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2019年01月25日

〚紙面の片隅から〛8 「期待される蚕業革命(さんぎょうかくめい)!」



 〚紙面の片隅から〛8  2019年1月25日(金)の某宗教誌から引用します 






 


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 期待される蚕業革命(さんぎよぅかくめい)!!



 蛍光色など新素材開発


 明治から昭和初期に掛け、日本の近代化を支えた養蚕業(ようさんぎょう)。近年、様々な先端技術を用いてシルクの新たな用途を開発する挑戦が始まって居る。カイコの餌となる桑の生産を通じ、農山村地域の活性化にもつながる「蚕業革命(さんぎょうかくめい)」として期待されている。

      
 緑や赤にオレンジなど、暗闇(くらやみ)で光る蛍光色の繭(まゆ人差し指サイン上の写真)。国立研究開発法人の「農業・食品産業技術総合研究開発機構(農研機構)」で新たなシルクの開発にあたる門野敬子・新産業開拓研究領域長は「目に見える形で成果を世の中に示せた」と胸を張る。
 門野氏によると、遺伝子組み換えカイコが誕生したのは2000年。2007年に蛍光色シルクを採取することに成功した。今では多様な色に加えて、超極細で染色し易いタイプまで、様々なシルクを作り出せる。


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             遺伝子組み換えカイコ

   

 農研機構は、暗い場所で青い光を当て、フィルターを通してみると緑色に光るドレスを試作。ファッション業界や現代アートの関係者がこの「光るシルク」に関心を示しており、先ずは舞台衣装や芸術作品などへの利用が期待される。


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         遺伝子組み換えカイコ の関連図


 医療分野にシルクを活用する研究も進められている。シルクを材料にした人工血管を開発した東京農工大の朝倉哲郎教授は「いつか苦しんでいる患者を救う時が来る」と力を込める。


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              群馬県  蛍光シルク量産へ  



 




 
 医療分野でも活用研究


 熊本県山鹿市では、カイコからシルクを年中採集出来る様にした最新鋭工場が2017年から稼働始めた。耕作放棄地を造成した自前の桑畑も備えており「蚕業革命」の先駆けとも言えるプロジェクトだ。
 「思い切った《スマート養蚕》でないと、日本の養蚕は終わる」と工場を建設した。「あつまる山鹿シルク」の島田祐太専務は、養蚕再生に意欲を燃やす。工場では25ヘクタールある自前の桑畑で採れた無農薬の桑の葉を、人工飼料に加工。飼料からシルクまでを一貫生産する体制を整えている。
 病気に弱いカイコを守る為、空調を完備したクリーンルームで湿度や温度を管理。昔は桑の葉が茂る春から秋にかけて年3回程度だった繭の採集作業を最大年24回可能にしたという。養蚕農家ではカイコに一日3回、桑の葉を食べさせる必要があったが、この工場では人工飼料を月3回与えるだけ。重労働を大幅に合理化した。

 製造されたシルクは、スカーフや高級石鹸の原料として販売。将来的には遺伝子組み換えカイコを活用したバイオ医薬品への材料提供、桑畑の拡大も視野に入れる。過疎化が進む地域では農家の高齢化が進んでおり、住民からは手間のかかる桑づくりを「各農家でやるのは無理」との声も上がる。
 工場を誘致し、小学校跡地を用地として提供した山鹿市の中嶋憲正市長は「ぜひ山鹿市でやってほしかった。若者の定着につながれば好い」と話し、一層の雇用創出に期待する。


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     科学の森:蚕のたんぱく質で医薬などを・・・


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 若年層取り組みがカギ


 昭和初期まで日本の主要輸出品だった生糸。その生産量は現在、最盛期の0.1%にも満たない。養蚕農家の数も激減し高齢化が進んでいる。今後はシルクの新用途開発と共に、担い手として若年層をどう取り込むかが「蚕業革命」の行方を左右するカギになりそうだ。
 日本の生糸生産量は20世紀初頭に世界一と為り、ピーク時は4万トンを超えた。戦後も製糸を含めた繊維産業が日本の復興を支えたものの、1970年代から衰退の一途をたどり、2017年の生産量は20トン程度だ。養蚕農家もピークの1929年には20万戸超だったが、2017年にはわずか336戸。農家の高齢化もあり、このままでは養蚕のさらなる衰退は避けられない情勢だ。

