2018年10月26日
昭和戦争 その責任は何処に? その3
昭和戦争 その責任は? その3
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９ 日本の敗戦を決定的にしたマリアナ沖海戦での壊滅的大敗北
マリアナ沖海戦 崩壊する戦線 絶対国防圏の崩壊
サイパン島戦が始まった時点の1944年6月19日〜20日のマリアナ沖海戦で日本海軍は完敗した。日本海軍は、戦艦５隻・航空母艦９隻を核に艦艇73隻に航空機473機を投入した。これに対する米国海軍の戦力は航空母艦15隻を含む艦艇112隻と航空機956機であつた。
米国海軍は当時の日本海軍には無かった最新鋭のレーダーを持って居た。空中の戦闘機に無線電話で作戦指令を行う空中戦闘システムとそれを動かすシステム要員を持って居た。
1943年に完成した米国の最新鋭戦闘機ヘルキャットの性能と防護力は日本のゼロ戦を遥かに超えるものであった。しかもVT信管と呼ばれる対空砲火の威力を飛躍的に高めた機能を備えた防御兵器で、米国戦闘機の攻撃の網を潜り抜けた日本の艦隊攻撃機を撃墜した。
VT信管（近接信管）
当時の無知で愚かであった旧日本帝国海軍の最高指導者達と高級参謀達は、誰一人としてこれ等の米国海軍の最新装備に付いての情報を持って居なかった。無知と云うのは情報収集の手段を持って居ないことである。愚かと云うのは情報に基づかず独り善がりで意思決定することである。
日本海軍は航空機300機を撃墜されパイロットを多数失ない、空母３隻を撃沈され空母４隻を撃破され日本の空母機動艦隊は壊滅した。日露戦争の日本海大海戦のバルチック艦隊に相当するのが日本の空母機動艦隊で、東郷連合艦隊に相当するのが米国の空母機動艦隊と云う図式であつた。
日露戦争当時のロシア宮廷は無知で愚かであった。彼等は東郷連合艦隊が最新の軍艦で編成され、下瀬火薬と云う最新の爆薬を持っており、しかも戦艦の砲撃手の技術水準は世界最高であったと云う事実を全く知らずバルチック艦隊を日本海に派遣したのである。
マリアナ沖海戦で日本海軍は完敗した。日本の空母機動艦隊は壊滅したのに対して、米国の空母機動艦隊は無キズであった。マリアナ沖海戦完敗で日本の空軍戦力と海軍戦力は、米国の空軍戦力と海軍戦力に真面に立ち向かう力を失った。
1945年3月〜6月の沖縄戦の時点では、日本の空軍戦力と海軍戦力は完全に無力で、沖縄を包囲した米空軍と米海軍に手も足も出無かった。沖縄は九州・鹿児島からは約660キロである。台湾・台北からは約630キロである。現在では飛行機で１時間以内で行ける距離である。
神風特別攻撃隊
九州南部から発進したカミカゼ特攻隊機は2,571機であった。36機が空母に14機が戦艦に138機が駆逐艦に突入したが、米軍に何らの打撃を与えることは出来なかつた。戦艦・大和は米軍機386機の集中攻撃を受けて空しく九州坊ノ岬沖90海里の地点で撃沈された。
戦艦大和の最後
1945年8月、昭和天皇の降伏の決断が無ければ旧大日本帝国軍部（陸海軍）の本土決戦＝１億総玉砕＝無理心中作戦で日本民族は完全に滅亡して居ただろう。
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ポツダム宣言10 ポツダム宣言即時受諾反対が原爆投下と日ソ戦争（ソ連の対日参戦）を招いた
無知で愚かであった旧大日本帝国軍部の最高給指導者達と大本営陸軍部の高給参謀達は、サイパン島戦や沖縄戦で10数万人の住民が日本軍の牢固たる玉砕思想で死亡した事を些かも反省する事無く、
・連日主要都市が米軍機数百機による無差別焼夷弾爆撃で焼き尽くされ
・釜石・室蘭が艦砲射撃を受け青函連絡船４隻が撃沈され都市住民の食糧が尽き果て、戦争を遂行する為の軍需物資も尽き果て
