好く聞く話だが、真珠湾奇襲を企画した山本五十六大将は「1・2年は思う存分暴れて見せましょう・・・が、大きな戦果を挙げ早々に停戦交渉して欲しい」と言ったとか。しかし、その決定的な「戦果」が得られず「ズルズル」と後退を繰り返し玉砕を続け・・・終戦・停戦の機会を得られず全面降伏へと進んでしまった。「戦争遂行の決意」は熱に魘される様に活気に逸り安易で国民の支持も得られるが「戦争終結交渉」コソは困難で誰も手の付けたく無い「マイナー」な仕事なのだ。
 「勝つ見込みの無い戦争で、これ以上国民を犠牲には出来ない」と終戦を決意した昭和天皇には、矢張り敬意を示す必要が大である。「誰も言いたくても言え無い」から敢て「自分が決断する」のだ。開戦を承認した身で有るからコソ終戦の責任を取ら無くては為ら無い。
 為政者は、時として国民全体の利益より、自分が属して居るより組織のメンツ或いは利益を優先する、又その結果取り返しの付か無い間違いを起こすと云う事。そしてそのツケは、国策決定に関わら無い市民に広く長く押し着けられる。蜃気楼の様な終戦構想で310万人もの同胞を失い、今に至るまで戦争・敗戦の後遺症を抱えて居る私達国民が学ぶべきはそう云う事だと思う・・・との結論に至る。
 為政者を「お上」と尊び意のママ服従すると、全てのツケは我が身に降り掛かる・・・との事が現実に起きて居る。無関心・無反応コソが国を危うくする・・・その大きな試練を経ても尚、繰り返すのが人間の本性なのかも知れない。




 




国内最大級の大型スポーツ専門店
「スーパースポーツゼビオ」「ヴィクトリア」で使えるクレジットカード
今なら毎月抽選で200,000ポイントプレゼント!!
メルマガ登録で100ポイントプレゼントキャンペーンも実施中

https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=35B9KK+2GPLWY+48U8+5YZ77










トランプ大統領のイランのソレイマニ司令官の殺害 何故 どう為る?





 





 トランプ大統領のイランのソレイマニ司令官の殺害 何故 どう為る?

        〜GLOBE 国際ニュースの補助線  2020.01.04〜

            1-7-1.jpg

         解説 鈴木一人 北海道大学公共政策大学院教授

 2020年が始まって3日しか経って居ないが、行き成り今年最大級のニュースが飛び込んで来た。トランプ大統領の命令の下、バグダッド空港近くに居たイランの革命防衛隊クッズ部隊・Quds Forceコッズ部隊クドス部隊・ゴドス部隊等とも表記する司令官のソレイマニと、イラクの親イランシーア派民兵組織であるカタイブ・ヒズボラの指導者であり、イラクのシーア派民兵の連合体である人民動員隊・PMUの副司令官であるムハンディスが殺害された。

           1-7-3.jpg

           ムハンディス副司令官とソレイマニ司令官

 バグダッド空港には米軍の施設も在り、カタイブ・ヒズボラがミサイル攻撃を仕掛けて居る中で、ドローンによる攻撃でソレイマニとムハンディスが殺された。
 イランウォッチャーは勿論の事、欧米の国際政治の専門家達は一斉にこのニュースに反応し、今後の中東情勢の見通しが立た無く為り、イランとアメリカの対立が急速にエスカレートして行く事の不安に包まれた状態にある。

 現時点では、イランは3日間の喪に服した後、ソレイマニ司令官の復讐を行うと宣言して居り、それに対抗する為、アメリカも中東への増派を検討して居る状況である。今後の米イラン関係や中東情勢がどう為るのかを予測するのは極めて難しい状況にあるが、今後の動きを考える上で重要と思われるポイントを幾つか解説しつつ、ニュースを理解する補助線を引いてみたい。

 ソレイマニとは何者か

 この事件が大きなインパクトを持つのは、殺害されたソレイマニ司令官がイランに取って極めて重要な人物であり、彼を標的にした事がイランの反発を引き起こす事が明らかだからである。
 ソレイマニは元々農家の子として生まれ、血気盛んな20代前半でイラン・イスラム革命に身を投じた。革命直後にアメリカの支援を受けたイラクがイラン・イラク戦争を開始した事で、イランは革命体制を防衛する為の民兵組織を立ち上げ、ソレイマニはこの民兵組織・イスラム革命防衛隊IRGCの若き下士官として志願し、イラク軍に対して犠牲を恐れず立ち向かう勇猛な戦士として名を挙げた。こうした戦績が評価され、革命防衛隊の中でも頭角を現し、クッズ部隊を任される様に為った。