 シルクの用途は近年、広がりを見せている。遺伝子組み換えカイコのシルクの成分を使った製品としては、骨粗しょう 症やアルツハイマー型認知症の検査薬・化粧品が既に実用化された。悪性リンパ腫の抗がん剤の開発が行われるなど、将来性の大きいバイオ医薬品分野にも期待がかかる。
 シルクの繊維製品としての需要は世界的に伸びており、群馬県蚕糸(さんし)技術センターの須関浩文所長は「養蚕業をIT産業のように若い人に魅力を感じて貰える仕事にしたい」と語る。(時事) 以上


 





ご参考に別の情報を併記します・・・(抜粋)

 

 遺伝子組換えカイコが開くシルク利用の最前線


 農業・食品産業技術総合研究機構生物機能利用研究部門新産業開拓研究領域 小島 桂氏の文章から引用します(抜粋)


 Published: 2016-11-20コピーライトマーク 2016 公益社団法人日本農芸化学会


 





 はじめに

 カイコは,カイコガと云う鱗翅目昆虫(りんしもくこんちゅう)の一種でミツバチと同様にヒトが古くから利用して来た昆虫です。特にカイコは高級な繊維であるシルクを生産する昆虫として,長い時間を掛けてヒトが利用し易い様に改良が続けられて来ました。
 その結果,カイコが作るシルクは、その野生種であるクワコのシルクとは比べ物になら無い程長く立派な繊維に為ったのです。又,改良の過程でカイコは歩き回って餌を探すことをせず,成虫も飛ぶことが出来ない昆虫に為りました。ヒトが世話をしない限り生きていけない生物で,一般に家畜と言われるウシやブタ・ニワトリ以上に家畜化された生物と言えるのです。

 シルクは,カイコがサナギになる際に作る繭から採られる繊維で,殆どタンパク質だけで出来た1,000〜1,500 mほどの1本の長い糸で、通常,私達はこの糸を10〜20本束ねたものを生糸として使っています。
 カイコの幼虫は,卵から孵化してから3週間かけて成長して繭を作るのですが,それまでに体重を孵化時のおよそ10,000倍の3 g程度に増やします。そして体重の10%に達する300 mgほどのシルクを繭として作り出すのです。
 これをヒトに例えると,3,000 gで生まれた新生児が3週間後に体重が30 tに為り3 tの糸を吐き出すことに相当する訳で、カイコが如何に効率好く成長し短期間で大量のシルクを作り出すことが出来るか判ります。また,カイコは極めて扱い易くきちんと管理することで一度に数万頭規模で飼育が可能です。

 ヒトはこの,カイコが持つ素晴らしい機能を「シルクの生産」と云う形で利用して来たのですが,2000年にカイコの遺伝子組換え技術が確立されたことで「機能性や力学物性を改変したシルクを生産」し,又カイコのタンパク質生産能力を「有用タンパク質の生産」に利用出来る様になったのです。


 




 遺伝子組換えカイコの利用法

 カイコの遺伝子組換えには,piggyBacと云うトランスポゾンを利用して,目的とする遺伝子をカイコのゲノムDNAに導入します。では,作り出された遺伝子組換えカイコは,どの様な事に利用できるのでしょうか? 幾つかの例で紹介したいと思います。

 まず,純粋に科学的な観点からカイコの遺伝子の機能解析に使われている


 例えば,カイコの成虫の複眼は黒色をしているが,その色素を作る為の遺伝子が全て知られている訳ではありません。そこで,候補となる遺伝子について遺伝子組換えを使ってその機能を抑えたり,逆に増強したりして対象とした遺伝子が本当に目的の機能を持つものか調べることが出来る。このようにして,w1,w3,reといった遺伝子が同定される。
 又,カイコの生理機能を改変する試みがあります。例えば,養蚕業に重大な被害をもたらす核多角体病と云うウイルス病があるのですが,このウイルスが体内で増え難くする遺伝子を導入して病気に抵抗性を示すカイコの作出が行われているます。