・原爆が投下されソ連が対日参戦して日本国民皆殺しが刻一刻と現実味を増して居ると云うのに
陸軍省の地下壕の中から「国民義勇隊の創設や原始時代の竹槍による本土決戦＝１億総玉砕＝無理心中作戦」を叫び続けた。
公開された旧日本陸軍の地下壕
国民抗戦必携無知で愚かであった旧大日本帝国軍部の最高指導者達は、戦う為の武器を持た無い（大本営陸軍部河辺参謀次長の言葉）大政翼賛会を再編成した国民義勇隊に、原始時代の竹槍による刺し違いの戦法で本土に侵攻する米軍を迎え撃てと叫んで居たのである。『昭和史８ 終戦の悲劇』研秀出版 1980年発行
大本営陸軍部は、挺身身斬込みを実行する為の『国民抗戦必携』と云う小冊子を作った。竹槍で敵兵の腹部を人突きする事から、ナタ・ゲンノウ・出刃包丁・トビ口等の使い方を詳しく図入りで説明したものである。軍需工場で強要労働に従事して居た女子挺身隊員・勤労動員中学生や更には一般主婦にまで竹槍によるゲリラ戦の訓練を強要した。今井清一著『ドキュメント 昭和史５ 敗戦前後』 平凡社 昭和50年5月発行 第105頁
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昭和戦争の惨禍の責任
サイパン島戦や沖縄戦で現実に起きた通り、もし本土決戦が行われたならば夥しい数の住民が戦闘中の殺戮や日本軍の玉砕思想で死亡したり重傷を負って日本全土は文字通り地獄と化して居ただろう。
米軍の死傷者の増大を防ぐ為、米国は本土決戦と云う事態に為れば、ソ連軍と共同で北海道・本土侵攻作戦を行う事に為った思う。 NHK日ソプロジェクト著『これがソ連の対日外交だ 秘録・北方領土交渉』（日本放送出版協会 1991年７月発行）の第６頁及び第16頁は「もし本土決戦においてソ連の対日参戦が無ければ、米軍の犠牲者数は100万人〜150万人に達すると推測されていた」と述べて居る。
ソ連軍が北海道や本土に侵攻して来た場合、1945年8月以降に満州・北朝鮮で現実に起きた通り、凶暴・凶悪なソ連軍兵士のレイプ（強姦)・殺戮・暴行・略奪・奴隷狩りで日本全土は文字通り地獄と化して居ただろう。日本全土を地獄にして国民全部を道連れにしょうとした旧大日本帝国陸軍の玉砕思想に基づく本土決戦＝一億総玉砕を無理心中作戦として筆者が強く非難する理由である。
1 海外諸国に多大の惨禍を引き起こし、日本民族を滅亡の淵に陥れた旧大日本帝国軍部の最高指導者達と大本営の高級参謀達の無知と愚かさは、時代を超えても徹底的に非難され無ければ為らない。
2 旧大日本帝国軍部の最高指導者達と大本営の高級参謀達は、東京裁判で裁かれる迄も無く加害者として海外・国内において昭和戦争の惨禍を引き起こし拡大させ、戦争終結を遅らせた指導者責任を負わなくては為らない。
3 旧大日本帝国軍部の最高指導者達と大本営の高級参謀達は、東京裁判で裁かれる迄も無く、ヒロシマ・ナガサキ・シベリアの惨禍を招いた指導者責任を負わなくては為らない。
4 旧大日本帝国軍部の最高指導者達と大本営の高級参謀達は、東京裁判で裁かれる迄も無く、１億総玉砕＝無理心中作戦を最後まで叫び続けた彼等の無知で愚かな命令に従う他に道は無かったレイテ島・硫黄島・沖縄・カミカゼ特攻隊・戦艦大和等の犠牲者たちに対する指導者責任を負わなくてはならない。
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良心不在のウソつき組織
放置されたままの大阪造兵廠の焼け跡
半藤一利編著『歴史探偵団が行く 昭和史が面白い』（文藝春秋97年１月発行）第125頁より引用 高木＝高木俊朗氏・作家、著書『インパール』『陸軍特別攻撃隊』など 岩田＝岩田正孝氏・元陸軍省軍務局軍事課課員 放置されたままの大阪造兵廠の焼け跡：1947年撮影