 彼は信心深い人物で、前線に赴いては兵士達にユックリした口調で語り掛け、士気を上げるスタイルで多くの兵士に慕われた。クッズ部隊は所謂遠征軍であり、革命防衛隊の陸海空軍が主として領域防衛を任務として居るのに対し、クッズ部隊は国外でシーア派民兵組織を立ち上げ、彼等を鍛え上げ、資金や武器の支援を行い、所謂「代理戦争」を闘うネットワークを作って行くだけで無く、シリア内戦やイラクにおけるイスラム国との戦いでは自らが指揮を執り、アサド政権の支配地域を拡大させ、イラクからイスラム国を排除した。中東における武装組織の指揮官としては恐らく最も優秀で輝かしい戦績を誇る人物である。

 それ故、ソレイマニは国内ではカリスマ性を備えた英雄として国家の「強さ」の象徴として愛され、並み居る政治家を差し置いて最も人気の有る人物として世論調査のトップに来るだけで無く、イランの各地で彼の写真が額装されて居たり、Tシャツにプリントされたお土産が売られて居る。
 対外的には、彼は中東最強の野戦司令官として神格化され、取り分けアメリカからはイランの中東における覇権を得様とする野心を持つ帝王として見做され、イラク戦争において米軍を苦しめた作戦を指揮した人物として見做して居る。
 イラク戦争におけるソレイマニの役割に関しては様々な評価があり、どの程度イラクの武装勢力に関与して居たかに付いては定かでは無いが何百、何千の米兵が殺されたのは彼の所為だとの言説がアメリカでは流布して居る。

 又、レバノンのヒズボラはソレイマニと兄弟の契りを結んだ関係にあり、イラクのシーア派民兵であるカタイブ・ヒズボラも彼を家族の様に扱う等、中東におけるシーア派民兵のネットワークの中心に存在し、イランのイスラム革命を国外に輸出しイランからイラク、シリア、レバノンに跨る「シーア派の弧」を取り仕切る人物でもある。
 なお、屡々イランとサウジの「代理戦争」と言われるイエメン内戦でイランが支援して居るとされて居るフーシ派とソレイマニの関係は薄く、ソレイマニがイエメン内戦に関与した事は現在の処確認されて居ない。フーシ派に対してイランは武器や資金の支援をして居る事は確かだが、レバノンやイラクの様な形でクッズ部隊やソレイマニが関与して居る訳では無い点は注意して置く必要があるだろう。

 何れにしても、ソレイマニは国内外で高く評価され、イランの最高指導者や大統領は知ら無くても、ソレイマニの名前は知って居ると云う人が中東でもアメリカでも多数居る。そうしたカリスマ的な存在であり、且つ有能な野戦司令官であり、イラクやレバノンにおける政治的な影響力も持つ、中東における巨人でありアメリカから見れば目の敵と為る存在であった。

       1-7-4.jpg

 何故「今」殺害したのか

 ソレイマニはアメリカに取って不倶戴天の敵であるだけで無く、イスラエルに取っても脅威であった。クッズ部隊の「クッズ」とはエルサレムの事であり、イランの最終的な目標はエルサレムの奪還・イスラエルの排斥であると見られて居る。
 イランとイスラエルの対立はイスラエル建国から続くものだが、現在でもスポーツの大会でイラン代表選手はイスラエルの選手と戦っては為ら無いと云ったイランの政策が有る程両国間の関係は悪い。ネタニヤフ首相はイランを敵視する姿勢を一貫して居り、オバマ政権時代にアメリカがイランと交渉する事すら毛嫌いし、当然ながらイラン核合意も強烈に批判して居る。

 そのイスラエルの諜報機関であるモサドの長官は、当然ながらイランの遠征部隊であるクッズ部隊の司令官であるソレイマニを常にウォッチし、何処に居るかを把握して居る事を明らかにして居る。詰まり、ソレイマニを攻撃しようと思えば、何時でもそれを実行する事は出来たと考えられて居る。
 実際、何度かソレイマニ殺害の噂が流れたが、その度カスリ傷一つ負って居ないソレイマニの写真がメディアに出て来るなど、ソレイマニ殺害の計画は常に有ったと思われるが、イスラエルは彼に留めを刺す事はしなかった。

 又、ソレイマニは中東地域においてイランの影響力を拡大し、シリアやイラク、レバノン、イエメンの内戦や国内対立を激化させる人物として、又イランの核開発に密接に関連する革命防衛隊の幹部として国連の制裁対象と為り、2015年の核合意後に国連のイラン制裁が解除された後も国連の制裁対象として残った人物である。
 又、アメリカはクッズ部隊を2007年から制裁対象として来たが、2019年に革命防衛隊をテロ組織・Foreign Terrorist Organization・ FTOに指定した。通常、FTOはアルカイダやオウム真理教の様な非国家主体が指定されるが、初めて国家機関である革命防衛隊が指定されたことで大きな話題と為った。

