関東近辺　山歩き、温泉

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唯川恵さんの小説「淳子のてっぺん」。
私の大好きな田部井淳子さんをモデルにした物語です。

今まで知らなかった苦悩や戸惑い、でもやっぱり山が好きで、
山と共に生きた田部井さんの人生が書かれている感動小説です。
私は二度も読み返しました！

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私は2年前、突然パニック症という病気になりました。
今まで怖いものなしでどこへでも行ったりしたりしていた私が、
何もかも怖く不安になって、軽いうつ病みたいになりました。

そんな時に行ってみたいと思ったのが、
大好きな登山家、田部井淳子さんとさんと一緒に
山形で山登りできるというツアーです。
TV番組でいつも明るく登山の話をする田部井さんと会って、
少しでも元気をもらおうと思ったのです。

でもバス移動、しかも東北、平日で1泊2日です。
その時電車に乗ることさえ怖かった私は、不安で不安で、
でも行きたくてと迷っていましたが、
今行かないと一生後悔すると思い、思い切って申し込みました。

いざ田部井さんに会うと、ごく普通の小柄な明るい方でした。
気さくにどなたとでも話してくれるので、
リラックスして参加することができました。

私は不安になるとトイレにすぐ行きたくなるという症状にも悩まされていました。
その日は3時間余りの登山で、
私はあれほど不安に思っていたトイレに行きたくなりませんでしたが、
突然田部井さんがトイレに行きたいと
リュックを置いて山の中に行ってしまいました。
え？ここは山の中だし、トイレは近くにないよなー、なんて思っていると、
ケロッとした顔で戻ってきて、また合流しました。
…さすが大物は違うと、今までトイレのことで散々悩んでいた私は、
大笑いしたい気持ちになりました。
単純に、行きたいときは行けばいいんだと、おおらかな気持ちになりました。

皆さんと登山し、一緒においしいご飯を食べ、きれいな景色を見て、
自然体な田部井さんや他の皆さんと一緒に過ごして、
いつの間にか自然の中でリラックスしている自分に気づきました。

あの時本当に行ってよかったと、今でも思っています。
自分のペースで、不安も受け入れ、今ではすっかり元気に過ごせています。

先月、私の大好きだった登山家の田部井淳子さんが、亡くなりました。
癌とは聞いていましたが、余命3か月と言われてからも、
お元気で登山をされていたので、
突然の訃報に私はとてもショックを受けました。

私は二年半前、パニック症になって何もかもが怖かった時、
元気になりたくて田部井さんと一緒に登山できるツアーに参加しました。
癌闘病後のツアーだったにもかかわらず、
予定より早めにツアーに参加して皆と交流してくれたり、
一緒にご飯を食べてくれたりと、とても優しく気さくな方でした。
登山中も、皆に遠慮せずに「お〜い、置いてくぞ〜！」と
早足でどんどん先に進んで行きました。
マイペースで、でもどこか憎めなくて、
本当に登山が好きな方なんだと思いました。

若い時は女性だけ集めてエベレストに登頂したそうです。
その時は小さい子供を置いて女性が登山に行くなんてと世間に言われたそうですが、
田部井さんは他人に何と言われようと自分のやりたいことを貫きました。
エベレストに女性初で登頂したことも相当すごいことですが、
私は他人に惑わされずに自分のやりたいことを貫いたことに尊敬の念を抱きました。
あの優しい笑顔とは裏腹に、相当頑固な信念を持った方だったのですね。

歳を重ねても被災地の高校生と富士山に登ったり、
まめに講演したりツアーに参加したり、
登山に関する活動をずっと続けていた田部井さん。
優しさと、強さを持ち、そして登山を愛するという人生を楽しんだ田部井さんに、
心からご冥福をお祈りいたします。