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2019年05月04日

橋下徹の言論テクニックを解剖する  その2




  





 橋下徹の言論テクニックを解剖する その2



 中島岳志の「希望は商店街! 札幌・カフェ・ハチャムの挑戦」より引用します



    5-5-2.jpg 中島岳志氏



 有り得無い比喩 前言撤回 ふっかけ 涙 脅し 言い訳・・・



 「例え話で論理をスリ替える」



 前回に続いて、橋下徹氏の言論術を彼自身の著書『図説・心理戦で絶対に負けない交渉術』(日本文芸社)を使って分析してみたいと思います。
 この本の第2章のタイトルは「相手を言い包める詭弁の極意」以下で検討する橋下氏のテクニックは、本人が「詭弁」であることを認識し「相手を言い包める」ことを目的として提示して居ます。先ずはこのことを、初めに確認して置きたいと思います。

 橋下氏は、ここで次の様に言います。


 「絶対に自分の意見を通したい時に、有り得ない比喩を使うことがある。(40頁)例え話で論理をスリ替え相手を錯覚させる!」(41頁)


 確かに橋下氏は比喩を多用します。しかし、これは主張を適切に多くの人に理解して貰う為と云うよりも、自分の意見を通す為の「詭弁」であり「論理のスリ替え」を行うテクニックなのです。
 最近、橋下氏は堺屋太一氏との共著『体制維新−大阪都』(文春新書)を出版しましたが、この中で彼は次の様な比喩を使います。


 




 「僕は、大阪都構想と教育基本条例、職員基本条例はワンセットの戦略だと考えて居ます。これは単純な話で、運送会社やバス会社経営に於ける自動車とドライバーの関係と同じなんです。(中略)ドライバーの話が職員基本条例なのです。ドライバーがどれだけスピード違反をしようが信号無視をしようが飲酒運転をしようが、身分に為って居ると運転手の交替は無い。それが今の日本の公務員制度です」


 これが適切な比喩かどうか、もう一度、考えながら読んでみて下さい。ジックリと読み直すと、大きな「スリ替え」があることに気付きます。
 橋下氏は運送会社・バス会社のドライバーを、地方自治体の職員に例えて居ます。そして「スピード違反」「信号無視」「飲酒運転」と云う法律違反を列挙して居ます。その上で、職務中の違法行為の責任を問われたドライバーが「交替」を命じられると云う話を提示し「日本の公務員制度」では「身分」保障によって「交替は無い」として居ます。

 これは明らかに飛躍に満ちた不的確な比喩です。日本の公務員が職務中に違法行為を犯した場合、当然ですが「免職」を含む処分が下されます。職場の「交替」と云う処分もあります。しかし、橋下氏はこの例え話を公務員や教員の身分保障問題に拡大し、恰も違法行為を犯した公務員が全く処分され無いかの様に「スリ替え」ています。
 これはどう考えても「詭弁」としか言いようがありません。しかし、例え話には「飛躍」や「スリ替え」が含まれて居ても「錯覚」によって納得させる効果があります。しかも、「判り易い」と感じさせる効果まであります。 好く知られる様に、橋下氏は大阪府知事就任直後の職員訓示で次の様に述べました。


 




 「皆さま方は、破産会社の従業員であると云う点だけは確認して下さい。民間会社で破産、倒産と云う状態なら、職員の半数や3分の2カットナンて当たり前です。お給料が半分に減るナンて云う事も当たり前です」(2008年2月6日、府議会本会議場)


 しかし、先日の知事退任時(10月31日)には、前言を撤回し「皆さんは優良会社の従業員、3年9カ月、有難うございました」と述べています。
 この「破産会社の従業員」「優良会社の従業員」も、極めて恣意的な表現です。私は2008年の大阪府を「破産」とするのは適切で無いと思いますが、仮にそれを受け入れたとしても、それから約4年経った今日、大阪府の地方債残高は橋下氏の知事就任時よりも増加して居り(逆に大阪市の地方債残高は減少)「破産会社」から「優良会社」に為ったと云う「例え話」はり立ちません。 橋下氏は言います。


 




 好く聞けば可笑しな話も交渉では有効に作用する。(36頁)