 と云うのも、2001年の同時多発テロの際に採択された「テロリストに対する武力行使権限・Authorization for Use of Military Force against Terrorist・ AUMFが現在でも有効であり、FTOに指定されると議会の承認を得なくてもその組織を攻撃する事が出来る。
 今回のソレイマニ殺害で米民主党は議会の主要メンバー・Gang of 8と呼ばれる上下両院のインテリジェンス委員長等の主要メンバー8人に事前の相談をし無かった事を非難している。

 AUMFが有効である為、革命防衛隊のメンバーであるソレイマニ殺害に議会の承認は不要だが、Gang of 8には事前に相談するのが慣例に為って居る。何れにしても、AUMFがある事で、何時でも大統領の命令一つでソレイマニを殺害出来る状況にあった。
 何時でも殺害出来るのにそれを実行しなかったのは、偏にソレイマニの存在がイランに取って大き過ぎるものであり、もし殺害した場合その後の対立のエスカレーションがコントロール出来無く為る怖れがあると見られて居たからである。

 ソレイマニを除く事が出来れば、イランの対外的な戦闘能力は低下し、イランの対外的な拡張を止める事が可能と為り、更にはイランの軍事力のシンボルの様な存在を消す事に為る為、アメリカやイスラエルに取ってソレイマニ殺害は得られるものが多い筈である。
 しかし、それでも今まで殺害しなかったのは、もしそれを実行すれば確実にイランが弔い合戦を始め、泥沼の戦争が始まると考えて居たからである。

 イランは、イスラム国やイラク戦争時のイラクとは比較に為ら無い程強力な軍事力を持ち、8000万人の人口を擁し、中東でもトルコと並ぶ水準の工業力を持つ国である。その国と正面から戦争する事に為れば、アメリカやイスラエルも無傷では居られ無い。しかも、アメリカはアフガニスタンやイラクでの長期の戦争を続けて居り、これ以上戦線を拡大する事は現実的では無かった。

 処が、トランプ大統領はソレイマニ殺害を実行した。それは一方でバグダッドの米国大使館が襲撃され、更にソレイマニが指揮するシーア派民兵が更なる米国人や米軍施設等への攻撃を計画して居ると云う情報があったからである、と云うのが表向きの理由である。
 確かにソレイマニと関係の深いカタイブ・ヒズボラが2019年末に米軍施設をミサイルで攻撃し、それに対して、アメリカはカタイブ・ヒズボラの施設を5ヶ所攻撃した。その行為はイラクの主権を侵害したものとしてイラク国民の反米感情に火を点け、米国大使館の襲撃と為って居た。この様なエスカレーションが進む中で、アメリカはイラク側の暴動や攻撃を指揮して居るソレイマニを排除し無ければ為ら無いと考えるのは一応の合理性はある。

 しかし、同時にトランプ大統領は11月の大統領選に向けてイラクのシーア派民兵やイランに対して弱腰である事を見せる訳にも行かず、強気の姿勢で押し切る必要性に駆られた行動と云う見方をする事も出来る。
 歴代の大統領が遣ろうと思えば出来たのに様々な配慮から実行して来なかったことを実行すると云うのはトランプ大統領の統治スタイルであり、そうした「オバマには出来無い事を自分は実現した」と云う姿を見せたいと云う思いもあったのだろう。
 又、トランプ大統領は下院で弾劾決議が可決し、上院の弾劾裁判で無罪を勝ち取る見込みとは言え、この問題に対して激しく抵抗して居り、この問題から国民の目を逸らす必要があると考えた可能性もある。

 何れにせよ、理由はどうであれ、これまでイランの反撃とエスカレーションを恐れて実行して来なかったソレイマニ殺害をトランプ大統領は実行した。
 しかし、ソレイマニ殺害は間違い無く米イランの緊張関係を高め、最悪の場合全面戦争に突入する可能性も有る。トランプ大統領は記者会見でソレイマニ殺害が「戦争を始めるのでは無く、戦争を止める為に殺害した」と語って居る。今後対立がエスカレートして全面戦争に行くのか、それともトランプ大統領に「戦争を止める」方策はあるのだろうか。









 イランの対応

 国民的な英雄であり「アイドル」とも言って良い存在であるソレイマニを失ったイラン国民は哀しみに暮れて居る。ソレイマニを殊の外気に入って居た最高指導者のハメネイ師は全国民に3日間喪に服す様求め、国旗は半旗と為って居る。ハメネイ師を初め、ロウハニ大統領や革命防衛隊のサラミ司令官等は、アメリカの責任を追及し、ソレイマニ殺害の復讐をする事を誓っている。

 では、どの様な復讐をするのであろうか。現在の処、イラン側からは何も示唆するものは無く、イランもどの様に対処して行くのか、これから戦略を練り直す段階にあると考えられる。故に、ここでは飽く迄も考えられるオプションを提示するが、必ずこのどれかに為るとも言え無いし、ここで論じた事以外の対応をするかも知れないので、単なる推測に過ぎ無いが、可能な限り現実的なオプションを考えて見たい。

