2016年08月09日
京大の発見が奏功! 体内時計を調整する薬が登場?
京都大学の研究チームが、体内時計中枢にダイレクトにはたらく新たなタンパク質を発見した。不眠症や生活習慣病に対して、根本的な改善を目指す新しいタイプの治療薬の開発につながることが期待される。
□がんのリスクも 恐ろしすぎる生体リズムの乱れ
私たちは、地球のリズムに合わせて24時間の生活リズムで生活をしている。体もそのようにできていて、血圧、ホルモン分泌、睡眠・覚醒リズムなども、約24時間の規則正しい“体内時計”を持っている。
しかし、昼夜問わず活動的な現代社会において、このリズムは乱れがちだ。すると、睡眠障害だけでなく、高血圧、肥満、糖尿病といった生活習慣病のリスクや、免疫力の低下によるがんや感染症のリスクも大きくなる。不規則な生活が及ぼす影響はとても大きく、決して軽視できるものではない。
□何十兆個もの子時計を束ねる親時計
この体内時計は、体中のほぼすべての細胞に備わっているので、私たちの体には何十兆個もの体内時計があることになる。
それらはオーケストラの各パートのように、同調して24時間のリズムを奏でている。そして、そのオーケストラを束ねる指揮者が脳にあり、体内時計の中枢、つまり親時計ともいえる。この親時計は脳の奥底にある細胞の集まりで、「視交叉上核(しこうさじょうかく・SCN)」と呼ばれる。
不規則な生活によってSCNのリズムがずれると、体全体のリズムも狂い、健康にさまざまな影響を与えるようになるのだ。
□新発見! 体内時計中枢にダイレクトに効く薬
京都大学の研究チームは、この体内時計の中枢、SCNに直接効く脳内タンパク質を発見した。
「Gpr176」と呼ばれるこのタンパク質は、体の末梢組織には存在しない。体内時計中枢のSCNに高濃度で集中して存在するのである。従って、このタンパク質をターゲットにすれば、体のほかの組織に影響を与えることなく、体内時計の調節のみが可能になるというわけだ。
副作用を引き起こすことなく、体内時計中枢にのみはたらき掛けるというような方法は、これまで開発されていない。今後の創薬研究が期待される。
新しい薬ができるには10年〜15年もの時間と、1000億〜2000億円という費用が必要ともいわれている。
さらに、薬の候補物質のうち実際に薬として販売されるようになるのは、実に3万個に1個の割合だ。創薬の道はそれだけ長く険しい。しかし、不眠が世界的に蔓延する現代、多くの人を救うために、一刻も早い治療薬の開発が望まれる。