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2014年11月24日

十三月の翼・55(天使のしっぽ・二次創作作品)




 フンガー!!時間があるうちに、進めるだけ進めるのであります!!
 と言う訳で、55話掲載!!



魔王・サークル.png



                      ―虚魄―


 その様子を、四聖獣達は感嘆半分呆れ半分の思いで見つめていた。
 「やれやれ。敵わねーな。あいつらには。」
 ボリボリと頭をかきながら、苦笑いするガイ。
 「全くです。よもや、あの悪魔(異端)ですら受け入れてしまうとは。」
 「しかし・・・」
 「何か?」
 自分の横で神妙な顔をしているシンに、レイが訊ねる。
 「問題の本質が解決した訳ではありません。時がないのも、彼女の存在も。あと僅かで彼女はこの世界に溶けてしまうし、よしんばそれを回避したとしても、現世と相容れない存在である事も変わりは・・・」
 ゴイン
 「ブッ!?」
 突然頭を小突かれ、非常にらしくない声を上げるシン。
 思わず振り向くと、そこには厳格な面持ちのゴウが立っていた。
 「あ、兄者?」
 「何を腑抜けた事を言っている。」
 厳かな声で、彼は言う。
 「ここからは、神(俺達)の仕事だ。持てる神力を使って、あの娘の枷を解きこの世界に繋ぎ留める。」
 「兄者、しかしそれは・・・。」
 「五月蝿い。」
 シンの反論は、一言で押さえつけられる。
 「聖者殿や天使達が成したのだ。理越えの一つや二つ、神(俺達)が出来なくてどうする。」
 闘志満々の顔で拳を握るゴウ。
 彼を見て、シンは苦笑いしながら溜息をつく。
 「やれやれ、彼女達の無茶ぶりが伝染しましたか。」
 「上等じゃねえか。やってやんぜ。」
 「というか、そうでなければ神(僕達)の面子丸つぶれと言うやつですね。」
 口々に言って頷く弟達を見ると、ゴウは空の紅月を見上げた。
 「聞いたな!?歌劇とやらは終わりだ。ここから先は舞台裏での話。よもや、邪魔はすまい!?」
 ゴウの声が、朗々と夜空に響く。
 しかし―
 『―・・・・・・―』
 返事がない。
 「おいこら、聞いてんのか!?邪魔すんなっつてんだよ!!ってか、早くこっから出しやがれ!!」
 がなるガイ。
 しばしの間。
 けれど、やはり返事はない。
 様子がおかしい。
 彼らがそう思い始めた時、唐突にそれが響いた。
 『―妙だ―』
 誰にかけるでもない、独り言の様な声。
 何の事だ?
 四聖獣の疑問が形を成す前に、”それ”は言った。
 『―ペテロの門が、閉じぬ―』
 それは、今までの道化じみたものとは全く違った口調。
 妙に不思議がる様なその響きは、酷く不吉な気配を纏って四聖獣(神)の背筋を震わせた。


 トウハは、呆然とそれを見つめていた。
 目の前に差し出された手。
 これを取れば。
 受け入れれば。
 自分は行けるのだろうか。
 この人の元へ。
 彼女達のいる場所へ。
 光の、中へ。
 前を見る。
 想いを重ねた彼女が。
 皆が。
 そして、あの人が。
 待っている。
 「さあ、トウハ。」
 アカネが言う。
 「おいで。」
 道を示す、優しい声。
 震えていた、手が上がる。
 恐る恐る。
 差し出された、光の中へ。
 あと、1センチ。
 あと、5ミリ。
 そして、最後の瞬間はひどくゆっくりと―

 オォン・・・

 「え・・・?」
 何かが、聞こえた。
 後ろを、振り向く。
 「トウハ?」
 アカネが怪訝そうな声をかけるが、トウハの目はそこから離れない。
 その視線の先にあるもの。
 『ペテロの門』
 星の傷の様に、大きく裂けた奈落の口。
 役目を終えた筈のそれは、果てない闇をたたえ、今だそこに在る。
 「・・・何で、消えないの・・・?」
 「え・・・?」
 皆が、トウハの言葉に首を傾げたその瞬間―

 ゾワッ

 「――――っ!!?」
 病風(やみかぜ)の様に湧き上がった気配が、トウハの背筋を総毛立たせる。
 「ご主人様!!皆!!離れて!!」
 彼女が叫ぶのと、”彼ら”が溢れ出すのは同時だった。

 オオオ オォ オ オォオオァオオ

 「キャアアアアアアアッ!!」
 「な、何よ!?これぇ!!」
 耳朶を覆う無数の呻き。
 魂を掻き毟る様なそれに、皆が悲鳴を上げる。
 「こ・・・これは・・・」
 今にも崩れそうな意識を必死支えながら、ユキはそれを見る。
 それは、無数の光。
 ただし、温かいこの世の光ではない。
 昏い青白色に輝く球体。
 それが箒星の様に尾を引きながら、次々と門から飛び出してくる。
 光達は上空で群れを成し、渦巻いていく。
 見る見るうちに空を覆うそれは、さながら巨大な焔車(ほのぐるま)の様に見えた。