 先ず、イランはアメリカとの力の差を十分認識して居る。その為、自国に累が及ぶ様な事は避けたいと考えると思われる。故にイランが反撃するとすれば、典型的な非対称戦・・・詰まりゲリラ的な攻撃やテロ、サイバー攻撃等の様々な手段を使ったハイブリッド戦の様なスタイルの攻撃を仕掛けるのではないかと思われる。
 その際、イランの能力から考えて、第一の標的はイラク国内に居る米軍や米国関連施設への攻撃であろう。これまでカタイブ・ヒズボラが行って来た軍事施設への攻撃や米国大使館への暴動への動員等に類する行動を強化して行くのではないだろうか。

         1-7-5.jpg

 特に、ソレイマニと一緒に殺害されたカタイブ・ヒズボラの指導者のムハンディスは、イラク国民でありイラク国内で米軍がイラク国民に対して攻撃を仕掛けた事は、イラク戦争を経験した国としては認められるものでは無く、国内での反米感情は高まって居る。
 2019年末に行われたカタイブ・ヒズボラの施設への攻撃は、既にイラクの主権に対する攻撃として見做され、イラク国会では米軍を排除する法案が審議される予定であった。米軍がイラクに駐留するのはイスラム国と闘う事が前提と為っており、イラク市民や国内の施設を標的にした攻撃をする為に米軍が駐留して居る訳では無い。その為、イラク国内では米軍の撤退を求める運動も強く為る為、イランはこれらの運動を活用してアメリカに対する圧力を掛けて行くであろう。

 又、アメリカの同盟国であるサウジやUAEの石油や天然ガスの施設は、2019年9月のドローンや巡航ミサイルによる攻撃で示した様に脆弱である。こうした脆弱な施設を攻撃する可能性も否定出来ない。これは直接、ソレイマニの復讐とは言えないが、アメリカと正面から闘うよりは確実な成果を得られるものとして選択する可能性がある。
 更に、1月6日には核合意の部分的履行停止の第五弾を発表する予定であったが、ソレイマニ殺害に抗議する形で核合意からの離脱を宣言する可能性もあるだろう。
 それが即座に核兵器開発に直結する訳では無いだろうが、このママ核合意を維持し続ける道理も見付け難く、核合意に批判的な保守強硬派の圧力が高まれば核合意からの離脱も考えられる。とは言え、核合意から離脱すれば、それ自体がアメリカによるイラン国内に対する武力攻撃を誘発する可能性もある為、そうした選択は取り辛いと思われる。

 米国内ではイランによるテロが実行される可能性に備えて居る。イランが何らかの形で米国内でテロを行う要員を送り込み、こうした事態に備えて居る可能性は否定出来ない。しかし、イランが果たしてアメリカの監視網を潜り抜けてテロを実行する事が出来るだけの能力があるとは考え難い。勿論可能性はゼロではナいので、警戒して置く必要はあるだろうが、その可能性はそれ程高いとは思え無い。








 米イラン関係の緊張の高まりは自衛隊派遣に影響するか

 米イラン関係の緊張が高まり、イランによる「復讐」が為され、それに対してアメリカが反撃すると云う事に為れば、この対立が武力紛争へとエスカレートする可能性は高い。しかし、イランはアメリカと正面から戦争をする事は可能な限り避け、少なくともイランからアメリカの攻撃を誘発する様な事はしないと思われる。

 これまでもイランは何らかの挑発を受けた場合も、エスカレーションをコントロールしながら、受けた攻撃と同等の反撃をする事で釣り合いの取れた対応をして来た。ソレイマニを失った事はイランに取って大きな打撃ではあるが、元々野戦司令官であり、戦場で戦う兵士であるソレイマニが敵の攻撃によって命を落とすのは或る程度織り込み済みである。
 実際、ソレイマニが殺害されたのは金曜の未明であり、多くの金曜礼拝(イスラム教では金曜が休日)では聖職者が彼を悼む弔辞を述べたが、そこではこれ迄イラクやシリアで命を落とした兵士の内の1人としてソレイマニを位置付ける様な説教が為されたとの話もある。詰まり、イランが失ったのは戦場での有能な司令官であり、アメリカに対する報復はそれと同等のものに為ると見る事が出来る。

 と為ると、イランの「復讐」で最も可能性が高いのは、米軍の兵士や司令官に対する攻撃であり、主たる標的は米軍施設等と為るだろう。
 これは言い換えれば、イランの反撃はホルムズ海峡やオマーン湾を行き交うタンカー等では無い、と云う事を示唆する。勿論、イランがこうした脆弱なソフトターゲットを標的にして紛争をエスカレートさせて行く可能性はある。しかし、これ迄のイランの行動パターンや思考パターンを考えて行くと「復讐」が海に向かって行く可能性は低いと考えられる。