 他にも,先に述べたようにカイコの高いシルク生産能力を利用して,有用なタンパク質をカイコの繭に作らせ回収する試みが近年盛んに行われています。例えば,サイトカインの一種であるbFGFや,ヒトのコラーゲン,抗体を繭中に発現する遺伝子組換えカイコが作出されました。これ等のタンパク質が繭から抽出され利用されています。
 繭から抽出されたこれらのタンパク質は,比較的容易に高純度に精製出来ることや,エンドトキシンの混入が少ないこと,又,狂牛病の発生で注目されるようになった動物由来の成分(血漿など)が含まれ無い事などから美容や医療の分野から注目を集めています。

 遺伝子組換えカイコの利用法として,もう一つ大きな分野がシルクそのものの改変です。私達のグループでは,シルクに外来タンパク質を発現させてシルクそのものの機能性や強さを変化させて利用しようと云う試みを続けて来ました。この取り組みの中で生まれた成果が,蛍光シルクやクモ糸シルクなどです。これ等の改変シルクについて紹介します。

 シルクを改変する試み

 蛍光シルクやクモ糸シルクの作出は,新しいシルク素材を作り出したいと云う願いから始まりました。シルクは古くから和服や肌着の素材として利用されていることからも判る様に高級繊維の代表です。しかしその一方で,洗濯がし難い・毛羽立つ・黄ばむと言った欠点も少なからず存在します。
 遺伝子組換えカイコの技術を使ったシルクの改変研究は,こういったシルクの欠点を補い,又新しい機能性の付与を目的とした研究から始まったのですが、残念ながらこれらの欠点を補う改変シルクは未だ実現していません。が,新しいシルクが幾つか開発されています。
 シルクの本体はフィブロインという繊維で,フィブロインは3種類のタンパク質から出来ています。シルクを改変する試みでは,この内最も大きなタンパク質であるフィブロインH鎖タンパク質を改変する技術開発から始まりました。


 1.蛍光シルク

 フィブロインH鎖タンパク質の組換えタンパク質をどのように設計してカイコに作らせ,繭の中に発現したことが判る様にするか?と云う問題の解決策として,緑色蛍光タンパク質(GFP)が利用されたのです。
 カイコのフィブロインH鎖遺伝子の大きな繰返し領域の代わりにGFP遺伝子を組み込んで,更に幼虫の後部絹糸腺(シルクの内フィブロインを合成する組織)で発現するように組換え遺伝子を構築し,遺伝子組換えカイコを創出したのです。
 出来上がった遺伝子組換えカイコは,組換えフィブロインH鎖-GFP融合タンパク質を絹糸腺で発現し,緑色の繭を作ったのです。この繭は更に,ブラックライトや青色光を当てると綺麗な緑色蛍光を発し,目的の遺伝子組換えカイコの創出に成功したことが一目瞭然であったのです。現在では,蛍光シルクはGFPとは別の蛍光タンパク質を利用することで緑色に加えて,赤やオレンジなど多数の色で実現され(図1a, b)ています。


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図1■蛍光シルクとクモ糸シルク a, b: 種々の蛍光シルク繭と生糸.c, d: クモ糸シルクの生糸とニット

 現代美術家のスプツニ子氏やブライダルファッションデザイナーの桂 由美氏らが蛍光シルクを利用した作品を発表しており,ほかにも蛍光シルクを用いた試作品がいくつも作出され,注目を集めています。
 蛍光シルクの開発は,当初純粋に技術開発から始まったものです,それが今や実用化まで進んでいるのです。機能改変シルクへの関心の高さを示す好い例でもあるのです。


 2.クモ糸シルク

 蛍光シルクが出来たことで興味深かったのは,繭が緑色で緑色蛍光を持ったことです。詰まり,この方法でシルクに外来タンパク質を発現させた場合,そのタンパク質が本来の機能性を発揮出来る事が示されたのです。そこで,次に挑戦したのがクモの糸をカイコに作らせることでした。
 ご存じのように,クモの糸は強く好く伸びることで有名です。実際にオニグモというクモの縦糸を取ってきてカイコのシルクと力学物性を比べてみると強度が3倍,伸びが1.5倍もあったのです。この強さと伸びをカイコのシルクに反映させることが出来れば,シルクの価値は格段に上がると期待されたのです。