 オァ アォオオォ オォオオオ オオオ

 響き渡る呻き声。
 皆がそれにすくみ上がる中、トウハは一人立ち、その異様を見つめていた。
 「トウハ・・・これは、何・・・?」
 粘着く汗を拭いながら、アカネが問う。
 それが聞こえたのかどうかは、分からない。
 ただトウハは空を見上げ、一声だけ呟いた。

 「・・・『虚魄(レイス)』・・・。」

 オォオァ アォ オォオオオ
 それに応える様に、”彼ら”の声は崩れる様に世界を揺らした。


 「虚魄(レイス)!?何だ!?そりゃあ!!」
 ガイの問いに、”それ”は淡々と答える。
 『―かの地、ジュデッカの永久凍土。現世(この地)に救いを見出せず、悪魔としての願いを叶う事も出来なかった魂魄達の成れの果てだよ―』
 「魂の・・・」
 「成れの果て・・・?」
 その悲しくも禍々しい響きに、皆が生唾を呑み込む。
 『―本来ならば、ジュデッカ(かの地)において永久に凍てつき、悠久の時を有と無の狭間でたゆらい続けるだけの存在なのだが・・・。はて、それが何故・・・?』
 小首を捻る様な口調。
 今までの、全てを見通した様なものとは違った調子で紡がれる言葉。
 それが、今の事態が尋常なものではない事を如実に表していた。
 この事態が意味するもの。
 皆が問おうとした、その時―

 『『『―バアル・・・―』』』

 突然、それまでとは全く異質の声が響いた。
 それは、三つの声が同時に反響する様な奇妙な声。
 「こ、今度は何だぁ!?」
 「また新手ですか!?次から次へと・・・!!」
 しかし、新たな気配は現出しない。
 ただ、声だけが響く。
 『『『―バアル、聞こえるかい?―』』』
 『―ナベリウス公かね?何があったのかな?―』
 『『『―それはこちらが訊きたいよ。顕界(上)から妙な光が射したと思ったら、”こちら”の機能が麻痺してね。お陰で、永久凍土が溶け出してしまった―』』』
 『―ああ、それは先刻聖者殿が放ったものだよ。成程、それで凍てついていた虚魄(レイス)達が開放されて現世(こちら)に溢れ出したという訳か―』
 世間話でもする様な調子で、二つの異物は言葉を交わす。
 『―で、どうかね?どうにか出来そうかね?―』
 『『『―まぁ、”門番”の仕事だからね。どうにかするさ。けど、逃げ出した分は管轄外だよ。君、今は現世(そちら)にいるんだろう?適当にあしらっておいておくれよ―』』』
 『―面倒だね。まぁ、こちらには”手勢”もいるし、そちらに任せるとしようか―』
 『『『―ああ、それは好都合だね。では、そう言う事で―』』』
 『―分かったよ。では、ご苦労な事だが、頑張ってくれたまえ―』
 『―ああ―』
 そして、電話を切る様な調子で会話は切れた。
 『―と、言う訳だ―』
 「どういう訳だ―――っ!!!!」×4
 響き渡る、四聖獣の魂の叫び。
 『―何だ?聞いていて分からなかったのかね?―』
 「分かる訳ねぇだろ!!ちゃんと一から説明しやがれ!!」
 『―やれやれ、仕方のない事だ。では、よく聞きたまえ―』
 喚くガイに、溜息をつきながら”それ”は話し始める。
 今の声の主は、『ナベリウス』と言う魔王の一人だと言う。
 かの地でペテロの門の門番を務める彼によると、突如現世の側から射し込んだ光によって、ジュデッカの機能が麻痺したのだと言う。
 『―先に聖者殿が発した聖光だろうね。世界の機能一つを不全に陥らせるとは、全くたいしたものだ―』
 嘲りか感心か、禍禍禍と嗤いながら”それ”は続ける。
 ジュデッカの機能不全により、それによって拘束されていた永久凍土が融解。
 氷片と化していたかつての悪魔達、『虚魄(レイス)』が自由を得、現世へと流れ出したと言うのである。
 『―問題は、この虚魄(レイス)達の性質でねぇ―』
 曰く、虚魄(レイス)は満たされなかった想いの結晶体。常に飢え、その内の虚ろを満たす事を夢見ている。思考力や理性はとうになく、その欲求に従ってあらゆるものを喰い尽くすと言う。
 「何と言う・・・」
 「何処まではた迷惑な連中だよ。悪魔(お前ら)は・・・」
 絶句する四聖獣達。
 ―と、
 パリン
 不意に何かが割れ散る音がした。
 その異変に真っ先に気づいたのは、ゴウとシン。
 「む!?」
 「結界が!!」
 ”それ”が告げる。
 『―結界を解いたよ。中の病原体達も無力化した。安心して出てきたまえ―』
 それを聞いたレイが、不信の眼差しを向ける。
 「どう言うつもりです?今まで、何があっても余興としてきた貴方が、ここに来て部外者(僕達)の介入を許すと言うのですか?」
 『―場合が場合なのでね、今回に限っては許容範囲に収まらないイレギュラーだ。前にも言ったが、小生はこの星が消える事は望んでいない。舞台が消えてしまっては、元も子もないからねぇ―』
 「この星が・・・」
 「消える!?」
 思わぬ言葉に、皆が驚く。
 「どう言う事です!?あの霊達の餓欲はそこまで凄まじいのですか!?」
 シンの問いかけに、”それ”は困った様に身を揺らす。
 『―早く対処に向かって欲しいのだがねぇ。まだ説明が足りないかね?―』
 「うるせぇ!!いいからとっとと答えやがれ!!」
 溜息の気配が一つ。
 そして”それ”は、こう言った。
 『―まあ、確かに虚魄(彼ら)一つ一つの許容量は知れたものだ。しかし、問題はその存在位相の方でね。かの世界の深層で染め上げられたその存在は、こちらの世界の位相とは全くの別物に成り果てているのだよ―』
 「・・・つまりは?」
 『―忘れたかね?こちら用に調整した身である悪魔(トウハ)でさえ、素身では拒絶反応を起こすのだ。それ以上のマイナスエネルギーの固まりである虚魄(レイス)がこの地に触れる事は、正位の物質に反位の存在、“反物質”をぶつけるに等しい―』
 「・・・・・・!!」
 言わんとされている事の意味を理解した四聖獣達の背を、怖気が這い上がる。
 『―つまりは―』
 それを知ってか知らずか、”それ”は最後の結論を紡いだ。
 『―虚魄(あれ)が一つでも触れれば、属性反発によって最悪、この星は爆散する―』
 ダダッ
 その言葉が終わるか否かの内に、四聖獣達は地を蹴っていた。
 『―やれやれ。やっと理解してくれたかね―』
 「黙っていろ!!」
 「何でテメェが絡むと、こう話がデカくなりやがるんだ!!」
 「無駄口を叩いてる場合ではありません!!急がなければ!!」
 空を蹴り、遠ざかっていく四聖獣。
 彼らに向かって、”それ”は呼びかける様に声をかける。
 『―とりあえずは、聖者殿を死守したまえ。虚魄(あれ)は常に温もりを求めている。慈愛の権化たる聖人は絶好の寄せ餌だ。彼が健在な限り、あれらは彼に集中するだろう―』
 それが届いたのかどうか、四人の姿は見る見る夜の彼方へと消えて行く。
 『―・・・さて―』
 その姿を見届けると、”それ”はユラリと身を揺らす。
 『―一つの星の瀬戸際。興味深いが、どうなるものかねぇ―』
 そして、紅い月は再び星々の中心へと座を下ろす。
 結局、全ては余興と言わんばかりに―