 その意味では今まで以上にイランの行動を監視し、紛争がエスカレートし無い為にも紛争が拡大しそうな兆候を察知し、紛争の火種を消して行く事が重要に為る。日本の自衛隊派遣によってそうした監視が強化されるのであれば、紛争拡大の抑止に貢献する事に為るであろう。
 最も紛争の主たる舞台はイラク国内であり、自衛隊が活動する範囲ではそうした兆候を見つけ出す事もそれ程は無いと思われるが。


             1-7-2.jpg

 鈴木一人 北海道大学公共政策大学院教授 核問題 宇宙開発 日米関係等を始め国際ニュースを判り易く解説します      以上







┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
        24HRジム×パーソナル【STAR FIT】

================================
        24時間ジム使い放題 月額7,500円
      いつでも自分の好きなペースでトレーニング
================================

詳しくはコチラ
>>https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=35B9KK+3MDY9E+44PM+5YZ77
┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘









【解説】 イランのソレイマニ司令官殺害 何故今でこれからどう為るのか





 




 【解説】 イランのソレイマニ司令官殺害 何故今で これからどう為るのか

  〜Share this with Messenger  ジョナサン・マーカスBBC防衛外交担当編集委員 2020年01月4日〜


        1-6-11.jpg

   「イスラム国」との戦闘の前線に立つソレイマニ司令官(イラク・サラハディン州で)

 イラン革命防衛隊の精鋭コッズ部隊を長年指揮して来たカセム・ソレイマニ司令官をアメリカが殺害した事によって、これ迄低強度で推移して来た両国の対立は劇的に悪化した。その余波は極めて深刻なものに為り得る(文中敬称略)

 報復が予想される。攻撃と反撃の連鎖で、両国は直接対決に近づく可能性がある。イラクにおけるアメリカ政府の将来にも疑問符が着く様に為る。そして、中東におけるドナルド・トランプ米大統領の戦略は、もし戦略があるの為らば、過つて無い程試される事に為る。
 オバマ前政権でホワイトハウスの中東・ペルシャ湾政策を調整して居たフィリップ・ゴードンは、ソレイマニ殺害はアメリカからイランへの「宣戦布告」の様なものだと言う。コッズ部隊は、革命防衛隊の海外作戦を担当する。レバノン、イラク、シリアと場所を問わず、攻撃を計画したり現地の親イラン派を後押ししたりして、イランの影響力拡大を推進した。その中心に永年居た立役者こそソレイマニだった。

 米政府からすれば、ソレイマニは大勢のアメリカ人を死為せて来た血染めの張本人だった。しかし、イランでは人気があった。そして、実務の上では、アメリカによる制裁や圧力に対抗するイランの反撃を主導して来た存在だった。
 それだけに、トランプ大統領がソレイマニ司令官を攻撃の視野に入れて居たことよりも、今と云うタイミングを選んだ事が何より予想外だった。

 確かに、この処イラク国内の米軍基地に対して相次いだ低強度の砲撃を、アメリカはイランの仕業だと非難して居た。アメリカの民間請負業者からは死者が1人出た。しかしそれより先に昨年続いたオマーン湾でのタンカー攻撃や米偵察ドローンの撃墜等のイランの行動に対して、延いてはサウジアラビアの主要石油施設攻撃に対しても、アメリカは直接の反撃には出なかった。
 イラク国内の米軍基地に対する砲撃に付いては、米国防総省(ペンタゴン)は既に、その背後に居たと思われる親イラン武装勢力に反撃して居る。それが、バグダッドの米大使館が襲撃された背景にあると観られる。

 ソレイマニ殺害の決定を説明するに当たり、国防総省はその過去の行動を強調するだけで無く、今回の空爆による殺害は抑止的行動だったのだと力説した。司令官が「イラクと中東全域で、米外交官や軍関係者への攻撃計画を積極的に策定して居た」のだと。
 この次どう為るのかが大問題だ。トランプ大統領は今回の劇的な一手によって、イランを尻込みさせる他に、アメリカに疑心暗鬼を募らせるイスラエルやサウジアラビア等中東の同盟諸国に向かって、アメリカの抑止力は未だ効くのだと証明してみせたと、一石二鳥を期待して居るだろう。しかし、例え直ちにでは無いとしても、イランが強力な反撃に打って出無い等考え難い。

 イランは報復として、イラク駐留米軍を狙うだろうか

 イラクに駐留する米兵5000人は、言う迄も無く分かり易い標的に為り得る。イランやその代理勢力が過去に攻撃したのと同種の標的もそうだ。湾岸地域は否応無く緊迫する。ソレイマニ殺害直後の反応が原油価格急騰だったのは無理も無い。
 アメリカと同盟諸国は、防衛体制を強化するだろう。米政府は既に在バグダッド大使館の警備を増強して居る。必要に応じて速やかな中東増派も計画して居るだろう。