 
 橋下氏は、自分で可笑しいと分かっていながら、恣意的な比喩表現を用いて、話を有利に進めようとするのです。橋下氏が例え話を用いた時は、立ち止まって考えてみる必要がありそうです。


 前言を撤回する「狡いやり方」

 
 橋下氏は「相手を言い包める詭弁の極意」として「一度オーケーしたことを覆す技術」を挙げます。彼は「タフな交渉現場では狡いやり方も必要」と言った上で、次の様に説きます。


 「交渉に置いて非常に重要なのが、こちらが一度はオーケーした内容を、ノーとヒックリ返して行く過程では無いだろうか。まさに、詭弁を弄してでも黒いものを白いと言わせる技術である。〈ずるいやり方〉とお思いに為るかも知れないが、実際の交渉現場では可なりの威力を発揮するのだ」(32頁)

 「一度為された約束毎を覆す方法論は、交渉の流れを優位に運ぶ重要なものだと考えている」(32頁)



 




 では、どのようにして前言撤回を行うのが有効な方法なのでしょうか。橋下氏は言います。


 「具体的には自分の言った事に前提条件を無理遣り付けるのである。(中略)前提条件は、相手がその時点で満たして居ないもの満たしようが無いものをワザと作る。言わば仮装の条件である。満たされ無い様な条件をワザと付け、今、満たされて居無いのだから一応オーケーした事でもこちらは約束を果たせ無いと云う論法で逃げる」(32頁)


 これは、一寸した詐欺行為と言って好い類の「詭弁」です。一度、約束したことに対して、後から無理やり「満たしようが無い前提条件」を付与し、相手に責任を被せて逃げ切ると云うのです。彼は、これによって「合意」を「無効」に出来ると言います。更に橋下氏は、次の様な「手法」も提示します。


 




 「前提条件を無理やり作るという他に、オーケーした意味内容を狭めると云う方法もある」(34頁)


 この「意味内容を強引に狭める」と云う方法は、橋下氏が何度も繰り返し使う代表的なテクニックです。最近では「独裁こそ必要」と云う発言が話題に為り、対抗馬の平松氏を初めとする多くの人から、厳しい批判を投げ掛けられました。この発言に危うさを感じた大阪市住民も多い様で、庶民レベルでの橋下氏への警戒が高まりました。すると、橋下氏はツイッター上で「独裁発言」の意味内容を「強引に狭める」発言を行いました。


 




 「独裁発言は、権力を有して居る体制と対峙するには、こちらにも力が必要と云う現実的な認識を示したまでです」(10月31日)


 これは「独裁」の定義に全く為って居ません。後から無理やり意味を狭め、拙い発言の漂白を図って居るだけです。橋下氏自身が提起する処の「詭弁」「狡いやり方」なのでしょう。
 橋下氏は、繰り返し「前言撤回」を行い「一度オーケーしたことを覆す」ことから、メディア関係者から「クルクル王子」と名付けられ批判されて居ます。水道事業の統合問題では、大阪市側との合意事項を撤回し、責任を平松氏に転嫁しました。「約束の反故」は、彼の交渉術に含まれる常套手段なのです。


 




 「不毛な議論を吹っ掛ける」「涙のお願い」


 他にも、橋下氏は数々のテクニックを提示しています。全て丁寧に追って居ると切りが無いので、後はダイジェストで紹介して行きます。


 「交渉の流れが不利に為って来たら、不毛な議論を吹っ掛けて煙に巻く」(90頁)


 橋下氏は、議論の過程で「自分の発言の不当性や矛盾に気付くこと」があると云います。そんな時には「心の中では"仕舞った"と思っても」「ポーカーフェイスで押し通」し、矛盾を指摘されれば「相手方に無益で感情的な論争をワザと吹っ掛けるのだ」と説きます。(90頁)


 橋下氏は2008年10月、私学助成の大幅削減に際して、削減反対の高校生と府庁で議論しました。ここで高校生は橋下氏が選挙で「子供に笑顔を」と云うスローガンを掲げて居た事を前提に「税金を無駄な道路整備では無く、教育に回して欲しい」と訴えた処、「貴方が政治家に為って、そう云う活動を遣ってください」と気色ばみました。
 更に「橋下さんの話は、結局は自己責任に為るじゃないですか」と問い詰められると、返答に窮したのか「今の日本は自己責任が原則、可笑しいと言うなら国を変えるか、自己責任を求められる日本から出るしか無い」と答え、女子生徒を泣かせました。まさに「無益で感情的な論争をワザと吹っ掛け」て乗り切る手法が発揮された場面でした。