 そこで,このオニグモから縦糸のタンパク質遺伝子をクローニングしてGFP遺伝子の代わりに用い,遺伝子組換えカイコの作出を始めました。先ず2007年にオニグモの縦糸タンパク質をシルクに作らせた最初の遺伝子組換えカイコを報告したが,実験系統のカイコ品種を使っていた為糸が取れなかったのです。そこできちんとした糸が取れる実用品種のカイコを用いて遺伝子組換えカイコを作り直すこととし,2014年に要約「クモ糸シルク」について発表出来た訳です。
 「クモ糸シルク」には,重量にして0.6%のクモ糸タンパク質が含まれていた。僅か0.6%であったが,糸の強さを測定した処強度が1.1倍,伸びが1.4倍,強靭さが1.5倍に向上したシルクでした。そこで,クモ糸シルクの生糸や布・ニットなどを作製した訳です。肌触りが柔らかくしなやかな製品ができあがったのです。
 現在,クモ糸シルクは強靭さが増した切れ難いシルクとして,衣料用繊維のみならず工業用素材としての可能性を視野に応用展開が図られています。


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 3.アフィニティーシルク

 蛍光シルク・クモ糸シルクは,シルクそのものを繊維として利用する試みの中で得られた改変シルクでした。これとは別にシルクをタンパク質材料として考えて利用する試みもあります。シルクの中に外来タンパク質を発現させることで新たな機能性をシルクに付与し,利用する方法です。その一つがアフィニティーシルクです。

 アフィニティーシルクは「フィブロインL鎖」と「抗体の可変部から為る一本鎖抗体(scFv)」との融合タンパク質を発現させた改変シルクで,抗原特異的な結合活性を持つシルクです。scFvを別の抗体のものに変えることで,異なる抗原を結合するアフィニティーシルクを多数作り出すことができます。
 また,抗体とは異なり,カイコの飼育量を増やすことで容易に大量生産出来る特徴もあります。アフィニティーシルクは,シルク繊維そのものに抗原結合活性が期待出来るほかに,シルクを溶解した水溶液や,水溶液から調製したシルクパウダーやフィルムにおいても抗原特異的結合活性が期待できます。実際に,WASP(Wiscott–Aldrich syndrome protein)と云うタンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体から作られたscFvをシルクに持つ遺伝子組換えカイコを作出し,そのシルクをパウダーやフィルムに加工した処,WASP特異的な抗原結合活性が保持されていたのです。アフィニティーシルクが免疫沈降やELISA実験に親抗体と同等に使用出来ることが判明しているます。
 アフィニティーシルクは,今ある抗体を用いた製品に抗体の代替品としてそのまま利用出来るほか,今後例えばインフルエンザウイルスと結合するscFvを持つアフィニティーシルクが作り出されれば,インフルエンザウイルスをキャッチするマスク等に応用出来る技術として発展すると期待しています。

 4.その他の改変シルク

 これらの他にも,遺伝子組換えカイコが作った改変シルクを医療用の材料として利用する為の研究も進められています。シルクはこれまでも手術用の縫合糸としても利用されており,生体に優しい材料として認められています。遺伝子組換え技術によりもっと体に馴染むシルクが出来れば,更に医療用途への利用が広がるでしょう。その一つとして私達が取り組んだのが,シルクを細胞が接着し易い様に改良することでした。

 “RGDS”(アルギニン–グリシン–アスパラギン酸–セリン)という4つのアミノ酸が並んだペプチドには,細胞のインテグリンがこれを認識して結合する.そこで“RGDS”ペプチドを融合した組換えフィブロインL鎖タンパク質をシルクの中に発現する遺伝子組換えカイコを作出した.この遺伝子組換えカイコが作ったシルク(RGDSシルク)を溶解して調製したシルクスポンジやシルクフィルム上には培養細胞がよく接着することが見い出されています。


 




