2016年08月18日
「携帯電話を使うと脳腫瘍に」この大論争、結末はどちらに着地?
携帯電話を心臓に近いポケットに入れている人は多い。ビジネスマンでなくとも、携帯電話を耳につけたまま長時間話し込んでしまうこともあるだろう。
携帯電話の発がん性リスクについては、何度も指摘されてきた。海外では妊婦や子どもへの使用を制限する政府の勧告が出ているところもあり、イタリアでは発がん性が認められ労災認定された。
しかし、いまだ携帯電話の危険性はグレーゾーンになっている。携帯電話やスマートフォンは、本当はどれほど危険なのだろう。いつも持ち運び、長時間使っていても大丈夫なのだろうか。
□WHOが携帯電話の危険性を問題提起
世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)は、2011年に携帯電話を使用すると「発がん性の可能性がある」と公表した。
あらゆる文献を分析した結果、携帯電話の電磁波により、脳腫瘍の一種である神経膠腫(こうしゅ)を引き起こす可能性があると結論付けたのだ。
□「携帯電話=発がん性」に多くの反論も
しかし、この発表には多くの専門家から、反論が寄せられた。携帯電話が普及してからも脳腫瘍の発生率には大きな変化がないという指摘や、古い携帯電話技術の時のデータなので今は当てはまらないという反論だ。
携帯電話の電磁波のような非電離放射線でがんになるという研究で、説得力のある証拠が少ないという意見もある。
デンマークのがん学会は、成人約35万人を対象に大規模研究を行ったが、携帯電話の使用は、がんリスクの増加には結びつかなかったと結論付けた。携帯電話を13年以上使っている人たちと、使用していない人たちの健康記録を調べたが、脳腫瘍の発症率に違いは見られなかったという。
ただし、「使用歴15年以上のユーザー」と「極端なヘビーユーザー」では、脳腫瘍リスクが小〜中程度増加する可能性があった。
□フランスでは「長時間の利用は脳腫瘍のリスク
発がんリスクについての決定的な結論が出ないまま迎えた2014年、今度はフランスから長時間利用の危険性が報告された。
フランスの公衆衛生研究所の研究者によると、携帯電話で1日30分以上の通話を5年間続けると、脳腫瘍が発生する危険性が2倍から3倍に増えるとの調査結果が出たのだ。
この研究では、使用時間の少ない利用者は危険性がなく、使用時間が長い利用者には脳腫瘍の危険が増えていた。危険性を否定していたデンマークの研究結果からも、長時間利用者はリスク増加の可能性が疑われていた。
携帯電話の短時間の利用は危険性がないが、長期間利用するヘビーユーザーには脳腫瘍の危険性があるようだ。今後、長期間利用するであろう子どもの携帯電話使用には不安が残る結果だ。
□あなたの携帯電話の使い方、正しい?
ご存じない人も多いかもしれないが、携帯電話やスマートフォンの注意書きには、「身体から10mm以上離して使用する」、「通話の時はハンズフリーオプションで」などと記載されている。
注意書きの内容は、機種によって変わるが、製造メーカー側にも健康被害の懸念がうかがえるようだ。メーカーの注意書きでは、携帯電話は体に密着した胸ポケットに入れて持ち歩いたり、頭部に密着させて通話してはいけない道具、ということになる。
しかし、最新の機種は高周波に対する配慮がされた機種も増えており、技術の進歩で安全性も増してきているようだ。
□自分でできる携帯電話による発がん性リスク予防法
結局、現段階では、携帯電話の健康への影響はまだグレーゾーンと言えそうだが、リスクは小さいに越したことはない。
携帯電話は使い方でリスクを抑えられるので、工夫してみてはいかがだろう。電磁波の強さは機種によって違う、子どもの携帯電話はできるだけ弱い機種にすべきかもしれない。SAR値(人体に吸収される電磁波熱量)は、メーカーのホームページで確認できる。
持ち運ぶ時は、なるべく体に密着しないように。最も大切なのは、話すときに頭部に携帯電話を近づけないことだ。通話は耳に直接当てず、内臓スピーカーやイヤホンを利用しよう。それだけで危険を大幅に減らすことができるはずだ。