 




 サテ「かけひき術」の中には「最後の手段、お願いの使い方」と云う項目もあります。


 「お願いは非論理的な手段。相手の価値観に訴える効果的な内容を考える」(27頁)
 「お願いをする相手はこう云う泣き落としを理解して呉れる様な人であることが前提になる」(26頁)



 この項目で思い起こされるのは「知事の涙」騒動です。就任から間も無い2008年4月17日「市町村へ御補助金削減案」を巡る市長村長との意見交換会で厳しく追求されると、橋下氏は「皆さんで一度……考えて貰って……是非、大阪を立ち直らせたいと思いますので、今一度、ご協力の程、宜しくお願いします」と目を赤く腫らしながら頭を下げました。
 この意見交換会に集まったのは、殆どが橋下氏よりも年長の首長ばかりで、その場には多くのテレビカメラが入って居ました。彼は涙ながらにお願いすることが「相手の価値観に訴える効果的な方法」と判断したのでしょう。この映像は「改革派の若い知事を守旧派の年配首長が集中攻撃している」と云う印象を視聴者に与え、各首長の元には「知事をいじめるな!」と云う抗議の電話が殺到しました。


 




 脅し、言い訳、スキを与えない、味方との交渉・・・ 


 後は幾つかを列挙することにしましょう。  


 〈脅し〉により相手を動かす。(24頁)
 自分に非がある場合でも、上手な言い訳をして、ピンチを切り抜ける!(75頁)
 相手が揺らぎ出したら考えるスキを与えず、一気に結論に持って行く(86頁)
 本当の落とし処は、相手方は勿論、味方にも秘密にする(42頁)
 交渉の見立てを慎重にして味方とのやり取りにも勝つ(43頁)


 最後の二つの「極意」等は、橋下氏と大阪維新の会メンバーとの関係を想起すると、大変興味深いものがあります。


 以上、ザッとではありますが、橋下氏の著書の分析から見えて来る橋下氏の言論テクニックを検討しました。私達は、先ず橋下氏の「手法」を知る必要があります。彼がどの様な言論テクニックを用いて政治を進めて行くのかを熟知し、冷静な眼を養った上で、彼が提示する政策を検討する必要があります。私達国民の方が熱狂に乗っては為りません。

 これからは、橋下氏の発言に接した時に、「どのテクニックを使って居るのか」をジックリと検討してみて下さい。そうすると、客観的で冷静な視点を獲得することが出来ます。「スキを与え無い」ことを「極意」とする政治家に対して最も有効な方法は、一呼吸入れる事です。
 テレビの前で、又新聞を読みながら、是非実践してみて下さい。これまで気付か無かった論理の飛躍や問題点が見えて来ると思います。

                 以上



 




 では、最近の橋下徹氏はどの様な発言をしているのか・・・次回に見て行きます


橋下徹の言論テクニックを解剖する  その1




 橋下徹の言論テクニックを解剖する  その1



  




 【管理人より】


 もう既に終わった人として扱うべきなのだろうが、前回の統一地方選挙で大阪府・大阪市のダブル選で勝利した維新の創立者として、最近何かと発言を始めた橋下徹氏に付いての中島先生の評論をご紹介したい・・・少し古い記事ですが、内容は現在も共有するものです。



 「マガジン9」「カフェ・ハチャムの挑戦」

 
 中島岳志の「希望は商店街! 札幌・カフェ・ハチャムの挑戦」 第6回 2011-11-09upより引用します


 スポーツ用品買うならゼビオ




     5-5-1.jpg 東工大での授業する中島岳志氏




 橋下徹の言論テクニックを解剖する


 2011年11月27日に実施される大阪のW選挙に際して、橋下徹氏の言動に注目が集まって居ます。大阪都構想を実現すれば全てが上手く行くかの様な幻想を振り撒き、既得権益を徹底的にバッシングすることで支持を獲得する有り方は、非常に危険だと言わざるを得ません。
 又、その様な独断的で断言型の政治家を「救世主」と見為す社会の有り方も問題だと思います。(「ハシズムを支える社会」の問題については『創』12月号で詳しく論じて居ます)