 5.これからの組換えカイコ

 現在の遺伝子組換えカイコはpiggyBacというトランスポゾンを使った方法で作出されており,組換え体作出の成否は偶然に左右されます。特に目的タンパク質のシルクへの発現量の制御はほぼ不可能で,出来上がった組換えカイコの繭を調べるまでは判らないのが現状です。
 その為,より効率良く組換えタンパク質をシルクに発現させ,或いはシルクタンパク質そのものを改変して全く新しいシルクを作り出す為の技術が求められて来ました。近年,ZincFinger Nuclease(ZFN)やTALEN, Crisper/Cas9といったゲノム編集技術が開発され,ゲノム上の特定の遺伝子を切断して機能を止めたり,切断部位に新しい遺伝子を挿入したりといったことに利用されつつあります。カイコへの応用は現在研究が進められている最中で,カイコにもこれらの技術が利用可能であることが判りつつあります。今後のシルクの改変においてもこれ等の技術の適用と,利用価値が更に高まったシルクの開発が期待されるのです。



 




 シルクの加工

 これまでに少し触れましたが,シルクの利用は繊維に留まらないのです。特に遺伝子組換えカイコが作る改変シルクは,様々な形態に加工されてその機能性を発揮することも多いのです。最後に,シルクから作られる水溶液・パウダー・フィルム・スポンジなどの素材について紹介したいと思います。


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 カイコの繭を精練して得られるシルク(フィブロイン)からは,直接・間接に様々な形態に加工することが出来る。左から反時計回りに,水溶液・スポンジ・パウダー・フィルム・プラスチック様成型体


 1.シルク水溶液

 シルクは不溶性のタンパク質ですが,塩化カルシウムの濃厚溶液や臭化リチウム水溶液などに溶解することが知られています。これ等の水溶液に溶解したシルクは,透析して水溶液に出来ます。シルク水溶液は,そのまま化粧品などの原料として利用される他,以下の様々なシルク素材の出発材料となる重要な素材です。

 2.シルクフィルム・スポンジ

 シルクフィルムは,シルク水溶液を平坦な基材に広げ乾燥することで調製できます。調製したフィルムはオブラートの様に容易に水に溶けますが,水蒸気にあてたりアルコール処理することで水に溶け無いフィルムにすることができます。シルクフィルムは,細胞培養の基材などに利用されます。
 シルクスポンジの調製法には幾つか方法があり,夫々一長一短あります。シルク水溶液に塩の粒子を加えて作る方法は,ポアサイズを一定に出来るが成型が困難です。一方,私たちのグループでは,フィブロイン水溶液に有機溶媒を少量加えて冷凍することでフィブロインスポンジを調製する方法を確立しています。この方法では,シルク水溶液の濃度や溶媒の種類,凍結条件などを調整することで様々な構造や物性をもつシルクスポンジを調製できます。

 このシルクスポンジは,肌触りが滑らかなことから香粧分野での利用が進められています。また,冒頭で紹介したbFGF融合シルクやRGDSシルクから作ったシルクスポンジでは,これらを基材とした細胞培養で細胞の増殖や組織分化に特徴があるなど,再生医療用材料として有望な結果が示され,シルクスポンジの再生医療分野への応用が期待されています。

 3.シルクパウダー

 シルクパウダーは上記の様々なシルク材料から作ることができます。シルクそのものや水溶液を凍結乾燥したもの,フィルムやスポンジを破砕することでシルクパウダーが調製出来,出発材料によってかさ高さなどが異なるシルクパウダーとなります。シルクパウダーは,食品や化粧品原料として用いられている他,アフィニティーシルクでは研究用担体としての応用研究が進められています。


 おわりに

 遺伝子組換え技術により,カイコが作り出すシルクは多様性を増し,応用範囲も広がりつつあることを紹介しました。カイコはヒトが世話をしなければ生きていけない生物であることから,間違って外界に逃げた場合にも生存できないと考えられており,遺伝子組換え生物として優れた特性をもつ生物と考えられています。
 また,カイコは集団での飼育が可能なことから,今回紹介した様々なシルク素材や医療材料などを遺伝子組換えカイコを使った生産はこれから益々盛んに為るだろうと思います。カイコとシルクが遺伝子組換えと云う手法により新しい利用法を得たことで,今後「新蚕業」として花開くことを期待しています。 以上


 



 



 





 









 
 



 
















 
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