2017年04月20日
今日から始めよう。カルシウムをきちんと摂る食生活こそが眠りのカギ
東京大学と理化学研究所の研究で、起きているときとは逆に、眠っている間の脳では細胞の中にカルシウムが流れ込んでいることが明らかとなった。
カルシウムが脳の睡眠状態を作り出している可能性が示されたのだ。では、カルシウム不足は眠りを妨げるのか? そう話は単純ではないだろうが、カルシウムと睡眠には意外な関係があった。
□カルシウムは体のあちこちで活躍する働き者!
カルシウムというと歯や骨を作る栄養素というイメージが強いが、そのほかにも筋肉を収縮させたり、血を止めたり、心臓の正常な拍動を保ったりと、カルシウムのはたらきは実に多岐にわたっている。
東大と理研の研究グループは、このカルシウムが生体に与える新たな事実を発見した。
□カルシウム不足が不眠症を引き起こしている可能性も!?
研究グループは、マウスの脳の神経細胞表面にあるタンパク質を改変し、細胞内にカルシウムを取り込めなくした。
その結果、マウスの睡眠時間が1、2割ほど短くなったのだ。また、逆に神経細胞内にカルシウムを蓄積させたところ、マウスは1割ほど長く眠るようになった。
この結果は、脳を眠らせるには神経細胞内にカルシウムが必要だという可能性を示している。もしかしたら、カルシウム不足は骨を弱くするだけではなく、不眠症の原因となるのかもしれない。そんなことも予測できるような実に興味深い研究結果である。
□カルシウム不足と睡眠不足は骨を弱くする
大人になると、子どもの頃のように骨は伸びないが、実は骨は日々生まれ変わっている。だから、カルシウムが不足すると骨密度が下がって、骨がスカスカの「骨粗しょう症」になってしまう。
また、睡眠不足でも骨が弱くなる可能性がある。骨が作られる反応(骨形成)は夜間眠っている間に進み、逆に昼間は骨が壊される反応(骨破壊)が進む。睡眠障害を抱えていると、睡眠中に行われるはずの骨形成が妨げられるため、骨が弱くなってしまうのだ。
□睡眠時無呼吸症候群(SAS)も骨形成に悪影響
さらに、睡眠中に何度も呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群(SAS)では、繰り返される低酸素状態が骨形成に悪い影響を与える可能性もある。
例えば、低酸素状態が骨形成に関わる遺伝子のはたらきを抑えること、低酸素状態で炎症などが引き起こされ骨の分解が進むこと、骨の修復がうまく行われないことなどが示唆されている。つまり、カルシウム不足と睡眠不足には、ともに骨を弱くするという共通点があるのだ。
昔から「寝る子は育つ」というが、これは筋の通った話なのだ。
睡眠中、成長ホルモンがたくさん分泌され、成長期の子どもの骨を伸ばすからだ。また、骨の成長にはカルシウムが必要で、今回の研究で示唆されたように、カルシウムは良質の睡眠にとっても大切のようだ。そう考えると「よく眠りよく育つ子どもを作り上げるカギはカルシウムにあり」と言うこともできるだろう。