 多くの人は、橋下氏の言論術に翻弄されて居ます。彼は「有り得ない比喩」を駆使し「前言撤回」を繰り返しながら、人々の心を惹き付けて行きます。私達は、一歩引いた処から、橋下氏の言論戦術を解剖し、冷めた目で客体視する必要があります。
 その時に、非常に参考に為る本があります。2005年に出版された『図説・心理戦で絶対に負け無い交渉術』(日本文芸社)と云う本です。これは、様々な交渉の場面での実践テクニックを提示したものですが、著者は何と弁護士時代の橋下氏本人です。橋下氏自身が自分の言論テクニックを披露し、手の内を明かして居るのです。

 橋下氏の言論の有り方を分析するには、この本が最も役に立ちます。私達は、今や日本で最も危険な政治家と為った橋下氏の言行を、冷静に解剖する必要があります。以下では、彼の言論を客体化する為に、彼自身が提示する「交渉術」を読み解いて行きたいと思います。


 




 「仮装の利益」と云う概念


 橋下氏が本書の中で最も強調するのが「仮装の利益」と云う概念です。彼は次の様に言います。

 交渉に於いて相手を思い通りに動かし説得して行くにはハッキリ言って三通りの方法しか無い。 

 1 合法的に脅す
 2 利益を与える
 3 ひたすらお願いする 

 
 の三つだ。その中で、最も有効なのは、2の利益を与えることである。この場合の利益には二通りある。一つは文字通り相手方の利益、もう一つは実際には存在し無いレトリックによる利益だ。不利益の回避によって感じさせる〈実在しない利益〉とも言える。(6頁)

 橋下氏は「実際には存在し無いレトリックによる利益」を作為的に創出することによって、相手に要求を飲ませるべきであると述べて居ます。そして、この「仮装の利益」をより有効に起動させる為には「譲歩の演出法」が重要に為ると説きます。

 相手方に利益を与えると云う事はこちらの譲歩を示すと云う事だ。譲歩とそれに伴う苦労は、徹底的に強調し演出すべきだ。譲歩とは呼べ無い些細なことであっても、サモ大きな譲歩である様に仕立て上げるのである。そうすることで、相手方の得る利益が大きいものであると錯覚させることが出来るからだ。これも交渉の技術である。 (10頁)

 橋下氏は、譲歩に伴う苦労を徹底的に演出せよと説きます。相手に譲歩する為に、多大な労力と努力を伴った事を強調する事が重要で、本当に苦労したかどうかは別問題だと言います。

 大きな利益を得たと相手方に感じさせる様に、こちら側の苦労を強調するのである。その演出に、タフネゴシエーターは腕を振るって居る。詐欺に為ら無い程度にではあるが。 (10頁)


 




 更に橋下氏は、交渉に際して「譲れるもの・譲れ無いものを明確に分別して置く」ことが重要であると説きます。彼は、あらゆる主張を「譲歩出来るもの」と「譲歩出来ないもの」の二種類に徹底的に分別し「二者択一の法則で自己の利益を絞り込む」必要があると言います。

 物々交換の基本に乗っ取って自分の主張を絞り込んで行く。どうしても通したい主張と譲歩出来る主張を明確に区別する必要がある。出来る事ならこの主張も通したい交渉の流れの中で判断しよう、そんなグレーゾーンを持ったままで交渉に臨むことだけは避けたい。それが交渉をコジラセ、長期化させる原因にも為るのだ。 (12頁)

 以上の様な「交渉テクニック」から見えて来る政治手法は、どの様なものでしょうか。 橋下氏は、初めにハードルを高く設定した提案を掲げます。勿論、この提案の中には「譲歩出来るもの」と「譲歩出来ないもの」が含まれて居ます。
 突然、提案を突き付けられた利害関係者は当然反発します。そして、橋下氏が提示した提案に依拠しながら、問題点を列挙し抵抗します。