 その一方で、イランの反応は或る意味で非対称的なものに為る可能性も同じ位ある。詰まり、直接攻撃には直接攻撃で応えるのでは無く。中東全域には親イラン勢力が広がって居る。正にソレイマニが後押しし、資金を提供し、作り上げて来たイランの代理勢力だ。イラン政府はその存在を活用しようとするかも知れない。

 イラン司令官殺害 イランとアメリカの関係は何故ここ迄悪化した

 例えば、バグダッドのアメリカ大使館を再び襲撃すると云う手もある。そうすればイラク政府は追い詰められ、イラクに駐留する米軍の存在が争点に為る可能性もある。或いは、他の場所で攻撃する口実に、同じ様なデモを他所で扇動すると云う遣り方もある。
 コッズ部隊の司令官空爆は、米軍の情報収集力と攻撃力を見せ付ける明確な示威行為だった。ソレイマニの死を決して悲しま無い人は中東には大勢居る。しかし、この殺害はトランプ大統領に取って最も賢明な措置だったのだろうか。

 避け難い今後の事態に、ペンタゴンは何処まで備えて居るのか。そして、トランプ氏の中東戦略全般の一体何が、この攻撃から明らかに為ったのだろう。何か変わったのだろうか。イランによる作戦は一切容認しないと云う、新しい方針でもあるのか。それとも今回の攻撃は只単に、トランプ大統領が「とても悪い男」だと思うに違い無いイランの司令官を殺害したと云う、それだけの行動だったのだろうか。


  英語記事 Qasem Soleimani: Why kill him now and what happens next?
              

                  以上







24時間ジム使い放題【STAR FIT】










世界大戦懸念も 司令官殺害でイランが報復明言


 

 

 世界大戦懸念も 司令官殺害でイランが報復明言

       〜テレ朝 news All Nippon NewsNetwork ANN 1/6(月) 20:01配信〜

 年明け早々に不穏な事態です。アメリカがイランの司令官を殺害した件に絡み、イランの軍事顧問は直接的な報復攻撃を明言しました。事態の影響で日本でも株価が急落して居ます。

 2020年の年明け、アメリカでは不吉な言葉が飛び交いました。アメリカのSNSでは「第3次世界大戦」と云う言葉が1位と為りました。事の発端は、矢張りこの人でした。

 トランプ大統領「昨夜、私の指示によりアメリカ軍が完璧な攻撃を実行した。世界で一番のテロリストを殺害した」  
 3日、アメリカ軍はドローンによる空爆でイランの「ナンバー2」とも言われるソレイマニ司令官らを殺害。殺害された司令官は過激派組織「イスラム国」掃討作戦で大きな役割を果たし、イランで英雄視されて居る人物です。戦時中では無い国、更に大統領の指示による要人の暗殺と云う攻撃にイランは猛反発して居ます。  
 イランのデフガン軍事顧問「この争いを終わらせる事が出来るのは、アメリカが自ら与えた一撃に匹敵する攻撃を受ける事だ」  

 イラン政府は無制限にウラン濃縮を進める方針を表明。事実上、核合意からの離脱と見られて居ます。一方、今年秋の大統領選へ強気の姿勢を見せるトランプ大統領も一歩も引く構えを見せず、報復の連鎖がエスカレートしかね無い状況です。
 中東の危機は対岸の火事ではありません。ドルが売られて円高が進み、輸出企業を中心に全面安と為った日経平均株価は一時500円以上値下がりしました。


 (C)CABLE NEWS NETWORK 2020     以上









【関連記事1】【解説】 もしも戦争に為ったら石油はどう為る? イラン司令官殺害

       〜BBC News ネル・マッケンジー ビジネス記者 1/6(月) 17:54配信〜

 2004年にイラクで改めて戦争が本格化した時、一晩でアメリカの原油価格が1バレル当たり10ドルも跳ね上がった時の事を、ミッチ・カーン氏は覚えて居る。これは、トレーダーが最小限の買い注文をしても5万ドル約540万円の利益が出る変化だ。売り注文をして居た場合は同じだけの損失に繋がる。
 カーン氏は当時、ニューヨーク・マーカンタイル取引所・NYMEXで独立系のトレーダーとして働いて居た。ここでは下の階で原油やガス・灯油等が、上の階で貴金属等が取引されて居る。

        1-6-7.jpg

 2004年には、激しい抗議の声が原油価格を決めた。トレーダー達は立ち上がって叫んで居た。価格は売り手と買い手の提示する値段で決まる。買う人も売る人も居た。取引所内の騒音は凄まじく、耳栓をするトレーダーも居たと云う。しかしカーン氏は、アドレナリンが出て居たから耳を塞が無くてもハッキリと聞こえたと話した。 今でコソNYMEXでは24時間取引だが、2004年当時は午後2時半のベルと共に取引が終了した。
 2004年のこの日は取引開始と共に、カーン氏の右側に居たトレーダーが叫び始めた。このトレーダーが石油を売ろうとし始めると「石油価格が暴落した」と云う。数分後には、原油価格は1バレル当たり20ドルも下がった。しかし、現在はこの様な事態は起こら無いだろうとカーン氏は指摘する。「今の市場の動き方は当時とは違うので」

