2016年08月15日
パクチーは石鹸の匂い? 遺伝子が決める食の「好き嫌い」
わが家はタイ料理が大好き。このジャンルの料理には欠かせない香草、パクチーをベランダで育てているほどだ。
しかし、頻繁にタイ料理を食べるようになってから、パクチーほど人によって好き嫌いがはっきりしている野菜はないと感じている。独特な香りもするし、嫌いな人もそりゃいるだろうと簡単に考えていたが、「パクチーが苦手」という食べ物の好き嫌いという身近な話は、遺伝子レベルの壮大な話になるようだ。
□パクチーはせっけんの匂い?
パクチーが苦手な人は、「パクチーはせっけんの匂いがする」と感じるようだ。アメリカの民間の遺伝子検査サービス会社、23andMeの研究員らは、ヨーロッパ系の1万人余りに、パクチーがせっけんの匂いがするかどうか、パクチーが好きかどうかを聞いた。そしてその1万人余りの遺伝子解析も行った。
その結果、嗅覚に影響する遺伝子のうち、11番目の染色体上にある遺伝子「OR6A2」に変異があると、パクチーの匂いをせっけんのような匂いのように感じ、パクチーを嫌うことが分かった。
□民族によってパクチーの好き嫌いには違いも?
研究チームはさらに調査を進め、パクチーをせっけんの匂いと感じるのは女性に多く、また、民族によって感じ方が違うことも分かった。
「パクチーはせっけんの匂いがする」と答えた人が最も少ない民族は南アジアの民族だ。3.9%の人しかそのように感じていない。次いで、東アジアで8.4%。一方、ヨーロッパ人がせっけんの匂いを最も感じていて、1割を超える人が「せっけんの匂いがする」と答えた。
こればかりは、民族、遺伝子によるものなのか、それとも食習慣によるものなのか、わからないが…。
□遺伝子のせいで嫌いでも食べる努力を
パクチーは日本人にとってはそれほど身近な食べ物ではないので、苦手だったところで、日常の食生活に大きな影響はない。しかし、大切なのは、「きっとこれは遺伝子のせいで嫌いなのだから食べなくていいや」で済ませてはならないということだ。
もしこれが、にんじんやピーマン、肉、魚のような日本人になじみがあって栄養が豊富な食材だったら、栄養バランスに多大な影響を与える。実際に、カリウムが豊富で、大好きな子どもも多いキュウリも、苦みを感じる「TAS2R38」という遺伝子が深く関わっていることが分かっている。
□パクチーをおいしく食べる方法
パクチーが苦手な方のために、少しでもおいしく食べられる方法をご紹介しよう。
アーモンドやオリーブオイル、ニンニク、チーズと一緒にフードプロセッサーなどで粉砕すると柔らかな香りに変化する。ちょうどバジルペーストのようなものができ上がるのに似ている。パスタにあえたり、グリルした肉やスープなどに使ったりするとおいしく食べられる。
嫌いなのは遺伝子のせいかもしれない。世の中のお母さんにはもう少し、叱り方を緩めてもいただいてもいいのかもしれない。でも、調理を工夫すればおいしく食べられるということは忘れないでいただきたい。