 しかし、この時点で既に勝負は決しています。それは橋下氏の舞台に乗ってしまって居るからです。橋下氏の提案に基づいて交渉がスタートさせる事こそが彼の「交渉テクニック」だからです。
 橋下氏は、ここから「譲歩出来るもの」のカードを切って行きます。そして、このカードの付与によって「仮装の利益」を分配して行きます。「実際には存在し無いレトリックによる利益」の為、橋下氏側にダメージはありません。「譲歩の演出」によって相手が利益を得たと錯覚させることが目的であり、この錯覚を駆使することによって「本当の利益」を獲得して行くのです。
 結果、相手は恰も「利益を得たかの様な感覚」を持ちながら、実際は重要なものを損なって居るという結果が生じます。これが、橋下氏が繰り返し用いる政治手法です。


 




 私は、橋下氏がこのテクニックを駆使する貴重な瞬間を目の前で目撃しました。私は大阪の朝日放送(ABC)が制作する夕方の報道番組にレギュラー出演して居るのですが、そのスタジオで橋下氏と二度、議論を交える機会がありました。
 一度目の議論の時(10月11日)です。この時は、橋下氏と大阪維新の会が提出した「教育基本条例案」が議論の中心でした。ゲストには、この条例案に反発する教育委員の陰山英男氏がお越しに為り、橋下氏と激しい論争を繰り広げました。
 陰山氏は、橋下氏自身が選任した大阪府の現職の教育委員です。橋下氏は、そんな陰山氏とさえ議論せず、9月21日、行き成り頭ゴナシニ条例案を府議会に提出しました。怒ったのは陰山氏を初めとした教育委員達です。特に陰山氏は強い反発を示し教育委員の辞任も示唆しました。

 教育基本条例には、幾つかのポイントがあります。

  先ず一つは「教育行政における政治主導」です。教育が時の権力者によって左右されることを防ぐ為、政治が教育に介入することには極めて厳しい制限が加えられて来ました。橋下氏はこの制限にメスを入れ「教育現場に民意を反映させる」と説きながら、教員人事等への政治介入を模索します。
 2つ目は、教育現場への競争原理の導入です。「学区制の廃止」「3年連続定員割れの高校は統廃合」「学力テストの学校別成績公表」等がそれにあたります。
 3つ目は、教員人事システムの見直しです。「全校長の公募制」「教員に対する相対評価による免職」「学校運営協議会による学校評価と教員評価」等が提示されて居ます。


 




 特に重要なのは「教員の相対評価」と云う問題です。「絶対評価」と異なり「相対評価」では、特定の評価に対刷る割合が定められます。条例案では5段階の最低ランクのD評定を、全体の5%必ずつけなければ為ら無いとされて居ます。そして、このD評定が2年連続と為った教員は研修を受けなければ為らず、そこでも評価され無ければ免職に為ります。
 この教員評定を行うのは校長です。しかし、校長は独自の判断だけで教員の評価を行うのではありません。保護者を中心とする学校運営協議会の教員評価を基に、評価を下すと云うのです。この人事評定のあり方を、橋下氏は「教育現場に対する民意の反映」と主張します。

 陰山氏は先ず、この教員評価のあり方に疑問を呈しました。彼は「民間企業でこんなことをヤッテ上手く行った処があるのか?」と問い、相対評価では誰かに無理やり「貧乏くじ」を押しつけることに為ると批判しました。又、こんなことをして居ては「教員の志願者は減る」と論じ、学校現場による優秀な人材の確保が困難に為ると主張しました。
 また「全校長の公募制」については「これ迄の経験上、公募で優れた校長を確保するのは難しい」とし、売名や名誉職を求める人物の排除は困難であると論じました。 陰山氏の批判は、ツイッター上で為されました。そして、この書き込みの後、スタジオでの対論と為ったのです。


 




