2019年11月29日
アマゾンに逆風か・・・ビジネスモデルの「根幹」が揺らぎかね無いワケ
アマゾンに逆風か・・・ビジネスモデルの「根幹」が揺らぎかね無いワケ
〜現代ビジネス 11/28(木) 10:01配信〜
〜これ迄世のビジネスパーソンが抱える悩みを鮮やかに構造化し、救いの手を差し伸べて来た北野唯我さん。デビュー2作で累計26万部を達成し、その驚異的な売れ方で「令和のビジネスリーダー」と呼ばれて居る。その北野さんが、この程最新刊『分断を生むエジソン』を上梓した。
組織作りのプロフェッショナルとして、北野さんがこの本で伝え様として居るのは、世の中や職場に分断が生まれてしまう仕組み、その中でリーダーが果たすべき役割に付いてだ。
そんな新刊から、立ちはだかる壁に挑み続けるビジネスリーダーに必要なエッセンスを短期集中連載でお伝えして行く。今回は「最強」と呼ばれるアマゾンのビジネスモデルの正体に付いて解説して呉れた〜
北野唯我さん
アマゾンは「ペイン型」のビジネスモデル
アマゾンの企業戦略を解説した書籍は書店に山程並んで居ますが、その支配力の正体に付いて本質的理解にまで及んで居る書籍はホボ見掛けません。重要なのは目に見えて居る戦略では無く、創業者ジェフ・ベゾスが世界を如何に認識して居るかだと思って居ます。実はアマゾンの力の源は、ベゾスが「ペインとゲイン」の関係を理解した上で、ペイン型に徹底して居る事にあるのです。
商品やサービスは「ペイン型」と「ゲイン型」のドチラかに分類されます。前者は本質的に面倒で、コストであり・苦痛であるものを取り除くもの。一方で、後者はそれ自体が楽しく面白いものです。
弁護士を雇う事はペインです。弁護士のお世話に為るのは何かしらのトラブルに対応し無ければ為ら無い状況でしょう。楽しい感情が沸き起こる事はありません。しかし、私達は弁護士に対してお金を払います。何故なら、先程の説明の通り、苦痛を取り除いて呉れるからです。
反対に、美味しいレストランに行く事はゲインです。美味しさを感じる時、人は普段に比べて幸福な感情が増します。詰まり、私達の喜びを拡大させて呉れるものだから、ワザワザお金払って迄レストランへ行く訳です。
ペインとゲイン・・・究極的に人はこの2つにしかお金を支払いません。特に、人類の歴史はペインを取り除く歴史でした。病や死、それに伴う恐怖をどう取り除くか。宗教や医療はこの様なペインを取り除く役割を果たして来ました。そして、遂に登場したアマゾンは「人類の壮大なペイン」を取り除く企業なのです。帝国の生みの親であるベゾスはそれを目指して居るとしか思えません。
アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏
全ての「煩わしさ」を取り除く
具体的には、迷う事・探す事・比べる事・雨の中に買い物へ行く事・・・そう云った全ての煩わしさを取り除く事コソが、アマゾンが私達に対して提供して居る価値なのです。
アマゾンは魅力的なサービス群でユーザーを囲い込み、自社に対するエンゲージメントを高める事で売上を伸ばして居ると好く言われます。戦略としてはその通りなのですが、最短2時間で商品を配送するアマゾンプライムナウの様なサービスが誕生した背景には、ペインへの理解も深く関係して居る筈です。
アマゾンが登場した時、豊富な商品が翌日に届く事ですらユーザーに取っては大きな価値でした。しかし、それより遥かに速い2時間配送を提供し始めて居ます。実の処、このサービスはコストばかり掛かる為、事業のKPIに対する貢献は決して大きく無いと思われます。
アマゾンエコーのひとつ
ですが、ユーザーの時間コストを如何に取り除けるかを考えた時、ベゾスはこのサービスが必要だと考えたのでしょう。既に人気を集めて居るアマゾンエコーでは、ユーザーが画面を見て選ぶと云うコストすら取り除いてしまって居ます。
支配力と影響力の違い
アマゾンを前にして数々の企業が敗れ去って行ったのは、アマゾンが人々のペインを取り除く事によって「ユーザーが他の選択肢を考える必要が無い状態」を作り出したからに他為りません。これがアマゾンの駆使する支配力のルールなのです。
これは単なるシェアの話ではありません。独占的なシェアを持つ事は勿論重要な要素ですが、だからと云ってユーザーがそのサービスを使い続けるとは限ら無いからです。もしシェアを持って居る事自体が企業の強さと為るの為らば、地域でシェアの高さを誇って居た地元本屋や家電量販店は最強であり続けられたのではないでしょうか。
そうは為ら無かったのは、他の選択肢を考える余地があったからです。支配力のルールを追求する事は、ドミナント戦略と勘違いしてしまいそうですが、ドミナントして居た企業ですら次々と駆逐されて行く様を私達は沢山見て着た筈です。
ペインを取り除く圧倒的なサービスによって、他の選択肢を考えさせ無い支配力を持ったからコソ、アマゾンは未だに最強であり続けられるのです。しかしながら、時代は再び新たな局面を迎えます。アマゾンの様な企業の発展は、人々が感じて居たペインの解放を加速させました。
だからコソ、次に重要と為るのがゲインの力です。時代はペインからゲインへ・・・支配力から影響力の時代に突入します。
今の時代に凱旋門を作れるか
具体的には、ゲインの中でも「価値の広がり」がより大きな価値を持つ様に為ると考えられます。例えば、高級フレンチに行くのは、料理を食べる事以上の価値が存在して居るからです。美味しいものを食べる喜びの他に「自分が選ばれた、特別な時間」を生きて居る感覚を齎(もたら)して呉れます。
他にも、自分の身体感覚を超えた何かを感じさせる日本の伝統的な寺社仏閣や世界の大聖堂と云った場所、強い高揚感を感じさせて呉れるスポーツのスタジアム観戦と云ったイベント等も当て嵌るでしょう。
詰まり、人は「自らの価値を大きくして呉れる事」に対価を払って居る訳です。これから訪れるであろう影響力の世界では、何よりもこの自らの価値の広がりが力を持つ様に為ります。
ですが、これからの時代に最強のゲインを作り出すのは至難の業です。何故なら短期的には非常に効果が見え難いからです。フランスの凱旋門が良い例では無いでしょうか。短期的な視点で判断され勝ちな現代では馬鹿気たものだと一蹴されて、建設すら出来無かったでしょう。
しかし、凱旋門は何百年経っても人々から愛され、しかも世界中から人々を呼び続けて居ます。とても長い視点で考えたら大成功としか言い様が無い代物です。
ジェフ・ベゾスがペインの覇者であるとする為らば、ゲインの覇者には一体誰の名が刻まれるのか。そのヒントは全て、新刊『分断を生むエジソン』に書きましたが、待ち遠しくもあり、果たして出来るのか不安でもあります。皆さんはどう感じるでしょうか。
北野 唯我氏のプロフィール 兵庫県出身 新卒で博報堂の経営企画局・経理財務局で中期経営計画の策定 MA・組織改編・子会社の統廃合業務を担当し米国留学 帰国後ボストンコンサルティンググループに転職 2016年ワンキャリアに参画 最高戦略責任者 経営企画執行役員 2019年1月から子会社の代表取締役 オープンワークの戦略ディレクターも兼務 30歳のデビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が15万部 『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)が10万部 最新作に同時発売の『分断を生むエジソン』(講談社)『オープネス ー職場の空気が結果を決めるー』(ダイヤモンド社)がある 1987年生
以上
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