2017年01月04日
同時期の異なる記憶は関連づけられている? 忘れるときは、一緒に忘れてしまう可能性も
米ニューヨーク州バード大学と、英国医学研究会議(MRC)認知脳科学研究所の研究者らは、2016年3月15日、人間が過去の特定の出来事を自分から忘れようとすると、同時期に起きた関係のない出来事も忘れてしまうとの研究結果を、英科学雑誌「Nature」が運営するオープンアクセスの学術誌「Nature Communications」で発表した。
研究では、記憶障害などの既往歴がない健康な成人400人を対象に、いくつかの言葉と写真を同時に記憶させる実験を実施している。まず、最初に「LEAP - BALLET」「DIET - CREAM」といった2組の単語をセットにしたカードを提示し、同時に「机の上にサッカーボールが置いてある写真」や、「駐車場にクジャクがいる写真」なども見せながら、単語を記憶するように指示。写真の内容は特に記憶するように指示していない。
その後、「LEAPと対になっている言葉は?」という質問と一緒に、「写真で机の上にあったものは?」と質問したところ、ほとんどすべての参加者が「BALLET」と「サッカーボール」と回答することができた。
しかし、数時間から1日程度時間をおき、「DIETと対になっている言葉を忘れてください」と指示。その後、「駐車場にいたものは?」と質問したところ、43%の参加者が「クジャク」のことを思い出せなかった。さらに、忘れる単語の数を増やすほど、写真の内容も忘れてしまう参加者は増加したという。
研究者らによると、記憶された出来事を思い出すとき、脳内で同時期の別の記憶を手掛かりに、「記憶の検索」がおこなわれており、「検索を繰り返す(思い出す)ほど、手掛かりとなる記憶も強化され、検索をやめれば(忘れる)、手掛かりとなる記憶も意図せずに忘れている可能性がある」とコメント。健忘症などのメカニズムも、こうした記憶の検索の頻度の問題ではないかと指摘している。