 橋下氏は、スタジオでの討論の中で、突然「譲歩」を示しました。彼は急に「教員評価は必ずしも相対評価で無くても好い」と発言し「相対評価」の部分を撤回しました。又「校長の公募」を「必ずしも全校長で無くても好い」と発言し「全」の部分を撤回しました。
 突然の「譲歩」に対して、陰山氏は驚きと戸惑いの表情を浮かべました。そして、勢いに押される形で橋下氏の提案に同意し、橋下氏も「これが本当の熟議ですよ」と誇らし気に語りました。番組終了後、陰山氏は番組スタッフと私に「未だ課題はあるが、重要な譲歩を引き出せた」と満足そうな表情を浮かべ「橋下氏はヤッパリ何処か可愛気があって憎め無い」と笑顔を見せていました。

 後に陰山氏は冷静に為ったのでしょう。結局、大阪府の教育委員会は「教育基本条例案」の全面撤回を求め、その要求に応じ無ければ全員辞職することを発表しました。教育委員会は、橋下氏の舞台に上がること自体を拒否したのです。
 これは条例案そのものを議論の俎上に載せ無いとすることで、橋下氏側にイニシアティブを握らせ無い方針と見ることが出来るでしょう。橋下テクニックに乗ら無い賢明な判断だと私は思います。


 




 もうお分かりだと思いますが、橋下氏の一連の政治行動・言論は、彼自身が示す教科書通りの策略によって組み立てられて居ます。
 先ず「教育基本条例案」と云うハードルの高い提案を行い、そこから「相対評価」「全校長」と云った一部分を突然譲歩することによって、相手に「仮装の利益」を与えます。その時、自分達の側が相手の主張に応じて、重要な部分を譲歩したかの様に「演出」し「仮装の利益」の効果を最大化します。
 相手は「実際には存在しないレトリックによる利益」を真の利益と思い込み、その譲歩に応じて自分も譲歩し無ければなら無いと「錯覚」してしまいます。結果、橋下氏が事前に設定した「譲歩出来るもの」と「譲歩出来ないもの」の二分法に嵌り込み、彼の思い描いた結末が落とし所と為るのです。

 私達は、橋下氏の手法やテクニック、交渉術を熟知する必要があります。そして、この「術」を客体化する事を通じて、橋下氏の巧みな操作を見破ら無ければなりません。テレビを見ながら、「今は000と云うテクニックを使ったな」と冷静に分析することが出来れば、彼の主張の「可笑しさ」を的確に見抜く事が出来る様に為ります。マダマダ、橋下氏のレトリックを見破る方法はあります。続きは又、次回に。


 




 橋下徹の言論テクニックを解剖する  その2へつづく







保守派の私が原発に反対してきた理由




 




 【管理人より】


 自らを保守派と自任する中島岳志氏(北大准教授)のレポートを一読し、私は深い感銘を受けました。保守とか革新とか・・・私達は何かと色付けして人を区分し、理解した様な感覚で居ます。確かにそれも一つのものの見方ではあるのでしょうが、55年体制も終わり東西冷戦も終わり・・・既にベルリンの壁も無く為ってしまったのです。
 従来のママの〈保守だ革新・リベラルだ等の〉区分で現在の状況を区分することには何等の価値も分別も認められ無いのは周知の事。何回かに渉って中島岳志氏のブログをご紹介したいと存じます。お付き合い下さい・・・





「マガジン9」「カフェ・ハチャムの挑戦」 2011-03-30up


 中島岳志氏の「希望は商店街! 札幌・カフェ・ハチャムの挑戦」 第5回 より引用します



    5-4-1.jpg

                   中島岳志氏


 保守派の私が原発に反対して来た理由



 




 世界は普遍的に「想定外」なもの



 真の保守主義とは・・・


 福島第一原発の問題が起こってから、何人かのメディア関係者の方から原発に付いての取材を受けました。それは、私がこれ迄に原発に対して批判的なコメントを行なって来たからです。しかし、一方で私は保守派を自認して居ます。保守思想に基づいて物事を考え自分が保守の立場に立って居る事を公言して居ます。この立場と原発反対の言論が、世の中では奇妙なものに映るようです。


 保守主義者は、理性や知性の限界に謙虚に向き合う


 メディアの皆さんは一様に「何故中島さんは、保守派なのに原発を批判して来たのですか?」と質問されます。「原発批判は左派の占有物」と云う発想からなのか、保守派に原発を批判する人が極めて少ないからなのか、私の姿勢は不可解なものに見える様です。
 しかし、私としては「保守思想を重視するが故に原発には批判的」なのです。保守主義者として思考すると、どうしても原発に懐疑的に為らざるを得無いと云うのが私の立場です。