旧大日本帝国海軍は、太平洋戦争中においてすら、昭和天皇や内閣や陸軍に対して発生した事実の正確な報告をし無かった。ミッドウェイ海戦の大敗北やマリアナ沖海戦の壊滅的敗北の事実を徹底的に隠ぺいした。
国民に発生した事実を正確に知らせる等と言う考えは、旧日本帝国海軍の指導者達の頭の中には一欠けらも存在し無かった。責任ある立場や公的な立場にある者が、事実を隠ぺいする事は犯罪であると云う意識は全く無かったのである。
読売新聞（朝刊）2006年5月27日第15面、『検証・戦争責任 第２部』は「ミッドウェイ海戦惨敗の実情を、海軍軍令部は首相である東条にさえ隠した」と述べて居る。 新井喜美夫著『転進瀬島龍三の「遺言」』（講談社2008年8月発行）第26頁には「東条元首相は1944年6月のサイパン戦の直前迄ミッドウェイ海戦（1942年6月5日〜7日）で日本海軍が惨敗した実情を知ら無かったと瀬島龍三が語った」と書かれてある。
ミッドウェイ海戦で日本海軍は、主力航空母艦4隻を撃沈・撃破され失い、その全艦載機と多数の優秀なパイロットを失った。日本海軍が中部太平洋における制空権・制海権を失ったこの大敗北の実情を海軍は徹底的に隠ぺいしたのである。
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瀬島龍三氏上記のように岩田正孝・元陸軍省軍務局軍事課課員は「終戦までミッドウェイ海戦惨敗の実情を知ら無かった」と語って居る。当然、山本五十六の責任は不問に付された。米国であれば、ここで山本五十六は連合艦隊司令長官を罷免されて居た筈である。
総理大臣兼陸軍大臣であり、一時は陸軍参謀総長まで兼任して居た東条英機を初め大本営陸軍部や陸軍省の幹部達がミッドウェイ海戦の大敗北の実情を全く知らずに数々の重要な軍事行動の意思決定を行ったと云う事実に戦慄せざるを得ない。海軍が、ミッドウェイ海戦やマリアナ沖海戦の壊滅的敗北の事実を昭和天皇や首相ら閣僚達や陸軍に正確に報告せず、その為にその後誤った判断・意思決定・軍事作戦で、海外・国内で数百万人が戦争の惨禍で亡くなった。
艦隊派の海軍の最高指導者達と高級参謀達の罪は万死に値する。紛れも無く彼等は日本と云う国を滅ぼした不忠の輩（やから）であり、国民を騙し（だまし）続けた無知で愚かで無責任な指導者集団であつた。
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詐欺師達による洗脳教育と兵士を盲従させる為のリンチの日常化
・旧大日本帝国陸軍と海軍の最高指導者や高級参謀達は、昭和天皇の意思＝統帥権を無視して置きながら口先では「天皇陛下バンザイ」と唱え、国民に対しては「お国の為に死ね」「天皇陛下の為に死ね」と云う徹底した洗脳教育を行い続け、国民を騙し数百万の善良な国民を死地に追い遣った。
・旧大日本帝国陸軍と海軍の最高指導者や高級参謀達は、兵士の人命尊重と云う考えは一欠けらも無く、お前達は１銭５厘（徴兵令状の郵便葉書１枚の値段）の消耗品だ（高杉一郎著『シベリアに眠る日本人』第199頁）と言い続けて居た。筆者は、旧大日本帝国陸海軍は徴兵令状１枚で徴兵された新参兵にとっては奴隷収容所そのものであったと思って居る。
金森久雄氏日本経済新聞2004年9月8日第40面の『私の履歴書』で、エコノミストの金森久雄氏は1944年陸軍に招集され陸軍二等兵として８ヶ月過ごした体験を「兵隊の思い出は余り語りたく無い。夜は私的制裁が始まる。初年兵を並べて、スリッパでほっぺたを殴る等は日常茶飯事である」と述べて居る。読売新聞2004年9月28日第13面の『時代の証言者』の中で、漫画家の水木しげる氏は｢日本の軍隊じゃ､兵隊は何時も殴られてるんですから｣と述べている。
1958年放送された、フランキー堺さん主演の名作テレビドラマ『私は貝になりたい』は、旧日本帝国陸軍の不条理なタテ社会で、上官の不条理な命令に忠実に従った、赤紙で招集された一人の理髪店主が、戦後の戦犯裁判で絞首刑に為ると云う哀れな悲しい物語である。