                                      続く
この記事へのコメント
私は帰ってきた! 帰ってきたぞよ!w

というわけで、55話の感想です。
市政獣……あれ? 四聖獣、あ、よし出た出た。
いやなんか日本語変換ソフト別の使ってたら市政獣とか出た。
ゴウさんたちもこれからはもっと地域に根を張った活動をすべきということですなw
まぁどうでもいいやw

ゴウ兄さん、久しぶりに燃えているではありませんか。そうですそうです。守護天使やゴローさんが超えられた限界など簡単にぶち破ってくださいよ。聖獣でしょ? 余裕っしょ?(微笑w)

まぁそれはともかく、ペテロの門が閉じぬとな?
全員が異変を感じたらすぐ、なんか色々出てきたーw

レイス……つまり悪霊みたいなもんすな。おそらくバアルどんのスケールからいって、億の数の単位でわらわら出てきてるんでしょう。禍々しいけど、それはそれで絵になるシーンだと思うんでぜひここは映像化したいすなw

で、出た。ワンk……ゲフンゲフン、ナベリウス公ww
突如として展開される魔王(?)同士の業務連絡。うむ、イミフであるw
四聖獣たちのツッコミも無理はないw
でも、こういう、通常のレベルを超えた領域の人たちの会話ってなんかこー、かっこいいすな。
土斑猫さんの厨二理論は読んでいて実に、ほぉ、そうなんですかと納得させられてしまう説得力があるんで、ぜひその道を極めていっていただきたいですよ。ええ。

私はリアル路線とインフレ路線の程よい中間地点を「サバブラ」で模索しておりますが、はてさてこちらはどうなることやら。閑話休題。

で、いやでもね。レイスの破壊力というか位相が違いすぎて危険すぎるという設定ですが、一つでも触れたら地球壊滅っていくらなんでもやりすぎでないすかw
フ◯ーザのエネルギー弾が億の単位で来てるってことでしょウワァー

ま、でも、それくらい四聖獣の皆さんには防いでもらわなくてはな。
個人的には四聖獣メンバーの戦闘力はギニュー特選隊の隊員に余裕で勝ると思ってるんで、ぜひ頑張っていただきたい。
うむ、結界とかれて動き出した四聖獣の活き活きとした動きよw

億単位のレイスくらい余裕だよね☆(ゝω・)vキャピ

と四聖獣の最後の見せ場を楽しみにしたところで、久しぶりの感想とさせていただきますよ。
なんか、ロクな感想になっていない気もするがw
Posted by エマ at 2015年06月14日 14:13
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