 保守思想は「理性万能主義に対する懐疑」からスタートします。人間はこれ迄もこれからも、永遠に不完全な存在であり、その人間の理性には決定的な限界があります。どれ程人間が努力しても永遠に理想社会の構築は難しく、世界の理想的なクライマックス等出現し無いと云う諦念(ていねん)を保守主義者は共有します。

 *諦念(ていねん) ・・・道理を悟って迷わ無い心、又は諦めの気持ち


 保守派が疑って居るのは設計主義的な合理主義


 保守主義者は、理性や知性の限界に謙虚に向き合い人間の能力に対する過信を諌(いさ)めます。だから保守派は人間の理性を超えた存在に対する関心を抱きます。神の様な絶対者、そして歴史的に構成されて来た伝統や慣習・良識を。保守派は、多くの人間が蓄積して来た社会的経験知を重視し漸進的(ざんしんてき)な改革を志向します。
 革命の様な極端な変化を志向する背景には、必ず人間の理性・知性に対する驕(おご)り・傲慢(ごうまん)が潜んで居る為、保守派はその様な立場を賢明に避けようとします。

 保守派が疑って居るのは、設計主義的な合理主義です。一部の人間の合理的な知性によって、完成された社会を設計する事が出来ると云う発想を根源的に疑います。人間が不完全な存在である以上、人間によって構成される社会は永遠に不完全で、人間の作り出すものにも絶対的な限界が存在します。
 その為、真の保守主義者は科学技術に対する妄信に冷水を掛け様とします。人間が設計するものは普遍的に不完全です。人間の技術と想定には絶対的な限界が存在する為「100%壊れ無い」ものなど存在しようがありません。その様なものは神の領域にのみ存在し得るものです。人間は絶対者ではありません。科学技術の領域で「絶対」を語ることは、人間を絶対者と取り違える危険な思考です。


 




 人間は不完全なものであるから・・・絶対は存在しない


 世界は想定外のもので満ち溢れて居ます。全てを理知的に把握し制御すること等出来ません。世界は普遍的に想定外の存在です。だからこそ人間は、この世界に夢を持って生きる事が出来ます。全てが想定された世界で、果たして人間は喜びを持って生きる事が出来るでしょうか。全てが理知的に把握され、完全な存在にのみ囲まれて生きること等出来るでしょうか。間違い無く、不可能です。
 人間が人間である以上、その様な社会に投げ込まれると精神の変調を来すでしょう。全てが理解され、あらゆる事象が予め規定されて居る世界では、生きることの意味は究極的に剥奪されます。人間はそんな世界に耐える事が出来ません。私達は「想定外」内存在だからこそ、希望を持って生きる事が出来るのです。少なくとも保守思想に依拠する人間は、その様な世界観を共有します。


 




 「安全な原発」等は有り得無い


 サテ、原発です。原発を作るのは勿論人間です。その為あらゆる原発は、未来永劫に不完全な存在です。全ての原発は「想定外」内存在です。だから今回の様な事故は必ず起こります。普遍的に起こり得ます。人間が完全でない以上、完全な原発等存在しようがありません。
 しかし、この様な認識に立つと、有りとアラユル科学技術に対する不信が生まれて来ます。この不信にのみ立脚すると、全ての技術は停止され世界は滞ります。 重要なのは、事故や故障が起こることを前提に、その利便性とリスクを天秤に掛けて利用する英知とバランス感覚です。

 例えば、自動車は普遍的に事故を起こし続けます。日本だけでも年間約5000人の命が失われ、多数の負傷者が出続けて居ます。又、幾ら技術革新が続いても、飛行機事故は無く為りません。飛行機に乗ることは、常に墜落事故のリスクを背負う事に為ります。しかし、私達は自動車や飛行機を放棄しません。それは、リスクの存在を前提として、そのリスクよりも利便性の方が上回ると云う認識を共有して居るからです。
 原発も、同様の前提の下で考える必要があります。原発のリスクと利便性を天秤に掛けた時、どの様な判断をするべきかを考える必要があります。


 