日本経済新聞2005年5月4日第28面の『私の履歴書』で、加藤寛千葉商科大学長は「（軍隊では）案の定、苛められっ放しだ。軍人勅諭が暗唱出来ない、糧秣の米俵が担げ無い、アレが出来ないコレが出来ないで、この国賊と殴られる。口から流れる血の赤を見ると興奮して凶暴に為る上官も居て、本当に痛い目を見た」と述べて居る。
日本経済新聞2006年8月11日第32面の『私の履歴書』で、遠州茶道宗家の小堀宗慶氏は「軍隊の理不尽さ思い知る」との見出しで次の様に述べて居る。
小堀宗慶氏「最も理不尽に感じたのは靴の紛失事件だった。或る日、風呂から上がると私の靴が片一方しか見あたら無い。片方だけ履いて山田中尉に報告に行ったが、そこからの中尉の対応は想像を絶するものだった。兵舎の二階の長い廊下の端に立たされ行き成りバーンと殴り着けられた。
バタツと倒れるが、倒れたままに為って居られない。素早く立ち上がり、直立不動の姿勢に戻らなくてはならない。軍隊とはそう云うところである。又、バーンと横殴りに殴られる。立っては殴られ立っては殴られ、長い長い兵舎の廊下を端から端まで移動した。誰が靴を持っていたのかは問題にしない。無くした私に落ち度があると云う可笑しな理屈で罰せられるのだ。挙げ句の果てに『今度はお前が盗って来い』と云う我が耳を疑う命令が下された。生まれてこの方人のものを盗る等考えた事も無い。それを、人に教える立場の教官が命じるのである。軍隊とは、ここ迄人の道と掛け離れた常識が罷り通る世界なのかと、改めて思い知った」
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山岸章連合初代会長読売新聞（朝刊）2006年9月26日第12面で、山岸章連合初代会長は次のように述べている。
「海軍甲種予科練習生に志願しました。入隊する時に先任下士官が『お前達は第１種消耗品』と言うんだ。第１種消耗品とは３年以内に戦死する兵隊だな。軍隊は、食事は保障するけれども命を保障しない。軍人精神注入棒で毎日の様に殴られる。暴力と権威で押さえ込むだけ。自主的な正義感、団結、闘争心などは無い。死んだ方が増しだと思うまで追い込むんだ」
渡邉恒雄読売新聞主筆日本経済新聞2006年12月5日第44面の『私の履歴書』で、渡邉恒雄読売新聞主筆は旧日本帝国陸軍での軍隊生活について次の様に述べている。
「古参兵によるビンタは当たり前。理性的な判断や合理的な思考が存在する余地すら無い。不条理な精神主義と陰湿な制裁が横行して居た。或る時、一等兵の誰かが丸太を並べた上に何時間も正座させられて居た。江戸時代の拷問の様だった。私も毎日、上靴（じようか）と呼ぶ皮のスリッパで頬を張られた」
城山三郎氏読売新聞（朝刊）2007年3月24日第１面『編集手帳』は「志願して17歳で海軍に入った城山三郎さんは、朝から晩まで殴られ尽くめの絶望を味わった」と述べている。
日本経済新聞2007年5月16日第40面の『私の履歴書』で、映画監督・脚本家の新藤兼人氏は
新藤兼人ご夫婦 「苛酷な私的制裁が待って居た。隊の玄関には野球バットをひと回り大きくした『直心棒』が掲げてあった。これで兵隊のケツを殴るのだ。暗闇の営庭で整列し『軍人は忠誠を尽くすを本分とすべし』と股を開いてケツを突き出すと上級水兵（上官）の『直心棒』が唸りを挙げて飛んで来る。踏ん張りが悪いと吹っ飛ぶのである。５回殴られる。殴られたケツは紫色に為る。『直心棒』による私的制裁は毎夜続いた。私達海軍二等水兵は、アメリカと戦争するのでは無く日本帝国海軍と戦争だと思って居た」と述べている。
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