2016年08月16日
残り物の加熱に注意! 100度での死滅しない細菌が身近な食品に…
残った食べ物を捨ててしまうのはもったいないし、あとで温め直して食べることは良いことのように思える。しかしときに危険な場合がある。ちょっとやそっとの加熱では死滅しない細菌や、少ない数でも感染する細菌によって、食中毒を起こす場合もあるのだ。
□残り物に注意!100度でも死滅しない細菌
ご飯やチャーハンといった米類やスパゲティなどの穀類を原料とする食品では、「セレウス菌」という下痢や嘔吐を引き起こす食中毒菌が繁殖しやすい。
驚くべきことに、セレウス菌は生育しにくい環境になると食品中で芽胞(がほう)という殻を作り休眠状態で長期間生存する。そして、この殻は堅固で、100度30分の加熱でも死滅しないのだ。さらに、 セレウス菌は発育に好条件の環境になると、芽胞から出てきて一気に増殖する。したがって、中途半端な食品の加熱は、かえって増殖の温床を作ってしまうことになるのだ。
□セレウス菌予防には「作り置きしない」が肝心
そこで、予防のポイントは、米飯やめん類を作り置きしないこと。穀類が原料の食品は、増殖温度の10〜50度を避け、調理後そのまま保温庫(60度以上)で保温するか、小分けして速やかに冷蔵庫で低温保存(7度以下)することだ 。
また、セレウス菌以外にも、芽胞を作り熱に強い「ウェルシュ菌」という食中毒菌がある。カレーやシチューなどを大量に調理したあとにそのまま室温で放置すると、菌が増殖して食中毒の原因になるなど、「加熱済みの食品は安心」とは、単純に考えられない。
□鶏肉が主な感染源! 忘れたころにやってくる食中毒
鶏肉は、「カンピロバクター菌」という細菌にほぼ汚染されているといってもよい。
人がカンピロバクター菌に感染した場合、症状は「忘れたころにやってくる」のが特徴だ。症状が出るまでに2日から、場合によっては7日もかかるため、原因の特定が難しいことが多いのだ。
発熱、倦怠(けんたい)感、頭痛、筋肉痛など風邪のような兆候が見られ、風邪かな? と思っていると、その数時間から2日後には激しい下痢や腹痛が見られる。そして、多くの食中毒が10万〜100万個の細菌数で発症するのに対して、カンピロバクター菌はたった100〜500個ほどに感染しただけでも症状を起こすという、恐ろしい食中毒菌なのである。
□カンピロバクター菌は熱で予防できる
鶏肉を触った手で、調理器具やサラダなどの食材を触ることは、カンピロバクター菌を拡散させる要因になる。鶏肉の場合、下味の漬け込み時間が必要であれば、密封して冷蔵庫に移すなどすると良いだろう。漬け込みが不要なら、 すぐにオーブンで調理するなど、調理器具やほかの食材との接触を避けること。カンピロバクター菌は熱に弱いため、完全に火を通すことも重要だ。
また、調理器具を使ったら良く洗い、熱湯消毒・乾燥させる。加熱不十分な食肉や生肉の摂取を避けるのはもちろんのこと、食肉からサラダなどへの二次感染を防ぐため、調理の順番を考え、包丁、まな板などを使い分ける必要もある。
□残り物の温め直しの注意点
セレウス菌のように、加熱しても死滅しない最近もいるが、温め直しの基本は、食品全体にしっかりと熱を通すことである。
温め直しに電子レンジを使う人は多いが、電子レンジでは食品を均等に加熱できないことがあり、食品の表面と内部などの部位によって温度差ができてしまう。そうすると、かえって細菌増殖の温床となるので注意が必要だ。
また、調理し終えた熱い食品をすぐに冷蔵庫に入れないようにしよう。冷蔵庫内の温度を数度上げてしまい、すでに冷蔵庫内に入っている食品にとっても細菌増殖を促すことになる。熱いものはラップなどをして室温で少し冷ましてから、数時間以内に冷蔵庫に入れよう。
加熱は細菌を死なせるのにとても有効な方法だが、菌によっては、中途半端な加熱がかえって増殖に適した環境を作り出してしまう。食品ごとに適切な対処をして、菌の繁殖を防ぐことが必要なのだ。