 利便性とリスクを天秤に掛けて利用する・・・英知とバランス感覚が必要
 

 自動車も飛行機も、確かにリスクのある存在です。しかし、原発のリスクはそれらを遥かに上回ります。一旦事故が起こると、事故の規模にもよりますが、相当程度の国土が汚染され人間が中長期間にわたって住むことが出来無く為ります。
 又、周囲はかなり広範囲にわたって放射能の危険に晒され続け水や食品に影響が出続けます。長い年月を掛けて構成されて来た歴史的景観・人間の営み・農地の土壌、そう云ったものを一気に放棄し無ければなら無い事態が生じてしまいます。直接的な被害だけで無く、その不安や精神的圧迫感等も考慮すると、そのリスクは余りにも大き過ぎると云うのが実情でしょう。少なくとも原発事故は、この国土を手間隙掛けて整備し守って来た無名の先祖に対する冒涜であり歴史を無礙(むげ)にする暴挙です。


 




 原発利用のリスクは余りにも大き過ぎる暴挙 


 「安全な原発には賛成」と云う専門家が居ますが、その様な前提は人間が人間である以上は成り立ちません。原発は事故が起こることを前提に考え無ければ為りません。その時に、私はリスクの高過ぎる原発には批判的に為らざるを得ません。人間の不完全性を冷徹に見詰める保守思想に依拠(いきょ)する以上、原発と云う存在には真っ向から反対するのが保守主義者の務めだと思って居ます。
 もう一度繰り前します。私は保守主義者なのに原発に反対なのではありません。私は保守主義者であるが故に原発に反対なのです。

 保守派は好い加減「アンチ左翼」と云う思考法から脱却する必要があります。「左派の市民派が原発に反対だから、現実主義的な保守は原発に賛成」何て云う稚拙(ちせつ)な思考法を共有する限り、日本における「保守の不在」は継続します。ソロソロ日本の保守派は左派への逆説的なパラサイトから脱却して、冷静な思考を取り戻すべきです。

 今こそ保守派は、原発に根源的な批判を向けるべきです。


 中島岳志 (なかじま たけし) 1975年生まれ 北海道大学准教授

 専門は、南アジア地域研究、近代政治思想史。著書に『ヒンドゥー・ナショナリズム』(中公新書ラクレ)『中村屋のボース─インド独立戦争と近代日本のアジア主義』(白水社)『パール判事─東京裁判批判と絶対平和主義』(白水社)西部邁との対談『保守問答』(講談社) 姜尚中との対談『日本 根拠地からの問い』(毎日新聞社)など多数。
 「ビッグイシュー」のサポーターであり「週刊金曜日」の編集委員を務める等、思想を超えて幅広い論者やメディアとの交流を行なっている。近著『朝日平吾の鬱屈』(双書Zero)


 以上


 





 【管理人のひとこと】


 保守的だから安倍は嫌いだ。革新・リベラルだから立民や国民が好い・・・と云う様な色分けは今後は不要に為ります。何故なら、今更、右も左も存在しません。有るのは、経済的な貧富の差と社会的な経済的断層なのです。
 多くの国民は、今回の天皇の譲位や改元に基本的に同調して居ますし、戦争は嫌だけど自衛隊を認めたいしその存在に期待しても居ます。憲法改正も、戦争に為ら無いのであれば認めるし、もし現実の政治に何かが不足し何かを改正するのなら致し方無い・・・と言う程度の含みは持って居る筈です。どうしても、色分けせずには説明出来ない問題が存在するのなら致し方無いですが、多くの人には理解は得られ無いでしよう。

 実際の日本の政治家や政党は殆どが保守です。極端に自由で過酷な競争社会の超資本主義を嫌い、或る意味社会共同体を守ろうとするリベラルな意思を含む保守なのです。詰まり、理論に武装され暴力で革命を起こそうとする者に反対する意味では保守なのです。
 理論と言っても、某御用経済学者や橋下氏の発言等は、理論では無く屁理屈であり奇をてらう〈大衆迎合に長けた〉アジ演説に等しいもので何の値打ちも無い。次には、橋下氏の屁理屈を分析します。



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 次回は「橋下徹の言論テクニックを解剖する」


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