2018年04月21日
レーザー手術中に患者が突然発火 腸内ガスに引火の可能性も
東京医科大学病院は、2016年4月15日に発生した、レーザー手術器での手術中の出火で、女性患者が広範囲の火傷を負った事故について、腸内ガスにレーザーが照射されたことが原因とする、外部調査委員会による報告書を発表した。
レーザー手術器は、赤外線などのレーザー光を照射することで切開が可能な手術装置。切開と止血を同時にでき、人体への負担が少なく、安全性も高いとされている。出火のあった手術は、子宮頸がんの診断や治療目的で実施される「子宮頸部円錐切除術」。
「パルスホルミウム・ヤグレーザー」と呼ばれるレーザー手術器を使用し、切除範囲をマーキング中、術野を清潔に保つために覆っている「ドレープ」という布が出火。医師らが生理食塩水を用いて消火したが、患者の臀部から両側の大腿後面にかけて広範囲な火傷が生じたという。
ドレープがレーザーによって引火したとも考えられたが、ドレープに近距離で直接レーザーを照射しなければ発火せず、病院からの問い合わせを受けたレーザーのメーカーも、本件と同様の出火事例は国内国外で報告はないと回答した。
外部調査委員会によると、手術室、手術台の清掃にアルコールなどの可燃性物質は使用しておらず、手術部位の消毒にも使用されていなかったことを確認。また、レーザー手術器を含め手術関連機器の動作環境は正常であり、異常加熱や漏電などの誤作動は認められず、検証実験でも手術で用いられていた薬剤や器具での着火は再現できなかった。
こうしたことから、出火原因として考えられる最も高い可能性は、「可燃性の腸内ガス(メタンガス、水素など)が手術部位に流れ込み、レーザー照射されることで着火し、広範に燃焼が起きた」ものと判断された。
ただし、こうした状況を完全に再現して確認するのは難しく、可能性の域を脱しないとしつつ、外部調査委員会は「本件は極めてまれな条件下で生じた火災と考えられるが、今回の事例を踏まえ、腸内ガスへの着火の可能性に対してスポンジを肛門に挿入、湿らせたガーゼを挿入するなどの安全対策をとる必要がある」と指摘している。