 事実、イラク・バグダッドの空港近くで、3日にイランのカセム・ソレイマニ司令官が米軍にドローン空爆されたのを受け、直後には石油価格が急騰したものの、石油市場の動きはイラク戦争の時とは大きく異なる。原油の生産地も精製方法も取引方法も、カーン氏がアドレナリンの力を借りて価格の混乱を潜り抜けた当時とは全く違うのだ。

 ルールが変わった

 アメリカの無人機(ドローン)がイラン革命防衛隊の精鋭コッズ部隊を長年指揮して来たソレイマニ司令官を殺害したと云うニュースに、3日のブレント原油価格は69.5ドルと4%上昇した。これに合わせ、英BPやロイヤル・ダッチ・シェルと云った石油メジャーの株価も1.5%程上がった。
 バンク・オブ・アメリカでコモディティー戦略に携わるマイケル・ウィドマー氏によると、2004年から現在に掛けて石油市場を変えた最大の要因は、アメリカが自国で十分な石油を生産し、輸入に頼ら無く為った事だと云う。アメリカは最早、中東の原油に依存して居ないのだ。

 「これが実質的なルールを変えた」とウィドマー氏は指摘する。例えば、昨年9月にサウジアラビアの石油施設がドローンに攻撃された事件等は良い例だ。「石油供給と云う点では、世界の石油市場に取って最大の事件の一つだったが、持続的な影響は無かった」とウィドマー氏は話した。攻撃当日、原油価格は1バレル当たり10ドル近く上昇したが、その後は大きな出来事は無かった。
 イランとアメリカの間で厳しい非難の言葉が飛び交い、新たな制裁が示唆される等、政治的には緊張感が高まった。しかし、2週間後には原油価格は60ドル以下まで下がった。結局の処、価格乱高下の懸念よりも、辛らつな政治的遣り取りの方が何時までも続いた。これはロシアやアメリカ等、国内で石油を生産する国が増えたからだ。

 下表は、世界の五大石油産出国の産油量を年毎に比較したものだが、各国がココ10年程で急激に産油量を増やして居るのが判る。

              1-6-8.jpg

 薄まるOPECの影響力

 中東の石油産出国を中心とした石油輸出国機構・OPECは過つて、石油の供給を牛耳って居たが、今はもうその様には行かない。「現在、OPECが石油の生産量を落としたとしても、他国が国内生産量を増やす余地を与えるだけに為ってしまった」とウィドマー氏は指摘する。
 コンサルティング会社ウッド・マケンジーのマーケティング・リサーチチームを率いるアラン・ゲルダー氏によると、OPEC加盟国は過つて世界の石油の半分を生産して居たが、今では3分の1以下だと云う。

 1990年の湾岸戦争当時、石油は2地域で生産されて居た。片方はOPEC加盟国。もう片方は北海等よりコストが高く危険が伴う地域だった。海底の石油を探索し掘り出すと云うのは、40年前には予想の付か無い危険な遣り方だったのだ。しかし北米でフラッキング・水圧破砕法による採掘が可能に為った今、アメリカには豊富な石油資源がある。
「当時はコモディティー市場が確立したばかりだった。今では参加者もズッと多く為って居る」とジェルダー氏は説明した。又、5年前よりも格段に情報が手に入る様に為ったと云う。

 昨年9月にサウジの石油施設が攻撃された際、施設や港を出る船舶を写した衛星写真から、事件後直ぐに生産と輸出が再開された事が分かった。「数年前迄は、人々は狂った様にお互いに電話を掛けて、何が起きて居るかを把握しようとした」それに対して現在のOPEC加盟国やロシア等の産出国は、出来る限り石油の生産を抑える事で合意して居る。
 その為、中東地域で緊張が高まった時に石油価格がどう為るかは、非常に予測が難しい状況だ。米シティバンクのアナリストらは、報復攻撃の恐れがある事から、短期的には石油価格も高い水準に留まると観ている。アメリカの石油企業が保有するパイプラインや、欧米石油メジャーが投資して居る開発地域に攻撃が有れば、原油価格は更に高く為る可能性もある。一方、イランとアメリカの紛争が何らかの形で解消すれば、状況は緩和され、石油価格も下がると云う。


 英語記事 What will happen to oil if there is another war? (c) BBC News 最終更新:1/6(月) 17:54   以上









 【関連報道2】軍事力は世界14位 報復を誓うイラン軍の本当の実力

            〜ニューズウィーク日本版 1/6(月) 11:39配信〜


        1-6-9.jpg
      PRESS OFFICE OF IRANIAN SUPREME LEADER-POOL-ANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

 〜イラン革命防衛隊「クッズ部隊」のスレイマニ司令官を殺害したアメリカに、イラン指導部は報復を誓って居る。国連制裁下に在ったイランだが、実際の軍事力はどの位強力なのか〜


 米軍は1月3日、イラクの首都バグダッドでイラン革命防衛隊「クッズ部隊」のカセム・スレイマニ司令官らを空爆により殺害した。これに対し、イラン指導部はアメリカへの報復を誓って居る。イランの出方は未だ明らかで無いが、トランプ米大統領は中東での米軍のプレゼンスを強化し始めて居る。イランの報復攻撃に備えて、最大3500人の米兵を中東に増派する方針だとされる。

 イランの軍事力は、どの位強力なのか。最大の強みは、中東諸国で最も高度なミサイル兵器と同地域最大規模の常設軍だ。加えて、アメリカとその同盟国に対して反感を抱くイスラム教シーア派武装勢力の支持も得て居る。シーア派の反米感情は、今回のスレイマニ殺害で一層強まりつつある。

 世界各国の軍事力をランク付けして居る米グローバル・ファイヤーパワーの最新ランキングによれば、イランは世界で14位。これは、近隣のライバルであるイスラエル(17位)サウジアラビア(25位)より上位だ。
 イランは2010年以降、国連制裁により兵器輸入を制限されて来た為、保有する外国製兵器の多くが時代遅れに為って居ると考えられて居る。欧米製の兵器は1979年のイラン革命前のものだし、旧ソ連製や中国製の兵器の一部も古く為って来ている。しかし、イランはそうした弱点を強みに変えようとして来た。例えば海軍の主力は小型高速艇だ。これが群れを為して一斉に外国の大型艦に押し寄せる戦法を磨いて居る。

 中ロと合同軍事演習も

 一方、イランは国産兵器の開発でも大きな進歩を遂げて来た。「ホルダード3」「メルサド16」「ババル373」等、地対空ミサイルの開発にも成功して居る。「ホルダード3」は、昨年6月に米軍の最新鋭無人偵察機グローバルホークを撃墜した兵器だ。
 この他にも、ロケット砲の「ファジル5」や短距離ミサイルの「ゼルザル」射程約2000キロの弾道ミサイル「ホラムシャハル」等の国産兵器がある。長距離巡航ミサイルの「スーマール」は、ヨーロッパも射程に収める。ドローン(無人機)もイランが力を入れて居る分野だ。偵察機や戦闘機の他「自爆攻撃」用のドローンも開発して居る。

 ミサイルやドローンの一部は、レバノン、イラク、シリア、イエメン等、親イランのシーア派武装勢力に供与されて居ると言われる。これが敵対国(詰まりアメリカ、イスラエル、サウジアラビア)に対する強みに為って居る。
 この様に周辺国のシーア派武装勢力を支援する戦略を主導して来たのが、今回殺害されたスレイマニだった。この戦略は、スレイマニが死亡しても続く可能性が高い。イランの最高指導者ハメネイ師はイスマイル・ガアニ副司令官を後任の司令官に指名し、戦略を継続する方針を打ち出して居る。

 イラン政府は、イランを国際的に孤立させ様とするアメリカの動きに対抗する為に、新しい連携も模索して居る。12月には、インド洋とオマーン湾で中国及びロシアと初めての合同海上軍事演習を実施した。中国とロシアは、最近のアメリカとイランの緊張に関して主にトランプ政権を非難して居る。トランプ政権に取って、イランは容易な相手では無さそうだ。

 
    2020年1月14日号掲載 本誌1月14日号の14・32ページに関連記事 トム・オコナー     以上



 



 ■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
    犬好き・猫好き・動物好き・ペット好き男女専門の
   結婚相談所・お見合い・婚活応援サービスは【ペット婚】
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

ペット婚は、初期費用0円で本格婚活をはじめる事ができるオンライン結婚相談所です!
累計紹介数10万件以上の専門婚活グループが運営する安心・安全のサービスです。

☆☆☆☆☆ペット婚の5つの魅力☆☆☆☆☆

その1. 初期費用オール0円
通常数十万円もする結婚相談所の初期費用がペット婚ではオール0円で始める事が出来ます。

その2. 共有の価値観を持つ人とだけ出会える
   専門婚活サービスのため、動物が大好きという共通の価値観を持った異性とのみ出会う事が出来ます。

その3. 担当仲人制度の導入
   婚活アドバイザーがお相手の提案→お見合い調整→成婚退会まで貴方の婚活を完全サポート致します。

その4. 成婚祝い金が貰える!
   通常の結婚相談所で発生する平均20万円の成婚退会料を撤廃!更に成婚カップルに祝い金として金5万円を贈呈

その5. 人気芸人司会のお見合いイベントも開催
   ロンドンブーツ1号2号の田村 淳さん主催の婚活イベント『マスクdeお見合い』とのコラボイベントを不定期開催


:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

詳しくはこちら→https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=35B9KK+1WGVCI+3LOM+ZQNG3




















×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。